あべこべ貞操逆転世界で七光り役者生活   作:関税破産お嬢様

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参観と流血

立ち並ぶ巨大なタンク、そして精巧に作られた麻薬の処理施設。

そこに大量の演出装置を詰め込んだ、金を注ぎ込みまくったらしいスタジオセット。

そこが、今日撮影される『烏龍』の最終戦の舞台だった。

 

「今日はよろしくお願いします! 師範代!」

「え……? あ、俺か。こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

最終戦は黒ギャル率いる西垣の戦闘部隊と、烏龍一人の対集団戦だ。

そのため、この撮影には俺が師範代を務める……事になっているらしい金劉会の、アクション役者系門下生の十名に参加して貰っていた。

これまでに数回の稽古を行い、昨日も入念なリハーサルをし、練度はバッチリ。

可燃性の液体が詰まったタンクがあるから銃が使えないという設定で、このシーンでは中国武術エクスプロイテーション映画としての名に恥じないアクションを撮影できる予定だった。

そして中国武術をエクスプロイテーションするという事は、その大家(たいか)のチェックも入るというわけで……

鬼気迫る顔で指示を回す監督の近くには、金劉会のトップである金老師と、俺の先輩である師姐(シージエ)もやって来ていて、さっき到着したばかりの白ギャルと一緒に撮影を見守っていた。

 

「婆ちゃんたちも見に来てくれたんだね」

「…………」

「今日は門下生が沢山参加する撮影ですから、我々が来るのは当然です」

「そうなんだ。どうせなら師範代も撮影参加すればよかったのに」

「私もこれで、なかなか身体が空かないもので」

「え? 師範代って本業パチプロでしょ?」

「……違います」

 

そんな面々がこちらをじっと見ていると思うと、否応なく現場の緊張感は上がり……

そのためか、今日の撮影に参加するアクション役者系の金劉会門下生たちも、各々気合満々の様子でアップをしている。

そしてこの真剣な空気には、実は老師の参観以外にも理由があった。

今日の現場は全員同門、全員格闘家という特殊な条件の下、全員の同意書作成をもって直接打撃(フルコンタクト)でのアクション場面撮影を行う事になっていたのだ。

全員がプロテクター入りのインナーを着ているとはいえ、恐らく軽い打撲程度は避けられない状況。

だというのに、その条件を嫌がる者は一人もおらず、全員が面白がって同意書にサインを書いた。

そんな役者のボルテージの上がりまくった撮影のカチンコが、今まさに鳴らされようとしていたのだった。

 

「透さん、よろしくっス」

「うん、よろしく! いいシーンにしよう!」

「すっげぇの撮りましょ」

 

かっこいいスーツを着た黒ギャルと握手を交わし、所定の位置に移動する。

黒ギャルの後ろには、十人の黒スーツの女たち。

無数の視線とカメラのレンズが俺に向き、否応なくテンションが上っていくのがわかる。

 

「じゃあ、行きます! ワンカットだからね! いいね!? じゃあ……いくよ、アクション!」

 

そして、監督のその言葉と共に……バチンと音を立てて俺の中のスイッチが切り替わった。

向こうから歩いてくる黒ギャルたち、そしてそれに立ち向かうのは豆鉄砲(ウッズマン)を持った俺一人。

バカでかい拳銃をこちらに向ける黒ギャルを、その後ろにいた黒スーツの一人が止めた。

 

「西垣さん、ここで銃を撃つのは……タンクに当たったら爆発して全員死にますよ」

 

黒ギャルは周りに立ち並ぶタンクをぐるりと見回して肩をすくめ、デカい銃をホルスターへと戻す。

 

「…………」

 

黒ギャルからの距離は五メートルほど。

俺はゆっくりとスーツの上を脱いで通路に投げ、ウッズマンの入ったホルスターもその上へと放り、ポキポキと首を鳴らして構えを取った。

左手は前、手のひらは自分向き、腰を落として、右拳は脇へと引き絞る。

そしてそのまま、左手の指で彼女たちを招いた。

 

「う……うおらあああああああああっ!!」

「だらああああああああああっ!!」

「やったらあああああああっ!!」

 

叫び声と共に、黒ギャルの後ろから三人がこちらへ飛びかかってきた。

勢いよく右腕を突き出してきた最初の黒スーツの打撃をいなし、突っ込んでくるその身体にすっぽりと収まるように背中を預ける。

そして足を払いながら、自分をジャンプ台にするように身を屈め……

 

ドン!

 

震脚と共に、相手の身体は勢いそのままに上に吹っ飛んでいった。

がら空きの背中に二人目の蹴りが来るが、それを脇腹にかすらせながら身を回し……

 

ドン!

 

震脚と共に肘……ではなく前腕が相手の腹に入り、黒スーツは脇に逸れて崩れ落ちる。

その間に間近に迫っていた三人目は、震脚と共に俺の胸めがけて肘を打ってくるが……

 

ドン!

 

両拳を腹の前で下に向けて震脚を打ち、身体をその場に固定する事で衝撃を相手に返す。

 

ドン!

 

崩した相手に同じ形に前腕を入れ、相手を吹き飛ばした。

なんだかここまで全員明らかに稽古より力が入っている……というか、殺気立っている。

やはり、本番は魔物だ。

 

「…………」

 

部下を三人瞬殺されたというのに顔色一つ変えない黒ギャルは、顔の横に上げた右手の人差し指と中指をピュッと俺の方に倒す。

すると残った部下たちが素早く動き、俺をぐるりと囲んで構えを取る。

それに対し、俺も最初と同じ構えを取ると、ゆっくりと腰を落とした。

瞬間、左右から二人の手が肩にかかる。

俺は身体を捻ってその手を外し、前から飛んでくる蹴りを右拳で撃ち落とす。

そしてそのまま左肩から前の相手に突っ込み、右側に身体を開くようにして……

 

ドン!

 

震脚と共に俺の背中が相手に当たり、黒スーツが吹っ飛ぶ。

そして前にスペースができたところに更に突っ込み、上に飛んだ。

わっと黒スーツたちが詰めかけたところを、開いた足で二人の肩を蹴り、ごろんと地面に転がって着地して反転し、また構えた。

これで黒スーツ軍団と黒ギャルに挟まれる形になったが……

首を回して確認したところ、黒ギャルの方はまだ動くつもりはないらしく、腕を組んでこちらを睨んでいるままだ。

とはいえ、挟み撃ちには違いがない。

状況を変えるため、俺は今度はこちらから黒スーツに踏み出した。

そして迎撃で打たれた右拳を捌いて崩し……

 

ドン!

 

脇腹に右の前腕が当たり、相手が吹き飛ぶ。

間髪入れずに飛んできた足を、躱しながら引き込み……

 

ドン!

 

震脚と共に左拳を胸に入れると、相手はバランスを崩して縦に回転しながら倒れた。

 

「オラァ!」

 

しかし、相手もやられているばかりではない。

右から飛んできていた蹴りを肘で受けると、間髪入れずに左からは低いタックルが迫る。

俺はその肩を蹴り上げるように宙へ舞い、右肘で受けたついでに手で掴んでいた足の持ち主の頭を蹴り飛ばす。

 

ドン!

 

そして着地と同時に震脚が鳴り……

俺は頭を蹴られてよろけていた相手の腹に前腕を叩き込み、相手は後ろへ吹っ飛んだ。

だが俺も背後から背中に蹴りを食らい、追撃を前転で避けて仕切り直しとなる。

残りは三人。

一人は膝の埃を払い、もう一人は首を鳴らし、もう一人は顎を上げてこちらを睨む。

 

「…………」

 

俺は黙って構えを取り、相手を待つ。

三人はぐっと腰を下ろし……全員同時に地面を蹴った。

横並びに三本の足の飛び蹴りが迫る中、俺は全身に力を込め、強く地面を蹴った。

 

ドン!

 

同時に着弾した蹴りの衝撃を、俺は身体の中でそれぞれに返す。

空中にいた三人はそのまま後ろへふっ飛ばされて崩れ落ち、俺の身体も靴底を削って三歩分後ろへ押し流された。

俺はゆっくりと前に出て、立ち上がってきたフラフラの三人にそれぞれ拳を叩き込んで沈める。

 

「…………」

 

そうして十人の部下が全て沈み、ようやく黒ギャルが動き出した。

彼女は俺と同じようにスーツの上を脱ぎ捨て、その上に銃の入ったホルスターを放る。

少し小さめのワイシャツは筋骨隆々のその身体を強調し、大きく空いた胸元からはトライバルの入れ墨が覗く。

不敵に笑う彼女は俺の前にやって来て、悠然と構えを取った。

 

「……ふぅ」

 

息を吐きながら、腹に力を送る。

黒ギャルの構えはいつものキックボクシングスタイル。

その姿勢から、素早い前蹴りが飛んできた。

 

「うっ……」

 

腹でそれを受けて後ろに飛び、ゴロゴロと転がる。

そのまま追ってきた彼女が顔を狙ってストンプしてくるのを、何度も避ける。

避けながら隙を見計らって跳ね起きて、また構えた。

今度は俺が拳を打ち込むのを、黒ギャルが捌いて投げる。

くるっと前転してから地面を転がり、今度はすぐに飛び起きた。

 

「ふぅーっ……」

 

両手のひらを前に出し、ゆっくりと息を吐く。

そして整えた息をピタッと止めたところに、黒ギャルの蹴りが来た。

その蹴りを右手で払い、ドン! と震脚を鳴らして彼女の腹に左の拳を叩き込む……が、黒ギャルは止まらない。

ラリアットの形で首を薙ぎにくるその腕をのけぞりながら躱して、またドン! と震脚を鳴らし脇腹に右()を入れる。

だが全く黒ギャルは止まらず、そのままラリアットの右腕を返して肘を入れようとしてくる。

だが、その時にはもう、彼女の身体に俺の背中はピッタリとついていた。

 

ドン!!

 

ひときわ大きく鳴った震脚とともに、黒ギャルは吹っ飛んだ。

グワァン! とデカい音が鳴ったが、俺は残心のまま動かない。

そのままゆっくりと首を回して周囲に敵が残っていないか確かめ、俺は構えを解いた。

 

「カット! 救急車!」

「……えっ!?」

 

スタッフが走って行った先には、ベコベコになったタンクの前で頭から流血し……

それでもなんだか余裕のありそうなふざけた顔で、舌を出しながら俺の事を指差す黒ギャルの姿があったのだった。

 

 

 

 

 

まとめブログ

 

なんでも実況B

金田狂夢、メスになる

 

1:雨降れど名無し ID:Wg4YUxpnr

八代芸能は四日、同社uTubeチャンネルにて、井門(いもん)勝美(かつみ)監督が制作中のオリジナルビデオ『ナンバーセブン -烏龍(ウーロン)-』の特報映像を公開した。同作は新進気鋭の男性俳優八代透が主演のスパイアクション。共演者に女優の金田狂夢(くるめ)、格闘家の宇都宮真澄(ますみ)など……

 

2:雨降れど名無し ID:7WbcXWP+8

は!?!?!? 狂夢(くるめ)お姉様が初濡れ場!?

 

3:雨降れど名無し ID:mk3DPAcw1

絶対見る、死んでも見る

 

5:雨降れど名無し ID:TRJueYf46

二秒ぐらいの映像なのにもうどえりゃあ色っぽいですわ!!

 

6:雨降れど名無し ID:Vb8qNogvw

ていうかチラッと映ったアクション良すぎますわよ!!

 

8:雨降れど名無し ID:OGnSL2jh3

狂夢の裸が見れるかもしれないと思うとアクションどころじゃありませんわ!

 

9:雨降れど名無し ID:m9qdjsiWE

これは伝説の映画になりますわ……

 

11:雨降れど名無し ID:QgWSN3yqm

しかもオリジナルビデオでしょう? つまり劇場じゃ流せないようなところも見せてくれるんじゃあ……

 

12:雨降れど名無し ID:qRTSHeT++

>>11 低予算だからじゃなくって?

 

14:雨降れど名無し ID:nY3iLsSyX

>>12 低予算映画に今をときめく金田狂夢が呼べるわけないでしょうが!

 

16:雨降れど名無し ID:fMvF7IM5g

>>12 監督もベテランですわよ!

 

17:雨降れど名無し ID:lmVrCcRDN

主演はどなた? 聞いたことありませんわ

 

19:雨降れど名無し ID:Jl2HDiCtN

>>17 仙人

 

21:雨降れど名無し ID:7Vqs5WYsK

八代芸能……八代透……何か関係がありそうですわね……

 

22:雨降れど名無し ID:l7U+eN2u6

>>21 八代透は八代芸能の創業者一族ですわよ

 

24:雨降れど名無し ID:7Vqs5WYsK

>>22 解散

 

26:雨降れど名無し ID:NRM9ZrC58

いや金田狂夢(くるめ)が脱いだってだけで昨今のどんな映画より価値あるだろ

 

27:雨降れど名無し ID:Dkx6rMWif

そういう女優だと思ってませんでしたわ……ちょっとショック

 

28:雨降れど名無し ID:R3pBj4R6d

>>27 じゃあ見ないの?

 

29:雨降れど名無し ID:Dkx6rMWif

>>28 ブルーレイぐらいは買うと思いますけど……

 

30:雨降れど名無し ID:IWJ0dy65S

特報映像短すぎて金田狂夢が脱ぐ事しかわかりませんわね

 

32:雨降れど名無し ID:xOp3PyHLG

言うてちょっと女と一緒に薄着でベッドに入るぐらいだと思いますわよ

 

34:雨降れど名無し ID:3o7IiptaY

服脱いでベッドに向かうカットはあったけど、相手は誰なんだろうね

 

36:雨降れど名無し ID:JLrDdmI12

>>34 共演者の宇都宮じゃない? あっちも顔はいいし絵になるでしょ

 

37:雨降れど名無し ID:+aRFBDO79

金田狂夢のこんな顔見た事ありませんわ、なんか新しい扉が開けそう

 

39:雨降れど名無し ID:RxK3FyOe9

>>37 お閉じになってくださいまし

 

40:雨降れど名無し ID:bPlXFwjJj

誰も映画の内容の話してなくてお庭園ですわ

 

42:雨降れど名無し ID:ZS517k4GZ

>>40 こんな三十秒の動画じゃ何もわかりませんし、正直男のスパイものって言われても……という感じですわ

 

43:雨降れど名無し ID:+D/i9f/A8

生きる楽しみが出来ましたわ

 

44:雨降れど名無し ID:sBGJwn4ie

唐揚げくん……スパイだったんだ

 

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