転生したら蛇だった件   作:朝昼晩昼夜逆転

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お久しぶりです!!!!!


極小黒獄陽(ミラスキュール・ヘル・ソル)

〈三人称視点〉

 

 暴風大妖渦の細胞から生成された宝珠によってヤムザを媒介として誕生した災害『変異災害』。

 

 それは、一言で表すのなら大量の口を持つ蠢く肉塊であった。

 

 ところどころに暴風大妖渦の名残らしき鱗があり、目も暴風大妖渦と同じく1つだが、それ以外は暴風大妖渦とは似ても似つかぬ怪物である。

 

「これは……随分と悍ましいな…」

 

 スフィアが呟く。

 

 誰もが、口を噤んだ。

 

 だが、その恐怖は、さらなる恐怖に塗り替えられる。

 

 突如、変異災害の体がブレ、2体になったのだ。

 

「なっ!?!?!?」

 

「まさか!ヤムザの持っていた『鏡身の腕輪(ドッペルゲンガー)』の効果ですか!?!?!?」

 

 そう、変異災害は、ヤムザの腕輪の効果で2体へと増殖した。

 

 肉が蠢く不快な音が響き、変異災害が触れたものが瓦礫へと変わり、捕食される。

 

 それに伴うように、変異災害は膨張を始める。

 

「これは……悩んでいる暇などないな…」

 

 しかし、流石に2体は相手が悪すぎるかという考えがベニマルの脳裏によぎる。

 

「若!!!1体は儂が相手をいたします故、もう1体を皆を率いて討ってくださいませ」

 

 ハクロウの声に、ベニマルは一瞬考え、即座に頷く。

 

「分かった!!!ハクロウは1体を相手してくれ!!!防御に徹しても良い!!!死ぬな!!!その間に俺たちでもう1体を討つ!!!総員戦闘態勢!!!!!」

 

「なっ!?よろしいのですか!?!?!?いくらハクロウ殿とはいえ、この怪物を1人では……」

 

 アルビスが困惑するが、ベニマルは笑う。

 

「ハクロウが考えなしに1人で相手をすると言うものか!!!問題ない!!!」

 

 その間に、ハクロウはすでに戦闘を開始した。

 

「俺たちも行くぞ!!!」

 

 そう声をあげ、ベニマルが黒炎を纏わせた刀で変異災害を切りつけた。

 

 それによって、変異災害に大きな傷がついた。

 

 しかし、再生の妨害のための黒炎はその傷口に現れた巨大な口に捕食された。

 

 他の皆の攻撃も通りはするがすぐに再生され、あるいは傷口に現れた口に武器を捕食されそうにまでなる。

 

 まさしく災害。

 

 事実、変異災害の強さは並の覚醒魔王と互し、生命力だけなら並の覚醒魔王を凌駕する。

 

 欠点があるとすれば、知能がないことのみであった。

 

「なるほど、これは一瞬で塵も残さず焼き尽くすしかないか?」

 

 ベニマルはそう呟くと、覚悟を決めた表情で告げる。

 

「こいつは一撃で、塵も残さず焼き尽くす!!!だが、その規模の攻撃のためには時間がかかる!!!時間稼ぎを頼む!!!!!」

 

 その声と共に、全員がベニマルに攻撃を届かせないための防御に徹し始める。

 

 ベニマルは、かつてフィと名乗る少年に『黒炎獄(ヘルフレア)』が全く効かなかった経験から、さらなる高威力の技を編み出そうと努力を重ねた。

 

 そしてとある結論に達した。

 

 もっと炎を圧縮すれば良いのだと。

 

 あの時の圧縮は足りなかった。

 

 さらに魔素制御技術を磨き、魔素効率を高め、更なる高圧縮の黒炎を生み出すのだ。

 

 そうすれば、いずれはあのフィに届くのだと。

 

 そして、その考えは見当はずれではなかった。

 

 ベニマルの手の中の小さな指先大の結界の中で黒炎が圧縮されてゆく。

 

 その結界は、黒炎の熱を決して外に漏らさぬためのもの。

 

 その結界が解除された時、封じ込められた全ての熱が全てを燃やす。

 

 まだ……まだ……まだ足りないと、ベニマルは限界まで魔素を黒炎へと変換し、結界の中に閉じ込め続ける。

 

 そして……

 

「全員この場から離れろ!!!!!!!!」

 

 叫ぶ。

 

 全員一瞬戸惑うが、ベニマルの手の中のそれ(・・)を見ると、すぐさまその場から離れる。

 

 全員が離れたことを確認すると共に、ベニマルは、作り出した黒炎を結界に包んだまま、変異災害の口の中へと投げ入れた。

 

 変異災害の肉体の内部へとそれが届いたその瞬間、結界が解除され、秘められた凶暴な熱が解き放たれた。

 

 この技の名は…

 

「『極小黒獄陽(ミラスキュール・ヘル・ソル)』」

 

 今、極小の黒き太陽が地上に顕現した。

 

 解き放たれた熱は、変異災害の体内からその全てを燃やし尽くす。

 

 灰も塵も一欠片すらも残さずに、変異災害は焼かれて死んだ。

 

 変異災害が消えるのと同時に、極小黒獄陽は、その熱を全て使い切ったかのように消えた。

 

 誰もが呆然とするのみだ。

 

 極小黒獄陽を作り出したベニマルでさえ、予想以上のその効果に驚いているようだった。

 

「なんと……これほどとは……」

 

 アルビスが小さく呟き、ベニマルを見る。

 

 その瞳には、熱が込められていたことをまだベニマルは知らない。

 

「ハクロウは!!!!!」

 

 すぐさまもう1体の変異災害と戦うハクロウのことを思い出し、全員がそちらを見た。

 

 そこには、全くの無傷でその場に立つハクロウがいた。

 

 そう、ハクロウだけがいた。

 

 変異災害は、すでにそこに居なかった。

 

 何があったかだなんて、誰もが理解できた。

 

 ハクロウがたった1人であの怪物を倒したのだ。

 

 

 

 

 時は遡り、ハクロウが変異災害と戦い始めたその直後。

 

「これは……実に厄介…」

 

 ハクロウは、変異災害の圧倒的な生命力に驚いていた。

 

「うむ……使うべき時やもしれぬな」

 

 ハクロウは小さく呟いた。

 

 それに応えるように、ハクロウの持つ刀が淡く赤く光った。

 

 ハクロウは、妖鬼へと進化するその進化の眠りで声を聞いた。

 

 どこか親しみのあるその声といくつか言葉を交わした。

 

 正確な内容はなぜだか思い出せなかったが、それでも、何か問答をしていたことを覚えている。

 

 その声は、最後に言った。

 

『我が名を呼ぶことを許す』

 

 と。

 

 そして続けて名を名乗った。

 

 進化を終わらせ、目覚めたハクロウは瞬時に理解した。

 

 あの時教えられた名はフィと名乗る少年から受け取った刀の名であると。

 

 その名を今、呼ぶべき時が来たのだ。

 

「共に征こう」

 

 ドクンッと刀身が脈打つ。

 

「『曼珠沙華』よ』」

 

 

 

 

 赤い紅い死を告げる花が咲き乱れる。

 

 

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