〈ディーノside〉
初めてフィアラという存在を知った時、俺の中にあったのは困惑だった。
ギィに続いてギィの推薦で魔王となった3人。
ヴェルダナーヴァ様の娘と精霊女王は分かる。
ギィと並び立つには十分な存在だ。
しかし、出自も経歴も何もかもが不明なフィアラという存在は、正直魔王足り得るのかどうか分からなかった。
気になり、一度遠目からフィアラを見てみたことがある。
フィアラが魔王を名乗り始めてからおよそ300年が経った時だった。
それまでは『やらなければいけない事』などもあり、どうしても見に行くことが出来なかったのだ。
そして、遠目からフィアラを見たその時、フィアラが勢いよく俺の方を見た。
ただの覚醒魔王では、あの距離では感知できないだろう。
しかし、フィアラは俺に気付いた。
その時点で、フィアラは通常の覚醒魔王とは一線を画す存在であると理解出来た。
その場で戦いになるかとも考えたが、フィアラは見て見ぬ振りをして、ギィと戦い始めた。
その戦いは、あまりにも異常だった。
フィアラの攻撃は、あのギィに傷を与えるに至っていたのだ。
だからこそ、確信した。
フィアラは、その段階で既に俺に並び立つ強者であると。
フィアラが魔王に足ると理解した俺は、その場を後にした。
そして、次に俺がフィアラを見たのは、俺が魔王となった時だった。
フィアラはその時、既にギィに匹敵する強者になっていた。
最古の魔王として申し分ない力だった。
それから、俺はフィアラと交流を続け、それなりに仲良くなった。
そんな時だった。
ダグリュールに領地から追い出されたのは。
確かに、働かなかったのは悪いが、それでも俺が無気力になった理由なら知ってるだろうに、薄情な奴である。
次はどこに世話になろうかと考えた時、真っ先に思い浮かんだのはフィアラだった。
早速フィアラの配下であるセツナに連絡をとり、フィアラの世界に向かった。
フィアラは、表向き支配地域がないとなっており、フィアラが自分の世界を持っていることを知っているのは、俺とギィとラミリスとミリムとダグリュールだけである。
他の魔王たちは本当にフィアラが領地を持っていないと思っている。
まあ、ルミナスとレオンは何となく気付いていそうだが、他の3人は気付いてすらいない。
フィアラの世界にやって来た俺は、結局働くことになってしまった。
仕事の内容は『星候補』の師匠となること。
『星候補』は、フィアラの配下の『双星』にいつか並び立つかも知れない存在たちの総称であり、『双星』は、おそらく最古の魔王以外の俺を含めた全ての魔王を相手取って勝てるだろう存在だ。
正直、あの2人に関しては分かっていることが少ない。
『荒星』のセツナは異世界人らしいが、『究星』のクオンは出自から不明だ。
どこかで会ったことがある様な気がするのだが、いつも仮面を被っている上に、魂を確認しようにも、認識阻害が働いているのか正体が掴めない。
まあ、それは一旦どうでも良いか。
それよりも今は『星候補』だ。
『星候補』は、全員が覚醒魔王であり、その上に究極能力すらも持っている。
さらに『星候補』の補佐も覚醒魔王であり、究極能力も持っている。
『星候補』は、覚醒魔王の中でも上澄みの強さだ。
流石に俺とダグリュールには及ばないが、他の魔王たちには勝てるだろう。
補佐もそれなりに強い。
覚醒魔王の中でも中堅ほどの強さだろう。
さて、肝心の『星候補』だが、1番やばいのは『暗澹』のリアだ。
リアは闇を操る究極能力を使う。
その闇の定義は曖昧で、リアが闇だと解釈すればそれは闇として操ることができる様だ。
次に『無限』のライア。
ライアは、とにかく魔素量が多い。
というよりも、その『無限』が表す通り、魔素が尽きない。
無限の魔素を持つ者だった。
次に『終末』のニル。
ニルの能力は、滅びの力。
万物を滅ぼす能力を持つ、攻撃力だけで言うなら『星候補』トップだ。
しかし、厄介さでリアに及ばず、リアより御すのは簡単だ。
次に『怨罰』のソア。
呪いに長けた存在で、ソアより呪いが上手い存在だと、フィアラぐらいしか思い浮かばない。
相当厄介な存在。
最後に『封印』のレイ。
レイは、どんなものでも封印してくる。
魔素を封印された時は少し焦った。
まあ、剣術だけでなんとか勝ったけど。
修行の過程で、全員同時に相手にすることも何度かあるが、その度にヒヤヒヤさせられた。
『星候補』の強さに感嘆するとともに、負けたくないとも思った。
俺も……ちょっと修行するかなぁ。
〈フィアラside〉
ディーノがボクの世界に来て、早くも2ヶ月程の月日が流れた。
ディーノは真面目に働いており、最近ではディーノ自身も強くなろうと修行をしている。
まあ、怠け癖は完全には抜けていないけど。
そんな時、ジュラの森の不可侵協定がミリムたちによって破棄された。
ちょうど、リムルがオークロードを喰らってからすぐのことだった。
それからすぐに、ミリムがボクの世界にやって来た。
「これからあのスライムに会いに行くのだ!!!フィアラも一緒にどうなのだ?」
元気よく尋ねてくるミリムに少し考えた後、
「分かった。ボクも行こう」
そろそろ主人公と接点を持っておくのも良いかと思い、一緒に行くことにした。
「そう言えば、ギィとラミリスは誘うの?」
「そうだな、誘ってみるのだ」
と言うわけで、ギィとラミリスにも連絡を取ったのだが、用事があるらしく、断られてしまった。
「じゃ、2人で行こうか」
「うむ」
斯くして、僕たちはジュラの森へと飛び立った。