あべこべ貞操逆転世界で七光り役者生活   作:関税破産お嬢様

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手加減と冗談

「手加減を覚えなさい」

 

と、そう言ってくれた師姐(シージエ)の指導を、真剣に考えなかった事への罰なのだろうか。

俺が無我夢中で撃退した強盗は二人とも、とんでもない大怪我を負っていた。

銃を持っていた方は腎臓が片側破裂、膵臓と胃にも多大な損傷。

刃物を持っていた方は、肋骨前面の粉砕骨折、肺への損傷、そして脊椎の圧迫骨折。

二人とも死ぬ事はなく、予後が良ければ病院から出られるだろうと聞いてホッとしたのだが……

アメリカ社会は、一撃で人をそこまで破壊する俺の事を危険人物だと判断したのだ。

俺は検察官により、過剰防衛で訴えられた。

 

「弁護士送るから」

 

妹の(めい)がそう言って送ってくれたアンダイの弁護士は、様々な弁護士を呼んでチームを作り、一緒に戦ってくれたが……

結果的に、俺とイルマ先輩の証言以外に証拠がない事によって裁判は泥沼化しかけた。

数年間アメリカに残って争うか、司法取引で罪を認めて帰るか。

裁判中は日本へ帰れず、保釈中にビザが切れれば不法滞在者となるため、どのみち罪を認める事になる。

つまり俺はビザを人質に取られたような形になったのだ。

弁護士が示したそういう情報から、色々な大人が様々な話し合いを行い……俺も納得して方針を決めた。

そして結局俺は、司法取引で罪を認めて執行猶予つきの有罪となり、ビザを失って日本へと帰ってきたのだった。

 

 

 

四月に帰ってきたのが良かったのか悪かったのか、俺は大学の春学期の履修登録を行う事ができた。

 

「よっ! ゼンカモン!」

「アメリカ行って歌姫守るって! お前何かの主人公かよ!」

「俺も何か格闘技やろうかな! ニュース聞いた時は痺れたよ!」

「いや相撲やれよ」

 

相撲部の仲間たちにそうやってからかわれながら、俺は去年以来の日本暮らしを満喫していた。

彼らが俺がやった事を知っているのは、イルマ先輩が日本に帰るなり記者会見をぶち上げてくれたからだ。

 

『アメリカで暴女に襲われ、彼は銃とナイフを持った相手に勇敢に立ち向かい、私を助けてくれました。そんな透さんが今アメリカで不当な裁判に巻き込まれています。私はここではっきりと、彼の無罪を皆様にお伝えしたいです』

 

当事者の一人である歌の女神様がそう言ってくれた事で、日本での俺へのバッシングはほぼ皆無だった。

それどころか実戦で役立つ流派という事で金劉会には入門者が殺到し、支部が二つ増えるのだと師姐(シージエ)から電話があった。

 

「(手加減を)きちんと覚えておくべきでした、教えを守れずすいません」

 

と、俺が謝ると、彼女は『そうですね。次は文句を言われないよう、きちんと殺しておきなさい』と言い切った。

笑っていいのか悪いのか……まぁ、彼女なりの冗談だと思おう。




頭が冷えたらまた帰ってきます。
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