〈三人称視点〉
フレイの使いの来訪より10日後、獣王国王都の上空にとてつもないオーラを放つ存在が現れた。
それは、鱗の様な鎧に身を包み、頭には一つ目の兜を被っていた。
「ようやく来たか。待ちくたびれたぜ?」
既に王都の民の避難は完了しており、そこにはカリオンとスフィアのみがいた。
「…………」
暴風大妖渦は、無言でカリオンを見下ろす。
「何だ?喋らねえのか」
カリオンはそう言うと、
「じゃあ、早速
カリオンは武器を構え、そしてその武器を暴風大妖渦に振り下ろした。
しかし、あっさりと武器は暴風大妖渦に捕まれ、そして暴風大妖渦の鋭い拳がカリオンのみぞおちに直撃した。
「グッ……やるじゃねえか!!!」
後退しながら、カリオンは叫び、そして今度は武器に込める魔素の密度を上げ再度暴風大妖渦に斬りかかった。
その一撃が暴風大妖渦に直撃する直前……
大量の鱗が出現し、カリオンを襲った。
「クソッ!!!厄介な!!!」
悪態を吐きながら、カリオンは何とかそれをしのぐ。
そして……
「出し惜しみはしてられねえな!!!『百獣化』!!!」
カリオンの体が光に包まれ、その姿が変化する。
髪は荒々しく伸び、体は黄金の体毛で包まれ、背からは翼が生えた。
「さあ、死ぬが良い!!!『
カリオンの奥義。
絶対の自信を持って放たれたそれは、暴風大妖渦に直撃した。
「これで
そう言い、カリオンは『百獣化』を解こうとした……次の瞬間……
暴風が吹き荒れた。
「なっ!!!」
そして、その暴風の発生地点にそれはいた。
多少のかすり傷を負いながらも、暴風大妖渦はそこにいた。
「マジかよ……」
カリオンは驚愕しながらそう溢した。
そして、その驚愕はさらなる驚愕に上塗りされた。
暴風大妖渦は、その手の爪を伸ばし、構えをとった。
それは、カリオンがよく知る構えで……
暴君大妖渦は、依代となった存在の記憶を読むことで近接戦闘技術を獲得していた。
依代となった存在の記憶から得た近接戦闘技術……それは……
「おい……嘘だろ……?」
次の瞬間、カリオンはその爪で斬られ、落下していた。
「ふざ……けるな……」
落下しながら、カリオンは呟き……そして
「ふざけるなよ!!!クレイマンーーー!!!!!」
咆哮し、体勢を立て直し、暴風大妖渦に向かって飛んだ。
カリオンは気付いたのだ。
暴風大妖渦の依代となっているのがフォビオであると。
故に、カリオンは立ち向かう。
全ては、フォビオを取り戻すために。
しかし……ああ、しかし
「……………」
現実は無情である。
暴風大妖渦の瞳に魔力が収束し、そしてそれは放たれた。
『獣魔粒子砲』とは比べようもないほどに濃密な光線。
それが、カリオンに直撃した。
「ク……ソ……がぁーーーーー!!!!!」
光線に飲み込まれ、身体中をボロボロにしながらカリオンは叫ぶ。
しかし、その叫びも虚しく、カリオンになす
それを見届けた暴風大妖渦は、どこかへと去っていった。
「大将!!!」
スフィアは、すぐさまカリオンが落ちたと思われる場所を探した。
しかし、どこにもカリオンの姿はなかった。
「何で……どこだよ!!!まだ間に合うんだ!!!
悲痛に叫び、スフィアは探す。
ふと思い、スフィアは、空を見た。
そこには、カリオンを抱え、どこかへと去るフレイの姿があった。
「何で……」
スフィアは、そう呟くも
「いや、あいつは危機を知らせてきた。味方なはずだ!なら、任せておいて良いのか!?……クソッ!分からねえ!!!……とりあえず、アルビスに伝えなきゃな……暴風大妖渦……いや、フォビオのことを」
大丈夫だと自分に言い聞かせて、スフィアは駆け出した。
〈リムルside〉
「これが獣王国に起こった全てです」
「そんなことが……」
正直、魔王カリオンの敗北は予想外すぎた。
仮にも魔王が魔王ではない存在に負けたのだ。
いや、暴風大妖渦はヴェルドラの申し子だ。
魔王と同等とさえ言われていた……なら、それほどおかしい話でもないのか?
いや、これは今考えるべき事じゃないな。
カリオンの敗北、そしてフォビオが暴風大妖渦の依代か……情報量が多すぎるな。
「リムル様に、お願い申し上げます。どうか、どうかフォビオを救ってください」
「フォビオ……か」
「リムル様がフォビオに対して良い感情を持っていないことは承知しております。ですが、どうか……どうか」
「カリオンの方は良いのか?」
「フレイ様が連れて行った以上、おそらく無事であると思われます。フレイ様は、暴風大妖渦が去った後にカリオン様を連れて行った。であれば、クレイマンに知られたくなかったと考えるのが妥当でしょう。ならば、フレイ様は味方と考えて良いと判断しました」
「なるほどな。まあ、良いだろう。お前達は同盟相手だ。それに、クレイマンは潰す。これは決定事項だ。フォビオがクレイマンに操られているのならそれを助け出すこともクレイマンに対してダメージを与えることになるだろう」
「感謝申し上げます」
こうして、フォビオの救出が決定した。
待ってろよクレイマン。
絶望を見せてやる。
障害となりそうなのは……西方聖協会か?
〈告、無限牢獄の解析が完了しております。暴風竜ヴェルドラを解き放つことで、西方聖協会に対して牽制効果が見込めます〉
何!?
ハハッ……そうか……そうか!!!
やっと……やっとだな!!!
なあ、ヴェルドラ!!!!!