森の肉の怪物   作:ななば

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肉と風

 

 

 

 

 

 

 

ダンジョン十八階層。

ダンジョン十七階層の一つ下の階層であるそこは、『迷宮の楽園(アンダー・リゾート)』と呼ばれる階層。楽園という名の通り、広大な森や澄んだ湖。階層全体に水晶があり、地上と同じように朝と夜が存在する。

それだけではなくモンスターが発生しない安全地帯(セーフティポイント)でもある。

 

そんな階層にシア達は降りていた、ゴライアスを倒した少女に連れられて。

 

 

 

「……会いたかった…ずっと」

 

目の前の少女────アイズ・ヴァレンシュタインはそう言った。

彼女の顔に敵意などは一切見られず、むしろ逆。此方を興味深そうな目で見ている。さっきまでゴライアスを戦っていたのが嘘みたいだ。

 

「おいおい……シア!ちょっとこっち来い!!」

 

ぐいっと、隣にいるケインに引っ張られ、向き合う形になる。

 

「なぁ、シア!────剣姫と知り合いだったのか!?」

 

「し、知らない知らない!?初めてあったばかり…」

 

「会いたかったって!!確かに会いたかったって言ってたぞ!?」

 

「本当に知らないんだってぇ…….」

 

「?」

 

二人で話し合いをしてるのを不思議そうに見つめるアイズ。しばらくそうやって問答を繰り返していたが、遂に痺れを切らしたのか、アイズはその口を開いた。

 

 

「…フィンも…リヴェリアもガレスも、知ってる、よ?」

 

「「ッッ!?」

 

「【銀の剣撃(シルバー・スパーダ)】は私の最速記録(レコード)を超えて世界最速(ワールドレコード)になった…から」

 

絶句している二人を尻目に、立て続けに言葉を続けるアイズ。一方ケインはアイズの話を聞いてなるほど確かにと、一人納得していた。一緒にいると忘れそうになるが、シアは冒険者になってほぼ二か月でレベル2になった冒険者だ。 

 

本来レベルというのはそう簡単に上がるものでは無い、モンスターや対人戦を積み、経験値(エクセリア)を稼いで、ステイタスを上げる。

しかしステイタスを上げるだけではまだ()()()()。そこから更に()()を成し遂げる必要がある。

 

偉業とはつまり自身の限界を越えること、神々さえも驚き、讃える物事を成し遂げることだ。

並大抵のことでは無い、過半数の冒険者がレベル1で停滞する理由で、レベル2以降が上級冒険者と呼ばれる理由でもある。

そんな物をたったの二か月で達成したのだ。

そう考えればオラリオの二大派閥の片方、ロキ・ファミリア。その三幹部がシアを知っていても何も不思議では無い。

 

 

ケインが一人納得してると、アイズが再び喋り出す。

 

「…だから銀の剣撃(シルバー・スパーダ)、私と戦って欲しい、お願い」

 

 

シアとケインの二人は、再び絶句した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言えば、シアは断れなかった。ロキ・ファミリアの団員。しかも将来第一級冒険者になることを期待されている剣姫の頼みを、木端の冒険者二人が断れる訳なかったのだ。

 

 

「やっ!はっ、ああ!!」

 

「ふんふん……」

 

金属の斬りつけ合う音が響き渡る。どちらも150C(セルチ)程の身長で、まだまだ遊び盛りの子供の様に見える。

だが、その子供達が振るう剣の太刀筋は子供のチャンバラと言えるほど可愛い物ではない。

右、左、唐竹割りと見せては逆袈裟に振り上げては時折蹴りを交える。

その動きのどれもが実践で通用するほどに練り上げられた太刀筋だった。

 

攻めているのはシア、涼しい顔で、または興味深々といった様子で受けているのはアイズ。攻めているシアが押していると思いそうなものだが、実際は逆。終始押しているのはアイズであり、押されているのはシアだ。その証拠に次第にシアの息が切れ始めていた。

 

「はぁ…は、はぁ…」

 

「…終わり?────じゃあこっちだね」

 

「────ッッ!?」

 

瞬間、()()が吹いた。

それは突撃してきたアイズだった。一度の鍔迫り合いで三度は斬りつけている様な、シアのとは比べ物にならない蓮撃。

 

(ただの斬りつけがなんて威力!?…何回耐えられる!?)

 

「ぐぅぅぅッッッ!?」

 

苦しそうにアイズの剣撃を捌くシア。その端正な顔を歪ませて、額には玉の様な汗を流し。どんどん後退していく。

 

(これが!…レベル4!!)

 

シアはアイズを甘く見ていた訳ではなかった、むしろ今まで戦ったどんなモンスターや相手よりも強いとしっかり感じていた。なのに、()()()()()()

レベルの差とはここまで大きいものだったのか。

目の前の疾風を相手に戦慄さえしていた。

だから使うことが、至極自然に選択肢に入っていた。

あの────()()()を。

 

 

「────肉食複製(メーサ・ルヴァ)!!

 

 

途端にシアの脚元から現れる、いや現れるより()()()の方が正しい。その生えた片脚が一瞬でアイズの脚元を掠め取り。体制を崩したアイズに、渾身の力で短剣を振るった。

 

 

「───え?あっ!?きゃあぁ!!」

 

銀の剣撃が、アイズの華奢な身体を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(凄い…凄いすごいすごい!!)

 

アイズは吹き飛ばされながらも、心の中で相手に対しての称賛を送っていた。

レベル2で、ここまで自分と斬り合えるだけでも凄いのに、更には吹き飛ばしてしまうなんて予想もしていなかった。

レベルも力もスピードも、圧倒的に自身よりも低い、そのはずなのに。

 

────どうしてそんなに早く強くなれるの?

 

不意にアイズの頭に、その一言が過ぎる。

その言葉は銀の剣撃(シルバー・スパーダ)とあった時、そう聞いてみようと、ずっと思い浮かべていた言葉だった。

だが、剣を交えてみてわかった。彼は────()()()()()

戦い方が、駆け引きが。

 

(…君と戦って、良かった…)

 

ただただアイズはそう思う。自身には無い明確な強み。それを学んだ時。更に強く。更に高みに行ける。

もっと、()()()。アイズの頭には、最早それしか無い。

相手は強さの一端を見せてくれた。────なら、もっと引き出すには?

 

簡単だ。こっちも()()に応えれば良い。

 

 

「────『目覚めよ(テンペスト)』」

 

瞬間、風が私に吹く。

いつも使う、攻防一体の風の鎧。

 

「──『エアリ─」

そのまま使おうと詠唱をして、それで────

 

 

 

 

 

 

「────やり過ぎだっ!!馬鹿者!!」

 

 

 

ひどく聞き覚えのある声が響いて、そのまま頭を殴られた。







戦闘描写鬼むずいです…これで合ってるのかな…?
ちなみにアイズはシア君がレベル2だと知ってるのでちゃんと手加減してますただ予想以上にシア君が強かったので嬉しくてヒートアップしちゃった感じです。
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