あべこべ貞操逆転世界で七光り役者生活 作:関税破産お嬢様
生で浴びるステージの照明は、映画のセットに劣らぬ光量だ。
だが俺は向こう側が何も見えなくなるその光の向こうに、しっかりと配信用のカメラを感じていた。
『私たちはウイスキー・リベリオン』
それだけのシンプルな前口上の後に、ギターボーカルのアメリアはマイナーコードを掻き鳴らす。
そして……
『アクション!』
と、そう叫んだ。
瞬間、思考は加速し、脳の中のスイッチが切り替わる。
そして俺の血が……ただの二十一歳の日本人から、スーパードラマーの弟子の物へと入れ替わっていく。
ドパッ! と鳴る俺のバスドラムとスネアと一緒に、シャーロットのベースも音の流れへと合流。
自分が叩くドラムが発する音と、モニターから返ってくるギターとベースとボーカル。
そんな耳をつんざくような爆音が場を支配する中を、必死でもがき……
なんだかわけがわからないうちに一曲目が終わってしまった。
『ヒューッ!!』
『かっこいーっ! カンフードラマーッ!』
『透ーっ!』
客席から、なんだか聞き覚えのある声が響く。
どうやらケイトだけでなく、同じく映画で共演しているキンバリーも来てくれているようだ。
俺は最前列に向けて、スティックをクルクルと回した。
そんな最前列のウェルカムムードに支えられてか、だいぶ緊張がほぐれた様子のアメリアによる
『えーっ、私たちは全員が普段は役者をやっていて……』
そんなトークに、役者が身近な
俺はその間にシンバルの位置を微調整し、次の曲に備えた。
だいぶ緊張がほぐれたのか、ステージに持ち込んだビールで口を湿らせたアメリアが次の曲のタイトルコールを行い……
スティックを打ち合わせてカウントしてから、三人同時に演奏へとなだれ込んだ。
二曲目で三人ともこの状況に慣れてきたからだろうか、それとも俺がこのバンドに馴染んできたからだろうか?
気がつけば、俺は不思議な感覚を覚えていた。
目を焼くような光に照らされたステージの上に、俺とアメリアとシャーロット、三人の間を結ぶ
アメリアが一人で前に進もうとすれば、ベースのシャーロットがロープを引っ張り、それで二人が転びそうになれば今度は俺が引っ張り。
そうしてピンと張られたロープを引っ張り合うことで、だんだん真ん中にねじれができ始める。
ねじれればねじれるほど、今叩いている音楽への陶酔が高まるような、そんな気がした。
そしてそのねじれを起点に、全員が互いに向けて一歩近づいた。
そこで、二曲目が終わった。
『イェーイ!』
『透ーっ! ちゃんと撮ってるからねーっ!』
最前列にいる身内の盛り上がりをよそに、アメリアとシャーロットと俺は、互いに視線を交わし合った。
さっきのあれは、スタジオでのリハーサルではなかった感覚だった。
まるで三人の間の距離が、音楽を通じて一歩分縮まったような。
会ったばかりの人間同士が、まるで何かをわかり合えたような。
正三角形を描くように二メートルずつ離れた俺達の指先が、なぜだか一瞬触れ合ったような。
そういう感覚が、確かにあったのだ。
『結構いいじゃん』
最前列以外からもそんな言葉が聞こえる中……
アメリアは挟む予定だったMCを飛ばして、三曲目の頭になる
それにベースとドラムが追随し、また綱引きが始まる。
瞬間、さっきよりも近づき……
かと思えば、次の瞬間にはまた離れて。
行ったり来たりしながら、俺たち三人は同じ場所に向けてゆっくりと足を進めていく。
単にリズムが合うだけじゃなく、単に音が合うだけじゃなく、そのもっと先の事が、この三人の中心にあるような気がした。
そんな確信だけを深めて、三曲目が終わる。
『グルーヴィン!』
そして三曲目で高まった緊張の糸が緩まぬうちに、四曲目のイントロのリフが鳴った。
そんな中、俺の頭の中では、さっき誰かが叫んだ言葉がリフレインしていた。
そうか、これがグルーヴか。
俺のドラムだけでなく……俺たちは今、バンド全体でグルーヴし始めているのか。
そう気づくと、自分のやるべき事がはっきりとわかった。
俺の役目はバンド全体を操縦して、彼女たちの演奏を一番気持ちいいところに持っていく事だ。
きっと今日はいい夜になる、そういう予感があった。
だが、このバンドのリーダーであるアメリアはついていなかった。
一番肝心なところで、アクシデントに足を掴まれたのだ。
サビに入る直前、突然ギターから曲へと不協和音がなだれ込み、アンサンブルが一気に崩壊した。
そしてすぐさまチューナーを踏み込んだアメリアのギターのヘッドから、一本の銀線が垂れているのが見える。
そう、彼女のギターの弦が切れたのだ。
『ドラム!』
音の切れ間に、シャーロットがそう叫ぶのが聞こえた。
俺は思いっきり息を吸い込んで、バスドラムを踏み込んだ。
そのままとっさの組み立てでドラムを乱打し、場を繋ぐ。
小節の初めにだけシャーロットのベースがルート音を鳴らし、俺を誘導してくれ……
俺は師匠たちに仕込まれたフレーズを解体し、別のフレーズと組み合わせて出すことで場を繋いでいく。
『うおーっ!』
『頑張れーっ!!』
小節が切り替わるごとに客席は沸き、ソロが続くごとにだんだん歓声がデカくなっていく。
『透ーっ!』
『いいわよーっ!』
思わぬトラブルからのドラムソロに、曲そのものよりも客が沸いてるんだけど、これでいいんだろうか?
サポートのドラマーが目立っちゃうって、後で怒られないかなぁ……
そんな事を考えていると、舞台脇の方の観客がさらなる大歓声を上げる。
どうやら、見かねたフラックスのギタリストが自分のギターを持ってきてくれたらしい。
年季の入った赤いギターをアンプに繋いだアメリアは、シャーロットと一緒に小節の初めにジャッ! と音を出す。
どうやら大丈夫そうだ。
ダドド! ダドド! ダドド! ダンッ! とドラムソロを締め、俺たちはまた曲へと戻った。
結局、そのアクシデントのせいで六曲やる予定だった曲は五曲で切り上げとなり……
バンドの中にあったあの不思議な感覚も、完全に掴むところまではいかなかったが……
ライブとしては大成功だったようで、演奏が終わってケイトのところまで挨拶に向かった俺たちは、そこで観客たちに囲まれていた。
『ヘイ! アジアンボーイ! めちゃくちゃよかったよ!』
『ありがとう!』
『パンダパワーか!? すごいドラムソロだったね!』
『ありがとう!』
『アメリカナンバーワンのドラマーにビールを奢らせて!』
『いいの? ありがとう!』
盛り上がってくれた観客たちと写真を撮りながらビールで乾杯し、バンド全員でも称賛を受ける。
なんだか、仕事をしてからすぐお客さんに褒められるっていうのは新鮮だな。
役者の仕事とは別の達成感があって、なんとも面白い気持ちだった。
だいたい人が引けたところで、待っていてくれたらしいケイトとキンバリーがやって来た。
『凄いじゃない透! 本気になったらこんなに凄かったのね!』
『ほんと! 本番じゃなきゃやる気出ないタイプ?』
『いや! そんなことそんなこと! ケイトもキンバリーもさ、今日は来てくれてありがとう!』
『映画とはいえ同じバンドの仲間の別バンドよ? 見に来るに決まってるじゃない! あっ! ヘイ! シャーロット! あたしもベースやってるの!』
シャーロットに話しかけるキンバリーからちょっと離れて、ケイトが俺にこっそりと耳打ちした。
『キンバリー、ホリデーシーズンなのに彼女に振られちゃったんだって。暇してたのよ』
『そうなんだ……』
ケイトも彼女連れには見えないけど……そういう話は聞きにくいものだ。
そんなケイトは、俺をアメリアのところに引っ張っていき、その間に入って話し始めた。
『アメリア、透はどう?』
『あなたの言う通りね、最高のドラマーだった』
『そう、当然だけど。わかってもらえて良かったわ』
『恐縮です……』
俺がそう言うと、二人は不思議そうな顔でこちらを見た。
まぁそうか、こっちじゃあんまりそういう言い方は良くないんだよな。
『アメリア、これからも透が暇な時があったら手伝ってもらったら?』
『私はもちろんお願いしたいけど、透はどう?』
アメリアもシャーロットも役者、そしてハリウッドでは役者は結構土日休みなのだ。
やろうと思えばバンドに参加できない事はないだろう、だが……
『俺もやりたいけど……ビザがどうかなぁ……』
『大丈夫よ、ライブハウスは現金手渡しだし、ゴチャゴチャ言われるほどお金貰えないわよ』
アメリアは笑いながらそう言う。
まぁ、別にお金に困っているわけでもなし、二人にスタジオ代や飲み代を出してもらう事にすればいいか。
『OK! お金の話はまたにしよう、俺は単純に楽しかったからまたやりたいよ!』
『それが一番ね! よろしく! 透!』
俺がアメリアと握手をすると、隣でケイトはウンウンと頷く。
『あたしも安心したわ。透ぐらいの腕があったら、もし映画の撮影が止まったとしてもバンドでアパート代ぐらいは余裕で稼げそうね』
『え? 撮影が?』
俺がケイトにそう尋ねると、アメリアも『あー……』と苦笑い。
『え? どういう事?』
『もしの話よ、もしの』
『も、もしも……え? どういう事?』
俺のその質問に、答える人はいなかった。
その直後にシャーロットとキンバリーがネットニュースの記者だという人間を連れてきて、急遽三人で取材を受ける事になったからだ。
そうして怒涛の大晦日は俺の疑問を飲み込むように過ぎていき……
その数日後、
ハリウッドは約三十年ぶりの
そして歴史上二度目、約七十年ぶりとなる、
ハリウッド中のほぼ全ての映画撮影現場が、その動きを止める事になるのだった。
uTube動画
New Year's Eve Countdown at Neon Glow
概要
Join us again for an electrifying night as we bid farewell to the old and ring in a hopeful new year with the best in music. Tune in directly from the vibrant heart of Neon Glow and experience an unforgettable night right on your screen!
uTubeAIによる解説
最高の音楽とともに、古き良き時代を振り返り、希望に満ちた新年を迎える、刺激的な夜を再びお届けします。Neon Glowの活気あふれる中心から、スクリーン上で忘れられない夜を体験してください!
そのコメント欄
uTubeAIによる翻訳
@DivaDollMia 1日前
2:48:01 化け物ドラマー登場
︿ 2件の返信
@GlamGirlAva 1日前
本当に役者にしておくにはもったいない腕前
︿
@BeautyByBrooke 1日前
酒浸りでヘロヘロのうちのドラマーと交代してもらいたい
@CreativeChloe 1日前
フラックスを見に来た人がどんどんトールの魅力にやられていく。私もそうだけど
@Ella_Enchants 1日前
2:49:12 このバンドのドラマー、シンプルにドラムの出音が良すぎるんだよね。暇してたスタジオミュージシャンなのかな?
︿ 3件の返信
@FashionistaGrace 1日前
ボーカルが全員役者って言ってるから役者なんじゃない?
︿
@鰤ブリ 1日前
彼は八代透、唐揚げと女をたくさん食べます
︿ 2件の返信
@Ella_Enchants 4時間前
気づかなかった! 彼は日本の役者なの? スタジアムで演奏していても違和感がないドラマーなのに? こんな事を言ったら失礼だけど、もったいなくない?
@HannahsVibes 1日前
3:07:24 だからアーム付きのギターは嫌いなんだ //アーム=音を揺らす機構。多くは機構のバランスを取った状態で音を合わせるので、一本の弦が切れると全ての弦の音が狂う。
︿ 2件の返信
@JessicasJourney 8時間前
その代わり彼女はフラックスのビンテージギターを試し弾きできたわ
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@KitschyKenzie 8時間前
めちゃくちゃ羨ましいから私も次のライブでは弦を切ろう
@Lauren_Loves_Life 1時間前
3:07:32 このドラムソロの切り抜き動画から来たけど、マジでドラムが上手すぎる
@Madisyn_Melodies 6時間前
2:48:00 ウイスキー・リベリオンの他の動画を色々見てきたけど、トールがドラムを叩いてるのはこのライブだけだね。これより前の動画じゃこのバンドの良さはわからなかったけど、彼が叩くと完全に化ける。やっぱりバンドはドラムだよ。
@NatalieNailsIt 1日前
1:18:00 私の姪が出てるの、ぜひ応援してあげて!
@ワオワオワ 1日前
ファンスレから! 二時間五十分ぐらいに唐揚げくん発見!
︿ 4件の返信
@ペガサス抽選券 1日前
おばちゃんウッキウキで笑いましたわ! 2:50:00 時間のリンク貼れますのよ~!!
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@宇津木 1日前
同じくファンスレから! なんで透様こんなにドラムがお上手なのかしら~!!
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@メガニューズ 1日前
マジでバチクソおドラム上手くて笑いますわ~!! 子どもの頃から習ってらしたのかしら?
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@Qsゆい 1日前
烏龍がロングラン公開されてるのに国内にいないと思ったらアメリカでバンドデビューしてたんかい!
@Olivia_OOTD 5時間前
フラックスのスナメに映ってたのってこのドラマー?
︿ 1件の返信
@PrettyPiper 3時間前
フラックスのスナメから来た仲間がいたわ『
@QueenOfQuilts 1時間
︿ 1件の返信
@RileyReads 1時間前
私もAmp Dust見て来た! 一発で気に入ったわこのバンド! LA住まいだから、次のライブもきっと行くわよ!
@SparkleSarah 1時間
4:50:10 久々にフラックス見たけど、なんかみんな腹出たなぁ……