〈フィアラside〉
この世界には、2種類の原作知識持ちの転生者がいる。
1種類目は、誰からの介入も受けずに自然にこの転スラ世界に転生したタイプ。
ボク……それとあのハクロウを冥界に転送した転生者などがこれに分類される。
このタイプだと、ユニークスキルは、確定で持っていたりするものの、この転スラ世界においてユニークスキルは、上位層からしてみれば簡単に無力化できる程度のものでしかなく、生き残るためには必然的に努力するしかない。
そして、2つ目……。
これは、前述したタイプと違い、努力の必要性がない場合がほとんどだ。
最初から
それが、『神様転生者』。
神を名乗る存在により、この転スラ世界に転生した者たち。
現在ボクの目の前にいる鏑木羨は、これに該当する。
鏑木羨の場合、究極能力『
はっきり言ってやり過ぎなぐらいチートである。
これはダメだろうと心底思う。
「か……神様に転生させて貰ったからってなんだって言うんだよ!!!」
「話聞いてた?別に神に転生させられてチートを貰ったのを非難してんじゃないよボクは。ボクが言ってるのは、あくまで努力してない存在が努力した存在からその成果だけを奪うなんてあって良い筈がないって話さ」
「……わ……分かった。リムルの存在の簒奪は諦める!それで満足だろう?」
「ダメだよ。君は一線を超えた。ここで見逃したら、またやるかも知れない。だから、殺す」
「ふっ……ふざけるな!!!なんの権利があってそんなことを!!!」
「権利?おかしな事を言うね。この転スラ世界は弱肉強食が基本でしょう?君が弱いからボクに殺される。それだけだよ」
「お……俺を殺したら神が怒るぞ!!!天罰を下すぞ!!!神は俺が世界をめちゃくちゃにするのを望んでた!!!」
「そうだね。君を転生させた神はそれを望んでた。だから、ボクが殺した」
「………………は?」
「だから、その神はもうボクが殺したって言ったんだよ」
「そんな事……ある筈がない!!!神は絶対的な存在だってあの神は言ってた!!!だから、何をしても良いんだって!!!」
「バカだね。神が絶対?そんな訳ある筈がないでしょ?」
威圧を強めながら、言葉を続ける。
「神はね、絶対的な存在じゃない。自らを絶対的な存在だと思い込んでいる哀れな連中だよ」
「……ヒュッ!!!」
あまりの圧に鏑木羨は息を飲んだ。
「この世界を創ったのは神だ。神はそう思い込んでいる。でもそれは違う。この世界を創ったのは神じゃない」
「じゃ……じゃあ!誰だって言うんだよ!!!」
「作家だよ」
「……は?」
「作家が、精魂込めて作り上げた物語を世に出す。そうする事で、世界は生まれる。作家とは世界の創造主であり、世界とは作家の努力の結晶なんだ」
「………」
ボクは、『
これは、その真理の1つ。
「そして、神は、偶然数多の世界に干渉出来る存在として生まれただけにも関わらず、その世界をさも自らのように扱う愚者だ。まあ、別に転生者をその世界に送るだけなら別にいいんだよ。でも、今回は訳が違う。神は、君の精神性を知り、君に『千貌乃王』を与えれば、必ず主人公に成り変わると理解した上で、それを見越して君を転生させた。要するに、あの神はなんの努力もしていない存在に努力したリムルからその成果を奪わせようとした。そして、それを娯楽として楽しむことしか考えていなかった。だから殺した」
「ふ……ふざけるなーーー!!!」
鏑木羨が剣を抜き放ち、斬り掛かってきた。
しかし、その剣はボクに触れると同時にバキリと折れた。
「な……なんで……?この剣は……神話級の……」
転生特典である剣が折れたことに、鏑木羨は混乱を
「それ、もう神話級じゃないよ?まぁ、例え神話級だったとしても結果は変わらないけどさ」
「な……に……を言って」
「これ……なんだと思う?」
ボクは、手のひらの上に浮かべた丸い結晶を鏑木羨に見せた。
鏑木羨は、これの正体に気付かず、さらに混乱したようだ。
「これはね、君の転生特典だよ」
「……………………………は?」
「この空間に入った瞬間に、君は転生特典を失ったんだ」
「ふざけるな……」
「この結晶には、君の究極能力、神人たり得る力、神話級の剣に内包されていた剣を神話級たらしめていた力、剣の才能と魔素を操る才能、そして膨大な魔素が封じ込められているんだ」
「返せ……返せーーー!!!」
なかばやけになりながら、鏑木羨がボクに殴りかかる。
その拳を受け流し、逆に鏑木羨の腹を強く殴打した。
「グハッ!」
「まあ、正直、これはボク要らないんだよね」
そう言い、地面に倒れる鏑木羨の顔の近くに結晶を落とす。
「お……俺の……特典……」
鏑木羨が結晶に手を伸ばす。
そして、この手が結晶に触れる直前に、その結晶を踏み潰した。
「あ……ああ……ああああああああああああ!!!」
「言っておくけど、まだ絶望は終わってないからね?」
「……え?」
弱々しく、鏑木羨がボクを見上げる。
「あれ、見てごらん」
ボクはそう言い、ついさっき鏑木羨が吐き出したモノを指差した。
すると、突如ソレが蠢いた。
「ヒッ!!!」
ブルブルとソレは震え、徐々に形を変え始める。
不快としか表現できない音を立てて、ソレは、形を変え、やがて蛇のような形に落ち着いた。
しかし、あくまで形が蛇というだけで、ソレは、蛇というには余りにも悍ましいナニカだった。
赤みがかった半透明の体。
半透明であるが故に、ソレの体内が見える……見えてしまう。
体内に存在するのは大量の眼球。
悍ましさすら覚えるほどにその量は多く、そしてその眼球の全てがその蛇を見た者と視線が合う。
形だけ蛇の悍ましいナニカである。
ソレは、ゆっくりと鏑木羨に近づき、鏑木羨に噛みついた。
「ギャアアーーー!!!なんだコレ!!!なんなんだよコイツ!!!」
「それは具現化した君の悪意だよ」
「なっ……何を」
「『
「嫌だ!!!嫌だ!!!嫌だ!!!死にたくない!!!」
「別にボクは神様転生者が嫌いな訳じゃない。君がもし、その力を努力した存在に向けることさえなかったら……あるいは、努力した存在に向けたとして、それが別の誰かの為であったなら……ボクは君を殺さなかった。自業自得だよ」
「……そんな……」
「あ、そういえば、伝え忘れてたよ。この術には不確定要素があってね。それが、具現化した悪意の性格なんだ。今回具現化した悪意は、どうやら食事をゆっくり楽しみたい派らしい。どれくらい苦痛を味わうのか分からないけど、まあ、せいぜい苦しんでね。あ、そうだ。君は食い尽くされるまで死ぬことも出来ないから。さて、ボクは他人の苦悶の表情を見て楽しむ趣味はないから、ここら辺で失礼するよ。じゃあね」
そう言い、ボクはその場を後にした。
鏑木羨が食い尽くされたのは、それから1週間後の事だった。
フィアラがここまで努力していない存在が努力した存在からその成果を奪うのを嫌悪するようになった理由は、前前世にあります。
前前世で、フィアラは、家にも学校にもどこにも居場所がなく、孤独な状態でした。
それでも、フィアラはそれを変えようと努力を続けました。
しかし、そのことごとくを親の七光りを振りかざし、なんの努力をしない存在に踏み躙られました。
更に、その七光りは、ただの遊びと称してフィアラが学校で孤独になり、更にいじめられるように仕向けた張本人だったりします。
フィアラが前前世で若くして死んでしまった原因の殆どがコイツです。
ちなみに、『真理乃神』は使いこなせば前前世の地球に干渉出来、フィアラは、七光りくんを始めとした自身をいじめていた、もしくは虐待していた者たちに『これからやる事なす事全て失敗するようになる呪い』をかけています。