エースコンバット3 《Re-Sync / 再同期》 作:ing
《存在の羽音(Wings of Esse)》
──世界が、nemoに問いかける。
> 「お前が見てきたのは、記録だ。だが今度は、選べ。」
フィオナのUPEO脱走機が、制式ルート通り“敵”として補足される。
通常なら、UPEO所属機(=nemo)により撃墜。
だが、その瞬間──
大気が撓む。
レーダーに映らない「黒き翼」がフィオナ機とUPEO機の間に突如割って入り、
通信を妨害し、制圧する。
> 「敵性機体、応答せよ。識別不能機──」
「……っ!? フィオナ機が消失、いや……救出されている!?」
そして誰も知らない暗号信号だけが残る。
"ESSE-1 Confirmed / Synaptic Presence Detected"
《秩序の裏側で(The Forsaken Protocol)》 — ルーク・ネイサン視点 —
指令は、簡潔だった。
> 「フィオナ・クリスティアンは裏切り者だ」
「撃墜を許可する。命令に背けば、同様に処理する」
心が凍る。
だが、それでも引き金を引くのは軍人の役目──
そう、GRの一員として、世界の“秩序”を守るために。
……だが、それは昨日まで信じていた物語の話だった。
「……なぜだ、フィオナ。なぜこんなことに」
追い詰めた彼女の機体は、すでに撃墜されているはずだった。
だが今、彼の前には“彼女の機体”が、空を滑るように生きている。
しかも、その影にぴたりと寄り添うように飛ぶ、一機の漆黒の機影──
「……誰だ?」
「識別不能機、応答せよ!」
レーダーはエラーを吐き続ける。
味方も敵も認識できない。
通信は断絶され、秩序は“静かに、崩壊を始めていた”。
次の瞬間、彼のHUDが真っ白になる。
制御を奪われた──そう思ったとき、彼の機体はふわりと動きを止めた。
衝撃はない。敵意もない。ただ、“強制終了”のように。
「……撃たれたのか?」
だが違った。彼は、生きている。
気づけば、戦闘空域の外、雲の向こう。
彼の機体は誰かに曳航されるように、空の“誰もいない場所”へと運ばれていた。
そして無線に、かすかなノイズが走る。
> "記録から逸脱を確認。存在の再定義を開始。"
"Welcome back, L. Nathan. You are no longer protocol."
──誰だ、君は。
この空に“秩序”を与えてきたのはGRだ。
だが、今それを壊してまで、俺を生かす理由は何だ?
フィオナの機体が横を並走する。
あのとき死んだはずの彼女が、静かにうなずく。
そして、その向こうには、再びあの漆黒の機影──
X-49 ナイトレーベン。
「まさか……」
「俺たちは、救われてるのか? 記録の外で──」
彼は、初めて空の“色”を感じた。
灰色ではない、存在の色。
その中で、彼の心は静かに再起動を始めていた。
《存在の羽音(Wings of Esse)》 — フィオナ視点 —
──意識が、沈んでいく。
冷たい液体の中に溶けるような感覚。
けれど、それは死ではなかった。
静寂の中に、ひとつの鼓動があった。
気づいたとき、わたしは“音”を聞いていた。
低く、風を裂くような音。
でもそれはどこか懐かしくて──まるで、わたしを呼ぶ声のようだった。
「……ここは?」
ヘルメットの中で呟いた声は、誰にも届かない。
通信は遮断され、機体は制御を奪われていた。
計器類は異常を示さず、視界にはただ──漆黒の機影。
あれは、見たことがある。
でも、どこで?
記録にも、識別コードにも存在しない。
──X-49 ナイトレーベン。
わたしを撃つはずだったUPEO機は、存在ごと“消されて”いた。
機体は残っているのに、そこに“敵意”がなかった。
まるで、最初から誰も殺すつもりなどなかったかのように。
そして、何も語らない“彼”は、わたしの機体に進路だけを示す。
──その先にあるものは、わからない。
でも、確かに、わたしは「生きている」。
誰かが、わたしの“死”を否定した。
わたしを“存在”として見てくれた。
だから、もう一度だけ信じてみる。
この空を。
この翼を。
そして、わたしを救った「何か」そのものを。
胸の奥に、微かなノイズが残る。
> “Pilot認証……再同期完了。”
“ESSE-1、次の存在を救出せよ。”
──これは、もう“記録”じゃない。
わたしたちが、存在している世界の物語だ。