人造世界と文明記録   作:shiwori

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第1話 『超越者』

いい加減、威力の問題じゃないって気付かないかなぁ。

 

数十メートル先で、周囲を焼き尽くさんほどの熱量を放つ火球が形成されていくのを眺めながら、ラニアケアは内心そう思った。

 

彼女は今、大陸西方の大国セレジトール王国の王城に併設されている闘技場で模擬戦をしていた。

相対するのはこの国一番の宮廷魔導士、ユーリ・ハーヴェイ。

炎を連想させるような赤々とした髪色が特徴的な好青年だ。

あの火球も彼の火属性魔術で生み出されている。

 

そんな、模擬戦にも関わらず致死性のある攻撃魔術が放たれようとしているなか、今まで会話をしてこなかったユーリが口を開く。

 

「さてラニアケア。君がどんな手を使って今まで僕の攻撃を避けて来たのかは分からないが、この状況では何も出来まい。君の詰みだ。投降をおすすめするよ」

 

見ると、彼女の周囲には無数の光弾が彼女の動きを封じるように配置され、かつその一つ一つが接触起爆型の滞空炸裂魔術で付印(エンチャント)されていた。

爆発の威力自体弱くはないため、少しでも動けばこの檻自体が致命傷を与えてくるような入念な責めの一手。魔術で回避しようにも、魔力に反応して起爆する光弾も散りばめられている為に、それも難しい。並の相手ならこの時点で降伏するところだろう。

 

もちろん、相手が常識的な強さをしていればの話だが。

 

ラニアケアは、この状況ですら余裕綽々といった様子で彼の勧告を拒否する。

 

「はっ。冗談きついね。この程度の(つぶて)ごときで動きを封じれたと本気で思ってる?私は未だ健在。この模擬戦のルールは、私が死ぬか君が戦闘不能になるかしないと終わらないんだから、無駄口叩かずさっさとそれ放って終わりにしなよ」

 

半ば相手を煽るような言い方でユーリに攻撃を催促。彼はその適当な物言いに僅かに眉を潜めたものの、深くは追求せず、静かにその必殺の一撃を放った。

 

「クィオ・ルークス」

 

中心温度が1万ケルビンを超えるその火球は、自らの名前を読んだ術師の意思に応えるように、敵へと飛翔していく。

そうして彼の手元から離れた火球はラニアケアの周囲にある光弾を起爆させながら彼女へと迫り、()()()()でそのエネルギーを開放した。

 

「ッ!」

 

想定外の挙動に完全に不意を突かれたユーリ。直ちに周囲に魔力で練り上げた障壁を展開して威力を減衰させその場を離脱しようとするが、火球の膨張速度は音速を軽く超える。その一瞬の隙が勝敗を決する。

 

凄まじい熱を大気へと供給することで起きた気体の急膨張は、闘技場の足場を粉々に破壊し、彼の即興で練り上げた障壁すら突破して、その体を20メートル近く吹き飛ばす。

何度か地面でバウンドしてようやく止まったころには、既に彼は意識を手放していた。

 

そんな彼が意識を失う直前に見たのは、あの爆発に巻き込まれながらもなぜか無事な、僅かに残った足場の上で悠然と佇んでいるラニアケアの姿だった。

 

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