我が名を叫べ   作:ざむでいん

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エ・ランテル初日の夜

街の灯りを遠くに見つけ、初めての大きな街だやほほほーい!と

テンション高めに万歳して残り数キロの距離を全力疾走でもするかと二人でルンルンしていたら後ろからついて来ていたブレイン・アングラウスが突然ぶっ倒れ、呆気にとられてそれを見下ろす事になった

 

「人は疲れるという事を

うっかり忘れてた」

 

「休憩も言わずにまる一日歩いてくれましたね

気骨あるなぁ、この人」

 

「モモちゃんからブレインくんへの好感度が1上がった」

 

「乙女ゲームみたいなシステム導入するのやめて下さい」

 

「ちなみに俺からモモへの好感度はカンストよ!」

 

「……」

 

乙女ポーズを決めながら調子よく言われるが。その割にはアンタのリアル事情話してくれませんよね、と視線だけで訴えてみるも完全武装なスケルトンのしゃれこうべな心情など伝わるはずもない

しかし向けられる冷えた空気だけは的確に感じ取ったテルは

若干たじろぎながらも雰囲気を変えようと続けておちゃらけた

 

「いっぱいちゅきっ」

 

アイドルウインクしたような素振りを見せるが

コナンの犯人の時のような姿でコラ画像や顔文字を

大っぴらに使える状況ではない為肉体言語にも限界がある

(誤魔化し方が雑なんだよ、全くもう)

稀にムードメーカーだが基本はムードクラッシャーな相棒の言動に、もう何度目になるか数えるのもアホらしいほどの呆れ目を向ける

 

「要救護者を足元に放置してソレは

人間性を疑われますよ」

 

「ぉおっとォ!?ここでモモンからテルへの

好感度が大幅にダウーン!!

 

……した?」

 

「してませんから

イキナリ本気で不安がらないで下さい」

 

そういう所が調子狂うんですよ、とため息も追加。

第二の人生(?)を思う存分謳歌している相棒を尻目に

ブレインを肩に担いだモモンは街に向かって歩き始め

肩装備が内臓を圧迫したらしいブレインがぐえ、と呻く

後に続いたテルが小首を傾げた

 

「そのまま連れてくのか?

ポーションでしゃきっとさせりゃいいのに」

 

「栄養剤……三徹……うっ頭が」

 

「よし、早く街に入って宿で休息とろう

その体勢だとブレインくん苦しそうだから俺がおんぶするぞ」

 

「いえ結構です

この程度で倒れるような軟弱な奴は

適当に担いでやるぐらいが丁度いいので」

 

「軟弱て」

 

気骨のある要救助者じゃなかったん?

というツッコミは右から左へ受け流された

数十歩歩いた所で様子を窺っていたテルが真面目トーンで話し始める

 

「待て待て、マジでブレインくんの顔が

青くなってきてるからおんぶか抱っこに切り替えるぞ」

 

既に日は落ちているがレイスとアンデッドは

種族特性として暗闇はよく見える

故に闇は安らぎ、静寂は子守唄、夜は死に踊る者たちの独壇場だ

 

「チッ

野郎をバブらせる気はないんじゃなかったのかよ」

 

行きずりの他人を気遣う相棒に苛立ちを覚え珍しく舌打ちが出る

それを見たオッサンは途端に慎重な姿勢になった

 

「……好感度、ダウン」

 

「してませんから!

この程度で身構えないで下さいよ

そっちの方が傷つきますっ」

 

「普段温厚な子が悪態つくと

小心者なおいちゃんはドギマギするんやで」

 

「誰のドコが小心者なんですか

そういうテルさんもネガティブとはほぼ無縁でしょう

突然不機嫌になられるとビックリするんで

次からは前フリして下さいよ」

 

「ゴゴゴゴ、とか効果音あればいい?」

 

「あーはいはい普段通りお尻振りながら

おこおこぷん、でいいんじゃないですか」

 

「投げやりファニー!

……マジおこの時はそんな余裕ないぞ、多分」

 

素早いツッコミを入れたテルが思い出すような素振りで応える。

気まずくなりそうだった空気が霧散したことに内心で安堵し

言葉を交わす内に苛立ちも紛れ、冷静さを取り戻した思考が

今一度相棒の為人(ひととなり)を思い返す

 

「テルさんって、もしかしなくても

人権侵害に厳しい方なんです?」

 

「かもなぁ

自己分析したことはないが」

 

「……」

 

「思い当たる部分は、案外」

 

「……」

 

「いや結構?どころか、かなり相当ありまくりな事に

今更ながら気付いた」

 

今日(こんにち)に至るまで過去を振り返ることもなかったとか

どういう人生歩んできたんです?」

 

A secret makes a woman woman(女は秘密を飾って美しくなるのよ)

 

「アンタ男だろうが、なんて

ツッコミませんからね」

 

「もうツッコんどるがな」

 

軍属時代を振り返りつつ、王国騎士によるモモンガへの

人権を無視した奴隷発言を思い出したテルが

ムスっとしながらも口先だけはおどける

「結局秘密ですか」と残念そうに呟いたモモンガから受け取ったブレインを背負い、一度身を揺らして体勢を整えると二人はようやく歩みを再開した

 

「コイツも早く休ませたいし

いっちょ街まで全力で走ってみるか」

 

「では、先に着いたほうが宿代免除ってことで」

 

「いいねェ、街一番の高級宿に泊まったろ!」

 

「相場も分かってないのにそんな事言って

後悔しても知りませんよ」

 

「ダイジョブだいじょぶ

泡銭(あぶくぜに)はパーっと景気よく使うモンだぞ」

 

「全力疾走は駄目ですよ

本気出したら重力負荷か衝撃波だけでトドメさしかねないので

レベル差考えてあげて下さいね」

 

背負われているブレインを指さしながら忠告すれば

案の定、思い至らず全力走りしようとしていたテルが

言われて気付きましたとばかりに大げさなリアクションをする

 

「俺ってばハンデあり?」

 

「ですねぇ、ではお先に」

 

「ぁあん!気遣いが裏目にィ!」

 

相棒が慌てる間に走り出したモモンガが数秒後に後ろを振り返ると

背負っているブレインの両腕を前でクロスさせて足ごと抱え込み

板についた救護姿勢で徐々に速度を上げ

着実に追い上げてきているテルの姿があった

 

背負い方が完全にその道のプロだ。

レイスの特性を活用しての優雅なホバー移動、かつ足をバタつかせていないのはブレインへの配慮だ

背負われているブレインはさぞかし快適な状態であろう

 

「ちょっ ズルくないですかソレ」

 

「だってアタシ、レイスだものー」

 

「止まる時はうまく減速しなきゃ駄目ですよ」

 

「そうだった!止まる時もか!

唐突に要求される繊細な速度調整ーっ!」

 

「はい、がんばれがんばれ」

 

「その台詞はチアガールのコスしてポンポン振りながら言って!」

 

「この鎧の上からでいいなら」

 

「ごっつい鎧のチアガールか〜

あぁ〜世の男達の夢が壊れる音がするんじゃぁ〜」

 

騒ぎながらも走る速度は拮抗するよう調整し合う

二人ともなんだかんだで初めての大きな街に一緒に到着したいのだ。

早さを合わせてしまっているせいでほどなく気付いた二人は

気恥ずかしさから喋る声を大きくすることで誤魔化し合い

門番が目視できる距離まで近づいた所でテルの速度が極端に遅くなった

モモンガも当たり前のように合わせて減速する

 

あえて地に足をつけて走る動作に切り替えたのは

そろそろ門番の目が届きそうな距離まで近づいたからだ

伴いブレインへの振動も極力抑える、となれば

全力で走るわけにもいかず

 

「あれれー?モモちゃんおそくな〜い?

体力ちゃんが尽きたのかな〜?」

 

お互いに分かっているのにあえて口に出すムードクラッシャー

流石、情緒がない。

 

「アンタだって速度合わせてただろうが」

 

「なーにー?」

 

「……」

 

ボソリと呟いた悪態を、絶対に聞き取っているだろうに

耳をダンボにする仕草を交えて態とらしく尋ね返され

そっちがそういう態度なら、と

「こう言えば絶対に真面目に返してくるだろう」と

確信できる言葉をあえて選ぶ

 

「よく考えてみれば

勝負なのにアンフェアが過ぎると思ったんですよ

言い出しっぺの俺が奢りますんで

良い宿に泊まりましょう」

 

「……お前さんねぇ

それ言われると年上の威厳形無しでしょうが

ここは先輩をたてて大人しく奢られておきなさい」

 

「なんですかソレ

始めから奢らせる気なかったんじゃないですか」

 

「人生の先輩はいつだって後輩に格好つけておきたいモンなのよ」

 

「仕方ないですね、今回は甘んじて奢られてあげます」

 

「んまーナマイキ!」

 

ぷりぷりと怒る素振りを見せるが、ブレインを背負っているからだろうリアクションは言葉だけに留まっている

相棒の扱い方を完璧に覚えてしまったと自覚したモモンガは

出会った当時の奇想天外な奇人変人ぶりを思い出して懐かしくなった

一人感慨深さに浸っていると、隣からボソリと聞こえてくる独り言

 

「……名は体を表すってか」

 

その言葉に、本当の名が『悟』であったモモンガもまた

テルによって丸く収まる話の流れに

誘導されたのかもしれないと思い至った。

 

互いに気を遣ってしまう辺り

この先の永きを共に歩む『旅の相棒』としてはまだ

踏み込みきれていない部分があると分かって歯痒さを覚える

 

(早く、打ち解け合えればいいな)

 

互いにそう思っている、という確信はあるので焦りはない

それは心地良いだけのむず痒さだった

 

街の入口まであと数十歩という距離まできて

数名立っていた門番のうち二人が駆け寄り声をかけてくる

その視線はブレインへと注がれていた

 

「怪我人か?」

 

「魔物が出たのなら報告を!

治療が必要なら神殿まで案内させるぞ」

 

「お気遣いどーもぉ」

 

手短に「疲れた身内をおぶって運んでいるだけだ」と説明し

ガゼフに渡された印章を見せて身元証明と質疑応答を済ませる

短い会話の中で手頃な宿の情報をゲットして自然に会話を終わらせ門番から華麗にフェードアウトするテルのコミュニケーションスキルに、結果寡黙キャラになってしまったモモンは感心しきりだった

 

「改めて思いましたけど

テルさんの対人スキルすごいですよね」

 

「そーかぁ?まぁ世間話程度なら……と言っても

交渉事は苦手だから、そういう類は任せるぞ」

 

「はい、そっち方面は得意なんで任せて下さい」

 

じゃないと俺マジで役に立たない奴になっちゃうんで、と

危機感を持って内心で付け加えるモモンガは兜の下で真剣な面持ちだ

そんな心情を察しているアイシテルは覆面の下で含み笑いをしている。

勧められた宿屋に着くと受付で素泊まりの手続きを終え、ツインの一室に向かう……そんな男二人の背中を宿の受付人が訝しげな眼差しで見送った

階段を登りながら苦笑いが溢れる

 

「めっちゃ見られてるわぁ」

 

「そりゃあ、三人でツイン一室しか取らないんですから

怪しまれるのも当然でしょう」

 

「怪しまれるだけで済んでるって

王国戦士長の人徳パネー」

 

「この紋所が無かったら

禁止事項とかくどくど言われてたでしょうね

戦士長に返すまではフル活用してやりましょう」

 

「気分は水戸の御老公ってか?

モモちゃんのそういうちゃっかりしてるとこ好きよォ」

 

部屋に入り、扉を閉めると早速とばかりにテルのスキルが発動し

パンツ一枚でベッドに転がされたブレインは苦しそうに呻いたが

布団を肩まで被せた所で寝息も穏やかになり顔色も幾分かマシになる

 

「ブレインくんはこのまま安静にしておけば大丈夫そうだな

一応純正のポーションちょっとだけ飲ませとくか」

 

「意識のない人にモノを飲ませるのは

誤飲の危険性が高いって聞きましたよ」

 

「その通りだ、よく知ってたな

意識ない奴に水を飲ませるにはちょっとコツがいってな……

こうやって、上半身を起き上がらせた状態にして

タイミングだけ注意すれば比較的安全に」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!

何実演しようとしてんですか!」

 

モモンガが止めに入った段階で、テルは既にベッドに腰掛け

ブレインの上半身を抱えて片手に純正ポーションを持ち

目元から下を覆っていた布を首まで降ろして

口移しで飲ませようとする五秒前だった

露わになったテルの唇が何故止めるのかと不満気に尖る

 

「一日中飲まず食わずは流石にヤバイだろ

ポーションの一口ぐらい飲ませといた方が、」

 

「さっきより顔色良くなってるんですから

自然に起きるまで待てばいいんですよ!

わざわざ口移しなんてしないで下さい!」

 

「で〜もォ〜」

 

「デモもストライキもありません!

早く覆面戻して!」

 

「わーったわーった

でも口湿らせるぐらいはさせてくれ

最低限の応急処置はしておかないと

本当に重篤だったらマズいだろ」

 

覆面を戻すより先に脱脂綿代わりの綿を取り出し

ポーションを湿らせて唇に充てがう

その行動をまんじりともせず見届けたモモンガは

非難を込めた眼差しでテルを見据えた

 

「……あのですね、テルさん」

 

「おん?」

 

「ライフエッセンスってご存知ですか」

 

「魔法使えない俺に何言っちゃってんの」

 

「スクロールぐらい使ったことあるでしょ」

 

「ないぞー」

 

「え?!嘘ですよね?

まさか一度も使ったこと無いなんてこと」

 

「アンブッシュスキル特化ワンパンで

なんでわざわざ魔法を使わにゃならんのよ」

 

「そりゃあ、相手の体力を見たりとか」

 

「見敵必殺の俺にゃいらんだろ、そんなの」

 

「そ、そんなの……」

 

「戦闘を楽しみたいお前さんからすれば

敵の情報収集も大事だろうが」

 

「今後は生け捕りも増えるかも」

 

「その時はその時で、事前に指示くれりゃあ

捕縛速達鮮度バツグンでお前さんの目の前まで届けてやるとも」

 

「……情報って、大事なんですよ?」

 

「己を知り敵を知れば百戦危うからずってな分かってる

それこそ生け捕りした後ニューロたんに吐かせりゃよかろうて」

 

「うぐぐ……反論の仕様がない……っ」

 

アイシテルの戦闘スタイルは『隠密特化』

相手に悟られない為のあらゆるケースに対応しているので火の中であろうと水の中であろうと標的に気付かれる事なく暗殺できる

しかもそれを予告なく実行し、予告なく事を終える

己の功績として自己顕示欲をひけらかすでもないので余罪も数え切れないほどあるだろう、一部界隈ではリアル暗殺者とも囁かれたほどだ

掲示板で明るみになった所業に関しても

アイシテル本人が自白したのはサ終直前にやらかしたワールドアイテム盗み出し事件のみ、オワコン故に最盛期ほどの騒ぎにもなっていない

それ以外の事件は全部他ユーザーのタレコミによって発覚したものばかりだ

 

改めてブレインをベッドに横たえたテルが

何かに気付いたようにその髪に顔を寄せて鼻をスンスンと鳴らす

 

「ブレインくん、髪染めてるのか」

 

「へぇ、髪用の染料があるんですね

ところで早く覆面して下さい顔見られたらどーすんですか」

 

「はーなもーせからしかー」

 

「ちょっと、ガッチガチな方言同士の融合止めて下さいよ

何言ってるか分からないでしょ!」

 

「そんなお前さんに方言大辞典」

 

口元を覆う前にニヤリと笑って八重歯を光らせ

懐から取り出す素振りでインベントリーから本を取り出したオッサンが

重力を感じさせない軽やかな動きでモモンガへスッと差し出し、流れで受け取ってしまったモモンガはその本の余りの重さに手首を痛めそうになった

 

「広辞苑より分厚い!!そして重い!!

なんでこんなもの持ってるんですか!」

 

「キラーランカーの嗜みよ

日本全国琉球からアイヌまで網羅してるから

いっぺん読んでみ、面白いぞ」

 

「ぼっち極めすぎて独り言

言いまくってたんですね把握しました」

 

「そういう把握はせんでよろしい!」

 

アイテムの重さはデータ量にも比例するので本類は軒並み重い

そして今し方渡された方言大全は一般人では片手で持てないほどの重さを実現している

漬物石のような本を早々に己のインベントリーに収めたモモンガは

ようやく口布を目元まで引き上げたテルを見てフンスと鼻を鳴らした

 

「顔見られないように注意して下さいよ

素顔見せてくれるのは俺だけなんでしょう?」

 

「へっ」

 

「え?」

 

「……」

 

「……」

 

沈黙が続くにつれ

兜の下で徐々に心の表情を険しくしていくモモンガに対し

徐々に首から上を赤らめていくアイシテルはこの時

覆面をしておいて良かったと心の底から思った

 

「あ、ああ……うん、そうね

顔も肌も、見せるのはお互いだけって設定にしてるからね」

 

「なんですか今のリアクションは?

もしかして忘れてたんですか

本邦初公開で俺だけに特別って言っておいて?

それなのに忘れるなんて、なんて人だ……」

 

「待って待って忘れてない!確かに言ったけども!

設定よりもそっちを真っ先に指摘されるとは

思わなかったんだよ!」

 

「そっちって、どっちの話です?」

 

「……」

 

「テルさん?」

 

「あーもー知らん知らん!

人たらしペシェめ!勝手に怒っとれ!!」

 

「あーそれヒドくないですか?!

なんなんですかちゃんと説明して下さいよ!」

 

「じゃかしゃあ!!もー寝れ!とっとと寝れ!!」

 

「方言で誤魔化すのズルいですよ!そもそも寝る必要なんて…

あっドコ行くんですか!逃げる気ですか!」

 

「逃げてねーわただの散歩だわ俺を煽るなんざ百万年早いわ!」

 

ブレインの眠るベッドを降りて荒々しい足取りで部屋の扉に向かったテルが扉を開きながら勢いよく振り返り、追い縋ろうと立ち上がり手を伸ばしたモモンガの行動を制するようにビシッと片手をかざす

 

「死せる魂を常世の闇へ葬らん!

安らかに眠れ! イ ク ソ シ ズ ム !!」

 

と、キメ台詞のようにズバッと言い放ち

唖然としたモモンガが何か言い返す前に開いていたドアをけたたましく閉じて扉の向こう側へと姿を消した

数秒してハッと我に返ったモモンガが叫ぶ

 

「それタクティクスオウガ(別ゲーム)のアンデッド浄化魔法じゃないですか!」

 

普通におやすみって言って下さいよ!と、いう台詞は

宿を出ていこうとするテルの耳にしっかりと届いていた

人気のない静まり返った裏路地に入り、あてもなく歩き続けるテルの足取りは地面に八つ当たりするかのように荒いままだ

ガツガツと足音を無らしながら覆面をずらし夜風にあたる

 

「ったくもーあの若造は!

なんでああも恥ずかしい事を無自覚に言いやがるかね」

 

顔に熱が溜まっている事には、感じられる温度で嫌でも理解できる

赤面するなど何年振り、という事態に

崩れた顔面を両手で揉みながら苦々しく呟いた

 

「ありゃあ本人意識してないヤツだ

オッサンの純情振り回しおって、困った若者だよ全く」

 

耳を澄ませれば、どこからともなく

壁を隔てた生活音とざわめきが聞こえてくる

別の通りを歩く誰かの足音と防具が擦れる音

それらの雑音にあえて集中することで

少しずつ冷静さを取り戻したアイシテルは

軽く両頬を叩いて顔面矯正を終えると覆面を整えた

 

「設定よりアッチのが重要なのかぁ……そっかぁ……

アイツ以外に素顔見せたら、また極端に不貞腐れそうだ

気をつけてやらんとな」

 

弐式くんパターン再来か、というため息混じりの呟きは夜の闇に消える

折角夜のエ・ランテルに繰り出したのだから

簡単に情報収集してから宿に戻ることに決め

高い建物の屋根まで登ると大雑把に街全体の気配を探り

気になる場所を見つけて屋根伝いに向かう

 

 

 

辿り着いたのは街の外れにある霊園

 

感知したのは土の下で数え切れないほどに蠢くアンデッドの気配

 

目撃したるは全身を外套で覆った見るからに怪しい男たちの集会

 

拝聴したるはズーラーノーンとやらによる宗教関連の御高説

 

決定的だったのは近くエ・ランテルを襲撃するという不穏な計画

 

 

 

ヤッタねモモちゃん!これで更に英雄ロールが捗るよ!

と、邪教徒の背後でステルスしつつガッツポーズをするアイシテルは

良い土産話ができたと満面の笑みを浮かべるのだった




誤字報告に感謝です。
ご指摘いただけてとても助かっています(*´∀`*)>
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