Seelen wanderung~とある転生者~   作:xurons

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急ですが、今回でsao編は終了です。
次回からは少しオリ話を挟み、ALO編に続ける予定です


終わりは突然に

 

 

それは本当に、狙ったんじゃないかと言える位突然の事だったと断言出来る。

 

 

【––2024年11月7日、ゲームはクリアされました–––】

 

 

…この世界が、ソードアート・オンラインという名の電子世界が、文字通り終わりを告げた。

ゴーンゴーンと重低音を轟かせる鐘の音と共に、このゲームは2年という長期稼働に今宵、終止符が打たれたのだ。

その事実に、アインクラッド全土が歓喜に震えた。抱き合い喜ぶ者、グッと拳を突き上げる者、泣きじゃくり歓喜する者。形は違えど、生き地獄からの脱出を喜ばないプレイヤーは居なかった。

…が、問題がそれには一つあった。それが告げられた時刻と場所だ。第75層のボス部屋…第三クォーターポイントであり、正に今日ボス部屋攻略へ踏み込んでいた最前線。

後1年…いやもしかしたら半年かもしれない。日に日に天へ階層が近づく程、人々の興奮は隠しきれないモノになっていった。第100層を攻略し、現実に戻れる時も近いかもしれない、と。……が、

 

「…茅場 晶彦。それがお前の本当の名前だ」

 

その微かな希望は、黒尽くめのとある剣士が言い放った言葉によりいとも容易く握り潰された。

この世界…ソードアート・オンラインそのものを創り上げた人物、茅場 晶彦が=血盟騎士団団長ヒースクリフである事がその場のプレイヤーに曝され、非常な真実として彼等の…特に彼を慕っていた配下のプレイヤー達に多大なる震撼を与えた。

だがそれを知らぬ者…その場に居なかったプレイヤー達にこの事実が漏れる前に、茅場はその事実を隠蔽しようとプレイヤー達をGM権限による麻痺毒を与え縛り、記憶を奪い取ろうとした。だが、

 

「…フン。随分なザマだな貴様ら」

 

一人のプレイヤーの出現が、茅場の行動を寸前で止めた。そのプレイヤー…レイの出現は、永らく攻略から姿を消していた攻略組みにとっては久々のご無沙汰だった訳だが、そんな事は後回しだと彼は言い放ち、ヒースクリフこと茅場が繋がっているという真実を暴露したのだ。

そして彼は、更なる事実を聞かされ驚愕を通り越して最早呆然の一同を横目に、茅場にこう言い放った。

 

「…もうあんたの道は飽きた。これから先は俺達の手で切り開いていく。だから茅場、」

 

‘‘あんたを殺し、ここから出て行ってやるよ’’

言の葉が皆に伝えた響きはとても冷たく、尚且つ薄ら笑いを浮かべ狂乱の色を宿した紅い瞳を持つ青年を、弱冠16歳の少年とは誰も信じはしないだろう。

それは宣言を受けた茅場も同意義。何せ今から自らを殺すと宣言した少年が、持てる力全てで消しに来るからのだから、それはそれは心中穏やかでは無い筈だ。しかし、

 

「…フッ、良いだろう。私を倒せば、生存している全プレイヤーがログアウト出来る」

 

茅場はそんな感情など御首にも出さず、レイと同種の微笑すら浮かべ、文字通り命を賭けた殺し合いを行う事に同意したのだ。その瞬間、レイの眼が奇妙に鈍い赤と黒を放つ六芒星模様へ変貌した事に気がついた者は、その場に居なかった彼の最悪人を除けば、片手で数えられる程しかいまい。

 

「…決着の時だ。茅場 晶彦」

 

…茅場 晶彦は死んだ。壮絶なる激戦となったレイとの決闘に破れ、かつて尊敬していた先輩の倅である彼に看取られながら。そして話は冒頭に戻るという訳だが…

 

「……」

 

目の前で淡い硝子片へと散った彼を前に、レイは無言で立ち尽くしていた。泣く訳でも愚痴を言う訳でもなく、ただ…立ち尽くしていた。

その広いとは言えない後ろ姿を、その場にいたプレイヤー達は文字通り目に焼き付けた。虚無に浸るという計り知れない感覚を、今正に少年が味わっているという酷な事実から眼を背けぬ様に。

そして数分後、世界は眩い光に包まれた–––––

 

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

 

 

 

(……ここ…は……何…処…だ…?)

 

俺があの世界で光に包まれ気を失い、次に瞼を開けた時、初めに思い浮かんだ言葉ソレだ。

まだ微睡みから抜けない頭を動かそうと励むも、返って来たのは節々から伝わる痛みと、鼻から吸い込んだ鉄の匂い。そして…

 

「…あ……」

 

頭に被せられたナーヴギアと酷く掠れた小さな声。それが己のモノと気づくのは、力がまるで入らない体とは裏腹によく動く眼で視線を左右を行ったり来たりさせた後。

そしてそんな俺を見た近くの看護師が大丈夫かと俺の意識浮上を聞き、それに碌な返事も出来ないままコクコクと頷き肯定の意を示す。

 

(…帰って、来たんだな…)

 

2024年11月27日日曜日13時45分、レイの名を持った電子の青年は、主の奏魔 零の元へと還った。

そして後々、俺を含むSAOプレイヤーの帰還に各地の病院が騒がしくなるのは言うまでもない。

 

 

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