〈リムルside〉
暴走する魔素を制御するためには上位精霊を宿らせれば良い。
その可能性に至った俺は、すぐに上位精霊に会える場所を探した。
しかし、結果は良くなく、全くと言って良いほど分からなかった。
そんな時、商人であるミョルマイルを助けた事をきっかけとして、ミョルマイルに結構高めの店に連れて行ってもらい、そこで精霊の棲家の存在を知った。
正確な場所を掴むのに随分苦労したものの、昨日やっと場所を見つけることが出来た。
「というわけで、今日は精霊の棲家に行きます!」
「精霊の棲家?」
クロエが首を傾げる。
「そう、そこで精霊を宿らせれば、お前たちの死を回避出来る可能性が高いんだ!!!」
「本当!?」
「ああ!もちろんだ!」
みんなの顔がパァッと明るくなる。
「それじゃ、行くぞ」
「「「「「はい!」」」」」
やって来ました精霊の棲家!!!
入り口はただの洞窟に見えるものの、中から神聖な空気が溢れ出している。
「良し、俺について来い!!!」
先頭に立ち、洞窟に足を踏み入れた……次の瞬間、
「うおっと!!!」
俺の頭を斧が掠めた。
「…………………え?」
〈告、この場には、大量の罠があるようです〉
なっ!!!
正確な位置は!?
〈不明です。罠がある事は分かるのですが、巧妙に隠されており、正確な位置が特定できません〉
なんだって!?
え?
それはやばいだろ!!!
子供達を連れて来るには危なすぎる。
「おー、ここが精霊の棲家かぁ」
俺の様子に気付かず、みんなが入ってきてしまった。
そして、全員が入ると同時に、入り口がただの岩壁になった。
幻術じゃない。
本当に岩壁になっている。
これでは、みんなを逃がせない!
「みんな、俺から離れるなよ!ここは罠だらけだ!」
「ええっ?」
「そんな……」
「ランガ!お前もみんなを守れ!」
「承知!!!」
ランガにもみんなを守らせる。
しかし、これでも守りは不十分な気がしてならない。
「慎重に進……っ!!!」
一歩踏み出した瞬間、その踏んだ場所から槍が突き出してきた。
それを避けると今度は横から矢が飛び出してきた。
その矢は、なんとか避けれたものの、頬を掠めてしまった。
……あれ?
治らない?
なんでだ?
俺には『超速再生』があるはずなのに!!!
〈解、あの矢には、未知の術が付与されておりました。その効果は、『耐性無効』と『再生無効』だと予測されます。また、正確な解析鑑定は不可能でした〉
……マジかよ!!!
え?ヤバくない?
ここってもしかして、子供達連れてきて良い場所じゃなかった!?
『クスクス』
『キャハハッ』
なんか笑い声が聞こえてきたな。
『この程度の罠で傷負うなんて間抜けだねー』
『ねー』
『ここに来るにはまだ早かったんじゃなーい?』
『クスクス』
『キャハハッ』
……うん、良し、
「意地でもクリアしてやるよ!!!」
「どっ、どうしたの先生?」
「いや、なんでもないよ。それより、ここはどうやら危ないみたいだから、みんなには安全な異空間に入っていてもらいたいんだけど良いか?」
「良いけど……」
「良し!それじゃ、攻略したら出すから、その間は異空間にいてくれ」
『
子供達には結界も張り、もしヴェルドラの魔素を浴びても大丈夫なようにしておく。
さーてと……
「突き抜けてやるよ!!!」
全力で駆け抜ける。
罠?
知ったことか!!!
発動する前にその場から離れてしまえば罠なんて無いも同然!!!
なんて思ってた時期が、俺にもありました。
「ハァ……ハァ…….ハァ……」
『クスクス』
『もう限界?』
『つまんないね』
進むにつれ罠の発動速度が上がり、俺の速度では対応できない速さで発動するものまで現れた。
なんなんだここ!!!
神聖さを感じさせるくせに、神聖さなんて欠片もないじゃないか!!!
悪辣で陰湿なダンジョンだろこんなもん!!!
ていうかここ本当に精霊の棲家なんだよな?
〈解、精霊の気配が多いため、ここが精霊の棲家である事は疑いようもありません〉
あー、そう。
「精霊ってのは陰湿だな!!!」
どうせ向こうも聞いているだろうと思い、そう叫んだ。
『クスクス、知らなかったの?精霊はイタズラ好きなんだよ?』
なるほどね……なるほどなるほど。
うん。
「後悔させてやる」
我ながら随分と低い声が出たものだ。
〈三人称視点〉
リムルかストレスを溜めながらもダンジョン攻略を頑張っていた頃、子供達はと言うと……
「おー、高ーい!!!ドラゴンの頭の上、最高ー!!!」
「ヴェルドラさん、ヴェルドラさん、新しい漫画出して!!!」
「魔法……もっと見せて」
『クアーハッハッハッ!!!我、人気者であるな!!!クアーハッハッハッ!!!』
ヴェルドラと楽しく遊んでいた。
時は遡り子供達が胃袋に入ってすぐ……
「ド……ドラゴンだー!!!」
ケンヤが興奮した様子でヴェルドラを見上げていた。
「ちょっとケンヤ!!!危ない奴だったらどうすんのよ!!!」
アリスがケンヤに注意する。
『む?お前達はリムルの教え子達ではないか!!!」
「知ってるの?」
リョウタがおどおどしながら尋ねる。
『うむ!リムルは我の盟友である!!!』
「スッゲー!リムル先生ドラゴンと友達なのかよ!!!」
ケンヤがさらに興奮し、叫ぶ。
「貴方は……名前なんていうの?」
『む?ああ、まだ名乗っていなかったな。我はお前達の名は知っておるし、こちらだけ知っておるのも不公平であるか』
ヴェルドラは一息つくと、名乗りを上げた。
『我は、暴風竜ヴェルドラ=テンペスト!!!世界に
「竜種……」
「スッゲー!!!」
「ん?テンペスト?」
アリスが気になり、呟いた。
『フッフッフッ!リムルの名付け親は我でな、その時共通の名としてリムルにはテンペストの名をお互いに付けたのだ!』
「リムル先生って、やっぱりすごいね」
『そう!リムルはスゴいのだよ!!!』
「ヴェルドラさんは……どうしてここにいるの?」
クロエが尋ねると、
『実は我封印されておってな!その封印を解いてもらうためにリムルの中で封印の解析鑑定を行なっておるのだ!」
「封印?なんで?」
『ちょっとうっかり、街を一つ滅ぼしてしまってな!!!」
「そ……そう」
子供達が少し引いていると、
「あっ!その手に持ってるやつ!!!」
アリスがヴェルドラの手を指差して声を上げた。
そこには、一冊の漫画があった。
『ああ、これか?これはリムルの記憶の中にあった漫画である』
「そ、それ!私たちがまだ読んでない巻!!!」
「そうなのか?……読むか?」
ヴェルドラは一瞬の逡巡の後、漫画を子供達に差し出した。
「良いの!?」
「うむ!ここであれば、漫画などいくらでも作り出せる故、気にするな!好きな漫画があれば言うが良い!即座に作り出してやろう!」
「やったー」
こうして、瞬く間にヴェルドラは子供達に懐かれることに成功した。
なお、その様子をイフリートは影から見守っていた。