あべこべ貞操逆転世界で七光り役者生活 作:関税破産お嬢様
「ミキさん、追いかけてきて!」
「えっ!?」
ヤンは地面に落ちていた
そして警察車両を跳ね飛ばしてそのまま走り去ろうとしたスポーツカーのリアウイングに掴まった。
足元には
シュエ・イーは後ろにしがみつく俺を見て「チッ」と舌打ちをしてひび割れたフロントガラスを叩き割る。
……命綱をつけて後ろを走る特殊車両に吊られていたとはいえ、正直死ぬかと思うぐらい危険な撮影だった。
まぁ、その危険と引き換えにチャンスを掴むのがNGなし俳優という事なんだろう。
「ヤンさん! 危ない!」
シュエ・イーに右に左に振られながらも全く離れない俺。
そんな車の横を走るミキのイギリス車から声が飛ぶ。
画面ではシュエの操るスポーツカーが急ブレーキをかけ、後ろを走るトラックとの間に俺を挟もうとしていた。
「はっ!」
ヤンはぶつかる瞬間に後ろを向き、トラックの前面を駆け上がって挟まれる事を避ける。
そのままトラックのフロントワイパーにしがみついて耐え、再加速しようとするスポーツカーの上に飛び降りた。
だが勢い余って低いボンネットの上に落ちてしまい、そのまま割れたフロントガラスから車の中に飛び込む。
『お前、馬鹿か?』
シュエ・イーがそう言いながら拳を振るうのに、助手席の超至近距離でそれを捌く。
戦いながらも、シュエ・イーは片手でシートベルトを締めた。
『お前、馬鹿だ』
そう言って彼女は笑い、ブレーキを踏み込む。
車の中からふっ飛ばされたヤンは、道路をゴロゴロと転がって止まり、その隣にミキの車が停まる。
そしてその横を掠めて、シュエ・イーの車が加速していった。
ここはさすがにカットを割って、俺がやったのは道路をゴロゴロ転がるシーンだけだ。
「あ、このシーンは楽だな……」
と思ってしまった自分がちょっと怖くなったが、実際このシーンは楽だったのだ。
ここから先は俺が「もうすぐ春節だから」と言う監督に、短期間でむちゃくちゃ撮らされまくったアクションのオンパレードだ。
シュエ・イーを追うミキの車から他の車の上にジャンプしたり、まるで八艘飛びのように走る車たちの間を飛び越えたり、並んで走る二台の車の間に掴まってすり抜けてくるバイクをかわしたり。
そして港湾につけば積み重なるコンテナの上に這い上がり、そこに回ってきたミキの運転するクレーンの先に掴まって出港中の船の上に飛び乗った。
もちろん、安全には配慮されている、ということにはなってるが……
そんな事で安心できるなら、スタントマンの廃業はないのだ。
しかし最初はビビっていた俺も、どんどん慣れていったというか、感覚が麻痺していったというか……
最後の方は高速で船の上を掠めるクレーンの上から飛びながらも、もはや何も感じなくなっていたのだった。
爆光のライトで照らされる小型貨物船の甲板。
そこでヤンとシュエ・イーは向かい合っていた。
『本当に……しつこい男だ……』
『…………』
『お前を倒して、私は国に帰る』
『そして、また殺しますか?』
『それ以外にどう生きられる』
傷だらけの彼女は、同じく傷だらけのヤンに静かにそう言った。
そして、同じ刃を持つものたちは、同じ構えを取った。
違うのは表情だけだ。
シュエ・イーは顔に静かな笑みを浮かべ、ヤンは悲しげな顔を彼女に向けた。
『はいっ!』
一分ほど打ち合ったところで、シュエ・イーはまるで鉤爪のような形に開いた指で、虎のような動きでヤンの胸を裂いた。
『母と妹は伝統に固執していた。その妹の秘蔵っ子であるお前に他流の技は躱せまい』
次いで地面を這うように飛び込んだ彼女は、まるでカポエイラのように地に手をついてアクロバットな足技でヤンを襲う。
その次はレスリングのような鋭いタックルを行い、崩したヤンの腕に飛びつき柔術のように極めようとした。
ドン!!
その瞬間震脚が鳴り、突き出された拳と共にシュエ・イーは吹き飛ばされる。
そしてそのまま地面にへたり込んだ彼女は、ゆっくりと近づくヤンから遠ざかるように這いずった。
『他流、いりません』
そう語りながら近づくヤンの頬を、銀線が襲う。
血を垂らしながら一歩下がった彼が見たのは、紐のついた小刀……
『はいっ! はっ! しゅあっ!』
気合の声と共にじりじりと近寄ってくるシュエ・イー。
ヤンの後ろは船のヘリで、下がるごとにだんだん海へと近づいていく。
彼はふうっと息を吐いて、ゆらりと揺れた。
首へ向けて鋭く打たれた
ドン!!!
そして震脚の音が鳴った時には、シュエ・イーの顎を俺の拳が撃ち抜いていた。
『ありがとうございます』
顔面から甲板に落ちて倒れ込んだシュエ・イーに向けて、ヤンは抱拳礼を向けた。
もちろん、女優さんを本気で殴るわけにはいかないから、ここはカメラ割りだ。
監督が「
船から場面は代わり、空港のシーン。
カンフー服の上に色褪せたジャケットを着たヤンは、日本で出会った人たちに見送られていた。
「ヤンさん、今回は本当に世話になった」
「伊藤さんも、色々、無理聞いていただきました」
そう言ってシュエ・イー対策部を率いていた伊藤と握手をし、互いに頷きあった。
ヤンは次に、華僑の子女たちに向き合った。
「ヤンさん、妹の仇を捕まえてくれて、本当にありがとうございました!」
「あなたたちのおかげで犯人を捕まえられました、ご協力、感謝します」
先頭にいた
泣き始めてしまった彼女は仲間たちに支えられ、ヤンはその姿に優しい目を向ける。
そんな彼が次に向かい合ったのは、カンフー服の集団の先頭にいる
彼女たちの抱拳礼に抱拳礼を返し、ヤンは笑いかけた。
「あなたとても筋がいいです。もし中国来ることあれば、うちの道場ぜひ来てください」
そう言ってヤンが名刺を取り出すと、白ギャルはそれを受け取って頭を下げた。
そして最後にヤンが向き合ったのは、ツンとした顔のミキだ。
「デレデレしちゃって」
「ミキさん、デレデレしてないですよ」
「あたしにはそれ、くれないんですね」
白ギャルの持った名刺を見ながらミキがそう言うと、ヤンはちょっと困った様子で親指と小指を立てた手を耳に当てた。
「ミキさんはもう電話番号知ってるでしょう? いつでもかけてください」
ちょっと焦った様子の彼を見て溜飲が下がったのか、ミキは笑顔を浮かべて手を出した。
その手を、ヤンがしっかりと握り返す。
「ヤンさん、今度は観光で来てください。日本にはまだまだ美味しいおまんじゅうが沢山あるんですから」
「はい、また来たいです。その時はミキさん、あの車で迎えに来てくださいね」
その言葉にミキが「もちろんです!」と答えるとヤンは笑顔を見せ、それから何かを思い出した様子で「そうだ!」と言った。
「さっきそこで美味しそうなおまんじゅうを見つけたんです、ミキさんも食べますか?」
そう言って胸ポケットからバナナ型の菓子を取り出したヤンの笑顔の絵で画面は止まり、スタッフロールが流れ出す。
一番上はシュエ・イー、次は白ギャル、次は
十番目ぐらいに俺の名前があって、なんだかちょっとホッとした気がした。
ずっと画面に自分が出ていたのに、現実感がなかったのだ。
その後は実態はほぼ監督のパワハラシーン集であるNG集を見ながら知っているスタッフさんの名前を数え……
『武術指導 金劉会』というクレジットの少し後に出てきた監督の名前が中央に止まって映画が終わった。
そして電気がついた瞬間、左右から肩を叩かれた。
「透くん!」
「透!」
左は七瀬、右はサーダだ。
初上映となる今日、一応他の同期も誘っていたのだが……
あいにく都合がついたのはこの二人だけだった。
そんな二人は目をキラキラさせて、俺の肩を掴む。
「すっごいかっこよかったよ!」
「めちゃくちゃおもしろかった!」
まばらに退場していく客が微笑ましそうな顔でこちらを見る中……
俺はそんな率直な感想を言ってくれた二人に、抱拳礼でお礼を伝えたのだった。
まとめブログ
なんでも実況B
「似通う刃」上映館数二十館から始まった大ヒット、今あえてカンフーを撮る理由とは?
223:雨降れど名無し ID:26BtP9gQ2
ガチガチのガチのアクションでビビりましたわ!
224:雨降れど名無し ID:zzfvXFPLA
監督「本来ヤンは途中で退場する役だったけど、才能を見込んで私が出番を増やしました」
有能すぎませんこと?
226:雨降れど名無し ID:g10vIec1o
>>224 私もブレイクしてない天才役者さん連れてきて、私が育てたって言ってみたいですわ……
228:雨降れど名無し ID:lRNLIzUuf
実際明らかに事前リリースだと
232:雨降れど名無し ID:xz9X3Rasz
>>228 どっちもモブにしてしまうヤンお兄様……凄まじいですわ
234:雨降れど名無し ID:qeoxPFh3q
でも別にさ、あんな新人の男俳優見に映画館行くやついないだろうし、実際に客呼んでんのは金田狂夢、工藤京子だと思うよ。
236:雨降れど名無し ID:krkU3E8I9
>>232 リピーターが凄いんですわよ
237:雨降れど名無し ID:qeoxPFh3q
>>236 リピーターなんかたかが知れてるし、最初の一回見てもらわないとリピーターもクソもない。男の俳優じゃ客呼ぶのは無理だよ。名前だけ使われて監督に勝手に出番潰されて、実際二人も怒ってるんじゃないかな
240:雨降れど名無し ID:7m8N7Ar5c
>>237 で、あなたは見られたのかしら?
244:雨降れど名無し ID:qeoxPFh3q
>>237 カンフー映画なんか見るわけないだろガキじゃあるまいし。この男の俳優も頑張ったんだろうけど、この一発で干されて終わりだね
246:雨降れど名無し ID:Hr73Cezmi
>>244 八代芸能が
248:雨降れど名無し ID:qeoxPFh3q
は? 調べたらこいつクソ七光り俳優かよ! こんなの使ってるから邦画は終わってんだよ
253:雨降れど名無し ID:5IpUAnACH
>>248 ハリウッドで映画取ってる中国の監督が「この人使いたい」って言ってたらしいから、今後の立ち回り次第ではマジで邦画出ない可能性あるんだよなぁ……
256:雨降れど名無し ID:8TN491Obc
あんな動ける男の俳優とかハリウッドにもそうそういませんし
260:雨降れど名無し ID:8ePfdpa+j
ヤン様、俳優なのに武道雑誌で特集されて、出版社が完全にパンクしてましたわね
261:雨降れど名無し ID:sgLt3oHVR
>>260
264:雨降れど名無し ID:512ojSTW5
>>261 まぁでもどうなんでしょうね? 八代透がインタビューで「マジで映画で学んだだけの素人です」って言ってたけど本当だと思うかしら?
267:雨降れど名無し ID:sgLt3oHVR
>>264 武術自体が素人ってわけじゃなくて、中国拳法を映画のために勉強したって事だと思ってる。実際それで金劉会に入門希望者殺到してるし。
270:雨降れど名無し ID:yqYdLPHGQ
>>267 どういう事でして?
272:雨降れど名無し ID:sgLt3oHVR
>>270 映画のための促成栽培であのレベルまで持っていけるんだから、金劉会には凄い指導者がいるって事。八代透も指導員に名を連ねてるから、当然あの人が凄いって事もあるんだろうけど。
274:雨降れど名無し ID:xQp/u/ngg
>>272 金劉会に入ればヤン様の指導を受けられるって事かしら!?
275:雨降れど名無し ID:sgLt3oHVR
>>274 格闘技スレに散打系の大会出てる人が書き込んでたけど、金劉会の人も八代透の事知らなかったらしいよ。なんなら映画で初めて見たんじゃないかな?
276:雨降れど名無し ID:BT7JAGf7c
おまんじゅうのCMとかなさらないのかしら? 美味しそうに食べられるからいいと思うのだけれど
278:雨降れど名無し ID:7CVGg8Nuc
>>276 ほんとに需要があったら八代芸能が売り込んでますわよきっと
283:雨降れど名無し ID:eaK4G67UR
八代芸能の御曹司とかいう無敵の看板……安心感しかありませんわね……
287:雨降れど名無し ID:lUNL5sFM0
枕とか絶対なさそう
291:雨降れど名無し ID:+Mr5vvw2Z
ヤン様が脂ぎったおばさんに……それはそれでアリ
294:雨降れど名無し ID:bK8fcTvJP
実際枕とかってあるの?
295:雨降れど名無し ID:cgOs6FEod
>>294 女の枕は聞いたこともありますけど、殿方の枕なんて聞いたことありませんわね
300:雨降れど名無し ID:OEafFdb+H
>>276 先に唐揚げのCMに出てほしい……
引用元://OBAch.bb/
海外の反応まとめ
中国人「日本に野生の達人が現れた」 中国人「ほんと中国人」「うちの親戚かも」
「公開が開始されたばかりの日中合作映画にとんでもない武術の達人がいる」という記事が中国版
この道場での約一分半の散打に武術の全てが詰め込まれている。伝統武術は中国を離れ、日本の地で完成を見た。この中国人は一体誰なのか?
雷雷動画リンク↓
■パンダさん
この映画、姪と見に行きました。アクションは良かったがドラマはやや退屈、点心は美味しそうだった。
■コアラさん
はははは、なぜ点心?
■うさぎさん
この映画の達人は酒のかわりに饅頭を食べます
■サイさん
酒蒸し?
■モルモットさん
うちの祖母が大興奮で毎日映画館に見に行っています。私にあの男を婿にしろとうるさい。
■たつのおとしごさん
彼は金持ちの家のようです
■カニさん
姉妹が伝統的な武術をやっているけど、あの手合いは男性の方は本当に伝統的な技しか使っていないようです。彼女は総合格闘技化する中国武術を憂いています。
■テンジクザメさん
はははは、伝統武術ではお金が稼げません
■マングースさん
散打戦なら大きなお金が動きます。でもこういう映画に出れば話は違うかも
■テナガザルさん
この映画もどんどん人気が出て公開規模が大きくなっていますし、本当にそうかもしれない
■シロネズミさん
あの青年は本当に中国人のようです、日本ではなく中国で活躍した方がいいのでは
■ヘビさん
彼はうちの親戚です。近々撮影のついでに訪ねてきてくれるようです
■もぐらさん
はははは
■ぶりさん
彼はチャーミングですが、発音はどう考えても中国人のそれではありません
■ねこさん
誰もあの文化財のような一分半について語ろうとしない。中国の武術離れもここまで進んだか
■とりさん
見てもよくわかりません
■ねこさん
冗談を一度も言ったことのないうちの老師が、映画を見てから「館を彼に譲ろう」と言いました。彼女の七十年はあの一分半に負けました
■くまさん
どうせ合成、ワイヤーが入っています
■ねこさん
ありえません。あれは本物です。分かる人にはわかります
■うしさん
日本の点心が美味しそうな事はわかりました
引用元:紅原書