転生したら蛇だった件   作:朝昼晩昼夜逆転

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惨劇の日

〈フィアラside〉

 

 ついに、その時が訪れた。

 

 現在、ボクが見ているディスプレイには、相対するリムルとヒナタが映し出されていた。

 

 つい先ほど、リムルは子供達と別れを済ませ、イングラシアを後にした。

 

 その直後、ヒナタと邂逅した。

 

 誤解があることを察したリムルはすぐにその誤解を解こうとした。

 

 しかし、リムルのことをシズの仇だとしか見ていないヒナタは聞く耳を持たず、交戦が始まってしまった。

 

 原作通り一方的な戦いになるかと思ったが、どうやら違ったようだ。

 

 ハクロウは、ボクの旅立ち後は自身の修行と並行して原作以上に弟子の育成に力を入れたらしい。

 

 リムルも当然ハクロウの稽古を受けていたようで、その刀技にはキレがあり、ヒナタの攻撃もなんとか対応していた。

 

 しかし、それでもヒナタには及ばず、原作通りリムルは死ぬ前に分身対と入れ替わり、その分身体を暴走させることでヒナタの注意を完全に本体に向かわないようにし、ことなきを得た。

 

 その後、傷だらけのソウエイの話を聞き、すぐさま魔国へと帰還した。

 

 そこには、まさに地獄と表現すべき惨劇の跡があった。

 

 美しい街並みは見る影もなく、建物は倒壊し、そこら中に血が飛び散り、悲鳴と嗚咽が木霊していた。

 

 正直、これを見るのはボクも辛い。

 

 少しの間だけど、ボクも魔国に住んでいた。

 

 だから、チラホラ知っている顔がいる。

 

 魔国に到着したリムルは、すぐに医務室に案内された。

 

 そこには、ゴブタとシュナがいた。

 

 そこで、2人の無事を喜んだ後、リムルは不安そうに尋ねる。

 

『シオンとハクロウはどこだ?』

 

 ベニマルは悲しい顔をして、リムルを死体の安置所に案内した。

 

 そこには、シオンがいた。

 

 物言わぬ骸となって。

 

 そして、そこには、ボクが知っている顔もいた。

 

 介入しないという選択に後悔はない。

 

 これからリムル達がこの世界を生き抜くためにはここでリムルが覚醒するのは絶対に必要なことだったから。

 

 でも、もっと良い方法があったんじゃ無いかとも考えてしまう。

 

 そんなことを考えていると、リムルがふと呟く?

 

『ハクロウは?』

 

 そう、ハクロウはその場にいなかった。

 

『ハクロウは……行方が分からないのです』

 

『……え?』

 

『お話します。あの時のことを』

 

 ベニマルはポツポツと話し始めた。

 

 惨劇の日の出来事を。

 

 

 

 

〈三人称視点〉

 

 その日も、魔国の民はいつも通り平穏な生活を送っていた。

 

 しかし、突如その平穏は崩れ去った。

 

 ファルムス王国からやってきたキララ、ショウゴ、キョウヤの3人が起こした騒ぎだった。

 

 その騒ぎは、ゴブタとシュナが解決した。

 

 しかし、騒ぎを起こして魔国の信用を無くすという作戦が失敗した3人は魔国の民への攻撃を始めようとした。

 

 その攻撃は、シオンと警備隊が防いだのだが、その直後に2つの結界が魔国を覆った。

 

 その結界は、1つは魔法を無効化し、外との連絡を取れなくするというもの。

 

 もう1つは、魔素を浄化することによる魔物の弱体化を目的とするものだった。

 

 その結界によって、シオンたちは窮地に立たされた。

 

 詰みかと思われた次の瞬間、ハクロウがその場に現れた。

 

「明確な敵対行動……許しはせぬぞ?(わっぱ)共」

 

 淡々と、されど激情を感じさせる声で、ハクロウは3人を威圧し、そのまま交戦が始まった。

 

 いや、始まるはずだった。

 

 そこで、原作に登場しない原作知識持ちの転生者が介入した。

 

「ハハハッ!僕たちに注意を向けすぎなんだよ間抜け!!!」

 

 そのキョウヤの煽りと共に、突如現れた少年がハクロウに手を向け、そして、

 

「飛ばせ『転送者(オクルモノ)』!!!」

 

 スキルを発動した。

 

 すると、ハクロウの姿が忽然と消えた。

 

「アハハハハッ!!!これで……これで、不安材料は消えた!!!あとはリムルを殺すだけで俺は生き残れる(・・・・・)!!!」

 

 少年の名は『アル』。

 

 原作知識を持ち、ファルムス王国に転生した転生者。

 

 ユニークスキル『転送者』と『思逸者(ソラスモノ)』を持つ仙人。

 

 『転送者』は、生物を含むありとあらゆるものを指定した場所に転移させる能力。

 

 そして『思逸者』は、自身の存在を他者の意識から逸らし、完全な隠密を可能とする能力だった。

 

 その能力を見込まれ、今回の作戦では1番の不安材料であるハクロウの排除を任されたのだ。

 

 東の商人からの情報で、ハクロウはリムルと同等かそれ以上に危険視されていた。

 

 だからこそ、仙人のアルが派遣されたのだ。

 

 仙人となったその実力は当然高く、おそらく現在のリムルであれば、苦戦したかもしれないほどに強大な存在だった。

 

 しかし、その力はリムルに振るわれることはなかった。

 

 何故って?

 

 簡単だ。

 

 その場でアルは死んだから。

 

 ただ、それだけだ。

 

 

 勝利を確信し、高笑いするアルは、突如縦に斬り裂かれた。

 

 キョウヤ達3人は意味が分からず混乱した。

 

 そして理解した。

 

 あのハクロウという存在が、転送される直前にアルを斬っていたのだと。

 

 3人は、この場でハクロウを排除できたことを幸運だったと理解し、その後惨殺を再開した。

 

 ハクロウがいない今、3人を倒せる者はおらず、蹂躙が始まった。

 

 さらにその蹂躙には、合流したファルムス王国軍も加わり、100余名ほどの被害を出した後、3人とファルムス王国軍は去って行った。

 

 

 

 

〈フィアラside〉

 

 原作知識持ちの転生者……あのタイプ(・・・・・)じゃなかったからマークしてなかったんだよな。

 

 まあ、ハクロウに殺されたようだけど……。

 

 あの魂の感じだと、おそらくこの世界に転生して50年ってところかな?

 

 仙人になってたってことはそれなりに才能もあったんだろう。

 

 しかし、仙人になる前に支配され、仙人になると同時に自我は取り戻すものの、依然として支配は解けなかったようだ。

 

 まあ、不運だったとしか言いようがないな。

 

 さて、肝心のハクロウの居場所は……

 

「……え?マジで?」

 

 こんな偶然ってあるの!?!?!?

 

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