やっぱこの世界野蛮だわ   作:厄介女ホイホイ

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複数人の会話って思ったよりも書くの大変。


自分だけの武器

 

 

 

「…………」

「…………」

 

「「「…………」」」

 

放課後、いつもお稽古をつけてもらっている場所体育館。

そこに来てみればおばさんと……問題児トリオの先輩たちがいた。

 

「え?なんでいるんですかね?」

「お稽古の様子を見学したいそうよ」

 

「気にすんなー」

「暇だったからね」

「ガヤは任せろ」

 

何だこの人ら。

俺がおばさんにボコボコにされるとこを笑いに来たんか。最低だな。失せろ(シャンクス)

 

「ハイハイ!後輩のちょっといいとこ見てみたい!」

「はい頑張って頑張って」

「後で俺ともやろうな」

 

「もう帰ってくれません…!?マジで…!」

 

ガヤがガヤガヤうるさいのう…!

そんなしかめっ面の俺を見て目の前のおばさんはうふふと微笑んでるだけ。

 

ちょっと静かにさせられませんか?あなた担任さんですよね?

 

「賑やかでいいわね。それじゃあ始めましょうか」

 

そう言って、やさしげな雰囲気をそのままにしながらも臨戦態勢になるおばさん。

構えはなく、自然体のまま。それでもうかつに飛び込めば手痛いカウンターが待ってると分かるそんな予感。

 

……うーん、もっとこう、手心というか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──グヘェ…!」

 

稽古がはじまり小一時間。既に満身創痍の俺氏と穏やかに微笑むおばさん。そして、傍らでゲラゲラ笑ってる性格の悪い先輩3人。

 

なにこれ、ここが地獄かな?

 

「弱すぎんだろこいつ…!」

 

ウザイ。赤尾リオンまじウザイ。

何わろてんねん、お前なんて2秒でけちょんけちょんにしてやる。想像の中でな。リアルだと俺が2秒でけちょんけちょんや。なんなら1秒未満かもしれん。泣きそう。

 

「いやーでも、筋は良さそうなんだけどなあ」

「ああ……俺もそう思う」

 

ありがとう、南雲与一と坂本太郎。あなた達の言葉は俺に勇気を与えてくれる。腹抱えてゲラゲラ笑ってるのに目を瞑ればな。何指で涙拭ってんだ。涙出るほど笑ってるんじゃないよ。その心笑ってるね!

 

「けどさ──

 

 

 

──なんで使わねえんだ?」

 

 

 

「……?」

 

坂本太郎の言葉に首を傾げる。

使う?何を?

 

「あー、それ私も思った」

「縛りプレイ、とかかな?佐藤田先生舐められてますよー」

「ふふ、あらそうなの?それは残念ね」

 

分かってないのは俺だけ。

何?なんなの?みんななんの話ししてるの?

 

そんな風に、困惑しながらあたふたしてると、坂本太郎が納得したように口を開いた。

 

「あー、なるほど……無自覚か」

 

そういうやいなや立ち上がり、戦いが始まる前のルーティン、首に手を添え首の骨を鳴らす動作をした。

 

「今から殺す気で攻撃するから、全力で防ぐが躱せよ」

「え、いや……ちょっと待───っ!?」

 

感じる殺気。背中に走る悪寒。

ガチで殺しにくる雰囲気を肌に感じる。

 

あ、これあかんやつや。そんなことを思った次の瞬間。掻き消える様に目の前から坂本太郎の姿が消えた。

 

見失った……が!音からして──

 

「後ろ…!」

「……フェイントだ」

 

後ろに視線を向けた瞬間、視界の端に映った坂本太郎の姿。

しかし、それも一瞬で声が聞こえてきたのは上。

 

頭頂部に嫌な予感。兎にも角にも頭を守らねばという一心で腕をクロスさせ頭部をガード。

 

「……ほら、使えた」

「……え?」

 

と思ったら、コツンと軽く当たる坂本太郎のかかと落とし。

あてっ、何て間の抜けた声が漏れた。

 

悠々と立つ彼の姿を視界に頭をさすりつつ、なんのこっちゃと頭を回転。

なんか俺使ったっけ?

 

「あー、理解したよ」

 

傍から見てた南雲与一が声を上げた。

……どうしてみんな俺を差し置いて理解しちゃうの?まず説明してよ。報連相はどうした。

教えはどうなってんだ!教えは!

 

「自分にとって嫌なことが迫ってる時に発揮するタイプってわけだね」

「昼の時はJCC丼を食いたくなさすぎて。今回は俺に殺されたくなくてってとこだろうな」

 

……つまりどういうことだってばよ。

 

「まだわかってねーのか?お前、自分が嫌だなーって思うことに対しての"集中力"半端じゃねーぞ?」

 

 

集中力……集中力?……集中力(宇宙猫)

 

だからどうしたって話なんだよなあ。嫌なことをして嫌な目にあいたくないから死ぬ気で集中するんでしょうが。普通のことだろ。

 

「……理解してないっぽいからはっきり言うけどお前のそれめちゃくちゃやべーからな?」

「超集中状態……アスリートとかで言うところの"ゾーン"だよそれ」

「嫌な目にあいたくないっていう思考で染ってるから入れるのかもしれないな」

 

……え?これが?

聞いたことはあるぞ。極限まで集中することでパフォーマンスをフルで発揮できるとか何とか。

 

「自覚がないでしょうけど……やっぱり血は繋がってるのね。貴方のお婆ちゃんも使えてたのよ?本当は自分で理解してもらいたかったのだけど……」

「それなら先生、もっと追い詰めないとさあ」

 

「古い友人の孫で可愛く思えてね……あまり厳しくできなかったのよね」

「先生が私情をまぜるってどうなんですかそれ」

 

問題児トリオとおばさんの会話を耳にしながら少し昔を思い返す。

 

嫌なことがあった時とか、それを回避する為に色々やったこととかあるけど……確かにその時、時間の流れがゆっくりに感じることとかは少なからずあった。

 

いや、まさかそれがこれとは思うまいて…。

 

「坂本君も全力を出してはないにしても本気で攻撃しに行ってたよね?」

「ああ、まさかあそこまで俺の事を追えるとは思ってなかった」

「目も耳もいいよな。ま、何よりも反射神経か。育てばこれ化けるぞ」

 

何やら大好評の模様。

実感も自覚もないし、なんか地味な力で喜べばいいのかどうなのか。

 

「……うん、そうね。これからはもう少し厳しくいきましょう。合気道の飲み込みも早いですし、その力を物に出来たら相当な実力になれますからね」

「う、うへ、へへへ……はぁ……」

 

これ以上の地獄があるんですか?

死んだ方がマシに思えてきたな。




良くも悪くもないなかなかいいバランスの能力じゃないでしょうか。わからんけど。
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