あべこべ貞操逆転世界で七光り役者生活 作:関税破産お嬢様
なんだかすっかり懐かれてしまった七瀬に時々飯を奢らされたりしながらも、俺はちょいちょい来る仕事を熟していく。
できる女詐欺師に入れ込むバカ男役、裁判の傍聴者役、モテる主人公に告白してフラれるモブ男役、エトセトラエトセトラエトセトラ。
ほとんどは台詞も一言二言のエキストラ役ばっかりだけど、人に見られるという意識はやはり人間を変えるようだ。
自然と鏡をよく見るようになり、八代の基礎レッスンもあって姿勢は正され、中高生にバカにされないようにと始めた筋トレで腹筋は割れ、スキンケア道具も服も手の届く範囲でケチらず買うようになった。
「透も最近は色気づいてきたなー」
なんて七瀬とコンビのサーダにも言われるようになったが、見せる相手のいる自分磨きとは楽しいものだ。
そんな努力のお陰か、大学一年の夏が終わりに近づく頃、ついに俺にもデカい仕事が舞い込んできた。
「ここのL字路に追い込まれて、右に曲がろうとするけどそこはゴミの山、たたらを踏んで逆走しようとするところを主人公に取り押さえられる。大丈夫?」
「大丈夫です!」
「これ冒頭のシーンだよ、映画の顔だよ? 頑張ってね!」
「はいっ!」
段取りを説明する助監督の周りでは、いつもとは比べ物にならないぐらいの人数が走り回っている。
なんとこの現場は映画の現場。
そう、俺もついに銀幕デビューを飾る事となったのだ。
もちろん重要な役なんかじゃなく、冒頭で主役の見せ場を作るために逃げるチンピラ役だ。
それでも名前付きの役という事でギャラは役者人生初の
「安井さん、俺映画の仕事って初めてですよ」
「そ、そうなんだ……透くんは、ふっ、ふっ、普段はさぁ、どんな現場いってんの?」
「ドラマのエキストラとかです」
「あ、あー」
そして映画の仕事という事もあってか、俺は初めて自分以外の男の役者と出会っていた。
塩顔イケメンでロングヘアを後ろでくくったその俳優さんは安井さんといい、ナイフのような鋭い雰囲気の割に、喋ると案外気さくな人だ。
彼は子供の頃に吃音を治すために演劇を始め、そのまま流れで俳優になったのだが……
結局吃音が治ったのは演技している時だけで、普段の生活ではどもったままなのだという。
俺はそんな安井さんと一緒のロケバスで待機をしながら、スタッフさんが配ってくれた弁当を食べていた。
「と、と、透くんはさ、何で役者始めたの?」
「モテるためっす!」
「モ、モテ……? 凄いねぇ……」
「そうですか?」
「俺はさ、お、奥さんは四人とも親戚にお願いして……じ、実際は独身みたいなもんだから……」
「えっ? そうなんですか?」
国が男性に課した四人婚姻の呪いだが、実はこれを回避する方法は色々ある。
男性との結婚は女性とは別枠で扱われるため、普通に
まぁ全ての枠でそれをして男性が自分一人で生きていこうとすると、月十二万円の保護費だけで暮らすことになりかなりキツいのだが……
安井さんのように自分で稼げる男にとっては、結構メリットがある裏技なのかもしれないな。
「安井さんいいっすね、女遊びし放題じゃないですか」
「い、いや俺、あんまそういうの興味ないから……」
ちょっと照れたような顔でそう言う彼は、いわゆる草食系男子という奴なのだろう。
まぁ色んな人がいるもんだからな、別に否定はしない。
この世界じゃ、男が社会に求められる役割というのは精液の提供だけ。
社会的責任を伴う仕事は全て女性が担ってくれているから、ある意味前世の男よりも気楽な立場かもしれないな。
飯を食った後は連絡先を交換した安井さんに業界の事を色々聞いたり、たまたま二人共やっていたデジタルトレーディングカードで遊んだりしていた。
そして夜になる頃、ようやく俺の出番がやってきた。
「あんま気負わなくていいから。気楽にね、気楽に」
「ありがとうございます」
テレビで何度か見た事がある主演の中年女優にそんな激励を頂き、俺は指定の位置についた。
マンションとマンションの間の、片側がコンクリートの壁、反対側はマンションの壁になっている二メートルほどの幅のL字路。
俺の仕事はそこを走っていって、曲がり角の先を埋め尽くす粗大ごみに気づき、引き返そうとして捕まるだけ。
「はい、はいっ! 大丈夫でーす!」
「それじゃあシーン1テイク1、アクション!」
遠くから監督の声がかすかに聞こえ、近くにいるスタッフからゴーサインが出る。
投光器が照らす路地を、俺はできるだけ情けなく走った。
台詞はない、本当は一言二言あったが、俺の演技を見た監督がその部分を切ったのだ。
「待ちなさいっ!」
主演が俺を追ってくるのを、路地に横倒しで置かれた冷蔵庫の粗大ごみを飛び越えて逃げる。
監督が俺がどれぐらい動けるかを見た後、急遽追加されたアクションだった。
そのカットを上から撮るため、クレーンの上からカメラを回している人がいるはずだ。
映画ってのは凄い、普段出てるドラマとは人の数もカメラの数も桁違いだ。
「その先は行き止まりよ……」
そんな主役の台詞と共に、俺は突き当りに行き着く。
左は壁、前も壁、右にある道は壁よりも高く積まれた粗大ごみで埋まっている。
「あなた、ここらへんの人じゃないわね。土地の人間なら、誰だってこの道は行き止まりだって知ってるわ」
この映画は警視庁のエリートではなく、所轄密着型の刑事が街で起こった世界的犯罪を泥臭く追い詰めるストーリーだ。
その説明のために、この冒頭の逃亡シーンはあった。
あとは近づいてくる主人公に抵抗しようとして、小手返しで投げられるだけ。
そのはずだった……
パァンッ! と、ゴミ山の方で音がした。
カメラが回っている、そう思ってそちらに視線を向けなかったのがいけなかった。
「あっ」
と主演が声を上げて指をさした時には、もう俺は逃げられない位置にいたのだ。
台本にない主演の行動を訝しみ、指の先へと首を回した俺の目に飛び込んできたのは、雪崩のようにこちらへ崩れ来る粗大ごみの山。
さっきの音は、固定用のワイヤーか何かが切れた音だったのだ……
そう考えた瞬間、世界がスローになった。
主演の方に逃げる……には、すでにそちらへは巨大な飲食店のシンクのようなものが、空を舞って落ちて来ているのが見える。
では後ろへ下がる……としても、この二メートル程度の隘路のどこへ逃げようが、転がってくる電子レンジや洗濯機の餌食になる。
万事休す、と思いながら雪崩に背を向けた俺の目に飛び込んできたその第三の道は、なぜだか光り輝いて見えた気がした。
「だあっ!!」
俺は無我夢中で飛んだ。
俺が見つけた道は、コンクリートの壁だ。
雪崩の反対側の壁に飛びつくように突っ込み、駆け上るようにそれを蹴り、反対側に向けて飛んだ。
眼下にゴミの雪崩がひしゃげる轟音が響く中、俺はマンションの壁に生えた換気口のガラリにしがみついた。
「そのままーっ!!」
どこかから声が響く中、俺は体重で剥がれかけるガラリに必死にしがみつく。
下では金属が転がる音や、何かが割れる音が未だに響いている。
そのまま数秒我慢していると、手元からバリッと音がしてガクンと体が落ちた。
ガラリが固定用ボルトから剥がれたのだ。
ギリギリで壁に繋がっている間に急いで下を見ると、粗大ごみの波はすでにほとんど動きを止めていた。
だが、その上に降りれば怪我をするのは必定。
俺は壁を蹴って主演のいた方へと飛び、ゴロンとアスファルトに前転をして着地した。
「救急車ーっ!!」
誰かのその声と共に、スタッフが数人こちらへ駆けてくるのが見える。
この時の俺は、ただ呆然としていただけだった。
まさかこの事故が、その後の自身の役者としてのキャリアを強烈に方向づける事になるとは、夢にも思ってもいなかったのだった……
まとめブログ
なんでも実況B
行徳ニキのパツパツスーツ姿、えちえちすぎる
1:雨降れど名無し ID:W/ri8zL8l
地方都市を舞台に世界的犯罪に立ち向かう刑事を卯月薫(41)が、本庁から派遣されてきたキャリア警官役を安井行徳(27)が演じる。
冒頭一分の映像が丸々含まれた予告編には迫真のアクションシーンも含まれ、キャリア二十年の節目ともなる武石優子監督の新境地を……
3:雨降れど名無し ID:ni9fo6hdw
事故映像かと思った
5:雨降れど名無し ID:9+qpB3yKd
››3 私もあのお兄様がお亡くなりになったと思ってビビりましたわよ
7:雨降れど名無し ID:jHBRIo+1X
パルクールの世界じゃあれぐらい普通
8:雨降れど名無し ID:PqveoxRTU
壁蹴って反対側にあんな高く飛べるもん?
9:雨降れど名無し ID:fgOCmBWOj
忍者ですわね
10:雨降れど名無し ID:fQhNeLB3W
壁に張り付いた時のビビった顔が迫真過ぎておハーブ生えましてよ
12:雨降れど名無し ID:BnU7h0eEw
行ちゃんお兄様には及びませんけど、結構イケメンですわね
14:雨降れど名無し ID:4jbHBZ7gg
唐揚げくん……出世なさって……私嬉しくってよ
16:雨降れど名無し ID:Jdi7V9DKD
››14 唐揚げ?
17:雨降れど名無し ID:XrRqKkLIb
唐揚げ好きな忍者なのかな?
19:雨降れど名無し ID:cidPFXZcT
これが初出演なのかしら? 調べても出ていらしませんわね
20:雨降れど名無し ID:Sxka1QFiS
これまでスタント専門だったのかしら
21:雨降れど名無し ID:WlNL14Kin
››20 こんなデカい奴需要ないだろ
23:雨降れど名無し ID:jqXSGkqkg
行徳の
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