転生したら蛇だった件   作:朝昼晩昼夜逆転

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とりあえずハクロウさえいれば魔国は安泰

「お主……生きて帰れると思わぬことじゃな」

 

 ハクロウが怒気を孕ませた声音でフォビオを睨みつける。

 

「ハッ!貴様らこそ、カリオン様に従わないのなら、このまま見逃されると思うなよ!」

 

 フォビオは実力差も分からないようで、ハクロウを挑発する。

 

 ことの発端は、この街にフォビオが訪れた時まで遡る。

 

 フォビオはこの街に着くなり、

 

「俺らは『獅子王(ビーストマスター)』カリオン様の部下!この街と貴様らをカリオン様に捧げろ!!!」

 

 と、怒鳴った。

 

 原作より大分過激な表現だが、言ってる内容は概ね変わっていないだろう。

 

 それをリグルドが断ると、いきなりリグルドを殴りつけ、

 

「力の差も分からないとは、やはり下等な魔物は知能が足りない!」

 

 と叫び、街の魔物達を威圧した。

 

 その気配を感じ取り、ハクロウがその場に駆けつけ、今この状況である。

 

 ちなみに、ボクはハクロウと手合わせをしており、ミリムもそれを見学していたのでハクロウと一緒にこの場に来た。

 

「見逃す?異なことを宣うものじゃな。見逃さぬのはこちらよ(わっぱ)

 

 ハクロウは静かに怒り、そして次の瞬間、フォビオの右腕が斬り飛ばされた。

 

 ハクロウはその場から一歩も動いておらず、フォビオは何をされたのか理解できないようだった。

 

 ただフォビオでは見えない速度でハクロウが斬っただけだが、フォビオはそれが分からず混乱している。

 

「な……何をした!?」

 

「フォッフォッフォ、それすら分からぬとは、随分と弱いのじゃな」

 

「き、貴様!カリオン様に認められた三獣士であるこの俺を弱いと言うか!!!!!」

 

 フォビオが激昂し、魔素を纏った左拳でハクロウに殴りかかる。

 

「愚かな……」

 

 ハクロウのその声と共に、フォビオの残された左腕も斬り飛ばされ、フォビオは両腕を失った。

 

 うーん、やっぱりハクロウは強いな。

 

 正直、現時点ではフォビオはベニマルよりは強いのだが……。

 

 ……さて、この状況どうしようかな。

 

 フォビオにはやってもらう事もあるし、死なれるのは困るんだけど……。

 

 とりあえずリグルドを治療しながら少し思案していると、

 

「おいおい、これはどういう状況だ?」

 

 丁度良いタイミングでリムルがやって来た。

 

 

 

〈リムルside〉

 

〈告、街中で戦闘が始まりました〉

 

 突然の『大賢者』さんの報告に、一瞬固まった。

 

 どういう事だ!?

 

〈告、現在、個体名ハクロウと獣人と思われる何者かが交戦しております。また、個体名リグルドが重症です〉

 

「なっ!?」

 

 場所はどこだ!?!?!?

 

〈解、場所は……〉

 

 すぐに場所を聞き、その場に向かった。

 

 するとそこには、両腕を失いうずくまる獣人とそれを冷めた目で見下ろすハクロウと、そのすぐ近くで傷を負ったリグルドとそれを治療するフィがいた。

 

「おいおい、これはどういう状況だ?」

 

 とりあえず、ハクロウに聞いてみる。

 

「これはこれはリムル様、この猫がリグルドに重症を負わせていたため、少々躾を行なっていただけでございますよ」

 

「お……おう、そうか……躾か……」

 

「巫山戯るなよ貴様ら!!!魔王カリオン様の部下であるこの俺にこんな事をしておいて、無事でいられると思うな!!!」

 

「魔王?」

 

「ああ、そうだ魔王だ!!!貴様ら下等な魔物の集まりではカリオン様1人で淘汰出来るだろうさ!!!」

 

 魔王……それはヤバくないか?

 

 このままじゃ、もしかして魔王と全面戦争!?

 

 俺の目標は魔王レオンを殴る事だが、流石に今魔王と敵対は不味い!!!

 

 戦力が足りないだろう!?

 

 どうする!?

 

 どうするべきだ!?

 

 魔王との敵対は避けたいが、こいつがリグルドを攻撃したのは事実だろうし、このまま見逃すのも……

 

 そう、思考を巡らせていると、

 

「いや、カリオンぐらいならハクロウ1人で勝てるよ?」

 

 唐突にそう発言したのはフィだ。

 

 

「……え?」

 

「な……何を言っている貴様!」

 

 獣人が騒ぐが、それを無視し、フィに尋ねる。

 

「本当に……ハクロウはカリオンとやらに勝てるのか?」

 

「うん。100回戦っても100回勝てるよ。むしろ負ける要素がない」

 

 フィは、自信を持ってそう言った。

 

「……俺が戦った場合はどうだ?」

 

「リムルとカリオンの強さは現時点ではカリオンが少し強いぐらいだね。まぁ、勝ち目はあるだろうけど」

 

「そ、そうか……」

 

 フィの発言には、なぜか説得力があり、本気で言っていることが理解できた。

 

 ベニマル達に無傷で圧勝したフィがそう言うのなら、それは信憑性が高そうだ。

 

 よし、それなら……

 

「おい、お前。カリオンとやらに伝えろ。敵対したいのなら相手になると。言っておくが、先に手を出したのはお前だからな?」

 

 抑えていた魔素を解放し、威圧しながら言う。

 

「クッ……クソが!!!絶対に後悔するぞ!!!」

 

 フォビオは、お供の2人を連れ立って、その場から走り去って行った。

 

「さて、大丈夫か?リグルド」

 

「はい。フィ殿が治してくださったので、今は痛みもありませぬ」

 

「そうか、それは良かった」

 

 こうして、カリオンの部下襲来は幕を下ろした。

 

 これが齎した結果。

 

 俺がそれを知るのは、大分先のことになるのだった。

 

 

 

〈フォビオside〉

 

「クソッ!!!」

 

 街から離れた場所で、木を蹴り付ける。

 

 あの後、腕はなんとか止血した。

 

「抑えてくださいフォビオ様。木を痛めつけたところで、結果は変わりません」

 

「これが怒らずにいられるか!!!あいつらは……あいつらは俺はおろか、カリオン様さえ侮辱した!!!万死に値する!!!」

 

「フォビオ様……」

 

 殺す!

 

 必ず殺してやる!!!

 

 あのスライムも、そしてあの黒髪の女も!!!

 

 大体何だあの黒髪の女は?

 

 どこかで会ったような気がするが、思い出せない。

 

 その事実も、ストレスが溜まる。

 

「クソがぁ!!!」

 

 木を蹴り付け、幹ごと折る。

 

 

 

 

「おやおや、随分と荒れていますねぇ」

 

「だよねだよね。お怒りだぁ」

 

 突然、仮面を被った2人の存在が現れた。

 

「貴様ら……何者だ?」

 

「私はティア。こっちはフットマン。私たちは中傭道化連って言うんだ。よろしくね」

 

「……何のようだ?」

 

「あのねあのね。フォビオ様に、新しい魔王になって欲しくて来たんだ」

 

「何?」

 

「『暴風大妖渦(カリュブディス)』って知ってる?暴風竜の申し子の」

 

「ああ、知っている」

 

「私たちはその暴風大妖渦が封印されている場所を見つけたんだ。でもでも、私たちじゃ有効活用出来ない。なら、有効活用出来る方に使って貰おうと考えた訳さ!」

 

「何故、俺なんだ?」

 

「貴方なら、暴風大妖渦をコントロール出来ると考えたのでございますよ。あの偉大なる魔王カリオン様に認められた三獣士の1人である貴方なら」

 

「ほほう、偉大なるカリオン様とは、分かっているじゃないか」

 

「ええ、ええ、それで、どうです?」

 

「断る!俺はカリオン様の部下だ。一部下であるこの俺が、カリオン様と並ぶなどあってはならない」

 

「ええー、でもさでもさ、カリオン様は、フォビオ様が魔王になった事を怒るような方なの?カリオン様はもっと心が広いと思うけど」

 

「そ、それは……」

 

「それにそれに、さっきは魔王になって欲しいって言ったけど、魔王の強さを得たからってどうしても魔王を名乗らなきゃいけないって訳じゃないんだよ?魔王の強さを得た上で、カリオン様に仕え続ければいいでしょ?」

 

「それは……そうだが……お前達のメリットは何なのだ?まさか善意だけで俺に暴風大妖渦を与えようとしているとは言わないだろう?」

 

「ええ、魔王の力を得た貴方が魔王となれば強大な権力を手に入れられるでしょう?魔王を名乗らず、カリオン様に仕え続けても、その地位は確固たるものとなり、強大な権力を手に入れられる。そうしたら、私たちを贔屓にしてほしいのです」

 

「なるほどな……よし、良いだろう。暴風大妖渦を貰ってやる」

 

「おお、受けて下さるのですね!では、こちらへどうぞ」

 

 2人は(うやうや)しく頭を下げると、案内を始める。

 

「フォビオ様!!!」

 

 焦った様子で部下が止めるが、俺は止まれない。

 

 あの魔物達をカリオン様のものに出来ない以上、それに変わる戦力を俺が手に入れる必要があるのだ。

 

「カリオン様に伝えてくれ。俺は、強大な力を従えてから戻ると」

 

 それだけ伝え、2人に着いて行った。

 

 これが齎す悲劇を俺が知るのは、全てが手遅れになってからだった。

 

 

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