「ねこです。こせいは"ねこです。よろしくおねがいします"」 作:エルルーン
お久しぶりです。
プライベートが落ち着いてきたので投稿を再開したいと思います。
これからもねこのひーろーあかでみあをよろしくおねがいします。ねこでした。
井戸守ねこと初めて会ったとき、俺はあいつの目を見て固まっちまった。何せ今まで会った猫であんな大きな目をした猫なんて見たことなかったからな。いや、人を猫扱いしちゃ悪いか……。
まあ、クラスの連中とよく話したり、つるんでいたりしてるところを見るとちょっと変わってるとこはあるが、普通の女生徒って感じだな。カタコトの言葉は分かりづれぇけど。
そんな奴と開催前に初めて声を交わした。『ぜんいんたおしてゆうしょうします』って……あいつ、こんなに熱いやつだったのか……。知らなかったな……。それに──。
(友達になりたい、か……)
雄英に来て初めてそんな事言われたな……。だが悪ぃ井戸守。俺にそんな事してる暇はないし、俺はお前を倒さなくちゃいけねぇんだ。
何せ、次の種目はトーナメント戦。そしてお前は俺の対戦相手。お前がどんな気持ちで体育祭に臨んでるかは分かんねぇけど俺にも負けられねぇ理由ってもんがある。だから勝たなきゃならねぇ。
だってのに……。
「醜態ばかりだな、焦凍」
「……邪魔だ」
戦う前から嫌な奴の顔を見た。
観に来ていたことは知ってたが、わざわざここまで来るとはどんだけ暇なんだが。帰ってヒーロー活動してりゃあいいのに……。
「左の力を使えば障害物競走も騎馬戦も圧倒出来ただろ? 何故使わん?」
「……別にいいだろ」
「まさか……まだ反抗してるつもりか? いい加減子供じみた真似は辞めろといった筈。お前にはオールマイトを越えるという義務があるんだぞ!」
「………」
「分かってるのか? 兄さんらとは違う──お前は最高傑作なんだぞ!」
「それしか言えねぇのかテメェは……」
No.2ヒーローだってのに尊敬や目標にも値しねぇ奴の意見なんて無視して先を往く。
井戸守の個性は……確か『猫』。よくある動物系の異形型個性──なんて甘ぇ考えは捨てるべきだ。奴には瞬間移動がある。あの様子だと、恐らく移動出来る距離に限界はなさそうだ。だとするといきなり俺の背後に……なんて手段も取ってくるだろう。
しかし、そうポンポンと使ってこねぇところを見るに何かしらの制約があるみてぇだ。おまけに騎馬戦時は一度も使ってない。これらの情報から考慮するに井戸守の瞬間移動は移動出来る場所や状況が限られ、尚且つ井戸守当人しか作用されない限定的な能力だと推測出来る。
ならば俺が取るべき策は──。まあ、奴が何の個性にしろ、どうしてくるにしろ──。
「母さんの力だけで勝ち上がる。戦いでテメェの力は使わねぇ」
そうだ。開催前に──いや、入学前から誓約としてそう決めてた事だ。
だから……だから邪魔すんじゃねぇ。黙って俺が優勝するところを見てろッ。
「口先は立派だが……強がってるのが見え見えだ。お前も気づいてる筈だ……片側だけでは限界が来ると。個性がそう単純なものではない事はお前もよく知ってるだろ」
……関係ねぇ。
だから──悪ぃな。井戸守。お前には負けてもらう。
◆
「井戸守さん行動不能! 轟くん二回戦進出! ……って井戸守さん大丈夫!?」
いっかいせんでまけましたねこです。よろしくおねがいします。
ねこはわーぷをします。が、ここはかんきゃくがおおすぎてわーぷできません。ので、とどろきくんのしかいのはしにねこがいますしてかくらんをします。あとはねこぱんちでけーおーです。
……のに、とどろきくん。かいまくこおりをぶっぱしてきました。ねこがいますするひまがありません。こおりづけなねこがいます。ささむいでですす。は、ははははやくとかしてくださいいい。よろしくくおねががいしますすす。
「……悪ぃ、イラついてた。ここまでするつもりはなかったんだが……大丈夫か?」
……あったかいです。これがはんねんですか。べんりですね。さむいがにがてなねこもほしいこせいです。
でも、とどろきくん。かったのにうれしくなさそうですね。なにかありましたか?
「っ、……何でもねぇよ」
そうですか。では、ねこはしつれいします。ねこはゆうしょうしますかったですが、まけたならしかたありません。とどろきくんのけんとうをいのります。よろしくおねがいします。
「ああ……」
ねこをこおらせたこおりをとどろきくんがとかしていきます。みぎてでこおらせ、ひだりてでとかす、ふしぎなこせい。が、なんででしょう。ねこにはそれがかなしくみえます。くびをかしげるねこです。よろしくおねがいします。
……さて、ねこはまけました。ざんねんですが、ここからはかんせんにいそしますねこです。Aぐみのみんなのいるきゃくせきにもど──。
「──ちょっといいかな?」
ん? ねこにこえをかけるだれかがいます。いったいだれ──
……。
くろいすーつのおんなのひと。そのひとのかおと、むなもとの"ばっじ"をみて、ねこはあしをとめます。みんなとごうりゅうしますはあとまわし。ねこはそのひとのところにいきます。
──『ざいだん』からだいじなおはなしがあるようです。
◆
自分達のルーツがこの世界ではなく前世にあると
四歳と言えば、世間一般では個性が発現する時期と言われており、何故その時期に発現するのかは未だ解明されていない。だが彼らにも個性は等しく発現し、それに引かれるようにして前世の記憶までもを思い出したのだ。
『
『
『
ある者は研究者として、ある者は機動部隊の一員として、またある者はO−5として──あの組織に所属し、この世界とはまるで異なった異常を隠し、制御し、管理し、情報を削除し、真実を歪め、人類を守るという名目のもとに、数多の犠牲を払ってきた前世。
その因果なのかは分からないが──死して尚、個性という異常が常態化されたこの世界に生まれ落ちた彼らがまず抱いた感情は戸惑いでも感動でもなく、"強烈な違和感"だった。
SCPオブジェクトに匹敵するほどの能力を一般人が有し、あまつさえ文化の一部として定着しているという不自然に共存された
それも──個性を持つ人間の良心任せというハリボテを頼りにして、だ。
我々の目からすれば、それは"収容違反"に他ならない。管理と言うには甘すぎて、分類と呼ぶには曖昧過ぎて、ただ世間の寛容さに依存する形で放たれた力の奔流。それがこの社会の実態だった。
かつての財団であれば即座にKeter指定されていたであろう
故に我々はこの世界の観察を始めることにした。かつての常識もルールも通用しないこの世界で何をすべきか、何を収容すべきか。我々は考え、考え、考え──そしてやがて気づく。
『財団関係者が転生してるのなら、SCPオブジェクトも転生という形でこの世界に存在してるのでないか』と……。
それが事実ならかつてオブジェクトの影に生き、異常の本質を見続けてきた我々にとって、この世界は未だ『危機』の温床に他ならない。
故に我々は陰で動き始める。前世と比べて規模も格もない仮初めの器──『
確保せよ。
収容せよ。
保護せよ。
──名は変えようと、それはこの世界でも変わらない"使命"であった。
◆
「ねこです。よろしくおねがいします」
初めて会った時と何も変わらない、いつも通りの無表情で挨拶してくる井戸守ねこを見て、彼女はさりげない笑みを浮かべる。
かつてはその脅威性から財団に恐れられていたSCP−040−JPが『井戸守ねこ』という人名と身体を得た挙句、ヒーローにならんと雄英高校へ通い、クラスメイトと挨拶を交わし、勉学に励んでいる。前世の関係者が聞けば、さぞかし馬鹿げた妄想だと腹を抱えて笑うことだろう。
だが、彼女は確かに存在し、こうして暮らしている。SCP−040−JPという名前ももはや過去の遺物なのだ。
「元気そうだね。雄英にはもう慣れたかな?」
「はい。ねこはゆうえいにいます。ゆうえいにはねこのたくさんのおともだちがいます。たのしくくらすねこがいます。よろしくおねがいします」
「ならよかった。君のことだから距離を置かれてるんじゃないかと思ってたが……どうやらそれは杞憂だったようだ。楽しくやってるなら何よりだよ」
SCP−040−JP担当のエージェント・育良にとって、井戸守ねこは隣人のようであり、親友のようであり、家族のような間柄だった。
それこそ、井戸守当人も財団は嫌ってこそはいるが、育良の事は嫌いではないと豪語するほど。彼女の人間性や基本的概念の構成に一役買ったといっても過言ではない人物で、日本支部有数の
そんな彼女が雄英体育祭に来た理由は何も井戸守の活躍を見に来た……という私事もあるが、財団の仕事をしに来たのが概ねだろう。
人気もなければ、監視カメラにも映らないような死角に移動したところで育良は井戸守に問い質す。
「ニュースで聞いたときは驚いたよ。まさか雄英がヴィランの襲撃を受けるなんてね。それで……その頭目ってのはどうだったんだい? あのオールマイトに匹敵するのがいたって聞いたけど、本当かい?」
育良の問いに井戸守はほんの少しだけ首を傾げた。考えているというより、思い出す作業に近い。
「とてもつよかったです。ねこはちからまけしました。ので、きづいたときにはつぶされました。ひりきなねこははんせいてんです」
「──死んだ、ってことよね? 大丈夫だった?」
「かんたんにいえばそうです。が、ねこはどこにでもいます。ねこはおもにくらやみにいます。いくらさんのめのおくにも、あたまのなかにもいます。いきてるときも、しんでるときも、ねこはいます。ので、ねこはここにいます。よろしくおねがいします」
平坦な口調の感想に、育良は『やっぱり』という顔つきを見せる。
そもそもSCPは理不尽かつ制御不能で、何より人知の及ばぬ"異常"な存在だ。人間に宿る超常現象が『個性』であるならば、超常現象に意思が宿ったようなモノが『SCP』とも呼べるだろう。
故に井戸守ねこが不死性を有していようが、
死なずに復活する。
「身体は何ともないのかい? 個性が使えなくなった……とかあったりしないかい?」
「いえ、ねこはとくになにもありませんよ? ちょっとだるくなったぐらいです。が、せっかくいろんなひとにいますしたねこがいなくなりました。ざんねん」
「(井戸守ねこ。死亡後、ミームを使った復活の報告に加えて、復活時の副作用は特に見受けられない。個性も安定傾向にはあるが、観察は継続のまま、か……) ──いなくなった、というのは?」
「ねこはしにます。と、だれかのなかにいますしたねこからねこをいますします。が、そのかわりいますしたねこは
(復活の代償として全曝露者内にいる『ねこ』を消費……いや、集結させてるのか? そうすることで復活し、曝露者は非曝露者となる……何にせよこれは新しい発見だな)
一にして全、全にして一。それが今世のSCP−040−JP。
修正すべきプロトコルがまた出来たな、と育良は心の中で機械的に記録をまとめながらも最後に小さく微笑んだ。
「それさえ分かれば十分だ。強力なミーム汚染が確認されたにも拘らず、君の個性について周知されていないということはちゃんと個性管理に注力してるって事だね。実技試験の時の反省が活きてるようで何よりだ。この調子なら"上"も君がヒーローになることに関しては今のところはとやかく言わないだろう」
「ねこがひーろーになりますのをはんたいするひとがいます。が、よけいなおせわです。よろしくおねがいします」
「仕方ないさ。人はいつだって未知なるモノを恐れるからね。でも財団は君のその
僅かな媒体から周囲に混乱をもたらす事が可能なSCP−040−JPのミーム性は財団関係者ならよく知っている情報だ。故に、当初
いくら前世と比べて人間に友好的になったからと言って、そう安々と職業選択の自由を与えるほど財団は甘い組織ではない。しかし、無効化しようものなら逆にヤラれる可能性がある。結論を出せぬまま時間だけが過ぎてく──そんな中、誰かが言った。『SCP−040−JPの能力を使えば財団に有意義な結果を齎せるのでないか』と。
『ねこ』を見た人間の見聞したものや思考をリアルタイムで把握できる井戸守のそれは精度・即時性・干渉範囲等あらゆる点において財団の監視システムを遥かに凌駕する個性と言っても良い。これがあれば現在管理している他のオブジェクトの監視に大いに役立つこと間違いない。
そして当人はどういう訳かヒーローになりたがっており、そのために学費やら内申点やら後ろ盾を欲している状態。これを利用しない手はない、と結論付けた財団は『SCP−040−JPの雄英進学を認める。だが、人類への敵対行為が確認されたと判断した場合、財団は処置を取らせてもらう』と釘を差した上でヒーロー志望を許したのだ。
「まっ、とりあえず君が大規模なミーム汚染でもしない限り財団は静観の立場をとるってことさ。助勢もしないけどね。何せ、財団は人も金も足りない上に君以上に厄介なオブジェクトも抱えてるんだ。ある程度目を離しても大丈夫な奴より一時も目を離せない奴を優先するさ。実技試験の時は……まあノーカウントにしてあげよう。
それにしても君が負けてしまうとは。惜しいところまで来たようだけど残念だったね」
「……くやしいねこです。よろしくおねがいします」
「いやなに、相手はあのエンデヴァーのご子息。入学前から注目されてる金の卵で、個性も炎と氷のハイブリッド個性ときた。そんな相手に制限をかけながら戦ったんだ。負けてしまうのも無理はない」
『手段を問わなければこの会場はおろか、全世界の人間を廃人にさせることも可能だってのにね』と育良は恐ろしげな事を考える。
生かすも殺すも気分次第。それがSCP──だったのに。
「USJ事件の結果次第なら記憶処理を施すことも考えたが……その必要性もなければ、オールマイト級を相手に大金星を勝ち取ったんだ。上出来以上の何物でもない。確か……相澤と言ったかな? 君の担任は上手くやってるようだね。聞けば彼を助けに入ってやられたそうじゃないか。
出会った頃の君は人間なんて信用ならないという態度だったのにそれが今ではヒーローを志し、担任や友達を助けるまでに至った。日本支部トップクラスの厄介さを有したオブジェクトだった
その問いに井戸守はさも当然と言わんばかりの態度で答える。
「いくらさんはいいます。ともだちはたいせつにしなさい、と。
ねこはたくさんのひとにたすけられています。ねこがいますできるのはたくさんのひとのおかげです。いくらさん、"ぷっしーきゃっつ"、みどりやくんやうららかさんたち。あいざわせんせい……。 みんなともだちです。ともだちをたすけるものです。だからたすけますねこです。よろしくおねがいします」
育良は小さく息を吐きながら驚いた。
かつての井戸守ねこは人を『環境』としか見ていなかった。生存を妨げるノイズか、あるいは利用価値のある媒体とでも言おうか。それ以上でもそれ以下でもなかった。
しかし今の井戸守は違う。彼女の口から出る『ともだち』という言葉はただの模倣ではなく、確かに自分以外の誰かを『存在』として認めている証だった。
教えた本人から見ても彼女にその自覚はないのかもしれない。変わったつもりもなければ、変わろうと努力したわけでもない。ただ『友達は大切にする』という意見を元に『友達は助ける』という行動を起こしただけ。たったそれだけなのに、育良からすれば大きな一歩とも呼べる成長ぶりだった。
そして思う、『この子は、知らないうちに人間になろうとしているのではないか』と。
かつて制御不能のミームとして忌み嫌われた怪物は、今や人と関わり、人を助け、人と共に歩もうとしている。人の皮を被った"異常"から、異常を内包した"人間"へと成長しようとしている。
それがわかっただけでも、今回の来訪はお釣りが来るレベルで有意義なものだった。
「……なるほどね。話してくれてありがとう。……とりあえず君が無事でよかった。私としてはそれだけで満足だよ」
育良は井戸守の無機質な瞳を見返す。
その奥に人類がいくら観測を重ねても理解できない深淵を感じながら──しかし、その無表情な顔にほんの僅かな──人間らしい微かな"感情"の影を育良は見た。
「ねこもいくらさんにあえてよかったです。……そろそろけっしょうせんです。ので、もどらなくてはいけないねこです。またあいましょう。ねこです。よろしくおねがいしました」
【悲報】『とーなめんとせんへん』と言いながら全然トーナメントしてない件について。
→井戸守ちゃん負けちゃったからね。しょうがないね。
・井戸守ちゃんと初めて会ったときの轟の反応
轟「お"っ」
・エージェント育良
井戸守ねこ担当の女性職員。元ネタはSCPー040ーJPの作者様から。
・井戸守リポップの種明かし
実体(井戸守)が怪我を負った場合、曝露者の中にいる『ねこ』を消費することで実体を上書きすることが出来る。傍から見れば怪我が一瞬で治ったか、或いは無傷かのどちらかにしか見えない。
しかしあくまで上書きするだけなので2体目の実体を出すといった分身などは出来ない。また、死亡した場合は全曝露者の中にいる『ねこ』を全て消費させることでリポップすることが可能。
そのため、井戸守を完全に殺しきるには『ねこ』のいる曝露者を全員無力化(殺害、記憶処理等)した上で井戸守本体を誰にも目撃されることなく、尚且つ自身は一度も視界に収めることなく殺さなくてはならない。アーカードの旦那と同じ、命をストックするタイプ
Q.井戸守ちゃんの学力はどんなもんなの?
A.普通です。テストとかで分からないところがあれば、ミームを通してカンニングしてます。
Q、『ねこ』の曝露者を増やすことのメリットとデメリットは?
A,メリット……増えれば増えるほど情報収集能力や撹乱などミームを活かした能力が増強される。
デメリット……曝露者と井戸守本体はミームを通して知覚や痛覚が繋がってる状態のため、曝露者が受けたある程度のダメージや異常状態などがフィードバッグされてしまう(ON/OFFは可能だが、そうするとメリットが一切活かせなくなる)。そのため数が増えればその分受ける確率も上がる。また、SCPの時より地力が衰えてるので一体一体の操作がおぼつかなくなる。
・NPO法人 SCP財団
元財団関係者の有志たちによって設立された、個性に悩む人達の相談窓口となるNPO団体で『
前世と比べ、規模が縮小してしまっているため政治力や資本力は微々たるものだが、彼らの活動方針はあくまで『前世がSCPオブジェクトだったと思われる存在を引き続き確保・収容・保護する』ことのため、ヒーローやヴィラン関連のアレコレにはノータッチを極めている。
・井戸守ちゃんがヒーローを目指す際に交わした財団の簡単なやり取り↓
財団「あかん!SCPを管理したいのに金も人も足りねぇ!何かいい手はないか……ん?」
井戸守「ひーろーになりたいです。にんちしてください」
財団「なんや急にめんどくさ……せや!こいつを使ったろ!」
財団「ヒーローになってもいいで。学費とか進学に必要なものはこっちが用意するし、バックアップもするで(助けるとは言ってない)。その代わりヒーローになったら財団の手伝いしろよ?(こっちには
井戸守「こいつらくずですね」
レポートNo.■■
記録開始。
我々はこの世界に適応を開始した。
原因は不明。転生という現象自体、我々の前世界においても未確定かつ非科学的な領域に属していた。
しかし、事実として我々はこの世界に存在している。個としてではなく、記憶を持つ者たちとして。役職も立場も違えど、かつて"財団"に所属していたという一点で繋がった者たちが、複数確認されている。
この世界の名称は不明。通称『超常社会』。超常的能力は『個性』と呼ばれ出生時、または4〜5歳の幼児期後期に確認される現象で地球人口の約82.4%が何らかの個性を所持しており、それが法・倫理・経済・教育を構築する前提条件となっている。
この世界における『異常』は異常と見なされていない。ここに前世の我々と間に最大の文化的・認知的断絶がある。
かつて、我々は異常を脅威と定義し、それらを秘匿し、管理し、封じることを使命とした。
だが、この世界では異常は力であり、才能であり、希望ですらある。
価値観が一変した世界。それが財団の認識である。
──よって、我々の存在意義も再定義される必要がある。
収容施設は存在しない。倫理委員会も消えた。クラス分けの基準は意味を成さない。
だが、我々の原則は今なお有効だ。かつての『
再び、確保せよ。
再び、収容せよ。
再び、保護せよ。
──これは、新たな世界における財団の第一報である。
NPO法人"SCP財団" O5−■