『愛』貴方の為のエーデルワイス   作:ある日そこに居たであろうクマさん

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訪れしは頂きの黒。

その目的とは...?


第十愛 ゲヘナ最強vs可能性の観測所 後編 PM:9:30

 

 

「おっ居た居た」

 

「貴方...何者?」

 

「そん...な!?」

 

可能性の観測所(クロトアヴレール)の懺凪とゲヘナ風紀委員会の空崎ヒナ。アビドスの地下で彼女達の激しい戦闘が行われる中現れたのは...

 

「まさか、シスター...なのですか?」

 

「よお、懺凪。久しぶり」

 

「っ...」

 

複数のロン達を束ねる異界の怪物 ロン・クロイツ。二人に向かう巨大なホテルを拳一つで砕き、突如として彼女達の前へと降り立った

 

「やれやれ、やっぱり加減ってのは難しいな。これでも千分の一くらいまで抑えたつもりなんだが...見ろよ、並行世界まで穴開けちまった」

 

「シスター、なぜ貴方がここに」

 

「お前らに渡すものがあってな。あと、こっちの『ヒナ公』。今回お前に要は無いが、邪魔するなら消えてもらうぞ」

 

「ヒナ、公?...よく分からないけれど、貴方ほどの存在をそう易々と放置しておけるとでも?」

 

「嘘つけ、お前さっきは懺凪とその他の可能性の観測所メンバーの事を外に伝える為にワザと逃げを取ったな」

 

「っ!」

 

「だが、その判断は正しい。お前は強いが、現時点では懺凪の方が格上だ。他の可能性の観測所メンバーはともかく、()()()()()懺凪にお前は勝てない」

 

「そしてその他の戦力と奴等の科学力が未知数な今。お前は自分一人では無くリスク覚悟で他の学園などにも情報を伝え、改めて対策を練り、そいつらとの再戦をすべき。そう思ったが故の判断だろ?」

 

「...ええ、そうよ。仮にこの建物を崩してダメージを与えられなかったとしも、彼女への目眩しにはなるから」

 

空中に浮かびつつヒナの考えと行動。その全てを見透かしていたかの様に説明していき、彼女達の眼前へとゆっくりと降り立つ男。それにヒナは改めて警戒しつつ、懺凪は涙を流しつつ、かつて憧れた存在がその場に降りてくるのを確認していた。

 

更に...

 

「ざっ懺凪さん!」

 

「おい、一体なに...誰だお前!?」

 

「おおっお前らも久しいな」

 

そこに先程までのプールやビーチサイドがあったエリアからこちらに駆けつけてきた他の可能性の観測所メンバー。彼女達も彼の存在を視認し...

 

「?ええっと...どこのどちら様で?」

 

「シスターって言えば分かるか?」

 

「「「「はあ!?」」」」

 

普通に驚いていた。ただ、これは仕方の無い事であった。彼女達の知るシスターとは365日をその名の通りの修道服の様な服装で過ごし、自身達とは別の組織の長を務める人物。ましてや件の人物は死人であり、異世界とはいえ唐突にその様な存在が全く違う容姿で現れたとなれば彼女達と言えど簡単に信用できる筈も無く...

 

「うっ嘘だよ!最凶(シスター)にしては全然見た目違うもん!」

 

「そっそうだ!もし最凶(シスター)だったらいつも通り修道服を着てる筈だし、この世界に居るのはおかしい!」

 

「そもそも、あの人死んだんじゃなかったけ?」

 

「そうです!それにシスターならもっと声も違います!」

 

そう!信用できる筈が...

 

「...朝銀、お前確か自分の引き出しに好きなアイドルの水着写真を大量に保管する癖があったな」

 

「え?...ねえ、嘘ですよね...まさか、本当に」

 

「しかもその中に懺「ギャアーーーー!!なんで知ってるんですかァーーーーー!?」

 

「えっうそ「おい、蝶冠。お前は確か抜け毛が」やめろォォッッッーーーー!!」

 

「蒼乃、お前は確かボーイ「なっ嘘だァァァァッッッーー!!」フッ」

 

信用できる筈が.....

 

「で...言いたい事あるか?」

 

「「「「ごべんなざい」」」」

 

「「.....」」

 

あったらしい。先程まで激しい戦闘を繰り広げていた二人を差し置いて、元シスターことロンの口から次々と発せられるメンバー達の秘密や過去。それらをどんどん口に出されて言った四人は魂が抜け落ちたかの様に青白くなっていき、最終的には大量の水に浸された薄っぺらい破れかけの紙の様な存在に変化してしまっていた。

 

「はあ.....だから言っただろう...と、そんな事はどうでも良い。今日はお前らに預けたいものがあってな」

 

「預けたいもの?」

 

「ああ、だが...その前に」

 

そしてそんな会話に動揺する四人と周囲に集まってきた他の可能性の観測所メンバー。そしてヒナと懺凪。全員を無視して彼は...

 

 

「お前が邪魔だな」

 

「...は?」

 

現在、彼女達の現在地...否、()()()()()()()()()。ヒナ一人の力では到底到達出来ぬであろうその位置に...

『ロン』という人外はただヒナを掴んで飛び上がるだけでその場に到達し、更に彼女の中に宿る神秘を強制的に押さえつけ、その在り方を書き換えるという離れ業を成すに至っていた。

 

「がっアァァァァァァァァッッッ!?」

 

「なるほど...やはり良いものを持っているな。ただ、本来友人とも呼べるお前を戻せるとはいえ消すのは惜しい。故に今回はお前の記憶だけを消滅させておこう」

 

「ぐっあぅぅなにっをッ!?」

 

「悪いなァ...いろいろ話してやるべきなのかもしれんが...生憎と俺には時間が無い。この後も後六か所は『譲渡』に行かねばならんからなぁ」

 

「という訳でだな...」

 

月面とその先の青い世界を見下ろしながら彼はヒナの首を絞めつつ、もう一方の手にあるエネルギーを溜める。それはとある神々かそれと並ぶ神力を持つ者以外は扱えぬ代物。だが、『あの程度の神々』の技を使うのは彼にとって造作も無い事だった。そのエネルギーは紫色の光を放ちながら彼女の頭に入り、そのまま彼の誘導で記憶の内側に侵入し、内部にある彼にとって都合の悪い記憶のみに向かっていく。

 

そして...

 

「定まったな...」

 

「破壊」

 

「アァァァァァァッッッーーーーー!!!!」

 

「さて、次だな...“個体名ロン・クロイツより世界に命令。個体名 空崎ヒナの記憶消去、記憶改竄、精神干渉、存在上昇、神秘黒化、これら全ての事象などについての情報を忘却せよ,,」

 

その手から放たれ、彼女の内部で炸裂するかの如くその一部記憶を吹き飛ばす『破壊のエネルギー』はそのまま不都合な記憶を抹消し、同時に彼が発動したもう一つの魔術で白く染まった記憶を偽の記憶に塗り替えていく。可能性の観測所メンバーとの戦闘は良い。ただ、彼という存在を知られた事と彼の持っていたアイテムを見られ、おそらく本能的にそれがなんのためにある物なのかを悟られた。

 

故に自身とそれに関する記憶のみを消去する。当たり前だが、この世界には自身の分身とも呼べるあの男が居る。だからこそ、最初の顕現の際に奴の認識ごと世界全体を一時的に改竄し、自身の存在をこの世界に存在する者には感知出来ない様にしておいた。そして後に記憶を読み取られ無いために持ってきたアイテムの記憶と共に自身と出会った記憶を消去させ、そのまま別の記憶を捩じ込んだ。

 

更に念には念をで世界を脅し、彼女の肉体や精神への干渉を強制的に無かった事にした。これでヒナにサービスでつけた恩恵もそう簡単には分からない。

 

「やれやれ...悪いな、ヒナ公。並行世界...いや、()()()()()とはいえ、最愛が世話になってるのもまた事実。だが、今回は許してくれ」

 

「俺もまた、見定める必要があるのだ」

 

そして新たな記憶と力をヒナの存在に埋め込み、そのまま転送魔術て彼女の肉体をここから少し先の時間軸にあるゲヘナ学園の彼女の寝室に送り込んだロン。彼は一度ため息を吐くとそのまますぐに...

 

「すまん、待たせたな」

 

「っシスター!!」

 

可能性の観測所のメンバー達が作ったその地下空間に戻ってきていた。

 

そして...

 

「さて、時間が無い。手短に要件を話す。全員そのまま聞け」

 

「ちょっちょっと待て!まだ聞くと「黙れ、蒼乃。お前の話は聞いてない」なっなんだとッーーーー!?」

 

「まっまあまあ、蒼乃ちゃん」

 

「良いから聞け...()()()()()()、お前ら5人にも渡しておく物がある」

 

「ん?それは...?」

 

そして怒れる蒼乃の声を無視しつつ彼はとあるものをその懐から取り出した。それは全体的に黒い装飾を施されたバイザーの様なものであり、どこか紫に近い禍々しいオーラが全体を包むものでもあった。

 

「こいつの名は『黒堕奏姫(クリフライド)』。俺からお前らへの土産だ。まあ、既に情熱の在り処(インパクトジェネレーション)には渡した後ではあるが...」

 

「クリフ...ライド?」

 

「それに情熱の在り処!?じゃあ、あいつらもこの世界に!」

 

「いや、奴らは別の異世界にいる。此処とは違う魔法の世界だ。他の組織もそれぞれが別の異世界に滞在している」

 

「マジかよ...でも、なんでこれを私達に?」

 

「簡単な事だ...これから起こる事態において、お前らには更なる力が必要になる。故にそれは俺からのプレゼント。初回のログインサービスみたいなモンだと認識しろ」

 

「ろっログインサービスってあんた、ゲームじゃないんだからさぁ」

 

「まあまあ、蒼乃ちゃん」

 

「黒堕...奏姫.....」

 

彼女達に渡されたのは今後、彼から九つ全ての組織に渡されるであろうアイテム、名を黒堕奏姫。とある人物が作った変身アイテムであり、彼がそれを独自にアレンジして作り直した物。そして現在渡されたのは可能性の観測所メンバーに合わせて作った物でもある。

 

そして、それら全てがこの場の全員に行き渡った、が...

 

「とにかく、もしもの時はそれを使え、必ずお前らの役に立つ」

 

「うん!ありがとう。シスター!」

 

「ああ。それと...何か不満か?懺凪」

 

「いえ...別にっ」

 

「多分、さっきの情熱の在り処の話じゃないですか」

 

「ああ...シスター。アンタがあいつらに先にこれを渡したみたいな話したから、アイツ拗ねたんだよ」

 

約一名、不満げな表情を浮かべながら、彼を見つめる女性が一人。

それこそが先程まで空崎ヒナと相対し、ゲヘナ最強と名高い彼女をギリギリまで追い詰めた女性。可能性の観測所最強と言われる存在である懺凪であった。

 

「懺凪...そう拗ねるな。別に遅いも早いも無いだろう」

 

「だって...シスターと奴らが...特にグレイの奴が先に会って、尚且つシスターからの贈り物を受け取ってっ」

 

「グレイ?...別にアイツを特別に扱ったり、見てるわけじゃあねえよ。ただ、俺としてはお前ら以上にある意味関わってて、尚且つ泣かせちまったのがアイツだったってだけだ」

 

「だからこそ、お前らより先に会いに行ったんだ」

 

「それは...!!」

 

珍しく少し拗ねる様な様子で、尚且つ若干涙目になっている彼女を見つめながら、その側に寄り添い、話しかけるロン。懺凪は彼の話を聞きつつ、やはり納得はいかないといった具合で内心で悔しがり、そして自身の不甲斐なさに腹を立てていた。

 

何故ならば...

 

「あの世界で...頼まれたからとはいえ...本当はそんな気も無かったとはいえ、()()()()()()()()()()()()()。そしてそんな奴に何も告げられないまま俺は消えちまった。だからこそ、アイツには特に申し訳なく思っちまってる」

 

「っはい...分かっています...でも、理解してください。私達も貴方の事をッ!!」

 

「ああ、分かってる.....すまなかったな」

 

「っ!謝罪するのは私達の方です...私達があの場に居たなら...いち早く貴方達両方に加勢に入れていればッ!!」

 

『あの時の事件』。当初、彼ともう一人。それぞれの組織の首領二人が亡くなったあの時。自身達があの場に存在出来たなら...それだけでどれだけの運命が...可能性が変えられた事か...

あの時にあの場に居らず、ましてや別の場所で呑気に活動していた自分に...一体何年腹を立てていた事か。

 

「良いのだ。お前達はお前達を選び、そしてより成長し、笑いあって生きている。お前達が見聞きし、体感し、動き、飲み込み、その結果生まれる新しい日常(リズム)がまだ奏でられているなら、それはお前達の為になる。だから俺という過去の事は気にするな」

 

「シスター...はい、分かり...ましたッ」

 

「フッ...いい返事だな。では...最後にもう一つ、話しておこう」

 

「まだ何があるんですか?」

 

「少しな...お前らにある奴の事について話をしておきたくてな...」

 

懺凪との対話を終え、過去の事を話し終えた彼は、最後にある事を彼女達に言い残す。

 

それが...

 

「先程言った他の世界も含めてなんだが...この世界以外に最低でも九つ。人数にして凡そ13〜16人ほど。俺と似た顔を持ってる奴らがいる」

 

「シスターと...」

 

「似た顔?」

 

「そうだ。今の俺はロンと名乗ってるんだがな...そいつらは謂わば俺の分身、もしくはクローンに近い存在だ」

 

「クローンですか?」

 

「そうだ。そしてこの世界にもそいつらの一人が居る。名を『最愛のロン』」

 

「「「「「最愛のロン?」」」」」

 

この世界に存在するシャーレ特別顧問 最愛のロンこと二虚ロンの事だった。

 

「まあ、見ればすぐに分かるだろう。常に白衣姿で熊の縫いぐるみを胸ポケットに入れている奴だ。髪は銀髪で、目に濃い隈、もしくはアイシャドウやその辺でカバーしてると思うが...そんな奴が居たらアイツだ」

 

「でも...その人と私達に何か関係があるんですか?」

 

「いや、ただ一つ言っておこうと思ってな。あまりアイツと敵対するなよ」

 

「?話が見えてこないんですけど...」

 

可能性の観測所メンバー。その中で一番の力と知力を持つ懺凪。彼女でさえ、彼の言葉の真意を理解する事は出来ていなかった。ただ、彼だけは理解出来ていた。情熱の在り処、可能性の観測所。そしてこれかは会いにいく全員。これから言う事...否、言い回しをする事で全ての組織が...

 

「簡単な話だ.....奴と敵対したならば...」

 

「「「「「?」」」」」

 

「お前ら全員...()()()()()()って事だ」

 

『!?』

 

彼等9人と敵対してくれる。

 

残る譲渡はあと、七つ...否、正確には後六つ。

 

彼という黒の介入が...

 

より物語を混沌に導いていくのであった。

 

 

 

 

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