転生したら蛇だった件   作:朝昼晩昼夜逆転

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気絶しない道理はなかった

 ギィの剣撃がミリムに向かって放たれる。

 

 超常の技術と威力持って放たれるそれは、覚醒魔王であっても簡単に(ほふ)れてしまうだろう。

 

 しかし、ミリムはそれを難なく受け止め、ギィに殴りかかる。

 

 ギィの剣とミリムの拳がぶつかり合い、世界そのものすら震わせた。

 

 ……………

 

「っと、魅入ってる場合じゃない!呪え『呪禍乃王(ザリチュ)』」

 

 呪いを触手として具現化し、ミリムへと殺到させる。

 

 あくまで、ギィを援護するように、ギィに当たらないよう細心の注意を払いながら。

 

 おそらく、ミリムであれば、この程度避けることなど容易いだろう。

 

 しかし、ギィの相手をしている今ならば……

 

「グッ……………!!!!!」

 

 触手が掠り、ミリムが一瞬怯む。

 

 その隙をギィが見逃すはずが無く、

 

「お前なら、どうせ腕くらいまた生えるだろ!!!」

 

 そう言い、ミリムの右腕を斬りつける。

 

 それによって、ミリムは右腕を失うかに思えた……しかし、

 

「マジかよ……」

 

 ギィの剣はミリムの肉こそ斬れたものの、骨を斬るには至らなかった。

 

 そして、ミリムの攻撃が再開された。

 

「クソッ!」

 

 悪態を吐きながら、ギィは勢いよくその場から離脱する。

 

 その時、剣はミリムの腕から抜けず、ギィは剣を手放すしかなかった。

 

「メチャクチャだな!!!ホントにお前は!!!」

 

 ギィは何とか素手でミリムの攻撃をいなす。

 

 しかし、やはり素手ではミリムに分があるようで、防戦一方になってしまった。

 

 この間も、ボクは何度も触手で攻撃しているが、既に耐性を獲得したのか効かなくなってしまった。

 

 もっと強い致死性の呪いはあるが、それだとミリムが死んでしまう可能性がある。

 

 『冒涜乃王(ドゥルジ・ナス)』によって蘇生は出来るが、それをする前に激昂したギィに殺されそうであるため、致死性の呪いはダメだ。

 

 まあ、その致死性の呪いでもミリムが死ぬとは、原作を読んでいた身としては、とても思えないが、万が一がある以上使えない。

 

 とすると、やはりギィに何とかしてもらうしかない。

 

 と言うわけで、

 

「創れ『冒涜乃王』!!!」

 

 『冒涜乃王』で、武器を創る。

 

 『冒涜乃王』は、『冒涜者』であった時から生命すら創れた。

 

 それが究極能力となった今ならば、剣の形をした神話級(ゴッズ)にも、匹敵する耐久性と殺傷力を持つ生物を作ることなど朝飯前だ。

 

「受け取れー!!!」

 

 創った剣型生物をギィに投げ渡す。

 

「ハハッ、想像以上の働きだぜ。褒めてやるよ」

 

 ギィはその剣を受け取ると、傲慢にそう言い放ち、再度ミリムに剣撃を浴びせる。

 

 しかし、あまりにもミリムが規格外過ぎる。

 

 このままでは、いくら経っても決着がつかない。

 

 触手による攻撃でギィヲ援護しながら、何か策はないかと考える。

 

 そんな時、

 

「準備、完了したのよさ!!!!!」

 

 ラミリスの声が響き渡った。

 

「分かった。後はミリムの動きを止めるだけだな!!!」

 

 ギィはニヤリと笑い、勝ちを確信した顔をした。

 

 だがしかし、あのミリムの動きを止めるってどうやるんだよ?

 

「蛇!!!一瞬でいい、こいつを止めろ!!!その一瞬で、オレが完全にミリムの動きを止める!!!」

 

「はあ!?!?!?」

 

 無茶振り過ぎるだろうが!!!

 

 いや、なんとかするしかないか。

 

「一瞬……一瞬で良いんだよな!?!?!?」

 

「ああ!」

 

「分かった……」

 

 ミリムの動きを一瞬止める……1つだけ案がある。

 

 しかし、今のボクの練度では、相当な魔素を使う。

 

 ボクの魔素だけでは、ミリムの耐性を破ることなど出来ないだろう。

 

 しかし、今ボクは人間の魂をまだ余らせている。

 

 その内の100万を使えば……うん。

 

 いけそうだ。

 

「この技は対象指定が出来ない。一定の範囲にいる全ての生命に効果をもたらす。離脱してくれ!」

 

 そう叫ぶと、ギィは一瞬考えたのち離脱した。

 

「刻め『冒涜乃王』!!!」

 

 恐怖という概念そのものを一定の範囲内にいる全ての生命の魂に刻みつける。

 

 それが、その力の正体。

 

 効果範囲にいるミリムは当然その影響を受け、恐怖に顔を、体を強張らせる。

 

「今ー!!!」

 

「良くやったー!!!」

 

 ギィはそう叫びと大量の漆黒の糸でミリムを拘束した。

 

「戻って来るのよさ!ミリムーー!!!」

 

 ラミリスの叫びと共に、ミリムの周囲を光が包んだ。

 

 およそ1分間、光はその場にとどまり続け、それが晴れると、そこには元の状態となったミリムがいた。

 

 ミッションコンプリート……か……な……。

 

 張り詰めていた気が抜けたことで、一気に疲労感が現れ、ボクの意識は闇の中に落ちていった。

 

 

 

 ……………

 

 ………

 

 …

 

 

 

 夢を見た。

 

 前世……否、前前世の生活を。

 

 イジメ……虐待……なんて事ないありふれた地獄……精神は壊れ、肉体も限界を迎え、ボクは15歳でその人生に幕を下ろした。

 

 その人生において、ただ楽しかったと思える時間……それは、図書館で誰とも関わらず、ゆっくりと本を読む時間だった。

 

 その図書館にはラノベもあり、ボクは特に『転スラ』が好きだった。

 

 完結まで読みたかったが、結局、22巻までしか読めず、死んでしまった。

 

 そして、何故かボクは現代日本に孤児として転生した。

 

 ボクが育った孤児院は、良い人ばかりで、ボクは第二の人生を謳歌出来ていた。

 

 1つ不満があるとすれば、それは『転スラ』がなかった事だろう。

 

 他のラノベはあるのに、『転スラ』だけがなかった。

 

 今考えれば当然だ。

 

 その世界が『転スラ』の世界だったのだから。

 

 

 

 ……………

 

 ………

 

 …

 

 

 

 意識が浮上する。

 

 今、ボクはどうやら布団に寝かされているらしい。

 

 布団は柔らかく、極上のものだ。

 

 ゆっくりと瞼を開くと……

 

「おお、起きたのだな!初めまして、ワタシはミリム・ナーヴァ。止めてくれて感謝するのだ」

 

 眼前に現れる満面の笑みのミリム……一ファンとして、気絶しない道理はなかった。

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