葬送のフリーレンに転生した一般人の話   作:Revak

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第1話

 世界に生まれ落ちた時。この世で自我を得た時に。始めた得た感情は"恐怖"だった。

 それは死に対する恐怖。死にたくないと願う畏れ。

 

 そして次に感じたのは怒り。不快感。嫌悪。あらゆる負の感情を認識した。

 

 

 そして世界を認識した。ここが物語の世界なのだと。

 

 ただただ不快に思った。"物語の世界に転生した! "等という享楽的な感情は無かった。ただただ怒りを感じた。

 

 親を殺した。父の頭部を踏みつぶし、母の腹を引き裂き中の妹を殺しても。不快感は消えなかった。

 

 騒ぎを聞きつけた村人がやってきた。中には剣を携えた者もいた。

 

 全員殺した。すべて殺し、村に火を放ち燃やした。不快感は消えない。

 

 

 自らを友人などとのたまっていた亡骸が発した言葉を思い出す。

 

 

『断頭台のアウラが、軍と衝突したらしい』

 

 

 ──ここは。"葬送のフリーレン"の世界だ。

 

 

 

 

 葬送のフリーレン。原作マンガ既刊12巻。アニメが2023年九月に放送され全28話という二クール連続放送された作品。

『アウラ、自害しろ』や『ヒンメルはもういないじゃない』等の語録が作られたりアニメ放送によってファンアートが急激に増えるなど……

 まぁ要するに。人気アニメという訳だ。実際自身もアニメを見たりXを見たりして楽しんでいた人間の一人だ。

 

 だが、所詮は文字の羅列であり絵の集合体であり人間の妄想の産物に過ぎないはずだった。

 

 

 

 何故だ。何故自分はこの世界に転生した?

 

 

 そもそも論。この世界はなんだ? アニメ版か原作版を元にした"葬送のフリーレン"の世界なのか? あるいはこの世界があることで原作者が電波か何かの形で受信して"葬送のフリーレン"という作品の形として世に送り出したのか?

 

 

 仮に、これが前者である場合。自分はただの神の玩具に過ぎないということになる。

 

 

 不快だ。何をもって人間をオモチャにしている。何の権利があって人の人生を狂わせている?

 人が用水路で魚を拾うのと同じ? 縁日の金魚を金魚鉢に居れるのと同じか?

 あぁなるほど確かに。住まう場所が変わるだけだろう。

 

 だが拾われた魚はどう思う。故郷から、住んでる場所を無理やりに変えられてどう思う。

 

 人間は魚や犬や虫などではない。知性があり感情があり理性がある。

 

 無論仮に存在するならば神という存在にしてみれば余りにも小さすぎるのだろう。

 

 故にこそ弄ばれる。玩具として扱われる。

 

 

 ならば自分のすべきことはなんだ?

 

 

「よし。この世界を壊そう」

 

 

 そうと決めれば後は実行するだけだ。今が原作開始の何年前か把握したのち。フリーレンを殺す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 勇者ヒンメルの誕生。×××年前。北側諸国。何処かの森。

 

 

 

 そもそも論。この世界は何なのかという話だ。

 創作物の世界が現実になったのか。この世界があるから"葬送のフリーレン"という作品が生まれたのか。

 

 まぁどちらにしても、だ。自身がこの世界に居るということはこの現象──転生か何かをした存在が居るのは確かだ。

 それが作中で名前だけ出ている"全能の女神"なのか。どっかの魔族なのか。それはわからない。

 

 だが仮にそういった転生させたモノがいるのならば。それらが嫌がることをしよう。

 

 つまり──原作の崩壊。

 

 勇者ヒンメル。僧侶ハイター。戦士アイゼン。魔法使いフリーレン。魔法使いフェルン。戦士シュタルク。

 

 

 それらを殺す。

 

 無論直接戦闘をすれば負けるのはこちらだ。勝ち目などない。

 であれば。直接戦わなければいい。

 

死の病を流行らす魔法(ペスト)

 

 森で見つけた鹿に魔法をかける。

 

 結果は成功。見た目上の変化は無いが魔法は成功している。これで死の病に完成した鹿の誕生だ。

 魔法名の通り。効果はペスト──とは名ばかりの感染した人間を絶命させるだけのくだらない魔法だ。解除も容易い。

 だがこの魔法の利点はかってに感染して増殖するというところだ。術者である私以外の全てに感染し人間だけを絶命させる。

 鹿。牛。野良犬に野ウサギに魔物に虫に。あらゆる手段をもってして病は広がり。人間にだけ牙をむく。

 

 無論この程度では人類は絶滅等しない。女神の魔法とかいうクソ魔法のせいで現代医療? 知らない子ですねなこの世界では伝染病は流行り得ない。

 だがそれでも、多少の労力を割かせることは出来る。

 

 本当は赤い目の病を作れればよかったのだがさすがに神の領域の魔法は如何に想像力が魔法な世界でも出来なかった。

 

 赤い目の魔法さえ完成すれば勝手に人類も魔族も絶滅するのだが……流石にそこまでうまくはいかない。

 

「さて。後は……」

 

 勇者ヒンメルが活動するまで。力を蓄えるとしよう。

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 勇者ヒンメルが魔王討伐の旅に出て二年後。とある村で。

 

「勇者様。この度は助けていただき誠にありがとうございます」

 

 村の中で一番大きい家。村長の自宅に勇者一行──ヒンメルたちは訪れていた。

 村に襲い掛かって来た魔物を倒したヒンメルは。何時ものように銅像を作って貰う約束をし。それとは別にお礼がしたいと村長に言われ家に誘われたのだ。

 

 

「ささやかながら。お食事を用意しました」

 

 

 どうぞご堪能ください──と村長とその奥方はほほ笑む。

 

「いやぁありがとうございます。このように食事まで用意していただけるなんて……」

 

 一同の一人。僧侶が礼を言う。

 

 そして、誰ともなく神への祈りを捧げ。食事を始める。

 

 一口。二口目で異変が起こる。

 

 全員が。がたんと。ねじが切れた人形の様に倒れ伏した。

 

 即座に。村長が懐からナイフを取り出す。

 

 村で使うようなモノではない。切れ味に特化させた特注の刃だ。

 

 村長はフリーレンに近づき──

 

「それは辞めてもらいましょうか」

 

 眠っているはずの男の声に。村長が動きを止める。

 

 その一瞬で充分だった。

 

 ハイターは即座に聖典から魔法を行為し全員に盛られた睡眠薬を解除する。

 

 ヒンメルは直ぐに起き村長のただならぬ気配に即座に腰から剣を抜き剣を突き付けた。

 

「どういう──」

 

 言葉を最後まで言い終える前に。村長の体が歪に膨らんだ。

 

 

 自爆する魔法(インプロージョン)

 

 

 

 

 

 村長の家が吹き飛んだ。

 瓦礫の雨をヒンメルは剣を振るうことで凌ぎ。戦士アイゼンはただその身で耐え。ハイターはアイゼンの後ろに隠れることで防ぐ。

 フリーレンはよくわからぬまま魔法で防いだ。

 

 ハイターは何もせずに堪えたアイゼンにドン引きした。

 

「……何があったの?」

「わからない」

 

 フリーレンの問いにヒンメルが答えるもその答えは曖昧。

 

「何か聞こえないか?」

 

 アイゼンが言う通り。遠くから何か聞こえることに一同は気づいた。

 

「これは……歌?」

 

 ハイターが言う通り。それは歌だった。

 

 

 

 

「やっとこやっとこ」「繰り出した~」

 

 それはある種の不協和音。無理やり歌に仕立て上げたかのような聞くものに純粋な不快感を与える声。

 

「オモチャのマーチがらったった~」

 

 男の声で。女の声で。幼い子供の声で。歌が紡がれる。

 

 そして──村が燃える。

 逃げ場を与えないように。背水の陣を敷くように。村の家々が燃え。畑が灰となっていく。

 

「人形兵隊」「勢ぞろい」「おうまもわんわもらったった~」

 

「正気じゃないな。この人たち」

 

 ヒンメルが言う通り。村人たちの目は虚ろであった。

 

 両目をかっぴらき。ここではない何処かを常に見つめ。眼球はギョロギョロと動き回る。

 

「いざ」「尋常に」

 

 

 村人たちがその手にナイフを握りしめ。勇者一行に襲い掛かった。

 

 

 

 

 ■

 

 

「……なんだったんだ」

 

 数分後。残ったのは村の跡地だった。

 先程まで穏やかに笑っていた村長夫婦も。勇敢に魔物に立ち向かおうとしていた青年も。既に居ない。

 

 死体一つ残らず。全員死んだ。

 

 ヒンメルが無力化しようと剣を振るえば。傷など知ったことかと無理くり動き死に。

 アイゼンがその膂力で押さえつけようとすれば関節が壊れようが骨が折れようが構わず動き死に。

 魔法で拘束でもしようものならされる前に自爆する。

 

 まるである種の一つの生命体の如く連携した動きで勇者一行に襲い掛かった村は。最終的に全員の自死という形で襲撃が終わった。

 

「……どうする。寝るところも無くなったが」

 

 アイゼンが村だったモノを見ながら言葉を発した。

 

 予定調和の如く。村人たちが勇者たちを襲うと同時に村に火が付き燃えて回った。

 何かしらの炎上を促進する物質でも使われていたのか。火は恐ろしい速度で村を燃やし尽くした。

 

 だが何よりも恐ろしいのは。それら一切気にすることなく。自らが炎で焼け落ちるのも関わらずに勇者一行を殺さんと憎悪を目に襲い掛かった村人達。

 

「……とりあえず。村の周囲を見て回ろう。誰か生存者がいるかもしれない」

 

 

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