ナザリックの最奥へと辿り着くタイムアタックで
新記録を叩き出したコナンの犯人は改めてギルドへの招待を受けると
玉座の前で洗練されたジョジョ立ちを披露し
半目のモモンガにスクショを指示していた
満足の行く一枚を取り終えた彼は徐ろに取り出した指輪をサッと装備し
真っ黒な顔にペコちゃんマークを表示させる
「じゃ、ちょっくらお宝部屋行ってくるわ!」
「え?」
モモンガの返事を待たず
あっと言う間に転移した彼の行く先はナザリックの宝物殿
いつの間にリングオブアインズ・ウール・ゴウンを掠め取ったのか
ブチギレながら追いかけたモモンガだったが、宝物殿の奥で見つけた犯人はその場で胡座をかいて座り込んでおり、所持していたアイテム各種を無造作に部屋の端に向かって放り投げている
否、放り投げると言うより
壊す勢いで部屋の壁に叩きつけているように見えた
いい加減極まるその後ろ姿を見たモモンガは
リアルでしょっぱい表情を浮かべてしまう
「なにしてんですか……っていうか
どうやってここまで辿り着いたんですか
アヴァターラ無視か、なんで罠にかからないんだよこのやろう」
「心の声ダダ漏れよモモンガ
指輪は君の息子っちに預けてきた」
「指輪以前に部外者だろうが……そもそも息子って」
「一つ前の部屋に居た埴輪、モモンガのNPCっしょ?
息子よ」
「確かに俺が作りましたけど、どういう解釈してんですか」
「もーちょい待ってな、ワールドアイテム出し切るから」
「マジでここに全部置いとくつもりですか」
「ここ一番の安置だものー」
「共犯にすんの止めてもらえます?」
「どーせ残り一週間なんだから、持っとけ持っとけ」
「もー……取り返しに来られたらどーすんですか」
「バレへんバレへん」
「そうやって、いっつも勝手なんですから」
黒尽くめの隣に腰を下ろしたモモンガは、怒りや苛立ちをぶつけるように放り投げられ宙を舞うアイテムの数々を眺める
アイシテルの声色はどこまでもおちゃらけているが
その行動は非常に苛立ち、憤っていた
サ終が決まっても尚遊び続けているプレイヤー同士
言葉にせずとも通じるものを感じたモモンガは
かけるべき言葉を見つけられずに黙り込む
「……」
暫くして、所持していたアイテムを投げ尽くしたのか
黒尽くめの手がパタリと膝の上に落ちた
沈黙が二人の間に流れるが、いつかは声がかかると分かっていたモモンガはアイシテルの不意の呼びかけに動じることなく応える
「……モモンガ」
「なんです?」
「残り一週間、ここ居ていい?」
「いいですよ、どうせ文句言うメンバーもいませんし」
「ついでにギルメンに加えてくれんかな」
「チョーシ乗んなオッサン
ギルド武器持ち出した戦犯をメンバーにする訳ないでしょ」
「チェー」
「さ、用事終わったなら出ますよ
ゲストルームを一室提供します」
「いらね
モモンガの息子っちと一緒に居るわ
ここ落ち着くし」
「何言ってんですか」
「お墓」
「はい?」
「こういうお墓なら、入りたいなぁって」
「……」
「現実じゃ孤独死からの無縁仏で合葬よ?
お葬式なんてないし、お焼香してくれる人もいない
当然お墓参りなんてしてもらえないし
誰にも覚えててもらえない
VRでぐらい、豪華に逝きたいんよ」
「……」
「だからここに来たんよ」
「……」
「ここにいさせてよ」
モモンガは―――否、鈴木悟は察してしまった
故に動揺を押し殺し、自殺志願者を前に慎重に言葉を選ぶ
「今日から一週間、ずっとインし続けるつもりですか?」
「今ンとこ落ちる予定ないよ」
「……リアルの予定もあるんですから
せめてちゃんと寝ましょう」
「うん、ありがとな」
気のない返事、暖簾に腕を押すような感覚。
どっこいしょ、という言葉とともに立ち上がった黒尽くめは
のそのそと霊廟を進み
何を言うでもなくギルメンたちのゴーレムを見上げ眺める
「いーなぁ……」
ぼんやりと呟かれた言葉の意味に
否が応でも気づいてしまったモモンガはVR越しに冷や汗をかく
じれったいほどゆっくりと霊廟を進み抜けた先には
指輪をその手に預けられたパンドラズ・アクターが立っていた
埴輪なNPCをじぃっと見つめつつ指輪を取り
指に嵌めた黒尽くめがモモンガへと振り返る
「ね、やっぱ俺のことメンバーに加えてくんない?
一時的でいいから、三日ぐらい」
「……三日で何するつもりです?」
「この子の相棒作りたいなぁって思って
丁度お金も有り余ってるし、まるっと国に返還されるよりは
ナザリックにドカッと落としちゃったほうが有意義かなって」
「アイシ「敬称不要!」まだ言ってねーよ食い気味やめろ」
「モモンガも手伝ってー
NPC作ったことないから助言ほしいんよ」
「……」
「宝物殿にひとりぼっちって寂しいだろうし」
「……」
「ずっと、ずーっと一緒に居てくれる子がいてもよくない?」
「……」
しんみりした空気が漂う中
突如どすこい声なセリフに態とらしい吐息を挟むオッサン
「ンふぅ、お嫁さん候補作んのが、ンふぅ
童貞のオッサンで、ンふぅ、ごめんなぁ、ンふぅ」
「……今ので真面目な空気全部台無しなんですけど」
「うははは!
……ね、お願いします」
神妙な様子で
マジのマジで真面目なのが分かったモモンガは
考えた末に条件を出した
「サ終の次の日に、俺とオフ会して下さい
住所教えてくれたら遠くてもどこへだって行きますから
オッサン同士二人でムサ苦しく飲みましょう」
「えー……どこへだってってセリフ美女に言われたかっ」
「叩き出しますよ?」
「オッサンいうて、モモンガはまだおにーさんでしょ」
「どっちでもいいですよ、兎に角
ナザリックをマジモンの墓標にされるのは迷惑なので
ちゃんと生存確認はさせてもらいます」
「そこは目ェ瞑ってよ〜
メンバーになるワケじゃないんだし、その辺のアンデッドと一緒よ」
「そういう扱いが嫌だから
わざわざここに来たんじゃないんですか?
はいさっさと申請してください」
「おっ!加入申請ぽちっとな!」
言いながらポップ画面を操作し
『アイシテル』をギルド加入許可にする
ユグドラシル終了まであと七日。
この間にギルメンが戻ってきても
これまでの放置ぶりや引退状況を思えば
ブラックリスト入りしてるプレイヤーの加入に
文句を言ってきたりはしないだろう
「……」
……やっぱり文句ぐらいは言われるかもしれないので
そうなった時は甘んじて受けよう、と
モモンガは決意するのであった
人命優先、下手したら鈴木悟よりもユグドラシルロスに見舞われているかもしれないフレンドが目の前にいるのだから助けない選択肢はない
何よりナザリックをマジな意味での墓標にされたくはない
最後の最後まで迷惑事を持ち込む度し難いフレンドを前に
こっそりとため息を吐く
「イエ~イ!ギルド初加入〜!」
「はいはいおめでとうございます
早速NPC作りま……」
言いかけて、モモンガの前にポン、という通知音と共に
デカデカとポップアップ画面が表示され
「ぱんぱかぱ〜ん」という古典的なSEが響いた
画面に表示されていたのは、『アイシテル』が
ギルド加入した事による特典各種の説明。
『 おめでとうございます!
ギルド【アインズ・ウール・ゴウン】は
ワールドエネミー【トータル・ジェノサイド】を
ギルドメンバーに加える事に成功しました。
これに伴い、以下の条件を達成しました。
《 【トータル・ジェノサイド】のぼっち脱却 》
・ギルドコストが撤廃されました
・ギルド所有のアイテム、武器、防具の全てに
略奪不可、盗難不可、破壊不可の
ワールド効果が付加されました
・【トータル・ジェノサイド】保有財産が統合されました
・ユグドラシルの一部区域が
ナザリック地下大墳墓の所有地域に指定されました
・【トータル・ジェノサイド】土地収益が
ナザリック地下大墳墓【宝物殿】に自動分配されます
是に伴い、【宝物殿】領域の拡張が行われました 』
「……は?」
「ねぇねぇモモンガ、課金てどーすりゃええのん?
全部初めてでなーんも分からんのじゃけど」
『 ワールドエネミー加入特典として
ナザリック地下大墳墓とその影響範囲に
【トータル・ジェノサイド】の恩恵が与えられました。 』
内容を一通り読み終わり、モモンガは信じられないものでも見るような目で、ウネウネとぶりっ子ムーブをして頭にツインテールのエフェクトを生やしている黒いオッサンを見つめる
「モモちー、課金ってどーやるのん?
聞いてる?モモー?もーもー?
百式観測機プロトタイプのM.O.M.Oー?」
「あの……あの、今、ものすごい事が起こったんですけど
元ネタ分かり辛いの挟むの止めてもらっていいですか」
「どした?なんかあった?」
「あんた、いつから
ワールドエネミー扱いになってたんです?」
「ワールドエネミー?
いちプレイヤーをエネミー扱いは流石にヒドない?」
「運営から通知が来たんですよ!
ワールドエネミーがうちに加入したって!!」
「へー、ワールドエネミーってギルド加入できるん?
そりゃすごいね……で、今インしてるん?」
「アンタだアンタ!アンタのことですよ!
ワールドエネミー!!」
行儀は悪いがびしっと指差し数歩後退る
指先を向けられたアイシテルは理解しきれていない様子で小首を傾げると、暫しの沈黙の後HAHAHAと笑い出す
「ウッソだぁ」
「マジですって!!見て下さいこの通知!これ!」
「いやいや他人の通知見えないし」
「アンタのビルド明かしてください!今すぐ!全部!」
「やーん恥ずかしー」
「緊急事態なんですよ!ホントに!
特に称号欄!おかしなの付いてませんか?!」
モモンガの本気の焦りぶりに、もしやギルドに損害を与えてしまったのだろうかと思い至ったオッサンは慌てて自分のステータスを確認し始めた
「わ、わーったわーった
今見てみるからちょっと待っ……て、なんじゃこりゃ」
「何かありましたか」
「いや……ステータスなんてもう何年も見てなかったんだけど
えらい変わりまくっててオイチャンちょっと浦島太郎」
「何がどう変わってるんです?」
「種族が元のやつ全部消えて
【トータル・ジェノサイド】だけになってる」
「えぇ……」
「なんか色々エグいの付いて……あっ
確かにワールドエネミーの称号付いてるわ
うわぁ〜いつの間に……」
項目をひとつ読み上げるごとに「ひぇぇひぇぇ」と戦慄するプレイヤー二人の背後で『ドズン』と重厚な効果音が響き、おそるおそる振り返った二人の背後には見慣れない扉が生えていた
「えっ……さっき来た時は
あんなトコに扉なんてあらんかったよ?」
「さっき宝物殿拡張のお知らせが来てたんで
多分あの扉の向こうが拡張領域でしょうね」
「へぇ〜、じゃあ【トータル・ジェノサイド】の
保有財産ってのがあっちに収納されたってことかね」
「アイシテルさん「敬称不要!」の財産って
単独プレイだからインベントリー分しかないはずですよね」
「その筈なんだけどねぇ?」
「宝物殿を拡張させないと収まらない量ってのは
ちょっと理解できないんですけど」
「俺個人というよりワールドエネミー分って感じ?」
「そういう解釈なら拡張も納得できます」
「よかったやんモモンガ、棚からぼたもち」
「でも、厳密に言うと貴方の財産ということですから
ナザリック所有じゃないですよ」
「今の今まで俺も知らなかったし
好きに使ってくれたらいいよ、とか言って
扉開いたらちまっとしか金貨ありませんでした、だと
すんごいガッカリだけど」
「……」
「……」
「……確認、してみます?」
「いつかは絶対見なきゃイカンじゃろうし……
よし、見よ見よ」
「じゃ、開けますね」
おそるおそる扉に近づいた二人は初期位置で立つパンドラズ・アクターに見守られながら、扉に触れようと手を伸ばした
するとオッサンの黒い全身がぼんやりと光りを放ち、それに呼応するように扉の透明度が増し最後には跡形もなくなってしまう
入室を許可されたと判断した二人が互いに頷き合い
意を決して足を踏み入れ、少し進んだ眼下に見えたのは
見渡す限りの、黄金の海原
入口から続く通路の先端は断崖絶壁のようになっており
そこから見下ろす景色はリアルですら絶対に味わえないであろう、大富豪もびっくりの絶景だった
キラキラと輝き続ける黄金に混じって
貴重な鉱石や宝石、アイテムが存在を主張するように強く煌めく
遠くへ目をやっても黄金の輝きの所為か、ある筈の壁が視認できない
遠くに続くのは金貨の地平線だ
あまりの光景に大口開けて絶句する二人――――そして、
「モモたん……」
「は、はひ……」
「この金貨の海、飛び込んだら死ぬとかある?」
「着眼点おかしいわ
……飛び込んだら、浮くのも泳ぐのも難しそうですよね」
「超贅沢な即死トラップとかいう可能性は」
「ないとは言い切れません、少なくとも
これほど高所から飛び込めば、そのまま埋まるのは確実かと
フライ使えないと抜け出せないですね」
「実はめっちゃ浅いとか」
「いやいや見てくださいよ金貨の波打ち具合
高低差だけで少なくとも水深10メートルはあるでしょうが」
「水深……でいいのか?」
「宝深……も、通じ辛いでしょ」
「ワールドエネミーの保有財産、パネェー」
「ははは……いやまさかこれほどとは」
「そんで、俺が加入した事によるデメリットは?
マズそうならすぐにでも脱退するけど」
「今の所うちにとってはメリットしかないので問題ないです
というか、アイシテルさん「敬称不要!」加入恩恵すごすぎて
ほとんど金貨に埋もれてて見え辛いですけど
課金しないと手に入らないアイテムとかちらほら見えるんですよね」
「そうなん?良かったやん」
「他人事!!これアンタの恩恵なんですからね?!」
「そんじゃあ……ドヤぁ!」
「はは、ホントに色々とんでもない人ですよ!もう!」
「そんで話は戻って
モモッちの息子っちの嫁っち作りたいんじゃけど」
「えっ……このドエライ光景前にそれ言います?
俺、今からこの大海原発掘して
アイテムの確認とか整理とかしたいんですけど」
「そんなん俺のNPC制作の傍らでもできるでしょーよ
先ず課金方法おせーて」
「もー、しょうがないですね
じゃあ設定画面出して、課金項目選んで口座番号を入力して」
「おっすおっす」
ユグドラシルの古参PKプレイヤーは
今更ながらに初心者丸出しでたどたどしく画面操作を行った
黄金の大海原からパンドラズ・アクターが立っている区画に戻り
ソファーに腰を据えたモモンガはパンドラズ・アクターを傍らに控えさせ
アイシテルに座るよう向かいの席に促してNPC作成時に重宝した手順書を持ち出して色々と説明を終えて、ようやくNPC制作の初期段階に入り
パンドラズ・アクターとの兼ね合いも考えて
種族を同一の二重の影に決定、見た目もとりあえず埴輪にして
調子よく作成を進めていく
「とりあえず手っ取り早くレベル100にしよ
種族レベルと職業レベルの振り分けは後回しで」
「えっ全部課金するんですか?結構な額になりますよ」
「俺はプレイヤーの命だけでレベルカンストしたから
この子は俺の命だけでカンストさせようかなって、対比」
「命って」
「言葉通り俺の金、俺の時間と血肉で生み出すの
ロマンチックでしょ」
「童貞のオッサンの血肉で生み出される俺のNPCの嫁……」
「いやなトコに気づくんじゃないよ
童貞フレンズのクセに」
「やかましいわ
で、職業どうします?」
「君の子にないヤツ入れてこ!補う感じで!」
「うーん……そう言われても大体全部網羅してるんですよね
パンドラズ・アクターはメンバー全員の役割を果たせるので」
「おたくの子完全無欠かいな……
あ、でも吟遊詩人とかないね?」
「遊び部分は他の低レベルNPCで間に合ってますよ
レベル100NPCで取るのは勿体ないですから」
「いーじゃない、レベル100の遊びと癒やしで殺生無縁のNPC!
安らぎとゆとりって大事よ?」
「うーん……あんまり賛成はできないですね」
「モモンガの息子っちをぼっちにしないためだけに創るんだから
それでいーのいーの……はっ!!」
「どうしました?」
「モモンガ……俺は凄いことに気づいてしまった」
「な、何に気づいたんですか?
ワールドエネミー関連の何かですか」
「俺とモモンガで創るNPCという事は
モモンガの血を引く娘にもなってしまう!
パンドラズ・アクターと番にすると近親相姦、」
「それ以上アホな事言ったら脱退させますよ」
「堕胎だけに ったぁ!!」
ダメージは入らないが黒い頭部は叩き潰された。
茶番を交えつつ順調にNPC制作は続く
時折パンドラズ・アクターの設定を見直し、時に見比べながら徐々に作り上げられていくパンドラズ・アクターの嫁
「名前はどうします?」
「コルセラ・クラヴィス に、する」
「……即決ですね、何か由来でも?」
「パンドラの箱、とくれば『錠』と『鍵』
勝手に開けられないようにセキュリティ上げとくんよ」
「セキュリティって……えっ錠と鍵で2つ創るんですか?
イキナリそんな事言われてもNPC創る枠がもう……
って、ええええ?!」
操作画面を慣れた手つきで動かしていたモモンガが
突然大声を出し立ち上がる
正面に座っていたアイシテルはビクリと四肢を震わせた
「どったのモモンガ」
「あ、いえ、貴方が加入した影響だと思いますけど
今確認したらNPC作成枠5000も追加されてて……ぇぇー……
うわ、なんでこんなにデータクリスタルが……
ひぇ、希少素材の個数も桁がおかしい……
見たことない素材まで揃ってる……
これもう神器作り放題では……?ぇぇー……」
「なんか都合悪い?」
「逆ですよ!都合良すぎます!
都市型ギルド……街一つ作成しても有り余る量ですよ!
はっまさか制作枠5000追加ってそういう……?
ナザリックが大墳墓だから土地と人員が
まるごと材料として補充されたとかそういう……?
うわー、あと一週間でこれって時間足りなさすぎだろ
うわーどうしよ……うわー……」
喜色ばんで体を揺らす姿はまさにウキウキを体現している
物凄く喜んでくれていると判断したオッサンは
自身のNPC作成画面とのにらめっこを再開した
「あの、アイシテルさん「敬称不要!」の恩恵でクリスタルと素材が使い切れない程増えたんでナザリックのテコ入れしに行ってもいいですか?
施設維持費無料とかいうワケわかんない状況になってるんで
どうせなら超高コストの設備にしてやろうかなと」
「どーぞどーぞ、好きに使ってやって下さい」
「あの、簡単に言いますけど
これ課金額にしたら軽く七桁行ってるんですよ?」
「モモンガが加入許可してくれたから得られたモンでしょ
俺そんなん持ってることすら知らんかったし
こうなるまで無かったも同然なんだから
遠慮せず好きに使えばイーンダヨ!グリーンダヨー!」
「……はぁー……いえ、止めときます
先ずは貴方が好きなだけ使いまくらないと筋が通りません
折角ですしアイシテルさん「敬称不要!」好みのNPC
いっぱい作っちゃいましょう
一体と言わずいっぱい作りましょう!」
「えーのん?ほんじゃとりあえず
コルとセラ・クラヴィスで二体創ろっかな
モモンガ手伝って〜」
「コルセラって一つの意味じゃないんですか?」
「コルは心、セラは錠、クラヴィスは鍵よ」
「じゃあ、三体作りますか」
「そんなにいっぱいいらんよ
コルはペットみたいにしよっかな
セラは息子っちのパートナー的立ち位置で」
「……本気でそういう設定にするんですか」
「特定のアイテムがないと辿り着けないような隔離空間よ?
ずっとここ守るなら、ぼっちとか、そんなん見過ごせんよ
セラはモモンガの息子っちの為だけに存在すんの
それでいーの
コルはそんな二人ぼっちの癒やし的ペットなの
モモンガは犬と猫どっちが好き?」
「うーん……どっちも好きですけど
強いて言うなら猫……ですかね」
「じゃ、猫にしよか」
ちら、と正面に座るコナンの犯人を見て呟くモモンガは
内心で「このオッサン猫っぽいし」と
決して褒めてはいないイントネーションで呟く
しかし、ションとしょぼくれる所は
「犬かもしれない」
「犬にしよか?」
しかも大型犬の、普段から何かと騒がしい問題児。
しかし神出鬼没な所は全く以って気まぐれな、
「猫なんだよなぁ」
「どっちやねん」
零れた独り言対し、定番のツッコミが入る。
「よし、五割犬で五割猫って事で」
「その生き物普通にキモくない?大丈夫?
名状しがたいモノが生まれそうよ?」
「そういうのは間に合ってるんで
普通に犬猫にしましょう」
「じゃあコルが猫でソルが犬にしよっか
ソルは太陽って意味ね」
「なんか徐々に増えてってますね」
「枠いっぱい空いてるんでしょ?
えーやんえーやん作っちゃお」
「ですね、NPC5000枠分の素材も揃ってますし
作っちゃいましょう」
サービス終了まで残り七日。
思いがけず遊び放題でやりたい放題な要素が舞い込み
モモンガは喜びと期待に胸を踊らせてしまう
久方ぶりに、本当に久方ぶりに感じられた「楽しさ」だった
あと七日で終わってしまう
などという哀愁や落胆は、その時のモモンガの胸中には
これっぽっちも存在しなかった
▼ モモンガとアイシテルのQ&Aコーナー ▼
Q:何故フレンド解除しなかったんですか?
A:「これまで散々迷惑被ってきましたけど
個人的には恩恵に預かることも少なくなかったんです
WIばらまき事件の時も真っ先に俺のトコに持ってきて
好きなもの選ばせてくれましたし
もしかしてフレンドリストに載ってるからかなって考えたら
ただ迷惑かけられるだけよりは
少しでも見返りがあった方がマシだなと思って……
一言で言うと『打算』です」