東部基地に設置されたイブキの格納庫は慌ただしくも活気のある空気に満ちていた。
鬱陶しい長雨の湿度を吹き飛ばすように、威勢のいい声がそこら中で響いている。電子音と金属音が咲き乱れ、煌々たる白色照明がツナギ姿の作業員たちのシルエットを鮮やかに照らしている。
「センサの調整は一旦こっちに回して欲しいっス。俺の方で吹雪の粒子干渉を補正するアルゴリズムを組むんで。そっちはサーマル系の外部オプションから手を付けてください!」
油に汚れたツナギを着込んだ安藤が、キャットウォークから作業員たちに指示を飛ばしている。
彼の指揮のもと、DJ号から降ろされた追加パーツが次々とイブキに取り付けられていた。豪雪を想定した局地戦仕様の装備だ。
基本的に、ステラ・コネクタは温度変化に強い。
宇宙空間の平均温度はマイナス270℃といわれているが、恒星からの光の有無などによって、その場所ごとに大きな温度差が発生する。強い光が直接当たる場所であれば100℃を超えることもあるし、恒星との距離が比較的近い場所でも日陰であればマイナス100℃を下回ることもある。
深宇宙探査艦であるDJ号はそういった宇宙の極端な温度変化にも対応できるように設計されていた。地球の太陽よりも強力な熱を放出する恒星の近くを通行することや、逆にほとんど熱のない死んだ宇宙を航行することも可能なようにデザインされている。
当然ながら、その随伴機として製造されたステラ・コネクタも同様に、宇宙の温度変化に対応できる機構が基本設計として組み込まれていた。
そのため今回の
惑星ウーサに到達するまでに行われてきた75回の惑星探査の中で、雪と氷に閉ざされた惑星にステラ・コネクタを送り込んだこともあったのだ。結果としてはその惑星では生命体の痕跡は発見できず、最終的に地球人類の生存にも不適な環境と判定されたわけだが、その結論に辿り着くまでの工程はしっかりと
「もう100年近く昔のことだから、当時のパイロットで存命の人はさすがにいなかったけどね」
格納庫の隅っこに設えられたお馴染みの休憩スペースで、僕はソファに深く腰掛けていた。
背もたれに身体を預けて目を閉じているけれど、瞼の裏では目まぐるしく情報が踊っている。すぐ横で今も調整され続けているイブキの情報が、ネットワークを通じて僕の眼球に流れ込んできているのだ。滝のように流れる文字と数字の羅列を追いながら、調整された項目に承認のサインを送るのが、今の僕の仕事だった。
「100年前なら、ヅィヅィザ将軍はもう生まれていた頃かも」
「あの人、そんなに長生きなの?」
「マハナ中佐が軍に入ったころから、今と同じようなお爺さんだったっていう噂だから……」
ことり、と休憩スペースのテーブルで音が鳴った。
片目だけ開けてみると、クァニャンが自身の杖をテーブルに置いて、こんこんと指先でそれを軽く叩いていた。どうやら彼女も次の作戦に向けて装備を調整しているようだ。残念ながら、魔法の道具のなにをどういう風に調整しているのかは、非魔法使いの僕にはまったくわからなかったが。
「そういえばさ、お化けって実在すると思う?」
「……お化けって、将軍のこと?」
「いや、そうじゃなくて、会議室の話の続き」
クァニャンが杖を叩く指を止めて首を傾げる。
翻訳機能を持ったメガネの位置を直しながら彼女はしばし考えて、それから口を開いた。
「いるとも、いないとも、証明されてない」
「クァニャンの考えは?」
「少なくとも、自分の目で見たことはないよ」
菫色の髪の先を指に絡ませながら、彼女は続ける。
「人間が死んだら、肉体は大地に帰る。動物や昆虫、微生物に分解されて、別の生き物が生きていくための糧になる。一方で、保有していた魔力は土の中に放出されて、最終的には母の樹に還る。そこから空気や植物を介して、また別の誰かに宿る魔力となる……。というのが基本的な生命の循環の形」
一息にそこまで言って、ほぅと息を吐いた彼女が僕を見た。
「伝わってる?」と彼女に目で問われて、僕は片目を閉じたまま頷きを返した。
「物質だけでなく、魔力も環境を循環しているって判明しているんだね」
「うん。科学的に観測できることだから」
「科学は科学でも、ユミツ式の科学ならね」
今のところ地球由来の科学力では、魔力と呼ばれる
クァニャンたちウーサ人の話を聞く限り、魔力も物質と同じようになんらかのセンサで知覚できるものだと推測されてはいるので、
「でも、肉体と魔力の行き先がわかっていても、魂のことはわかっていない。人間が死んだあとに魂がどこに行くのか、そもそも魂なんてものが本当に存在するのか、科学的に証明できた人はどこにもいないの」
「だから、お化けが実在するかはわからない?」
「ケイナインの言う『お化け』の定義が人間の幽霊のことなら、だけど」
僕は作業中の眼球を瞬かせて、口を斜めにしながら頷いた。
「まぁ、定義でいえばそうだね。もっとも、お化けを信じている
「どうして?」
「うん……。どうしてだろうね」
理屈の上では惑星ウーサも地球も同じ条件だ。魂や幽霊の存在は科学的に肯定も否定もされていない。だから、それを信じるのも信じないのも個人の自由のはずである。
もちろん、魂や幽霊といったスピリチュアルな概念は一般教養として学習することになるし、それらに基づいた地球の文化も(すべてではないが)現代まで伝承されている。
それでもやはり、DJ号の乗組員でお化けの存在を信じているのは少数派になるだろう。その一方で、本気になって霊魂の不存在を証明しようという風潮があるわけでもない。
結局のところ、お化けやら魂やらの話なんて、大多数の
「たぶんだけど」僕は喋りながら考える。「人間がお化けを信じるのはさ、『死んだらそこで終わり』って考えたくないからなんじゃないかな。自分が死んでしまったあとでも、自分の意思をどうにかして生きている人に伝えたい、っていう欲求があるというか……。そういうことを無意識に考えているから、誰かが死んだときに、生前言えなかったことを言うためにあの人がお化けになって現れるかも、って想像してしまう。……みたいな」
どうして僕はお化けを信じていないのだろうか。
せっかくなので、それを自問しながら口を動かしてみる。とはいえ、あまり真剣に考えたことのないテーマなので、適当なことを言っている自覚もあった。
「ウーサのお化けがどうなのかはわからないけれど、地球のお化けって生きている人になにかを伝えるために化けて出ることが多いんだよね。恨みとか未練とか、感謝とか生前の秘密とか。そう考えたとき、僕たち
システム更新の片手間に雑な思考で喋った内容であるが、それほどおかしな理屈だとは感じなかった。『死んだらそこでさっぱり終わり』と誰もが考えることができる社会であれば、お化けという
「……本当に、伝えたいことは、なにもないの?」
問いかけるクァニャンの口調は真剣な色を帯びていた。
彼女は僅かに眉根を寄せて、どことなく心配そうな表情で僕を見つめている。
「たとえば、家族に最後の言葉を伝えたい、とか」
「そう言われても、基本的に僕らには家族がいないから……」
「……それなら、友達とか仲間には?」
「うーん、どうだろう? パッとは思いつかないけれど」
だから、もし
そういう意味では、自分がやり残してしまった仕事のことを、お化けになってまで仲間に伝える必要なんてどこにもない。
「一生分の活動の
「……それって、機械がお化けを作っていることにならない?」
クァニャンに指摘されて、僕は両目を瞬かせた。
面白い。今まで考えもしなかった発想だ。
「そっか。そういう考え方もあるのか……」
「お化けといっても、そこに魂があるわけじゃないんだろうけど」
自信なさげに言いながら、クァニャンはテーブルに置いた杖から手を離して、代わりに僕の服の袖を指でつまんだ。くいくいと引っ張って注意を引いた彼女は、頭ひとつ分低いところから僕の顔を見上げている。
「私なら――」
彼女は言いかけて、けれども口を噤んだ。
「――ううん。やっぱりやめておく」
さっと目を伏せて、彼女はそっぽを向いてしまった。
「ええ? いや、そこで止められると気になるんだけど……」
「……自分が死んだあとのことを口にするのは、縁起が悪いから」
「クァニャンにはお化けになってでも伝えたいことがあるってこと?」
「うん。でもやっぱり、言いたいことは生きているうちに言うことにする」
「確かに、それが一番なのは間違いないね」
当然といえば当然の結論につい喉をくつくつと鳴らしてしまう。
隣のクァニャンはますますスンとした雰囲気。
「まぁ、信じる信じないの問題と、お化けが実在するかとは別の問題なんだろうけど」
「信じてる人が誰もいなくても、本当は実在するのかもってこと?」
「そうそう。なにしろ『魔法』が実在することだって、惑星ウーサに来るまでは
知らないということは、存在しないということではない。
地球人もウーサ人も知らないことが、この宇宙にはまだたくさんあることだろう。
「もしお化けが実在するなら、どうしてそれを見たり聞いたりできないのかな?」
「うーん、……実は、お化けの世界には慣性の概念がなくて、魂は肉体から飛び出した瞬間に
「なにそれ?」
「死後の世界は僕らの世界と物理法則が違うんだろうね」
「適当に言ってる?」
「死んだあとのことなんて、適当に喋るくらいがちょうどいいと思わない?」
………
……
…
「いや、なんの話をしてるんスか……」
キャットウォークから降りてきた安藤はあからさまに呆れた表情を浮かべていた。
「会議室のときの話って、そういう方向じゃなかったっスよね?」
「あれ、そうだっけ?」
「『物理的な破壊が通用しない相手にどう対処するか』みたいな、けっこう実利的な話題だったと思うっスけど」
「そういえばそんなことを言ったような気もするね」
ジト目で見てくる安藤に軽く肩を竦めて返す。
彼の指摘のとおり、お化け云々の話は単なる連想ゲームだ。マハナの説明を聞いた九十九がホラーだとか言い出すから、思考がそこに引っ張られただけに過ぎない。
もちろん、今回の作戦のターゲットである北の地の災獣がお化けというわけでもなかった。説明されたシチュエーションがそれっぽかったというだけのことである。
現時点では、ターゲットとなる災獣の正体は謎に包まれている。
吹雪の中から生還した少数のユミツ軍人の証言から、かろうじて『おそらく何かがいる』と推測されている程度だ。実際のところ、止まない吹雪に包まれた北の地にどんな怪物が潜んでいてもおかしくないし、逆に災獣など存在せず別のなにかが異常気象の元凶であるという説も、完全に否定されているわけではなかった。
……とはいえ、ユミツ国の北部一帯という広範囲の環境を激変させ、その支配領域を今も拡大し続けるような規格外の存在ともなると、やはり災獣こそが最有力の容疑者になるだろう。
となれば当然、次に考えるべきは、いかにしてその災獣を討伐するのかということになる。
イブキとアケソラ、2機のステラ・コネクタを派遣することは決定されているが、投入する戦力はこれで十分なのか。
楽観的かもしれないけれど、おそらく火力は足りるだろう、と個人的には考えていた。
これまで対峙してきた災獣たちはいずれも強固な装甲と莫大な生命力を持っていたが、なんだかんだで討伐には成功してきている。適切なポイントをしっかりと狙えば、ステラ・コネクタの武装が災獣に対して有効な威力を発揮することは確かな事実だ。
もちろん、北の地の災獣がこれまでのターゲットよりも高い防御力を備えているという可能性はある。しかし、これまでのケースで共通していた災獣の弱点――膨大な生体魔力を蓄えている体内の器官――は、次のターゲットにも存在すると予測されていた。
ユミツの国土の4分の1以上を吹雪に閉ざすというのは、どんな魔法を使っているにしても、生半可な魔力の量では到底叶わない規格外の所業だとわかっているからだ。
「つまり理屈としては、表面的な装甲がいくら強固だろうと、その弱点を撃ち抜くことができれば災獣の討伐は可能ということになる。あくまで、過去のケースから導かれる推測ではあるけれど」
「……まぁ、ぶっちゃけ、そういうことを抜きにしても、アケソラの火力なら大抵の物理的な防御はまとめてブチ抜けるとは思うっスけどね」
「それはそう」
後頭部を掻きながら安藤が放った言葉に、僕もクァニャンも揃って頷いた。
身も蓋もない話ではあるが、それも事実である。弱点がどうのこうのと考えなくてはいけないのは、僕とクァニャン、そしてイブキの側だけの問題だ。
九十九とミトが乗り込んだアケソラは、ステラ・コネクタで運用可能な兵器の枠を軽く飛び越えて、常識はずれの攻撃性能を発揮できることがすでに判明している。
天から無数の雷光が降り注ぎ、荒々しく大地を蹂躙する。そんなこの世の終わりのような光景を生み出せるのは、それこそ災獣でもなければ不可能だったろうに、と……。
イブキとアケソラの観測機器が記録した戦闘データに目を通した老将軍は、皺だらけの顔をひときわ顰めて、驚愕と畏怖、それから少なからぬ快哉の混じった声でそう言っていた。
「ともかく、弱点を狙うにせよ過剰火力で薙ぎ払うにせよ、こちらが警戒すべきなのは、物理的な装甲
「前回の作戦がまさにそのパターンでしたもンね」
「空間を『圧縮』して弾丸を受け止めるなんて、反則もいいところだよ」
努めて軽い口調でそう言って、僕はわざとらしく両手を挙げた。
結果としては勝っているのだから、今さら深刻な空気にしても仕方ないだろう。
「……技術屋としては、ああいう原理不明の技術でこっちの武装が防がれるっていうのには、かなり思うところがあるっスけど」
その一方で、安藤は露骨に渋い顔。
一応、『圧縮』によって引き起こされる物理現象そのものは既存の科学技術でも説明できるものなのだが、その現象を成立させるための
たぶん安藤の頭の中では、空間圧縮を発生させるために必要なエネルギィの概算やら科学的な手法で同様の現象を起こすことが可能なのかの試算やらが、ぐるぐると出口もなく渦巻いているに違いない。
「それを言ったら、僕らの『跳躍』だって既存の科学に真正面から喧嘩を売ってはいるけどね」
「……まぁ、それもそうなんスけど」
苦笑いを浮かべながらそう言うと、安藤がこめかみを指で押さえながら口をへの字にした。
「つまり、ケイナインたちが気にしているのは、『魔法』を使った防御のこと?」
僕らの会話を横で聞いていたクァニャンがそう尋ねてきた。
「そういうことになるね」と僕が頷くと、彼女は難しい顔で言葉を続ける。
「一口に『魔法の防御』っていっても、色々なパターンがあるし……。なんにでも有効な対抗策があるってわけでもないよ」
「うん、そこのところについて、クァニャンの考え方を詳しく教えてくれるかな」
そう促すと、彼女はほっそりとした指を自分の白い顎に当てた。
「たとえば……、一般的に『防御』と呼ばれる魔法だと、生体魔力を使って外部からの衝撃を緩和するものになる。比較的簡単な魔法ではあるけれど、強度と耐久力は保有する魔力の総量に大きく依存するから、使用者ごとの個人差が激しい。対策もシンプルで、威力と手数で力押ししてしまうのがもっとも有効だね」
「それはどうして?」
「さっきも言ったけど、強度と耐久力が魔力に依存するから。つまり、威力の高すぎる攻撃に対しては『防御』による軽減が追い付かないこともあるし、そうでなくても攻撃を受け止めるたびに『防御』そのものの耐久力が減少していくし、魔力もどんどん消耗していくことになるから」
なるほど、確かにシンプルだ。
要するに使い捨ての防御装置のようなものである。性能には個人差があるが、使い続ければいずれは壊れるかエネルギィ切れに追い込まれてしまうわけだ。
クァニャンはこの『防御』を、バイクでの移動や『飛行』の際にも使っていたはずである。彼女が『比較的簡単』と言うくらいなのだから、おそらく軍人に限らずユミツでは広く普及している魔法なのだろう。
「これについては、イブキの通常武装でも対応できそうかな。他には?」
「よく知られているものだと、いわゆる肉体強化の魔法もかな。こっちは魔法で身体能力を向上させたときに、結果として身体の耐久性も向上するっていうものだね」
「対策は?」
「おおむね同じ。あくまで身体が頑丈になっているだけだから、受け止めきれない攻撃もあるし、ダメージもどんどん肉体に蓄積されていく。それが限界を超えちゃったら、もうそこまでだね」
これも物理的な武装で対処できる範疇だ。
……災獣のような巨大生物が自身の肉体を魔法で強化する可能性があるということ自体、ゾッとしない話ではあるけれど。
「それ以外ってなると、自分の得意な魔法を防御に転用するって話になるから……。相手の魔法に合わせて対策を考えるしかなくなっちゃうね」
「つまり、実際に相手と向かい合ってみないとわからない、と」
「事前に敵の情報がわかっていればいいんだけど、今回はそうもいかないみたいだし……」
結局、出たとこ勝負ということになるのか。
やはり『魔法の防御』全般に有効な攻撃手段なんて都合の良いものは存在しないわけだ。少し残念だけど、まぁそこは仕方ないだろう。
「たとえばっスけど、どんな攻撃も通用しない無敵の防御方法、なんてのはあり得るんスか?」
「たぶん、難しいと思う。どんな魔法を使うにしても、最終的には現実の物理現象として形になるわけだし、なにかしらの抜け道があるっていうのが通説。それにどんなに強力に見える魔法でも、保有する魔力を使いきればその時点で効果が失われるっていう限界もあるしね」
「さっきのお化けの話じゃないけど」
ふと頭に浮かぶものがあって、僕は口を開いた。
「もともとの肉体を魔力に変換するっていうことは可能なのかな? 僕たち地球人類は魔力を見ることができないし、物理的な方法でそれを捉えることもできないから、ある意味で無敵に近い状態になるんじゃないかな」
その問いに、クァニャンは目を瞬かせて、しばらく考え込む。
「ええと、そもそも魔力はエネルギィ。持ち主の意思や精神に影響を受けることはあるけれど、それ自体にはっきりとした思考能力があるわけじゃない。だから、ケイナインの言うようなことをしたら、たぶん使用者の人格が消えてなくなることになる。……そんな魔法は聞いたことがないから、推測になるけれど」
「魔力を基にしたエネルギィ生命体なんかは存在しないってこと?」
「それはもう
クァニャンは眉を斜めに傾けつつも小さく笑みを浮かべていた。
彼女の話を信じるなら、少なくとも『魔法のお化け』を相手にする羽目になる可能性は考えなくてもよさそうか。
「もし、魔力に生き物のような振る舞いをさせたいのなら、別に身体を用意する必要があるかな」
「身体というと……」
「魔力をエネルギィにして生き物っぽい動きをするように『紋様』を刻んだ素体のこと」
「紋様っていうと、君の杖とかバイクみたいな?」
「そう。だから区分としては、そういう素体も魔法の道具っていうことになる」
すでに調整を終えたらしい杖の表面を撫ぜながら、彼女は言葉を続ける。
「回路の精密さ次第だけど、それなりに複雑な動きをさせることもできるから、
「生きた動物の代わりに、魔法の道具を飼育するってこと?」
「本物じゃなくても動物と触れ合いたい、っていうのは普遍的な需要があるから。伝統的な文化としての意義もあるし……、専門の
クァニャンの説明を聞いて、僕と安藤は顔を見合わせた。
「……それはまた、どこかで聞いたような話だね」
「チキュウにも同じような道具があるってこと?」
ぽつりと口を出た僕の呟きに、クァニャンが不思議そうに首を傾げていた。