転生したら蛇だった件   作:朝昼晩昼夜逆転

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魔王達の混乱

〈フィアラside〉

 

「ちょっといいか?ディーノ」

 

 宴会が終わり、セツナと共に自分の世界に帰ってきたボクは、『星候補』の訓練場を訪れていた。

 

「どうした?まだ訓練の途中なんだが?」

 

 ディーノは、真面目に『星候補』に訓練をつけていたようで、『星候補』に休憩するように言った後、ボクの元に歩いて来た。

 

「実は、ボクたち最古の魔王全員の連名で『魔王達の宴(ワルプルギス)』を開催することになったから。それ伝えに来たんだ」

 

「…………ちょっと待て……今なんつった?」

 

「だから、『魔王達の宴』を開催するって」

 

「いや、その前だ」

 

「最古の魔王全員の連名ってとこ?」

 

「そこだよ!何があった!?異常事態にも程があるだろう!?……まさか天魔大戦が始まったのか!?」

 

 ディーノは、焦りながらそう、聞いて来た。

 

 あー、確かに今まで最古の魔王全員の連名による『魔王達の宴』開催って天魔大戦以外になかったな。

 

「いや、違うよ。今回の議題は新たに魔王を名乗った魔物の見極めだよ。その魔物を『魔王達の宴』に招待し、直接見極めるんだ」

 

「新たな魔王?」

 

 頭に疑問符(ハテナ)を浮かべながら、ディーノは不思議そうにしている。

 

「そう。新たに魔王を名乗ったのはスライムだよ。まあ、ただのスライムじゃなくて覚醒してるけど」

 

「スライムが覚醒したのか?」

 

「うん。ジュラの森に台頭した勢力が人間の国から戦争を仕掛けられてね。その勢力の主であるスライムが不在の時に先遣隊によって少なくない被害がもたらされ、それに激怒したスライムが後からやって来た本隊を皆殺しにして覚醒したんだよ」

 

「なるほど……もしかして、そのスライムって転生者か?」

 

「そうだよ。よく分かったね」

 

「いや、1つの勢力の主になれる時点で普通のスライムじゃないのは分かったからな。だとしたら、前世の記憶を持った転生者かと思っただけだ」

 

 あー、確かに。

 

 予想はしやすいかもな。

 

「まあ、そんな訳で、そのスライムの見極め……を名目にしたクレイマンとの決着の促しさ」

 

「クレイマン?」

 

「そっ。そのスライム、リムルの国に宣戦布告した国はクレイマンに焚き付けられたらしくてね。今リムルとクレイマンは敵対してるんだよ。だから、さっさと決着を着けさせるためにこの『魔王達の宴』を開くことにしたんだ」

 

「なるほど……覚醒してるなら、クレイマンに勝ち目はないな。可哀想に」

 

「という訳で、『魔王達の宴』が開催されるから。あ、他の魔王達にはギィから連絡がいってるから」

 

「なるほど……じゃあ、今、他の魔王達は混乱の最中(さなか)だな」

 

 

 

 

 

 

〈三人称視点〉

 

 ディーノの言う通り、他の魔王達は混乱の最中にいた。

 

 

 

「最古の魔王全員の連名による『魔王達の宴』の開催じゃと?一体なんの冗談じゃ……まったく」

 

 『鮮血の覇王(ブラッディーロード)』ロイ・ヴァレンタインの報告に『夜魔の女王(クイーン・オブ・ナイトメア)』ルミナス・バレンタインが忌々しそうに呟く。

 

「しかし、事実でございます」

 

「分かっておるわ!そんなこと!!!」

 

「何故じゃ?何故このタイミングで最古の魔王全員が動く?異常事態にも程があろう?」

 

 ルミナスの混乱。

 

 それは、今回の『魔王達の宴』が『新たに魔王を名乗った魔物を『魔王達の宴』に招待し、直接見極める』ために行われるからだ。

 

 ルミナスはクロエからリムルのことを良く聞いていた。

 

 それ故に、リムルと敵対する気はないし、なんならクロエが本来の力を取り戻し、リムルに受け入れて貰うまで、リムルには生きていて貰いたかった。

 

 既にヒナタが行動を起こし、なかば魔国(テンペスト)とは敵対関係になってしまっているのが問題としてあるが、ヒナタとリムルが和解する未来もあることをクロエから聞いていたため、やりようはあると思っていた。

 

 後はクロエとリムルの仲を取り持つ。

 

 正直リムルにクロエを取られるのは本心では嫌だったが、リムルのことを語るクロエの顔を見てしまってからは仲を取り持つこともやぶさかではないと思っていた。

 

 そうする予定だったにも関わらず、ここで最古の魔王全員が動いてしまった。

 

 もし、『魔王達の宴』においてリムルがもしも最古の魔王の逆鱗に触れてしまったら……。

 

 クロエから聞いたリムルの性格ではそんなこと起こるはずがないことは良く理解できているものの、もし万が一そんなことが起こってしまったら、ルミナスにはどうすることも出来ずにリムルは死んでしまうだろう。

 

 そして、それを知った状態で何かの偶然が重なり、クロエが本来の力を手にしてしまったら……おそらくクロエは無謀と分かっていても最古の魔王に戦いを挑む。

 

 最古の魔王とクロエ、その両方と直接面識がある故に、ルミナスには分かってしまう。

 

 クロエでは、最古の魔王に傷一つ付けられないと。

 

「……とりあえず……『魔王達の宴』出席の準備をせよ!今回は妾もメイドに扮して着いて行く!!!」

 

 どうにかして、その最悪の未来だけは阻止しなければ!

 

 その思いで、ルミナスは覚悟を決めた目でロイに指示を出した。

 

 

 

 

 

 

「最古の魔王全員の連名……一体何が起こっておる?」

 

 ダグリュールは、落ち着いた口調でそう呟く。

 

 しかし、その思考は混乱に埋め尽くされていた。

 

 今まで天魔大戦以外で最古の魔王全員の連名による『魔王達の宴』は存在しなかった。

 

 それ故に、その新たなる魔王の見極めが天魔大戦に匹敵する何かであることは疑いようもなかった。

 

 

 

 

 

 

「最古の魔王全員の連名による『魔王達の宴』……復活した暴風竜関連か?」

 

 『白金の剣士(プラチナムセイバー)』レオン・クロムウェルは、重々しくそう呟いた。

 

 レオンの脳裏に浮かんだのは、タイミングの良すぎる暴風竜の復活だった。

 

 レオンは、仮説として何者かが今まで暴風竜を異空間に格納し、封印の解析を行い、その何者かが暴風竜を復活させた……そしてその存在こそ、リムルだと考えていた。

 

「最古の魔王全員が動く……リムル・テンペスト、お前は一体何者だ?」

 

 

 

 

 

「このタイミングで『魔王達の宴』が開かれるのね。今回の戦いで、もし魔国の盟主が覚醒していたら……クレイマンを殺してくれると有り難いわね」

 

 自らの居城にて、フレイは、カリオンを圧倒してみせた暴風大妖渦(カリュブディス)を想起し、震えながらもしかしたらの希望にすがる。

 

 魔王であるカリオンを圧倒したその姿は、恐怖となってフレイの心を支配していた。

 

 そのフレイを見守るライオンのマスクを被った大男の目には、クレイマンへの激憤が込められていた。

 

 

 

 

「そうですか!!!ここで!このタイミングでの『魔王達の宴』!!!最高のタイミングです!!!私は暴風大妖渦という絶対的な力を手に入れた!!!暴風大妖渦さえいれば、他の魔王達も格下も同然です!この『魔王達の宴』で、暴風大妖渦の手でスライムを殺し、力を示し、私が魔王の頂点に立つのです!!!」

 

 クレイマンは、高笑いをあげ、次の『魔王達の宴』を楽しみに待つ。

 

 その様子を心配そうに見つめる親友(ラプラス)の瞳に気づくことなく。

 

 

 

 

 

 斯くして、『魔王達の宴』の日がやって来る。

 

 

 

 

 

 

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