あべこべ貞操逆転世界で七光り役者生活 作:関税破産お嬢様
京都にて行われたほんのちょっとの撮影。
昼から三時間程度で仕事を終え、辺りは夕暮れに差し掛かろうかという時間帯。
役者組はメイクを落として服を着替え、都合のつく人はこれから京都で食事でもしようかという話になっているようだった。
「お疲れ様でしたー!」
そう言って車に戻ろうとした俺にも、魔法使いケレン役の個性派役者、
「透くんこれからどこ行くの? 脚本さんの弓削さんたちと湯葉食べに行かないかって話してたんだけど……」
カメラが回っていない時もどこかユーモラスな彼女は、ニコニコしながらスマホで店の情報を見せてくれる。
「いやー、行きたいぃー……んですけど、ちょっと次呼ばれてて」
「あ、そうなんだ? 撮影?」
「いやぁ、これで……」
俺がちょんと拳を突き出すと、彼女はあぁーっと声を上げる。
長野だからな、今から出ないと予約したホテルに入るのもちょっとギリギリなのだ。
俺は彼女に片手チョップをして詫びながら、車の方へと向かう。
……と、車の前には意外な人物が待っていた。
「あれ、ピリカ先輩? 何かありました?」
「ちょっと、用がありまして」
オーバーサイズのTシャツに黒いジーンズ、その足元にでっかいバッシュを履いたピリカ先輩は、澄まし顔でそう言った。
夏休み中だしこの後観光でもする予定なのか、今日は親御さんの車で来たという彼女は大きなカバンを持ってきているようだ。
彼女はその中から何かを取り出し、俺に突き出した。
「透さん、これにちょっとサインしてほしいんですけど」
サインペンと共に突き出されたのは、二冊のパンフレット。
表紙に映っているのはよく見知った女優たち。
そう、それは俺の出た映画「似通う刃」のものだった。
「あ、パンフレット、買ってくださったんですね! ありがとうございます!」
「うちの母たちが見に行ったんですけど、サイン貰ってって頼まれて、仕方なく……」
彼女がちらりと顔を向ける方向では、妙齢の女性たちがこちらに会釈をしていた。
あ、あれが先輩の親御さんか。
「あ! どうもどうもお世話になっております……」
「行かなくていいですから!」
俺がそちらに行って挨拶をしようとすると、なぜか顔を真っ赤にしたピリカ先輩に服を掴まれて止められた。
友達に親と話されるのが恥ずかしいのかな? まだ中学生だもんな。
とにかく俺は彼女からパンフレットを受け取り、ほとんど書いた経験のないサインを書く事になった。
「お名前はどうしましょう?」
「二冊とも『
「えっ? 二冊ともですか?」
「いいですから」
まぁ、いいと言うのならばいいのだろう。
彼女はサインの済んだパンフレットを回収して、丁重に鞄に入れた。
「ありがとうございます」
「いえいえ、ピリカ先輩にならサインの百枚や二百枚」
「私に、じゃないですから」
彼女はそう言って、チョコチョコと効果音がつきそうな小さな歩幅で親御さんの元へと戻っていった。
そちらに手を振ると、親御さんもこちらに頭を下げる。
ピリカ先輩はそれに気づいてこちらを振り返ったりしているが、なんだか子供っぽくて微笑ましいな。
いや……頼りになりすぎる先輩だけど、そういやまだまだ子供だったか。
その日はいくつも自動車道をぶっ飛ばして長野入りし、ホテルの門限ギリギリにチェックイン。
運転の疲れを癒やすように爆睡し……
翌日の朝、高山トレーニングを行っている金劉会の合宿所に顔を出した。
宿泊施設に併設された体育館には、ご老人から小学生までの女性がずらっと並んでいる。
当然その中には金老師はもちろん、師範代である
久々に会った金老師にご挨拶をした俺は、その皆の前で師範代である
「八代透指導員です」
「八代透です、よろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げると、体育館中からぱちぱちと拍手が響く。
そのざわめきの中から「本物だ」とか「ヤンさんだ」とかいう言葉が聞こえたので、あの映画を見てくれた人も結構いるようだ。
結構なウェルカムムードだが、一部にはやはり勝手に生えた指導員に納得しかねている人もいるようで……
俺は色んな温度の視線にさらされ続ける事になったのだった。
「よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします」
指導員なんて言ったって、俺にできる事はたかが知れている。
基本の型しか知らない男に、まともな指導なんてできるわけがなく……
俺は次々と挑んでくる女性を相手に、きちんと防具をつけて優しい組み手を行っていた。
「はっ!」
みぞおちを目がけて突いてくる中年女性の拳を流し、肘を流し足を流し背中を流し。
相手がちょっと疲れたところで、ポンとお腹や背中を触って終わりにする。
「ありがとうございました!」
「ありがとうございました」
組み手をしたとてその後の指導ができるわけでもない、こんな指導員に意味があるんだろうか?
と思いながら近くに座っている金老師の方を見るが、彼女はニコニコするばかりだ。
そんな組み手を続けて一時間ほど。
だいたい全員回ったかなというところで、その女は現れた。
「ガチでお願いしますわ、センセイ」
なんだか舐めた態度でそう言ったのは、俺と同じぐらいの背丈の黒く日焼けした女だった。
防具もつけないその髪の毛は金髪で、剃り上げられたサイドだけが黒く残っている。
そして一番目につくのはその腕からタンクトップの胸元に続く彫り物だ。
銭湯には入れなさそうなその黒ギャルは、そんな事を言いながら俺に顔をめちゃくちゃ近づけてメンチを切った。
「……いやいや、防具は付けてもらわないと」
「あんたごときにゃいらないって言ってんすわ」
ニヤニヤと笑いながらそう言う黒ギャルに困った俺が
黒ギャルは彼女の方を見て、またニヤニヤと笑う。
「
「構いませんよ。完膚なきまでに負けるというのも、また修行です」
「だとよ、役者のセンセイ」
なんだかやる気満々の黒ギャルには申し訳ないが、怖いのは俺の方。
彼女がどれぐらい強いのかはわからないが、俺が傷害罪なんかで逮捕されたら今出ている番組にも迷惑がかかるのだ。
そんなやり取りを聞いていたのか、首にタオルをかけた白ギャルまでもがこちらへやって来た。
「
「
黒ギャルにそう言われた白ギャルは、ちょっとムッとした顔をした。
「あんたの事思って言ってやってんだよ? あたしなんか透とやった時肋骨にヒビ入ってめちゃくちゃ痛かったんだから」
「へぇ、ならなおさらやりたいっスね。こいつに勝ったら
そう言いながら、彼女は俺の事を指差す。
そんなピリついた空間に、黒いガラケーを持った
「いいんですか? 怪我しても俺責任取れませんよ?」
「構いません、自分から言いだして怪我をして、それでもゴチャゴチャ言うようなら私が殺しますから」
殺気混じりのその言葉に、ピリついていた場がもっとピリつく。
気がつけば、体育館中の全員が俺達の周りに集まっていた。
「弟弟子はカメラが向いていないと実力を出せない男なので動画を撮りますが、構いませんね?」
「へぇ、
「いいですよ。皆の勉強にもなると思いますから、こちらで上げておいてあげます」
そんな彼女の携帯電話が俺の方を向き、黒ギャルがキックボクシングのような構えを取る。
気づけば、他の人たちも興味津々でこちらを見つめているようだ。
なんだか、見世物になった気分だな……まぁ、役者だからいいんだけど。
俺も
「ではいきますよ、アクション」
その言葉と共に自分の中のスイッチが切り替わり、自分の鼻筋目がけて飛んでくる拳がスローモーションに変わった。
彼女の拳を絡め取るように前に出した左手でいなすと、黒ギャルはそのままデカい身体をそのままぶつけてくる。
俺はそこで、退いても良かった。
「…………」
だが、なんとなく前から思っていた事に対しての閃きがあったのだ。
身体を当てて体重を通す事が攻撃の極意なのだとしたら……
相手の攻撃が当たる時に体重を通せばもっと楽なんじゃないかと、俺はそう思ったのだ。
ドン!
震脚がなった瞬間、黒ギャルの身体は水平に飛んでいた。
こちらの前面にぶつかってきたその身体を、震脚で地面に固定した俺の身体でそのまま弾き返したのだ。
「おおっ!!」
観客から歓声が湧く中、俺はその判断を後悔していた。
できない事はなかったが……相手のスピードをそのまま受け止めて返す以上、俺の身体も相応に痛かったのだ。
これじゃあ駄目だ、衝撃を衝撃で返すのは単なる力比べだ。
なんとなく、そう考える思考が自分の記憶の中のどこかに繋がっているという事を、俺は自覚し始めていた。
思い出すのは、前に金老師から宿題として貰ったあの打撃。
老師が打ったのに、俺の身体の中から震脚の音がした、あの打撃だった。
「……っの野郎! 殺してやる!」
吹っ飛んだ先から戻ってきた黒ギャルの真っ直ぐな殺気も、俺のその思考を加速させた。
それは『殺らなきゃ殺られる』なんて、いかにも映画的な焦燥ではなく『まぁ殺しにかかってくる相手になら多少はいいか』という打算。
俺はさっきの姿勢のまま一歩も動かず、自分の身体の中の
黒ギャルの前蹴りを受けた腹から、そのまま自分の中を通さずに彼女の身体へと衝撃を返す。
……のには失敗し、黒ギャルは俺が返した衝撃で、俺は返し切れなかった衝撃で、お互いに三歩下がった。
これじゃあないんだ。
そういう確信が、俺の中にあった。
「何だそりゃあ!」
俺の顔の正中を目がけた拳と共に、黒ギャルの咆哮が響く。
衝撃は衝撃、人は物理法則には逆らえない。
なら、真正面から受け止めるのはやはり無理、相手が止まったところに自分の身体があるというのが理想だった。
俺は首を傾けて彼女の拳を避け、その身体を抱きとめるような姿勢で仰け反る。
黒ギャルはそのままさっきのように体当たりをしようとしたらしいが、その身体は途中でピンと止まった。
俺の前に出した左足が、彼女の右足の甲を踏んづけていたからだ。
「……相手の中で震脚をする」
記憶の中にあるあの一撃を、俺は仰け反った自分に覆いかぶさるように密着した黒ギャルの身体に返した。
前から漠然と、もしかしたらできるんじゃないかとは思っていた。
地面を蹴ることで衝撃が通るなら、相手の身体を地面にしたって別にいいのだ。
ドン!
と、震脚の音が鳴ったのかどうかはわからない。
ただ、気づけば俺の上にいた黒ギャルの身体は、彼女の「おあっ!」という悲鳴と共に一メートルほど上に跳ね上がっていた。
放心しかけていた俺はなんとか落ちてくるその身体を掴み、ぐるんと回して衝撃を殺して地面に下ろす。
「うっ! あっ!」
黒ギャルはひとしきり足元でのたうち回って苦しんでいたが……
「げえええええっ!!」
と盛大に胃の中のものを全部吐き戻した。
その苦しさ、俺にも経験があるからわかるよ……よくわかる。
とはいえ、俺と同じような症状が出ているなら、多分これは老師からの宿題の拳が打てたという事でいいのだろう。
「トゥーディー」
達成感と申し訳無さで動けなくなっていたそんな俺の背後から、その言葉が聞こえた。
振り返ると、そこには両手を広げてニコニコした金老師がいる。
また新しい宿題を貰うのかと思ってビビっていたら、どうやら単純によくやったのハグがしたかっただけらしい。
彼女は俺の背中に回した手でポンポンと俺を叩いた。
「謝謝!」
抱拳礼でそう言うと、彼女はその手を握って引く。
そしてその日の練習時間中、なぜかずっと俺を自分の隣に立たせたのだった。
uTube動画
Go Go!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
概要
海九魔
uTubeAIによる解説
この動画は何者かに覆いかぶさった屈強な女性が空高く飛び上がりながら、ゲームアーカイブホライゾンの人気曲SyabusyabuSchoolのリズムと音程に合わせて歌います。とてもユニークな元動画は吹っ飛びネキミームと呼ばれ...
そのコメント欄
† @Vran さんによって固定されています
@Vran 1日前
100万回再生、誠にありがとうございますわ!
これも皆様が再生してくれたおかげですわよ!
これからも末長く愛されるミームであるよう願いますわ~!
Go Go!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
@watari 1か月前
吹っ飛びネキのミームの中で一番好き
@まぐろ 3日前
元動画がガラケーで撮ったんかってぐらいガビガビなのも面白いんだよな
@チャル 3週間前
結局これって何?
︿ 2件の返信
@ファンタジー鯰 3週間前
中国武術団体の
︿
@車 3週間前
へー、めちゃくちゃこのミームの動画見てるのに知りませんでしたわ
@ピスク 1か月前
元気ない時に見てるわ
@マスカット・S 2週間前
このミームを流行らせた動画だよな
@dadne 1週間前
@蛇腹 1か月前
リズム良すぎて無限にリピートしてる
@王子 2週間前
友達がこれの高画質版持ってたから見せてもらったけど下にいる方男だったよ
︿ 1件の返信
@Utami 1週間前
その友達に動画上げるように言っとけよ、本当にいるんならな
@YGR366 4時間
なんか総合格闘家の宇都宮って女が
︿ 1件の返信
@ヨル 2時間前
その方、単に流行ってるものにいっちょかみしたいだけじゃありませんこと?