転生したら蛇だった件   作:朝昼晩昼夜逆転

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ボクには許せないことがある

〈三人称視点〉

 

 究極能力『千貌乃王(ニャルラトホテプ)

 

 これは、ありとあらゆる存在へとその姿を変え、その存在の技術及び身体能力、そしてスキルを使えるようになるという権能を持つスキルである。

 

 しかし、完璧に模倣できるスキルはあくまでユニークスキルレベルであり、究極能力は多少性能の良いユニークスキルレベルに落ちた性能でしか使えない。

 

 更に言うなら魂の質は変わらないため、魂を知覚できる者にはすぐに別人だとバレてしまう。

 

 しかし、これらのデメリットを全て解消する権能がこの能力には備わっている。

 

 それこそが『(存在)の簒奪』。

 

 自身で直接魂を簒奪することで、その対象の姿も、技術も、身体能力も、スキルも完全に使うことが可能となり、更に魂の質さえもその対象と全く同じになり、その魂の持つ魂の回廊などの繋がりさえも得ることが可能である。

 

 完全なる成り変わり。

 

 それこそが、『千貌乃王』の本質。

 

 『千貌乃王』を手に入れ、転スラの基軸世界へと転生した原作知識持ちの転生者、『鏑木(かぶらぎ)(セン)』は、歓喜した。

 

 まさに、主人公になるための能力だと。

 

 センは決意した。

 

 『千貌乃王』を使い、リムルがある程度成長したタイミングでリムルに成り変わると。

 

 そうする事で、自身は主人公として、この世界に君臨するのだと。

 

 そして、そのある程度成長したタイミングがリムルの真なる魔王への覚醒だった。

 

 リムルが覚醒したタイミングであれば、リムルの持つ『智慧乃王(ラファエル)』と『暴食乃王(ヴェルゼビュート)』を確定で入手出来る。

 

 『智慧乃王』の自我まで得られるかは不明であるものの、能力は確定で入手出来る。

 

 『智慧乃王』さえ入手出来れば『誓約乃王(ウリエル)』も作ることが出来る。

 

 『智慧乃王』の自我が手に入らない事の弊害として、帝国戦で『正義の王(ミカエル)』に操られてしまう可能性があるが、それは、『智慧乃王』でスキル改変が出来るため、支配回路の破棄も出来る可能性があるとセンは考えた。

 

 そしてヴェルドラだが、『暴食乃王』を入手出来ればその胃袋の中にいるヴェルドラも手に入れることが出来る。

 

 そして、転スラ世界において強者は魂が同一であればどれだけ性格が変わろうとも同一人物と認識する傾向にある。

 

 おそらくヴェルドラも例に漏れずそのタイプだと考えられ、胃袋の中にいるヴェルドラは、おそらくリムルが知覚出来ること以外知ることが出来ないため、リムルが低位活動状態(スリープモード)の時に存在を奪えば、成り変わりが起きていることを知ることが出来ないと思われる。

 

 ならばヴェルドラとの友好も維持し、多少の性格の変化は覚醒の影響とでも誤魔化せばいくらでもやりようはあった。

 

 そして、ついにセンは、主人公になる……はずだった。

 

 

 

 

 

「あーあ、一線超えちゃったね」

 

 

 

 

 

 そんな声が聞こえると同時に、リムルの庵にいたはずのセンは真っ暗な空間にポツリと立っていた。

 

 ボウッと音を立て、青白く不気味な小さな炎が立ち上がる。

 

 それを皮切りに、センの周りに10数個の青白い炎が現れた。

 

「なんだ……これは!!!」

 

 センが混乱を(あらわ)にし、辺りを見回すと、突然後ろから声が聞こえてきた。

 

「やあ。初めましてだね、鏑木羨」

 

 振り向くと、そこには装飾を施した狩衣に身を包み、長く美しい髪を下の方でゆったりと束ねた少年、フィアラがいた。

 

「誰だ……お前……」

 

 原作に登場しないフィアラに、センは混乱した。

 

「ああ、君はボクのこと知らないのか。これから死ぬ奴に自己紹介しても意味なんてあるのか分からないけど……まあ、冥土の土産だ。教えてあげる。ボクはフィアラ。『根源恐怖(オリジン・テラー)』のフィアラ。魔王をしているよ」

 

「『根源恐怖』?ああ、そういえば魔王が増えていたんだったな。そうかそうか。その様子だとお前も原作知識持ちの転生者か?早くここから出せ!!!殺されたくなければな!!!』

 

「……?君がボクを殺す?君如きが?」

 

「ハッ!!!俺は最強なんだよ!!!俺は主人公なるべくしてこの世界に転生したんだ!!!この世界は俺のために存在してるんだよ!!!」

 

「ちょっと何言ってんのか分かんないや」

 

「アハハッ!!!随分と理解力のない間抜けだな!!!いや、まさかお前は自分が主人公だと思っていたのか?自意識過剰もここまで来ると哀れだな!!!」

 

「……」パチンッ

 

 フィアラは、センの言葉を聞き流しながら指をパチリと鳴らした。

 

「なんだ?指パッチンで何か出るのか?指パッチンで発動とか厨二病かy!!!ヴッ!……ォェ……エェ……ゴボッ!」

 

 突如センが何かを吐き出した。

 

「なんだ……なんだよ……これぇ」

 

 センは、自らが吐き出したものを見た。

 

 そして、それを見た事で更なる吐き気を催した。

 

 それは、形容し難き悍ましいゲル状のナニカだった。

 

「なっ……なんっ……な……」

 

「ボクさ、どうしても許せないことがあるんだ。それを君はした。だから、出来るだけ苦しめて、出来るだけ絶望させて、心を折ってから殺す。そう決めたんだ」

 

「……な……何を……」

 

 フィアラは淡々と話し始める。

 

「ボクはさ、努力をする存在が好きだ。努力して、その末に得たかったものを勝ち取る。とっても素晴らしいことだと思わない?才能とかも関わってくることもあるけれど、努力自体に意味は生まれるものさ。リムルはさ、転生チートで運良く強力なスキルを手に入れただけだとか言う人もいるかもしれないけど、それは違うじゃん」

 

「………」

 

「リムルは、ちゃんと努力してる。配下の統率もそうだし、ハクロウに教えを乞う事で仲間を守る力を得ようと努力もしていた。そして、仲間を取り戻すために元同族である人間を殺す覚悟をして、それを実行した。要するに、リムルは今の立場を努力した上で勝ち取ったって言うことさ」

 

「だから……なんだって言うんだよ!!!」

 

 狂気すら感じさせるほどに静かな声でフィアラは続ける。

 

「その努力の末に勝ち取ったものを君は奪おうとしたんだ。……別にさ、君が努力の末にその能力を得たのだというのなら、ボクは何も言わない。努力した者と努力した者がぶつかった末の結末なら、ボクはどんなものでも受け入れる。でもさ、なんの努力もしていない、ただ与えられただけの者が与えられたものだけ享受して、少しでも自分で何か努力しようとすることすらなく、努力して勝ち取った者からその成果だけを奪っていく。そんなことが許されると思っているのかなぁ?ねえ……」

 

 フィアラから恐ろしい程に膨大な魔素が溢れ出す。

 

「神様転生者!!!」

 

 




注意・この物語に神様転生ものの物語を否定する意図はありません。

タグに『神様転生』と『神様転生は主人公以外』を追加しました。
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