「ねこです。こせいは"ねこです。よろしくおねがいします"」 作:エルルーン
■■月■■日。
この日、雄英高校の会議室では全職員によるヒーロー科の実技試験合格者の選考が行われていた。
「救助P0で1位とはなあ!」
「後半他が鈍っていく中、派手な個性で敵を寄せ付けず迎撃し続けた。タフネスの賜物だ」
「対照的に8位の子は敵P0点か」
「アレに立ち向かったのは過去にもいたけどブッ飛ばしちゃったのは久しく見てないわね」
「俺も思わずYEAH!って言っちゃったからなー」
この数年の間でも突出したほどに優秀な成績を叩き出した今年の受験生を興味深く吟味する雄英教職陣。誰も彼もが実力と知名を兼ね備えたプロヒーローだが、そんな彼らの注目はある生徒に注がれた。
「……で、この子なんだが……」
モニターにピックアップされたのは一人の女生徒だ。
白色のボブカットから生える猫の耳。病的なまでに白い肌に白い眉毛からまつ毛等々。頭のてっぺんから足の先まであらゆる要素が白一色で構成されてる彼女はミステリアスな容姿も相まって、他の受験生とはどこか一線を画した雰囲気を醸し出していた。
そんな彼女が最初にヴィランポイントを獲得した場面でビデオは一時停止された。
「これは……?」
「仮想敵に外傷が見受けられないのに撃破判定だと? つまり彼女は棒立ちしたまま倒した……ということなのか?」
「そうだ。どういう理屈かは不明だが、彼女と相対した仮想敵は全て撃破判定を食らっている。
「となると、彼女がやったということで間違いないわね……」
ざわつき始める会議室。彼らがこうも議論を重ねるのは彼女は何から何かまで異質な存在だっただからだ。
突然のスタート宣言に受験生全員が慌てて走り出す中、一人散歩のように呑気に歩み始めた井戸守は建物裏から現れた2Pのロボットと遭遇。
大抵は攻撃か防御態勢に入るのが普通だが、井戸守はただ突っ立ってるだけのまま微動だにせず。しかし次の瞬間、ロボットは機能を停止し、鉄の体をその地に沈めることとなった。
その後もタイムアップの宣誓が鳴るまで試験場内を気ままに歩き続け、多くの敵ロボットを倒した井戸守の総合得点は一位の爆豪勝己と僅差の76Pで第二位。
攻撃のアクションすら見せずに次席を獲得したことに教師陣は口を揃えて賞賛し始める。
「可愛い顔してエグいことやってんなぁ……! こりゃ今年一のダークホースガールだZE! 」
「ホント。ルックスは整ってるし、猫耳なんてチャーミングじゃない。アイドル路線もいけそうよね」
「二位と三位の点差は余りにも離れているのに一位と二位はほぼ同点。実質、同率一位と言っても過言ではないな」
「大型仮想敵を一撃で倒した少年と外傷も与えずに倒した少女……。0P敵を倒しただけで数年ぶりだというのにそれが二人となりゃ、今年の受験生は皆粒揃いだな」
「それで……彼女の名前と個性は?」
誰かの問いに進行役はページを捲って彼女のプロフィールを確認する。
「えーと、受験番号040、『井戸守ねこ』。 個性は──『ねこです。よろしくおねがいします』か。………ねこです。ねこはいます」
「「「……は?」」」
「ねこはそこにいます。だからねこも合格でしょう。そしてねこはいます。よろしくおねがいします」
「「「………は?」」」
◆
【インシデントレポート: ███-█】
20██/ ██/ ██、静岡県の雄英高校において少規模なミーム災害が発生しました。調査書に書かれた個性名から曝露したと思われます。調査書提出時点で執筆並びに受理・合否作業を行っていた全ての雄英職員には記憶処理が為されました。これ以降当該人物に関する資料を提出の際は全てミーム対抗処置を経由させる事が決定しました。
◆
はじめまして。ねこです。よろしくおねがいします
ねこははるからゆうえいのせいとです。たのしみなねこです。
でもちょっぴりやりすぎました。ねこはじつぎしけんでほんきをだしすぎてひーろーのなかにもねこをとどけました。だからゆうえいにもねこがいました。おこられました。しょぼん。
ねこはいまにんげんです。なんでこうなったかわかりませんが、ねこはねこなのでねこのままいきたいとおもいます。ねこにはほかのおともだちもいます。みんななかよしです。ふぁっきん、くそとかげ。
ので、ねこは『
さて、ねこはきょうしつまえにいます。とてもおおきなとびらです。ねこはえーぐみなので、ここがねこのくらすです。
とびらをあけるとくらすめいとがいます。ねこもいます。
とりみたいなおとこのこ。おはだがぴんくなおんなのこ。おててがいっぱいあるおとこのこ。みんなねこのおともだちです。ねこです。よろしくおねがいします。
「机に足をかけるな! 雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよ! テメェどこ中だよッ
……うるさいです。ねこはうるさいのきらいです。つんつんあたまのおとこのこ、すこししずかにしてください。
あっ、めがあいました。
「──何ガン垂れてんだぁ猫女が! 見せ
「女性に向かって何て酷い言い草だ!? 君ホントにヒーロー志望か!?」
………むかっ。
こうなったらつんつんあたまをねこでいっぱいに──。
「あれ? ドアの前で固まってるけど、君もA組?」
おや? ねこははなしかけられました。まるっこいおんなのこです。となりにはぼさぼさあたまのおとこのこがいます。
おんなのこがねこにはなしかけてきました。
「やっぱり! よかった~! 女子少なかったから仲間が増えて嬉しいんよ。私、麗日お茶子。仲良くしようね!」
「み、緑谷出久です。これからよろしくお願いします!」
いどもりねこです。ねこです。よろしくおねがいします。
……おや? うららかさんがねこをみてきます。みどりやくんもみてきます。なのでねこもみます。ねこはいます。
「あれ〜? それって……」
「えっと、その猫耳って個性だよね? 井戸守さんって猫とかの個せ──」
「……お友達ごっこがしたいのなら他所へ行け。
──ここはヒーロー科だぞ?」
ろうかにねぶくろがいました。いつのまにいたんでしょう? なにかちゅーちゅーすってます。ちゅ〜るですか? ねこもたまにすいますよ。ねこですから。
ずるりとねぶくろからでてきたのはおとこのひとです。かみはながめ、おひげはじょりじょり。だらしないです。
「……はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。合理性に欠けるね。それと担任の相澤消太だ。よろしくね」
ねこのくらすのせんせいでした。まるくなるのがすきなのですか? ねこもねこなのでまるくなるのがすきです。こんどいっしょにまるくなりましょう。
あいざわせんせいはねぶくろからじゃーじをだしました。ねこはしってます。あれ、ゆうえいのたいそうふくです。
「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ。説明はその後する」
ねこはなにされるんでしょうか? とりあえずきがえましょう。
「個性把握テストぉ!?」
「入学式は? ガイダンスは!?」
「ヒーローになるのにそんな悠長な行事やってられないよ」
ねこです。よろしくおねがいします。
ねこはいまぐらうんどにいます。ねこはこれからてすとをうけさせられるようです。こせいはあくてすと? はじめてきくことばです。
せんせいはせつめいしてますが、ねこはとなりのしっぽにきょうみしんしんです。おおきなしっぽ。しっぽくんもねこですか? え? ねこじゃない? そう……。
「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50メートル走──、君たちも中学の頃からやってるだろ? 個性禁止の体力テストを。で、これからやるのは
「67メートル」
「んじゃ、個性使ってやってみろ。円から出ないようにな」
あのつんつんはばくごうくんというらしいです。ばくごうくんはあいざわせんせいからぼーるをうけとりました。
ぼーる、ぼーる……。……いけません。ねこはねこなのでまるいものにはめがありません。ころころしたいです。でもがまんします。ねこはがまんができるこです。
ばくごうくんがおもいきりふりかぶります。
「そんじゃまあ……
──死ねェ!!」
……しね?
うるさいだけじゃなく、くちがわるいです。おまけになげたときちかちかしました。ねこはまぶしいのもにがてです。
きろくは……『705.2m』。すごいです。ばくはつのこせいですか? 10ばいもとびました。でもやっぱりうるさいし、ちかちかします。ねこのにがてなたいぷです。
「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」
どうやらねこたちのこせいをしりたいみたいです。ひーろーはこせいをつかいます。こせいをしりつくさないとねこはひーろーにはなれません。
……あいざわせんせいがこちらをみています。なのでねこもみます。
「そんじゃあ、爆豪の次だからお前にしようか、井戸守ねこ。試験次席のやり方ってのを見せてもらおうか」
「「「次席……!?」」」
「はっ! あの猫女がかよ」
みんながねこをみます。じせき。じせきってにばんってことですよね? たしかごうかくつうちしょでおんなのひとがいってたきがします。わすれてました。
でも、ねこはやりたくありません。ねこはあさもにがてです。きょうはにゅうがくしきだけのよていときいてたのに、うんどうなんかしたくありません。
だからねこにはひつようないです。ねこはねこです。ねこはどこにでもいます。くらやみにもいます。だれかのめのおくにもいます。あたまのなかにもいます。ので、ねこはねこのことをよくしってます。てすとはひつようありません。え? そんなのかんけいないからやれ? ……ねこはしってます。そーいうのおうぼうといいます。
「手を抜いて困るのはお前だよ。トータル成績最下位は除籍処分だからね」
「「「じょ、除籍処分!?」
じょせき? じょせきってくびってことですよね?
つまりねこはゆうえいをおいだされる……? いやですいやです。ねこはゆうえいにいます。でないとねこはねこできません。
みんなももんくたらたらです。ねこもくわわります。おうぼうだー、でぃーぶいだー。てっかいしろー。
「理不尽だと思うかい? でもそういう理不尽を覆すのがヒーローさ。これから三年間、雄英は全力で苦難を与え続ける。
──"
やばいです。みんなやるきです。
いけません。ねこはねこです。ねこはねこいがいなにもできません。できるのはねこのことをしってもらうだけです。
ばくごうくんのようにぼーるをとおくまでとばすことはふかのうです。ほかのひとがどうかはしりませんが、まちがいなくねこはさいかいです。
ねこのきもちもかんがえず、あいざわせんせいはぼーるなげをきょうせいしてきます。ねこはいやです。
「ほら、後がつかえるからさっさとやりな。しないなら自動的に0メートルになるぞ」
………。
ええい、ままよ! りゃあー!
ピピッ
「記録は……21メートル……?」
「次席にしちゃ、ショボいっていうか……何ていうか」
……みんなぜっくしてます。あいざわせんせいもおどろいてます。え?『……今のが本気なのか?』って? はい。ねこはねこです。ねこいがいできません。ねこですから。
というわけで、ねこでした。
よろしくおねがいします。
GANRIKI NEKO(激ヤバ)
・井戸守ねこ。
個性は『ねこです。よろしくおねがいします』(曝露の危険性を考慮して一般的には『ねこ』として処理されてるが、本人の管理が甘いせいでたまにミーム汚染しかけてる)
みんなご存知"SCP-040-JP"『ねこです。よろしくおねがいします』がヒロアカ世界に転生したキャラクター。人間として生を受けたせいか、SCP時と比べて人間に友好的になっている。しかし前の姿を懐かしがってる節もあり、また戻りたいとも思ってる。
個性『ねこです。よろしくおねがいします』
元ネタ同様に井戸守ねこの姿を直接見るか、或いは井戸守ねこを見た人物や画像、映像、音声などを介してその人物の視覚内に幻覚を発生させることが可能。応用を利かせることで多彩な能力も使える。個性の副産物として動物の猫っぽいことも出来る。
・財団っぽい組織。
ヒロアカ世界に転生したと思われる元財団関係者達が立ち上げた組織。表向きには個性に悩む人の生活を支援、管理、保護するNPO団体として活動しており、世界中にその支部がある。井戸守ねこもその管理化に置かれて生活している。