転生したら蛇だった件   作:朝昼晩昼夜逆転

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あーあ、一線超えちゃったね

〈三人称視点〉

 

「ハクロウ殿……ご無事で?」

 

「この通り無事じゃよ。帰って来るのに時間がかかってしもうた。すまなんだな」

 

 ハクロウは、半日前に原初の黄(ジョーヌ)によって基軸世界に帰ってきた。

 

 しかし、そこは魔国(テンペスト)とは違う大陸の黄金郷エルドラドの近くだったのだ。

 

 そこからハクロウは地を駆け、海を駆け半日かけて魔国に戻ってきたのだ。

 

「いえ、ご無事で何よりです」

 

「フォッフォッフォ。ゲルドも無事で良かった。さて、歓談もこれまで。どうやらまだ生きておったようじゃな」

 

 ハクロウはそう言うと、斬り刻んだ肉塊を見下ろした。

 

 そこには、すでに一人分の肉塊しかなく、もう1人……ショウゴは逃げ出していた。

 

 まだ逃げたばかりらしく、すぐに追いつける距離にいた。

 

「あれでも死なぬとは、どうやれば死ぬのか……色々試してみようかのう」

 

 ハクロウがそう言い、抜刀の構えを取ると、

 

「ハクロウ殿、どうか、奴の相手はオレに任せてはいただけないでしょうか?1人の武人として、オレは奴の行いが許せない」

 

「ふむ……良いじゃろう。実力もどう考えてもゲルドが上。問題なく倒せるじゃろうて」

 

 ハクロウの言葉を聞き終わると、ゲルドは駆け、すぐにショウゴに追いつくと、あの勢いのままショウゴの頭を使い地面に押し付けた。

 

「なに……しやがる!!!」

 

 ショウゴはどうにかその拘束から抜け出そうともがくが、ゲルドには無意味だった。

 

「その不死性……どれほどか試してやろう」

 

 腐食を纏った拳で殴りつけられ、ショウゴはなす術もなく重症を負う。

 

 しかし、すぐに回復してしまう。

 

「なるほど、斬り刻まれても復活するのだから、これぐらいはすぐに回復するか。ならば、次は頭を潰そう。回復するなら別の方法を試し続けるだけだ」

 

 ゲルドはそう言うと、斧を振りかぶった。

 

 そして、その斧がショウゴに直撃する直前……

 

「危ないのう。生き残ったのはショウゴのみ……そしてショウゴも瀕死……魔国の強さを見誤ったか。しかし、本隊が合流すればそれも関係なかろう」

 

 突如現れた老獪な魔法使い……ラーゼンの結界によってその攻撃は防がれた。

 

「何者かは知らぬが、ファルムス軍所属の者か?ならば死ぬが良い」

 

 ゲルドが攻撃しようとすると、

 

「戻れ!ゲルド!!!」

 

 ハクロウの声に、ゲルドは一気に後退した。

 

 次の瞬間、ゲルドが立っていた場所が勢いよく爆発した。

 

「厄介なジジイじゃのう」

 

 ハクロウがラーゼンを睨む。

 

「カッカッカッ。それはお主もじゃろうて。油断ならぬ鬼人よ。今回はこれで一時退散するが、次戦場であったら殺し合おうぞ?」

 

「儂と貴様が戦場で会うことはないじゃろうな。貴様がこれから向かうであろう戦場に激怒したあの方の気配を感じた。主らはただ蹂躙されるだけじゃ」

 

「カッカッカッ、つまらぬ冗談じゃ」

 

 ラーゼンはそう言うと、どこかへと転移して行った。

 

「逃して良かったのですか?」

 

「あやつ……自身の死をトリガーとした核撃魔法を仕込んでおった」

 

「なんと……」

 

 現在のハクロウにとって、ラーゼンの使う核撃魔法はどうとでもなるものでしかない。

 

 しかし、この場にはゲルド、リグル、ゴブタそして嵐牙狼族たちがいた。

 

 だからこそ、下手に手を出すことは出来なかったのだ。

 

 

 

 

 

 場所は変わり、ファルムス軍本隊の野営地。

 

 そこに転移してきたラーゼンは、ショウゴの精神を破壊し、ショウゴの肉体を乗っ取った。

 

 今の自分なら魔王すら倒せるかも知れないとそんなことを言うラーゼンの余裕は簡単に崩れ去った。

 

 極細の光線によって、ファルムス軍は壊滅の危機に追いやられた。

 

 それが、魔国盟主リムル・テンペストによる攻撃であることはすぐに分かった。

 

 しかし、ラーゼンはどうすることも出来ずに頭を光線で撃ち抜かれた。

 

 そして、最初は意味不明なことを宣っていたファルムス王もリムルに恐れ慄き、言葉すら発せなくなった。

 

 そして、リムルは更に『心無者(ムジヒナルモノ)』によって残りのファルムス軍人の魂も刈り取り、その後ラーゼンの生存を確認すると悪魔召喚を行った。

 

 リムルは現れた悪魔……原初の黒(ノワール)にラーゼンの捕縛を命じ、自分をランガに運ばせた。

 

 その後、『智慧乃王(ラファエル)』となった大賢者が『反魂の秘奥』によって、死者を蘇生し、その蘇生時に原初の黒に仕える2体の悪魔を使った。

 

 こうして、ファルムス王国との全戦戦争は、ゲルドたちの戦い以外はほとんど原作と変わらない流れとなった。

 

 

 

 

 

 

 リムルの真なる魔王への覚醒から少し経ったある日。

 

 『反魂の秘術』によって魔素を使い果たしたリムルは、いつも過ごしていた庵に運び込まれていた。

 

 すでにリムルの配下たちは進化の眠りから目覚めており、街の復興を始めていた。

 

 もちろん、先遣隊の蹂躙によって死んでしまったはずの者たちも目を覚ました。

 

 『反魂の秘術』は、完全に成功したのだ。

 

 目覚めたシオンは庵の中でリムルを膝に乗せ、庵の周囲はソウエイとその配下で警備をし、入り口にはベニマルが警備する。

 

 まだ信用を得られていないということで、原初の黒こそいないが、魔国において最も安全で、何者にも手が出せない場所……それが、この庵だ。

 

 

 

 

 

 そのはずだった。

 

 

 

 

 

 突如、シオンが気を失い、倒れた。

 

 同時に、ソウエイとその配下も、そしてベニマルすらも意識を失った。

 

 

 

 

 

 空間が歪み、庵の中に突如として1人の青年が現れた。

 

 青年はニヤリと笑い……

 

「これで……オレが主人公だ。悪いなリムル。アハッ」

 

 そう呟き、そして……

 

(存在)を奪え『千貌乃王(ニャルラトホテプ)』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ、一線超えちゃったね」

 

 

 

 

 




次話は6月7日に投稿予定です。
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