あべこべ貞操逆転世界で七光り役者生活   作:関税破産お嬢様

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アメリカの関税で破産したので、流れた血涙で小説を書きました。


貞操逆転世界に生まれて

男が少なくて女が多い世界と言うと、なんだか夢のような事を考える人も多いかもしれない。

何もしないのに女にモテモテとか、とっかえひっかえのハーレム生活とかだ。

なぜか前世の記憶を持って男に生まれてきた俺も、最初はそういう生活を夢見ていた。

俺の過ごした令和の日本じゃ男と女の数は一対一、その割に男はクズみたいな扱い。

そこにきてこんな夢のある世界に転生したわけで、俺TSUEEEEだ、イージーモードでモテモテ生活だ、そう夢見たって仕方がないだろう?

 

「委員長、最後の文化祭だしさ。今年は俺にも何か手伝わせてよ」

「あー、でも何もないかも」

「ほら、力仕事とかもやるし」

「うちのクラス、ラグビー部のみんなもいるから大丈夫。ありがとね八代くん、気をつけて帰ってね」

 

まぁ実際はそうでもなく、普段の授業はもちろん文化祭の準備なんかでも最後まで輪に入る事はできず。

家の方針で入ったエスカレーター制の中高では結構浮いた存在というか、半ば腫れ物扱いだった。

今や男女比は一対九を割り、人工授精で生まれてくる子どもが九割九分のこの世界。

まぁ考えればそりゃそうだろうって感じだが……

世のほぼ全てのご家庭は、ママとママの婦婦(ふうふ)が切り盛りする家庭なのだ。

その割に精子保存技術が低かった頃の法令がまだ残ってて、男は二十五歳までに四人の女と結婚をしなければならなかったりとか、精子の提供義務があったりとか、色々と不平等なわけだ。

そんな異性愛者がマイノリティになった中学高校に放り込まれた、社会から散々割を食わされている男という異物。

年若い女の子たちに相手にされると思うか?

まぁ、イジメの対象にならなかっただけラッキーと思うしかないわな。

そんなわけで、無事志望校の大学に進学した俺だったが……

そっちでもバッキリクッキリ女っ気のない生活を送っていた。

 

「お願いします! 吉岡さん! 俺と付き合ってください!」

「え? ごめん?」

 

必修の授業で一緒だった銀縁眼鏡の吉岡さんは、俺の一世一代の告白に特に申し訳そうでもない態度でそう返した。

俺が進学した東京東京(ダブルとうきょう)大学は、医学部から家政学科までもを内包する結構なマンモス大学。

俺がいるような学部は偏差値五十ちょい程度だが、上の学部は七十とかのとこもあるらしい。

学部も多けりゃ人も多い。

そして人が多いという事は、中高にはいなかった異性愛者もいるというわけだ。

そう思って「これは」と思った人に対して果敢にお付き合いを申し込んでいるわけだが……

結果はこれで三戦三敗だった。

 

「ど、どうしても駄目ですか?」

「男の人はねぇ……申し訳ないけど、対象外」

「やっぱり、女の人じゃないと駄目?」

「ごめんなさいね……」

 

俺は、また振られた。

それも完膚なきまでにだ。

 

「しずえもーん!!」

「何だい透くん」

 

今もなお男だけが入部できる聖域である、相撲取りなんか一人もいない名ばかり相撲部。

居場所のない男が集うその部室で、俺は大学でできた友達の三橋(みつはし)静流(しずる)に泣きついていた。

黒髪をセンター分けにして眼鏡をかけた痩身の彼は、情報系の学部に通っている同級生の十八歳だ。

彼は部室の壁に背をもたれさせながら、カーキ色のワークシャツの腹に漫画の尻を乗せてゆるい返事を返す。

 

「また振られたよ!」

「だからさぁ、僕たち男はマッチングアプリ使ったほうがいいって」

「マチアプなんてブスかババアばっかりじゃん!」

 

男は二十五歳までに四人と結婚しなければいけない。

そういう法律があるためか、この世界には国営のマッチングアプリというものが存在していた。

とはいえ、国の厳しい審査を乗り越えてまで男で妥協する人間というのは、言ってしまえば女に相手にされないような相手というか……

事情があって婚期を逃したか、婚期を逃す理由があるか、といった人たちになるわけだ。

 

「うちの奥さんみたいに綺麗な人もいるよ」

「しずえもんは美人と出会えたからいいよなぁ!」

 

当然中には顔も性格もいいという相手もいる。

だがそういう相手は一瞬で売れていくのが現実。

俺の相手をしながら相撲漫画から視線も外さないしずえもんは、そういうSSR(スーパースペシャルレア)を引けた人間なのだ。

 

「だいたいさぁ透くん、同性愛者の女が男なんか相手にするわけないだろ?」

「クソッ! 女なんかの何がいいんだよ! たしかにエロくて綺麗で可愛いけどさぁ!」

「そういう事だけじゃなくて、生涯年収が違うって話」

 

しずえもんの言う通り、男というのはとにかく金を稼げない存在だ。

男女比一対九のこの世界、男は以前まで占めていた重要なポストを全て女に奪われていた。

世の中に出ても仕事もなく、四人の妻を娶ったらご褒美として生涯月十二万円の捨扶持を頂いて精子を提出するだけの機械、それが男だ。

頑張れば頑張るだけ稼ぎが良くなって暮らしが良くなる女たちからすれば、男なんかの面倒を見るのは貧乏くじ。

維持費のいらないペット扱いだが、人権があって文句を言う分本当のそれらより劣るといったところだろうか。

 

「一回マッチングアプリで誰かと会ってみなよ、結構いい人多かったよ。全員三十超えてたけど……」

「俺達まだ十八だろ、もっと夢を……夢を見たいよ……しずえもん……」

 

俺が相撲部のカーペットに膝をついてそう言うと、しずえもんはようやく漫画から目を離し、俺の肩をポンと叩いた。

 

「なら金稼ぎなよ」

「一応うち、実家が太いから金はあるんだよ……」

「知ってるよ、八代芸能だろ? でもさ、女はシビアだよ。稼いだ金額も見るけど、それよりもそいつが稼げる人間だって事を重視するのさ」

「稼げる……人間か……」

「透くんはさぁ、顔がいいし背も高いから、テレビとか出してもらったら?」

「え? 芸人とか?」

「じゃなくて、実家の伝手があればエキストラの口とかあるんじゃない?」

 

つまり、役者って事か。

うーん……考えた事もなかったなぁ……

 

「それにさ、そういうので露出すれば、ファンとかつくかもしれないだろ?」

「えっ? つくかなぁ……」

「男の役者なんか少ないから、異性愛者に刺さるかもしれないよ」

 

つまり、金を稼げて、かつモテるチャンスもできると……

 

「しずえもん……天才か?」

「天才じゃないけど、君とは偏差値が二十は違うね」

 

そう言いながら、しずえもんは形のいい頭をトントンとつついた。

俺はその整った髪を手でワシャワシャとかき乱す。

しずえもんはやめろーと言いながらも抵抗できない、彼はマジのガチのもやしなのだ。

 

「ありがとう、しずえもん」

「まぁ、あんま大した事言ってないけど、頑張ってよ」

「ああ、俺は役者になる! 爺ちゃんのような大役者にな!」

「透くんのお爺ちゃんって役者だったの?」

「なんかピンク映画の役者から監督になって、興行師の家の女と結婚して巨万の富を得たって聞いた事あるわ」

 

それが我が家の稼業八代芸能の始まりだったはずだ。

まさに家業というわけだ。

 

「まぁ、透くんちらしいわ」

 

しずえもんはそう言って、読んでいた漫画を枕に寝転んだ。

これから午睡でもするんだろう。

 

「じゃ、俺行くから」

「え? 午後は講義ないの?」

「役者なってくる」

 

しずえもんにそう言って、すぐに大学を後にする。

俺は前世から、こうと決めたらその日のうちに動く(たち)だった。

 

 

 

役者になると啖呵を切ったからには、役者にならなければいけない。

という事で、俺はすぐさま叔母である八代芸能の専務に泣きついた。

要するに、実家の芸能事務所で七光りまくって芸能人になろうというわけだ。

そもそも祖先が役者、叔母の(あおい)さんもクールビューティという言葉を体現したような黒髪長身の美人。

……という事からわかるだろうが、俺はそこそこイケメンで、そこそこスタイルが良いのだ。

まぁ、学校では全くモテないんだけど。

 

「NG? なしで」

「無しっていうことは、濡れ場とかも撮らされる事になるかもしれないけど……」

「逆に『濡れ場大歓迎』ってプロフィールに書いとこうか?」

 

トントン拍子で決まった役者としての所属、俺は叔母のオフィスでプロフィールを作っていた。

一応叔母からは色々提案があったが、結局は役者として所属する事に決まった。

やりたいからというのもあるが、現実的には俺がギリギリやれそうなのがモデルか大根役者かってとこだったからだ。

八代所属のトレーナーに見てもらったが、歌は十人並み、ダンスは結構褒められたが、そもそもそういう分野は今人気すぎて飽和しかけているらしい。

この世界じゃ男っていうのはニッチな存在なのだ、わざわざ激戦区に飛び込んでいくのはバカバカしい。

存在そのものに希少性があるなら、聞き分けよくしていればエキストラでもなんでも使ってもらえるだろう。

 

「透、そんな事言ってたら本当にキツイ役やらされるよ?」

「そもそも新人なんだから仕事選べないでしょ?」

「うーん……透がいいならいいけど、ダメそうだと思ったらちゃんと断るんだよ?」

「もちろん」

 

さすがに死ぬような事とかはやりたくないしな。

とはいえ俺は何の経験もないずぶの新人だ、選んでいては仕事なんて来ないだろう。

その後も子供の頃から姉のように面倒を見てくれていた叔母にしきりに心配されながら、俺はなんとかその日のうちに実家の所属タレントになったのだった。

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