今回はグロ描写注意です
「あ゛……う゛ぐぅ…」
身体中に走る痛みに、呻き声をあげながらその身体は地面に倒れ、身体中が土に汚れた。
地面に倒れた少年を見下すのは、耳の長い人種────
少年を見る瞳は暗く、蔑むような強い悪感情。その顔は怒気を宿しているようにも見え、同時に何かを忌避しているような顔にも見えた。
男は、そうだ。自分に唯一優しくしてくれて話し掛けてくれた女の子。あの子の兄だった。
そうか、
「呻くな、
「──いぎぃ゛ぃぁあ゛っ!?」
傷だらけの体に、蹴りで更に追撃を加える男。少年の貧相な体は痣や切り傷が、執拗なまでに刻まれていた。しかし、驚くべき事にその傷は徐々に塞がっていく。自然治癒などというスピードでは無く、まるで回復の効果を持つ魔法がかけられているかのようだ。
「フン、つくづく不快だ…貴様が生やす腕も足も、すぐに再生する力も…とても我々と同じ種族とは思えん……」
そう言った瞬間、更に男の顔に怒りが宿る、その怒りの矛先は無論──シアだ。
「あ…?う゛ぇ───ッ!?」
全身の痛みに悶えながら、薄く開いた瞳で、シアは
男の持つ鋼の剣が───赤い。
赤い剣先はそのまま顔に近づいて。
「やだッ゛いやああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!?」
無情にもシアの顔に突き刺さった。丁度眼球を貫いた。シアの顔の肉を、眼球を焼き焦がして、熱気はより一層、その勢いを増していた。
「なぜだ!!何故お前が死なずに、父と母が死んだんだ──!!何故お前は
男は剣を深く差し込み、グリグリと抉っていく、飛び散る血とピンク色の何かは直ぐに蒸発して霧散する。シアの思考は一瞬で圧倒的な苦痛と、狂おしいほどの熱さで埋め尽くされた。
「いだいあづい゛いだぁ゛あ゛い゛!!──どっでぇ゛とってよお゛!!」
熱い痛い苦しい辛い気持ち悪い痛い熱い痛い痛い。
直後、シアの肉がうねうねと蠢きはじめ、大急ぎで眼球と傷を修復し始めた。
剣は更に深く、肉を焼きながら進もうとするが蠢く筋繊維に阻まれ、進めない。何度か抜き差しをしたがこれ以上先には進めない。それどころか、肉が剣を絡め取り、その剣身をぱきりと、へし折った。
男はその余りの異様さに思わず後退りし、シアを罵った。
「ッッ!!不快だ、あまりにも不快過ぎる、こんな怪物が、こんな薄汚い肉が────同胞だというだけでも気に入らんというのに!!貴様の存在が、気高き
薄れゆく意識の中で、シアはその男の言葉を聞いた。
「まったく、お前という奴は…他ファミリアの、しかも自身よりレベルの低い冒険者に対して、無理矢理戦いを挑み、魔法を行使しようとした、だと!!」
「…ごめん、なさい…どうしても戦ってみたくて、──
「言い訳するな。それに謝るなら彼──【
王森の頃。自身を痛め付けた男が言っていた、
シアは
何より、彼女の翡翠色の髪や身に纏う雰囲気などで直ぐに分かった。
「…ごめんなさい、私、君の事をぜんぜん考えて、無かった….」
「───私からも謝罪する、【
リヴェリアが頭を下げた。シアに向かって、
なぜだろう、さっきから、
分かってる、リヴェリア様が悪い訳じゃ無い。自分を傷つけたのは、違う。まったく違う人だ。でも、どうしようも無く震えてしまう。吐気すら込み上がって来た、怖い。怖い。やだ、たすけて。
「なぁシア、リヴェリア様の謝罪をどうにか辞めさせ──シア?」
「──う゛おぇ」
その場に蹲って、吐いてしまう。苦しくて、悲しくて、痛かったから。なんとか吐き出そうとした。でも吐き出せない。頭に焼きついた痛みが、胸にへばりついた苦しみが、どうやっても消えてくれないのだ。
「──っ!?どうしたシア!?顔が真っ白だぞ!?」
ケインが見たシアの顔は真っ青を通り過ぎて、真っ白。その目は塗りつぶした様に真っ黒で何も映してない様に見える。息も絶え絶えだ。
尋常じゃないシアの様子を見て。リヴェリアは息を呑む。そうして少し考えこんで、口を開いた。
「──ッ…彼、どこか具合が悪く見える、早く地上に戻った方が良い…そうだな、私達が地上まで送ろう」
「え!?あ、はいッ!!ありがとうございます、リヴェリア様!!」
そうしてシア達とアイズ達は地上へと帰還した。ダンジョンを上へ上へと進んで行く道中、シアは一言も喋らなかった。まるで死んでいるかの様だった。シアと同じ様にリヴェリアも一言も喋らなかった。その顔は暗く、気分も沈んでいた。
シア達を地上へ送り、夜。
ロキファミリアの
蹲り嘔吐していた姿を心配に思い、一緒に地上に帰還したのだ。その時見た彼の顔。顔は真っ白で、目は全てを飲み込む様な黒色をしていた。あらゆる感情が、表情が抜け落ちていた。
あの顔は見た事がある。心を、魂を深く傷つけられた者の顔だ。モンスターに襲われ、大切な仲間を失った
「──ッ……彼の身に、何があったんだ…」
彼の顔は、それらを何十倍にも煮詰めた様な、暗い感情だった。
歳はアイズと同等、十一歳程であろう。そんな子供が、苦しみを抱えていた。自分では想像もつかないほどの苦痛が、そこにはあったのだ。
▪︎シア君
リヴェリア様を見て目玉グリグリのトラウマが再発した、もちろんリヴェリア様は何も悪くないです。