我が名を叫べ   作:ざむでいん

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INしてみな……飛ぶぞ。
先触れ


ユグドラシルをプレイし始めた割と初期の段階から

モモンガには度し難いフレンドが居た

 

ユグドラシルの全ユーザーから遠巻きにされるほどの独創性を大爆発させ四方八方に鋭角なプレイを続ける、人として結構ヤバめのプレイヤーをフレンド登録してしまっていた

 

プレイ初期の過ちと後悔するほどに

 

幾度となくフレンド解除のボタンとに睨めっこするほどに

 

出会う前に時間を巻き戻したいと思わされたほどに

 

フレンドリストの表示を「ログイン順」にしても

「あいうえお順」にしても、「登録順」にしても

絶対に一番上に来るその名前に辟易させられるほどに

 

基本は温厚なモモンガを長く悩ませたほどに

 

それほどにクセの強いプレイヤーだ

そんな人物が、ユグドラシルのサ終一週間前に

ひょっこりとナザリックを訪れた

 

 

その日の出来事をキッカケに件のフレンドが、よもや

己にとってかけがえのない存在になってしまうなど、ましてや

恋だの愛だのといった単語を引用せざるを得ないような

おやまぁあらまぁな関係にすら発展してしまうなど

 

 

当時のモモンガは、考えたことすらなかったのだ

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

日々ぼっちプレイを続けていたモモンガは

突然送られてきた先触れのメールに驚きながら

絶対に退屈しない相手の訪れを喜ぶべきか

情緒もなく終わりを迎えるかもと悲しむべきか

判断がつかず複雑な心境に駆られたが、来てしまったものは仕方がないと出迎えのために墳墓の入口へと向かう

果たしてそこには、全身を黒く染め上げた『コナンの犯人』とも言える容貌のプレイヤーが見事なジョジョ立ちを披露して待っていた

見た目のテンションに早速ついて行けなくなったモモンガは感情をごっそりと削ぎ落とした声音で尋ねる

 

「お久しぶりですね、どうされたんですか」

「ちょっと会わない間にめちゃんこ他人行儀になったね

モ〜モ〜ン〜ガァ〜!」

 

第一声からダミ声でねっちょりした早口

見た目のテンションと相まって相変わらずクセが強い

 

「ジョジョ立ちしながら

リーガルハイの古美門検事のモノマネするの

止めてもらえます?」

「久方ぶりの再会を祝して、我が名を呼んでくれ給えよ!

勿論、呼び捨てで!大声で!さん、はい!」

「全くお変わり無いようでなんだか安心しました

お元気そうで何よりです、アイシテルさん」

「敬称不要!」

 

隠密、奇襲、暗殺に全振りした

タイマンなら負け知らずの一撃必殺ビルド……

その実態はアストラル種の中でも公では未発見の種族

 

『最古ノ亡霊-ハイエンシェント・ファントム-』

 

回復系全てが下手すると即死ダメージとなるデメリットの大きさから死霊プレイヤーは存在自体がレジェンド級にレア扱いされている……にも関わらず

ユグドラシル始まって以来、常にプレイヤーキラーの上位を維持し続けている生粋の単独PKプレイヤーとは、今、まさに、モモンガの眼の前で様々なジョジョ立ちを披露し続けているその人のことである

 

廃ユーザーにも関わらず廃課金者を嘲笑うかのように完全無課金を貫き、身につけている装備品は全て廃課金プレイヤーからの戦利品

クランにもギルドにも属していない一匹狼のくせにワールドアイテムを25も所持していた時期があり他のプレイヤーたちを戦慄させた事も過去に一回、二回、三回……

その件に関しては当時、アップデートで導入されたばかりのワールドアイテムを全て独占しようとしていたが運営から横槍が入り渋々手放したのだとか。

手放す腹いせにあろうことかワールドアイテムを初心者に配って歩き

モモンガへもタダ同然で押し付けて来たのだから、その時はナインズのクランメンバーたちと共に唖然呆然としたものだ。

当時の出来事は「ワールドアイテムばらまき事件」として

ネットのスレッドで殿堂入りしている

 

そんな感じにユグドラシルいちの運営にとっての頭痛の種、あるいは目の上のタンコブ、つまりはお騒がせプレイヤーの『アイシテル』による殿堂入りスレは、上位ギルドのギルド武器を盗み出しワールドエネミーの足元に埋めたとか、一夜にして某ギルドの全員を暗殺しきったとか、他にも諸々存在するわけだが今は割愛するとして。

 

重課金者からの要望により、運営から課金者優遇のクソ仕様なテコ入れが為され無課金だった彼を含めただでさえ少なかった『死霊』プレイヤーは一時期とんでもない弱体化を余儀なくされ、実質『死霊系』が彼だけになってしまうという事態にまで発展した事もある

プレイスタイルだけでなく種族的にもオンリーワンとなった彼は、それでも根っからのエンジョイ勢だった。

廃課金の暴力などモノともせず新たな戦法を編み出しては目についたプレイヤーを無差別に暗殺する日々を送った

 

斯く云うモモンガも一度だけ彼にキルされている

それこそユグドラシルを始めたばかりで

初めてPKされた時の事……

あまりにも呆気ない”巻き込まれ”キルだった。

「めんごりゴリゴリー☆」と、軽すぎるノリで謝られたモモンガは意味不明な流れでいつの間にかフレンド同士となり

ある日ふと気になって尋ねてみたことがある

 

「アイシテルさんって「敬称不要!」プレイヤー以外で

普段はどんなモンスター狩ってるんです?」

「プレイヤーの命以外狩ったことないけど?」

 

普段はのっぺらぼうの真っ黒黒助で見えないはずの両目にエフェクトを付けてわざわざガン開きにして血走った眼球ガンギマリで即答されたモモンガは心の底からドン引きした

そんな彼のレベルは他のプレイヤーの命で成り立っているワンハンドレッド、他プレイヤーに比べて1レベルの業が深すぎる。

と、まぁそんな感じにPKギルドと名高いモモンガのギルドよりもカルマが深いPKの象徴のような人物だ

 

件のワールドアイテム総取り未遂事件以降、一時期『死霊』プレイヤーが彼だけになった所為で『死霊』そのものの情報も非常に乏しく、ギルメンとPK対策した折にも返り討ちに遭ったぷにっと萌えさんに「無理ゲー」と言わしめるほどだった。

検証しようにも情報を得る前に

ある日、なんの前触れもなく、突然に

アンブッシュで一撃キルされるのだからそりゃお手上げにもなる

 

ベテランプレイヤーからは、彼にキルされた時は「運が悪かった」で済ませなければやってられないほど自然災害のような存在に成り果てていた

PKしても最早ヘイトすら稼がせない彼の存在は

ある種の極地に至ったと言えるのではなかろうか

 

「サ終までの残り一週間

モモンガのギルドに滞在していい?」

「アイシテルさん「敬称不要!」本来は出禁なんですけど

最後ですし、うちに不利益を出さないならいいですよ」

「わぁい!じゃあ早速第一階層から攻略してくね!

玉座の間で待ってて!」

「ぇえ……?いえいえ一緒に行きましょうよ

わざわざ攻略しにいかなくても」

 

何を隠そう、彼―――……プレイヤー名『アイシテル』は

ナザリックから、というか大体殆どのギルドから出禁をくらってる

何故かと言うと隠密からの潜入そして窃盗までやらかすからだ。

斯く云うナザリックも彼による盗難被害にあった過去がある

完成したばかりのギルド武器を誰も気づかぬ間にさらっと外に持ち出され、ワールドエネミーの足元に埋められたのだ

 

当然ギルメンは怒り狂った

 

からの永劫出禁処置だ。

当時ノリに乗っていたナザリックメンバーを怒髪天衝させる、100回キルしても許されない所業だった

とはいえ、それ以降もナザリックにあっさり侵入され、幾度となく本気のかくれんぼが勃発したが結局今の今までナザリック勢は全敗を期している

終ぞ勝利することのできなかった単独プレイヤーが『アイシテル』だった

 

「最短最速で玉座の間まで行ったるから待っちょれ」

「ステルスで突破するつもりですよね?

最短最速って、ワールドアイテムでも持ってるんですか

運営から所持禁止縛りされてたでしょう」

「最後って事で縛り解禁してもらった!

PKしないって条件で!」

「ええ?アイシテルさんから「敬称不要!」PK取ったら

ただコソコソするだけのおっさんじゃないですか」

「そう!だから今は絶賛追い剥ぎプレイ中!」

「それ、相手殺してないだけで

普段とやる事変わってませんよね」

 

ノリノリでポーズを決めるヤベー奴を前に考え込むモモンガ

そんなモモンガににじり寄るヤベー奴

 

「……貴方のインベントリーが今どうなってるのか

考えるだけで恐ろしいです」

「内緒で言うけど、今ワールドアイテム10個持ってる」

「はぁ?!一体どうやって!」

「絶対持ってるって目星つけたギルドの宝物庫から失敬してきた」

「最強にステルスプレイ楽しんでるじゃないですか……

ここまで持ってきた理由は?」

「サ終までお墓で匿ってもらおうかなと思って、袖の下〜

と、なンまったまンごォ〜」

「なんで生たまご持ってんですか……こっそり持ち出したのならバレてないのでは?「と、ア・カ・マムシ〜」出さなくていいですから」

「バカ殿お笑いってレジェンドだよね!

それがさ、勘のいい奴がコイツが犯人!って言い出して」

「言い出して」

「スレッドで『ワイがポッケないないしたお!』って自白したら

なんか一方的に怒られちゃって、ンもー理不尽☆」

「怒られるに決まってるでしょ理不尽の意味調べてこい

そもそもなんで自白するんですか黙ってればよかったのに」

「そっちの方が面白いかなって!」

「それ、エンジョイ勢じゃなくてただの愉快犯ですからね?

……やっぱり帰ってもらおうかな」

「だが断る!」

「それ言いたいだけでしょ」

 

仕方ない、とばかりに肩を落とし背を向けたモモンガはスタスタと歩き出したが背後から付いてくる気配はない

ナザリックの出入り口で足を止め振り返った先には、最初の位置から動くことなく胸元で指先をチョイチョイとつつき合わせながらもじもじするコナンの犯人の姿があった

 

「どうしたんですか」

「…… ホントにお邪魔しても、いい……です か」

「……」

 

度し難い。全く以って度し難いフレンドである。

毎度妙〜なタイミングで遠慮がちになるそんな時、実はマジのマジで真面目なお伺いを立てている時なのだ……と、知っているのはおそらく彼と懇意にしている自分だけであろうとモモンガは考える

めんどくせぇフレンドである。

叱られた子どものようにションと自信なさげに佇むコナンの犯人を冷めた目で見下ろしたモモンガはつっけんどんに言い放った

 

「はよ来いオッサン」

 

なんだかんだで気を使わずに済む

鈴木悟にとっては非常に貴重な存在だ

これまでギルドを散々騒がせてくれた積年の恨みも込めつつの一言だが、黒尽くめのフレンドはぱぁぁあっと頬を染めて花を散らすエフェクトを展開し下手なスキップでモモンガの後に付いてきた

 

「やっぱり持つべきものは友だなぁ!」

「俺はアンタと出遭う前からやり直したいですよ」

「やだなぁこれまで散々俺のことアイシテルって言ったくせにィ!」

「……」

 

ちょんちょんと頬をつつかれ

普段は温厚なモモンガの胸の内にじんわりと殺意が湧く

アイシテルがユグドラシルの全プレイヤーを敵に回す明確な理由がそこにはあった




▼ モモンガとアイシテルのQ&Aコーナー ▼

Q:過去散々煩わされたにっくきプレイヤーを
  わざわざ表層まで出迎えに行った理由は?
A:「どうせ悪さされるなら目の届く所にいてもらったほうがマシだからです」
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