やっぱこの世界野蛮だわ 作:厄介女ホイホイ
お勉強は最初が一番つまづく
「──あだだだだだだッ!たんま!おばさんたんま!」
「うふふ、ここは学校で私は先生、あなたは生徒……おばさんじゃなくて先生と呼んでちょうだい」
「分かった!分かったからぁ!お手手離してえ…!!」
そう言ってキメられた腕が離される。
地面に倒れた俺になぞらえる様に離された手もまた地面へと倒れるした。
そんな死体モドキの俺の傍らに立つ佐藤田悦子おばさん、いや、先生。
ニコニコしていてもはや怖い。
笑顔は実は威嚇の表情って聞いたことあるけど……納得だわ。
「いっつぅ…」
体を起こし腕を確認。
折れてもないし腫れてもない。
どうしてあんな非力そうなしわしわお手手でこんなに綺麗に技が決まるの?さすが達人、おっかねえ……自分、帰宅いっすか?
「身体能力はかなりのものだけど、戦い方が力任せというか……もはや子供喧嘩みたいで素人でもどうとでもなってしまうわ」
「そうならないように合気道教えて貰いに来たんですけど……」
戦い方なんて知らない。だって殺し屋の訓練なんてしたことないし。
そもそもだれかを殺そうとする前に俺が殺されるまである。俺はクソザコナメクジですからね。
だからせめて自衛できるようにこうしておばさんに教わりに来てるけど、
「合気道において大事なものは人体を知ることです。どこをどうしたらどんな反応を咄嗟に取ってしまうのか……その反応につけ込んで技を決めるのがこの武道なんですよ」
「……じゃあまずはその知識つけろってことですか」
「ええ……さ、ひとまずあなたはここの生徒。空いた時間にお稽古をつけると約束しましたが、本来の勉強を疎かするのは違いますよ。私も自分のクラスがありますし」
まあ確かに……って納得出来るかい!
授業ゆーても、殺しに関することやろ?もうね不健全。あたし今年で10歳の子供ですがな。
「次はなんの授業ですか?」
「え?……えーと、射撃ですね」
「そう、送っていきますよ?この学校広いですから迷うでしょう?」
「マジで?ありがとうございます」
それはありがたい。いやほんとにこの学校広すぎなんだよなあ。
それにしても俺がここに来ることになるとは。廊下を歩きながらそんなことを考える。
引越しの時は大変だった。ずっと大佛がくっついて離れようとしないし。大人数人がかりで何とか引き剥がしたけど、あの馬鹿力は俺の体にもダメージ入ったで。
そういえば初詣のとき、俺と一緒に……みたいなこと神様にお願いしてたもんな。なんか悪いことしたな。
手紙とか出すからー言って何とか納得させたけど……逆にあいつからの手紙が多すぎる。この数日で10通以上は来たぞ。
……ま、元気にしてくれてればいいんだがなあ。
▼▼▼
「──今日の授業は銃の構造と撃つ動作を効率よく学ぶために、銃を組み立てて100m先の的を狙って撃つ、これを1分間で行ってもらう」
銃の構造知らんがな。
はいこれ暴発です。俺の指がナイナイしちゃうね。さよならグッパイマイフィンガー。
「ま、物は試しだ。早速行こう。各自配置について」
そう言われ、渋々と分解された銃が置かれた机の前に向かう。
へー、銃ってこんな部品があるんだなあ。初めて見たなあ……うん、なんも分からん。
「組み立てが甘いと暴発して指が飛ぶから気をつけろよ。じゃ、はいスタート」
……うえ?あ、もう始まった?
唐突に始まんないでよ…!
えーと、これはあれだな握るとこだよな?これマガジンってやつで……これはなんの部品?
ええい!一旦作ってしまえ!……部品が余った!当たり前だねクソが!
「はい、そこまで」
あ、終わった。
ふう……前途多難すぎるだろ。帰りてえ。
その後も、色んな授業を経てズタボロにされた。
なんだよ近接格闘術の授業って。なんでそんな授業に教科書があるんですか?開いたら人体の急所一覧とか書かれてたし怖い。
やっぱりこの世界野蛮だな。
さてお昼休み、給食の時間である。
ここの学校の給食は特殊だ。
お金を払って、射撃一発の権利を貰う。その射撃で100m先の的に書かれた料理のメニューに向けて撃って当たったものが食えるというやつだ。
ただその的に書かれたメニューがこれまた……。
JCC丼なるものがある。材料は白米、レーション、野菜のくず……等々もはやゴミ箱やんと思える料理があるんだが、その的の大部分がこの丼物なのである。終わってます。
だがまあ、腹は減っては戦はできぬ。嫌々ながら食うしかない。
食券を買い、銃を片手にいざ的の前へ。
えーと、右手で持って左で支えて……引き金を引いて、っと。
レーザーポインターだから反動なくて助かった……けど。
「……俺は銃の才能がないのかもしれない」
的にすら当らず見当違いの所へ着弾。
JCC丼すら食えないとかマジ?外で雑草でも食うか……。
そう思っていた時だった。
「お前だな?佐藤田先生が言ってた奴って」
そう言って肩に手を置かれる。
咄嗟に振り返ると頬に何かが当たった。
「はははは!引っかかってやんの!」
「あんまり子供からかうのやめなよ赤尾」
「…………ほんとに子供じゃん」
問題児トリオがいた。
"南雲与一""赤尾リオン"、そして"坂本太郎"。
なんてことだ。
まだあの事件が始まってないのか。
時系列を考えろ。俺は今9歳……今年10歳だ。
確か原作じゃ、坂本が27で大佛が21だったはずだ。つまり6歳差。
となると今この人たちは15、6歳ってとこか。
坂本曰く、赤尾リオンが死んだのが8年前とか言ってたっけか?で、失踪から1年と少しで死んだとかだから、プラス2年にしとこう。
となると、17で失踪って考えればいいから……あと1年か。
「……おーい、なんか黙っちまった」
「赤尾にビビっただけでしょ」
「は?何ビビってんだよ。ビビんな」
「無茶苦茶言ってるぞこいつ……」
考え込んでたらなんかすごいこと言われた。
陰キャに話しかけてくるヤンキー女みたいなムーブやめてね。
「いや別にビビってないですけどね?」
「……それはそれでムカつくな。ビビれ」
「とんでもないこと言ってるぞこいつ……」
「あはは、ま、気にしないでね。こいつこんなんだから」
「つかよー、さっき見てたけどお前射撃下手な?」
「え?……まあ?」
んな事言われんでも分かっとるわこのボンクラ。
だからどうしましょうねって考えてんじゃろがい。
「ほんとに素人なのか」
「先生の言ってた通りだね」
「……とりあえずお前的指させ」
「え?あ、はい」
赤尾リオンにそう言われすなおに指を指す。
「んじゃ右目だけ閉じろ」
「はあ」
「……今度は左目閉じろ」
「……」
「……どっちの目で見た時指がズレてた?」
「右ですね」
「じゃあ、お前利き目左じゃんか。右で撃ったらダメだろ」
「え?そうなの?」
「そんなのも知らねえのか?」
ごめんなさいね。あたしゃズブのど素人なんですけ。
「ほら、左で持てよ」
「え?でももう一発撃ったんですけど…」
「当たるまで撃っていいんだよこれ。ほらはよ」
そう言われ、ハンドガンを左手で。
そのままマガジンの下を支えるように右手を添える。
……利き腕じゃないからやりずらいな。
「……もっと脇締めんだよ。で、右手はもっと力抜け」
「こう…?」
「そうそう、足は軽く開いて腰入れて重心安定させろ」
「そんなん言われても分かんないし」
「あーもう、だからこう…!」
「グエッ…!?」
肩を捕まれ、力任せに姿勢の矯正。
強引すぎる。もっと優しくおせーて。
まあこれで最低限の姿勢にはなった。あとは狙うだけ。
……大きい的はJCC丼……食いたくねえ。絶対やだなあ。小さい的狙わないと。
食うなら美味いもん食いたいよな。まずいの食っても嫌だもんな。モチベが上がんないよな。
…………………………っ。
「「「……っ」」」
……あ、これいけるな。
そのまま引き金を引く。
レーザーポインターはでかい的の間の間。すり抜けるように小さい的に吸い込まれるように当たった。
そうしてゲットした昼ご飯は、"ステーキ定食"。
「……やったぜぃ」
意外と射撃の才能あったっぽいな。
なんだか呼んでくれる人が一気に増えた。
ありがたい反面、ドキドキしてる。