森の肉の怪物   作:ななば

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お待たせいたしました、本編進めます


邂逅、迷宮、討伐編
牛頭人身


 

 

 

 

ダンジョン十六階層。

多くの冒険者が苦戦し、その命を落とす最初の死線(ファーストライン)すら超えて、その()()の冒険者は進んでいた。

片方は身長が高く、金髪の髪をもち、体格の良い妖精(エルフ)。もう片方は人形の様に美しい顔を持つ妖精(エルフ)だ。

その身長は低く、体格は華奢で、美少女の様に見える。

少年の相方と思われる冒険者ならまだしも、戦うなど考えられない見た目。

 

 

 

 

 

「ブモォ!?ブゴォォ!?」

 

「────これで八体目ッ!」

 

 

 

 

 

────そんな少年が、目の前の怪物(モンスター)を蹂躙している。

中途半端に短い銀の短剣(ショートソード)を巧みに扱い、モンスターの急所を的確に削り取っていく。

少年はたちまちに周辺のモンスターを駆逐し終え、少し疲れた様に息を吐き、自身の仲間の名を呼ぶ。

 

 

「……そっちは終わった?───【必中の精眼(ブルズアイ)】?」

 

 

「おおっ!!勿論、【銀の剣撃(シルバー・スパーダ)】」

 

 

少年の名は、シア。

銀の剣撃(シルバー・スパーダ)】の二つ名を持つ冒険者である。

 

 

 

 

 

 

 

 

シアにとってその出会いはまさに偶然であった。

シアがランクアップする要因となった小竜(インファント・ドラゴン)との死闘。その一戦から知り合い、こうしてパーティーを組むまでの仲になった。

シアというエルフは同じ同胞に酷い()()()()を持っていたが、それすら薄れてしまうほど、シアは自身の仲間、【必中の射手(ブルズアイ)】ことケインを信頼しきっていた。

 

 

「しっかし、シアがこんな早くレベル2になるなんて思わなかったぜ…」

 

「僕もだよ…神様(ハルティア様)にも驚かれたし……」

 

 

ダンジョンを進みながら、レベル2になった後の日々を思い出す。

大変だった、いや本当に。いつもと同じ道を通りダンジョンへ向かうと、道行く冒険者が此方をチラチラと見てくるのだ、人種(ヒューマン)妖精(エルフ)は興味深々で見て、アマゾネスは何処かいやらしい目つきで見てきたような気がするし、神々は何やらおかしな事を言っていた。

 

 

『おっふ、噂のエルフきゅんが想像以上に激マブだったでござる』

『ハァハァ、君、可愛いねぇ、僕の眷属に────』

『嘘…女神である私よりも美しい……?』

 

 

 

大体こんな事を言っていた気がする、ほとんど何を言っているか分からなかったが、()()()とはどういう意味なのだろう。きっと僕達には推し量れない高尚な物なのだろう。

 

それにエイナさんにも驚かれたし、なんならその場でステイタスも見せた。

エイナさんから見てもこの伸びは異常なようで、驚いたり、ううんと唸ったり、普段では考えられない様子だった。

 

 

 

『……むぅぅ…流石に早すぎるけど、レベル2としてのステイタスは順調すぎるくらい伸びてるし、本人の気持ちを無下にはできない………分かりました────中層へ降りる事を認めます』

 

 

『あ、ありがとうございます、エイナさん────』

 

 

 

『────ただし!!必ず仲間を集めてパーティで潜る事!!流石にソロは許可できないですよ!』

 

 

 

 

ということもあり、こうしてケインと一緒に中層に潜っているのだ。

本来なら二人だけで無く四、五人程のパーティを組んだ方が良いのだが、自分自身こうしてケインと連携を取るだけでやっとであるし、臨時のパーティを組んだ所で連携が取れず戦闘がぐちゃぐちゃになるのが目に見えていたのでケインとだけにしている。

 

「……お」

「なんだろう?……ここ」

 

 

そうして進んで行くうちに、幾らか開けた場所に出た、今まで進んできたダンジョンが通路だとするならば、ここはその終点にある広場の様な感じ。

直後、()()()と岩肌から音が聞こえた、壁の中で何かの生き物が胎動する様な、壁の中を掻き分けて出てくる様な。

 

「────ッッ!?」

 

瞬時に剣を構えて、ケインは既に魔法詠唱の準備を始めている。

 

 

 

 

 

────そして、現れる影。

逞しく、大きい()()の角に凶悪な牛の頭、その頭に見劣りしない大きな人間の体躯。

異常なほどにパンプアップした肉体をブルブルと震わせ、プシューと口の間から空気を吐き出し、此方を見据え────そして。

 

 

 

ブモォォォォオオ────!!!

 

 

「────うるせぇ!?」

「────うぐ……」

 

 

 

 

 

聞く者の肉体を強張らせる獰猛な咆哮(ハウル)。────中層を代表するモンスター。ミノタウロスがそこに居た。

 

「【肉食複製(メーサ・ルヴァ)】!!」

 

 

「ッ────つ、『突き進め、空を切り裂き、矢よりも速く、我が難敵を打ち滅ぼせ────ヒュストルカ』────」

 

 

「モォォォ──っ!!」

 

ぐおんと、ミノタウロスのその巨大な体躯が、()()()()()()()()。実際に大きくなった訳では無く、しかしその怪物の身体は大きく駆け出している、上層の怪物よりもずっと速く、ずっと強く踏み込んで。

 

「───あっ」

「ブモォ」

 

実に容易に、ケインの目と鼻の先まで距離を詰めた。

詠唱すら間に合わない、あまりにも上層とは違いすぎる。そのままミノタウロスはケインに向かって大きく振りかぶる、その獣の腕をより一層パンプアップさせ、ギリギリと音が出るほど握りしめ、その拳を放つ────

 

 

「ブモモォォ!?───ヴォ、ヴォ!?」

瞬間、ミノタウロスの拳から()が飛び出す。

いや違う、飛び出したのではなく突き刺さっている、何処らかともなく発生した骨によって。

意味も分からず悶え苦しむミノタウロス。もはやその目にケインを見据えていない。────つまりは無事に、ケインを救ける事が出来る。

 

「────ぐぅ、はぁ、はぁ、あぶな、危なかった!!あ、ありがとなシア」

 

「ん、大丈夫、それよりも構えて…」

 

「ヴォォォォ…」

 

拳に突き刺さっていた()の骨を抜き。再度僕等を見据え、その顔に憤怒を宿すミノタウロス。

 

「────来る」

 

 

 

冒険者と怪物(ミノタウロス)の戦いは、まだ始まったばかりであった。

 

 






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