空間騙 作:ベンゼン
くらい、くらい、やみのなか。
いつからか『わたし』はそこにいて。
足元には一本の線が引かれている。
私はどうしたらいいのか分からなくなった。
どうしようもなくて、座って待ち続けても何にもならなくて、だから。
私は、ずっと、ずっとずっとずっと。
歩き続けて、気を紛らわせるしかなかった。
歩いても何かがあるわけじゃなくて、他にやることがないだけ。
白い線と、真っ黒な世界と、自分の身体がうっすら、それだけ。
線に従って歩いて、それでどうなるわけじゃないけど。
他の人なんていないし、まわりの色は変わらない。
音もならない、足元の白線とか、それくらいしか、たどれるものが、何も無い。
だれもいない、ヒトのこえもきこえない、わからない。
どうして?
どうして誰もいないの?
どうして何も見つからないの。
どうして……
なんで誰もいないのなんで私はここにいるの
なんで私がこんな目にどうして
どれくらい歩いてきたのか。
数えていないから分からない。
身体が疲れないから、分からない。
私は死んでしまったの?
それとも、夢を見ているの?
目が覚めたら、『パパ』や『ママ』に会えるのかな。
……会いたくない気がしてきた、なんで?
「おーい」
「おーいおーい」
声が聞こえた。
振り向いた。
人がいた。
「君さぁ」「あなた」
「「何してるの?」」
変な人たちに会った。
急に違う色が出てきてびっくりしてしまったけれど。
最初はうれしかったけど。
赤色と、緑色だった。
知らない人と、知らない人、何だか不気味だった。
私は怖くて逃げてしまった。
折角会えた人達だけど、怖くて、逃げ出しちゃった。
どうしよう。
「逃げたっ」 「ひどーい」
「悪い子だ」
「悪い子だね?」
「そんな悪い子には?」「どうしてあげようか?」
「「追いかけて、怖がらせよう!」」
追いかけてきた。
変な動きで走って追いかけてくるっ。
怖い、怖い。
泣きたいような、笑いたいような、変な気分になってきた。
頭が変になりそうになった。
こんなの絶対おかしいのに、私はどうすることもできない。
ひどい。
とにかく、怖いから逃げたよ。
私こういうの苦手なんだなって、そう思った。
後ろの赤い人と緑の人は、まだ変な動きで追いかけてきてる。
ダメ、もう追いつかれる──
「待てー」 「待ってよー」
「逃げちゃだめだぞーっ」「うおーん、ぎゃははーあはははは」
「逃げろ逃げろー」 「どこまで逃げるのー?」
笑っていた。
私を追いかけて。
怖い人達が私に近付いて。
白い線がどこかへ行った。
周りの色が変わっていく。
黒だけでも白でもない、いろんな色。
おかしな場所にいるのに、普通みたいだった。
腕が疲れてきた、身体が重い。
「キャハハ」「アハハハハ」
それでも、捕まりたくなくて、逃げた。
怖くて逃げて。
逃げて逃げて、逃げて、足が転んじゃって。
「これ、お前たち、何をしとるのじゃ?」
「あ、お師匠様だ」「お師匠様だぁ」
「ほう、あの場所に、こやつがおったと」
「それで、お前たちは何をしとった」
「「……」」
「「遊んでた!」」
「どっせい!!」
「「ぎゃああああああ!!」」
赤と緑の人たちが、黄色い人に殴られて、倒れた。
血が出てる? 乱暴……あの人も怖い人?
死んじゃいそうだって、ちょっと可哀そうだと思っていたら、急に立ち上がった、気持ち悪い、近よらないでほしい。
「痛ったーい」「酷いよー」
「血も涙も無い邪神ー」「鬼、悪魔、お師匠様ー」
「ぬかしおる……さて、それはそうと」
ゴゴゴゴゴ
ゴゴゴゴゴ
「オホン、あー、童女よ──おぬし、何者じゃ」
「何のために、ここへ来た?」
怖い。
なんかゴゴゴって鳴ってる、耳がぶるぶるする。
すごく偉そうな感じがなんかきつい。
助けてよママ、パパ……
「ねぇ、お師匠様はなんで『ラジカセ』で鳴らしてるんだろう?」
「馬鹿ねー、あれは威厳を出そうと必死なのよ、ただでさえ年上マウントできないとおっちょこちょい加減が隠し切れなくなって――」
──直後、再び頭部から出血する二つの姿があったとか無かったとか──
──いつか、どこかで起こった話である。