〈三人称視点〉
ゲルドとビオーラの戦いは苛烈を極めていた。
ゲルドの圧倒的な膂力を持って振るわれる戦斧をビオーラは、その多彩な武器でもって対処していた。
ゲルドは、その武器の中で、幾つか厄介なものを観察し、その共通点を見極めた。
そして、理解する。
「鱗……なるほど、お前の武器の中でも特に性能の良いものは鱗が使われているな。おそらく、
それが、ゲルドが攻めきれない理由だった。
原作と異なり、暴風大妖渦が
現状、ゲルドの装備は原作より劣っており、ビオーラの攻撃は、ゲルドに通じてしまうのだ。
だからこそ、ゲルドも慎重にならざるを得ない。
「しかし……このまま手をこまねいている訳にもいかぬ」
ゲルドは、そう言い、盾をスキルの『胃袋』へと収納し、戦斧をもう1つ取り出した。
そして、2つの戦斧に悍ましき魔力を纏わせた。
「『
腐食を纏う戦斧が今、ビオーラに牙を向く。
「お前を相手にするのに、オレの防御力はいささか不満……なればこそ、防御は捨て、攻撃に全てを賭けようではないか!
ゲルドは駆け出し、一気にビオーラに迫る。
「ギギ」
ビオーラは、暴風大妖渦の鱗で作られた盾でゲルドの戦斧を受け止めた。
ビオーラの持つ盾は、暴風大妖渦がフィアラによって改造を施された個体であるために、原作のゲルドが所持する暴風大妖渦の盾よりも更に性能が上であった。
そのため、腐食を纏うゲルドの戦斧を受け止めるに至ったのだ。
しかし、ゲルドの目的はビオーラをその場で壊すことではなかった。
受け止められた、しかし、腐食の効果により、ゲルドの戦斧は、ビオーラの盾に食い込んだ。
そして
「ぬうん!!!」
力を込め、自らの戦斧ごとビオーラの盾を横へと吹き飛ばした。
そして、ゲルドはその隙を逃すことなく、先ほどまで盾を持っていたビオーラの腕を1つもう一方の戦斧で斬り飛ばした。
そして、そのまま『胃袋』から先ほど投げ飛ばした戦斧の代わりとなる戦斧を取り出し、腐食を纏わせる。
この戦いにおいてのゲルドの優位性。
それは、武器の替えが効くことである。
ビオーラには武器を貯蔵しておく異空間がなく、ビオーラは武器を失えば、それが直接戦闘能力の低下へとつながる。
ビオーラは、全身に武器を隠しているが、それでもその数には限りがある。
対して、ゲルドはいくら武器を失おうとも替えを『胃袋』から取り出せば良い。
それが、この戦いの勝敗を分けるのだ。
そして今、ビオーラの腕は4本から3本となった。
腕が減れば、その分一度に使用できる武器の総数が減る。
今が好機と考え、ゲルドは一気に決着をつけようと攻撃を繰り出す。
しかし、その直前にビオーラは剣を地面に突き立てた。
地面に霜がおり、幾つもの細く長い氷の針が突出し、ゲルドを襲った。
ゲルドは、すぐさまその場から飛び退き、後退する。
「やはり、一筋縄ではいかぬか」
次いで、ビオーラは、ゲルダより離れた地から、また違う剣を振り払った。
それと共に、ゲルドの前方にあった氷の針が綺麗に斬れた。
それを確認した瞬間、ゲルドは勢いよくその場でかがんだ。
その瞬間、ゲルドの上を風が吹いた。
「風の斬撃……やはり、厄介極まれり!!!」
そう言うと共に、ゲルドは駆け出す。
先ほどの風の斬撃によって砕かれた氷が、雪煙となってビオーラの視界を隠した。
ビオーラは、自らの手でゲルドに対して隙を見せてしまったのだ。
そして、その隙はゲルドにとってあまりにも大きい。
「2本!!!」
その声が、ビオーラの背後より響いた。
気づくと、ビオーラの腕が2本斬られており、残っているのは1本となっていた。
「今、体ごと斬れれば良かったのだが、流石にそこまでの隙では無かった。が、次で仕留める」
「ギ……ギギ」
既に腕は1本しかなく、ビオーラの勝ち目はないに等しい。
そう思われたその瞬間に、ビオーラに刻まれた命令が発動した。
暴風大妖渦を手に入れたクレイマンは、その暴風大妖渦が再生を待っているのを良いことに、大量の素材を入手していた。
それにより、ビオーラに仕掛けを施していたのだ。
今、ビオーラは、その兵器としての真価を発揮する。
ギギギギギと不快な音を立て、ビオーラはその姿を変える。
曰く、それは
『
ビオーラから大量の鱗が出現し、発射される。
それは、原作の暴風大妖渦と同等の威力を持った鱗の弾幕。
されどそれは、原作の暴風大妖渦に比べ範囲が狭い。
故に躱すことは可能。
ゲルドは鱗の弾幕を見切り、躱す。
ビオーラは、その姿を変えたことで飛行を可能としていた。
ゲルドはそこから反撃の一手を考え始めた。
そして、
「鱗の弾幕……一度撃てば、数秒の隙が出来る」
そう呟き、戦斧を1つしまい、1つの戦斧を握りしめた。
そして、集中する。
隙を見逃さぬよう、意識を研ぎ澄ます。
そして、弾幕は放たれる。
ゲルドは、それを最小限の動きで避け続け、弾幕が止むのを待つ。
そして、その時が訪れた。
弾幕が止み、数瞬、隙が生まれた。
小さく、そして、確実な隙が。
ゲルドは勢いよく飛び上がり、一瞬にしてビオーラの上空に到達した。
そして、腐食を纏った戦斧を振りかぶり、振り下ろした。
戦斧は、目標を違わず、ビオーラの頭をカチ割り、そのまま胴体を分断した。
ビオーラは、暴風大妖渦の鱗の弾幕のみを使えたようで、再生することなく、
これにより、ゲルドとビオーラの戦いは、ゲルドの勝利で幕を下ろした。
その直後、ゲルドは背後から歩いてくる気配を感じた。
振り返ると、
「私の戦いは終わったので、加勢しようかと思い、来てみましたが、必要なかったようですわね」
アルビスが立っていた。
時は遡り、開戦直後、
「クソッ!!!巫山戯るなよ貴様!!!」
ヤムザは、2対1という一見有利な状況にありながら、圧倒的な苦戦を強いられていた。
「ああ、やはり。貴方はつまらない」
目が合った。
縦長のアルビスの瞳孔をヤムザは見てしまった。
次の瞬間、腕が麻痺し、使い物にならなくなった。
アルビスのエクストラスキル『
それは、見た者に毒や麻痺、石化など、ありとあらゆる状態異常をもたらすスキル。
そのスキルを
動けなくなればその瞬間錫杖により攻撃される。
アルビスの持つ錫杖は、通常のものと異なり、殺傷能力が非常に高い。
当たっただけで鮮血が舞う。
ヤムザは開戦すぐに傷を負った。
そしてヤムザは、逃げに転じた。
その場からの一刻も早い逃走を選んだ。
そして、あらかじめ仕込んでいた転移魔法を発動しようとした。
しかし、それは不発に終わる。
「ここら一帯を『空間封鎖』しました。もう貴方は逃げられませんよ」
その声と共にヤムザは意識を失った。
アルビスは、ヤムザの意識を刈り取ると、その場に拘束した。
その時、轟音が響いた。
その場に向かうと、姿を変えたビオーラをゲルドが二分割にぶった斬っていたのだ。
アルビスはゲルドに近づき、声をかけた。
「私の戦いは終わったので、加勢しようかと思い、来てみましたが、必要なかったようですわね」
「うむ。それよりも……」
ゲルドは気付く。
ベニマルたちのいる場所で、ここよりも激しい戦闘が行われていることに。
故に、ゲルドはアルビスと共にベニマルたちの戦場へと向かった。
アルビスはのちに後悔することになる。
ヤムザにトドメを刺しておくべきであったと。
あの場でトドメを刺しておけば、あんな化け物は生まれなかったのに……と。
ビオーラって、可能性の塊だと思うんですよね。人形という性質上、改造が可能で、更に持つ武器によって戦闘方法は千差万別。それは、戦術の幅を大きく広げてくれるんです。原作では見せ場もなく瞬殺されてましたが、そもそも多彩な魔法武器を活かせる戦場は屋内じゃなく屋外なんじゃないかと思いまして。まあ、そんな感じでビオーラの可能性を考えながら書いてたら化け物になってましたね。はい。なんでこうなった……深夜テンションだからかなあ?ちなみに、暴風大妖渦要素を出したのは、せっかく暴風大妖渦を手に入れたのにクレイマンがその素材を使わない訳ないからなあ。ってな予想からです。
あ、そういえばX(旧Twitter)始めました。
更新状況とかツイートする予定です。
http://Twitter.com/asaban_gyaku