森の肉の怪物   作:ななば

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シア君のイメージ絵を描いてみました。適当に描いた物ですが良かったら見て下さい。


【挿絵表示】



邂逅

 

 

 

 

 

その怪物は怒っていた。

 

目の前で剣を振るう小さな人間、本来ならこの手で簡単に殺せる、そんな矮小な存在。

そのはずなのに────

 

「しゃあッ!!」

 

「ブモォォ!?」

 

今斬られているのは、自分だ。殴ろうとすれば躱され、咆哮で怖気付かそうとすれば顔を切り裂かれる。()()()()を殺そうとすれば上手い具合に阻止してくる。ずっと自分に張り付いてくる、人間。

 

そんな人間に、酷く苛ついていた。

 

大体なんだ?なんだと言うのだ?あの()()()は?

小さな人間から生えてくる腕や鋭い骨。アレが自分の行動を悉く邪魔している。あんなものは見たことが無い。

あんな気味の悪い、煩わしい力は見たことが無い。

 

「ブゥゥ……ブモォォォォォ!!」

 

いい加減、この人間を殺さなくては。

そうしなければ、怒りでどうにかなってしまいそうだ。

 

────怪物はより一層腕に力を込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミノタウロスがシアを見据える。

その目にはより狂気が宿り、顔には強い怒気が刻まれている。しかし対照的にシアの顔には恐怖が()()()()。焦ることも無く、平静を保っている。

 

びゅんびゅんと、風切り音が聞こえるほど速く、鋭い拳をいなしながら。

 

「よっと」

 

「ブモォ!?オオ!?」

 

ザクリと、ミノタウロスの片腕を斬り飛ばした。

着実に与えてきたダメージが、遂に目に見える形で表れた。

 

(よし、勝てる!!)

 

片腕は潰した、ダメージも与え続けた、これ以上ないほど、有利な状況。

加えて。ミノタウロスは()()()()()()()()()

いいや。

()()()()()()()()()()()

怒りか、蓄積したダメージがそうさせるのか。いずれにせよケインへの注意を逸らせた。

自分はいくら傷付こうが直ぐに()()

 

 

治るとは言っても、それは()()()()。シアが感じる痛みや苦痛は変わらない。

骨や腕は、既に何回もシアの体を貫いている。

この戦法は有効かもしれないが同時に精神を大きく削る行為でもあった。

しかし、そんな戦い方が勝機を切り開いた。

 

 

「これでッ!終わり────!」

 

「ヴゥ!?……モォ…!?」

 

シアの剣が正しく銀の軌道を描き、一息にミノタウロスの首を刎ねた。それは誰が見ても致命の一撃。斬り飛ばされた首はゴロゴロと地面を転がって、肉体と共に塵となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「な、なぁシア……痛く無いのか…それ」

「?いや、痛いけど…」

 

戦闘が終わり、合流したケインはそう言った。

言われて見てみれば、なるほど確かに。シアの体の傷は治りつつあるが所々再生が完全では無い。全身が血塗れであるし、何度も骨を生やした腕に至っては皮膚が破け、筋繊維が見えている。

 

「な、ならなんで平気な顔してるんだ!?」

「───()()()()()()?それに死ぬわけじゃ無い、から?」

「───ッッ…!?」

 

ケインは絶句した。慣れているからと、目の前の子供の同胞はそう平気そうに言ったのだ。

冒険者にとって、傷は当たり前だ。モンスターとの戦闘、他冒険者達との諍い。あらゆる場面で傷を負うだろう。だがそんな物子供が慣れるものでは無い。

そんな物に慣れてしまうということは、シアにとって日常だった。ということだろう。

シアと出会い、小竜(インファント・ドラゴン)を倒した。()()()の様なことが、日常だったのだろう。

 

 

「さ、先に進もう、ケイン」

「…あぁ…わかった…」

 

(俺も、強くならないとな…)

子供にあんな無理をさせる訳にはいかない。自分は大人で、シアは子供だ。幾らレベルが同じでも、それは変わらない。

痛みに慣れてしまった子供、ケインにはそんなシアの姿が。何処か酷く、悲しく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉ……すげぇ…」

「……確かにすごい…」

ダンジョン十七階層。十八階層へと続く広間、通称【嘆きの大壁】そこには階層主【ゴライアス】が出現する。

本来、階層主であるゴライアスは強いモンスターだ。

それこそ、他のモンスターとは比べ物にならない程に、その巨大な体躯は全てを見下ろし。丸太を何本も束ねた様なその腕は羽虫のように冒険者達を薙ぎ払う。まごうことなき強敵である。

だが、目の前のこの場面に関して言えば、ゴライアスは弱者であった。

 

 

「……ふっ」

「ヴゴォォォォ!!?ゴォォォォ!?」

 

そう、ゴライアスとこの少女の戦いに関して言えば。

 

その少女は長い金髪を靡かせながら、容赦無くゴライアスの体を斬り刻んでいく、ゴライアスの必死の反撃も意に介さず、更に追撃。

驚くべきところはゴライアス相手にたった一人で戦っていることだろう。

 

「あ!あの冒険者、知ってるぞ!確か【ロキ・ファミリア】の────【剣姫】!! レベル4の冒険者だ!」

「あれが…レベル4」

 

速すぎる。シアは単純にそう思った。

レベル2になった自分の何十倍だ?あの速さは?

目で追うのがやっと。それ程の速さ。

それにあの剣捌きも見事だ、技も駆け引きも、格の違い過ぎる動きだ。

 

 

「ゴァァァ!?……」

 

そう見ていれば、やがてゴライアスが負けた。

迷宮の巨人は倒れ伏し。他のモンスターと同じように塵となって消えた。

冒険者達が徒党を組んでやっと立ち向かえる程の強敵が、迷宮の孤王(モンスターレックス)が、たった一人の少女に負けたのだ。

 

 

「……誰?そこに居る……」

「あっ…!?バレてるのか…」

「!……」

 

もしかして初めから気づいていたのだろうか。

ゴライアスを倒して直ぐ、此方へと足を運んできた。

 

「い、いや俺、【必中の精眼(ブルズアイ)】って言って、決して怪しい冒険者じゃ────」

「────【銀の剣撃(シルバー・スパーダ)】?…」

 

「……え?」

 

 

ロキ・ファミリアの第二級冒険者、レベル4の少女────アイズ・ヴァレンシュタインが何故か、僕の事を知っている。

 

 

 

 

 





文字数を多くしたいのですが、中々難しい……
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