「ねこです。こせいは"ねこです。よろしくおねがいします"」   作:エルルーン

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七話 ねこはたいいくさいのじゅんびをします。

 

 

 

 おはようございます。めざめましたねこです。いや、やっぱりめざめたくないねこでした。よろしくおねがいしません。

 ねこはいまびょういんにいます。そう、びょういんです。ねこのきらいなびょういんなのです。

  

 びょういんにはどくとくでへんなにおいがいます。びょういんにはねこのからだをまさぐるひとたちがいます。ので、ねこはびょういんがきらいなのです。のに、みっどないとせんせいのこせいでつれてこられました。ひどいです。

 

 が、ねこがねてるあいだにけんさはおわったそうです。あとはもんしんだけ。こんどからそうしてほしいですね。

 

 

「……うん。特に異常はないですね。一日寝たら退院していいですよ。それじゃあ、お大事に」

 

 

 そういっておいしゃさんはびょうしつをでていきます。ねこでした。ありがとうございま『──何ともなくて何よりだ』……おや……? あいざわせんせい。そのけがでであるいてだいじょうぶなんですか? ほうたいだらけですよ?

 

 

「これぐらいどうってことない。医者が大げさなだけだ。……飲み物を買ってきた。ジュースでも飲むか? ……は? こっちがいいだと?」

 

 

 はい、ねこはあまいのもすきです。が、ねこがいますをしたあとはこれがのみたくなります。ちろちろ。"ひろびた"、おいしいです。ねこのこのみ、よくわかりましたね。

 

 

「そうか……。俺が飲むために買ったやつだが、好物ならよかった。

 

 ──飲みながらでいいから聞け。これは……無理に答えなくていい質問だ」 

 

 

 たすかります。ひみつがおおいねこなのです。できることはおおいですが、いえることはこれっぽちです。よろしくおねがいします。

 

 

「──学校、楽しいか?」

 

 

 たのしいですよ。ともだちもたくさんできました。

 しっぽのおじろくん。かけっこのはやいいいだくん。とうめいなはがくれさん。みみとしっぽをさわるあしどさん。けろけろなくあすいさん。ねこですをほめてくれたきりしまくん。えっちなみねたくん。うるさいばくごうくん──ほかにも、はじめてのおともだちのうららかさん。よくむちゃするみどりやくんもいます。

 

 みんな、ねこをみます。ねこもみんなをみます。ねこみょうりです。ねこはゆうえいにきてよかったです。ゆうえいにねこはいます。よろしくおねがいします。

 

 

「……それともう1つ──井戸守はどうしてヒーローになりたいんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞かれるとは思わなかった質問なのだろう。ビンの口を舐める井戸守の舌がピタリと止まる。

 

 ちょうどその時、彼女の顔を照らし出していた西日が消え去り、朧気だった顔の輪郭がありありと浮かび上がる。

 空が夕焼けから紫霄(ししょう)の色へと移り変わろうとしたところで──彼女はようやく口を開いた。  

 

 

 

 ──かえるため

 

 

 

 短いながらもはっきりとした答えだ。

 他にも聞きたい事は山ほどあったが結局その二つを聞いただけで終わってしまい、彼女に別れを告げて病室を出る。

 退室した先で相澤は入学から今日にかけての数日間に起こった出来事を振り返る。

 

 独特な口調で話す猫の様な女子生徒。実技試験や体力測定、屋内戦闘訓練を経ても個性に謎が多く、本人も自分の素性に関してはどこかはぐらかしている様子を見せる。

 故に、時間をかけて信頼を勝ち取っていくやり方よりも強引ながらも一切合切吐いてもらうやり方をするべきかと考えていた。

 

 

 ──しかし、今回の事件で全ての前提が崩れた。

 

 

 未だ憶測の段階だが、井戸守の個性はワープといった単純なものではなく、爆豪との戦闘から考慮するに対象者の意識または思考を左右するだけの力を有する個性だろう。

 そしてその個性は肉体を失っても発動するものであの怪物にやられた後も個性は自我を持って怪物を攻撃した。言うなれば、個性が本体のようなものだ。

 

 緑谷のように肉体が個性に追いついていないのではない。青山のように個性と体質があっていないわけでもない。

 井戸守ねこにとって肉体とは個性を閉じ込めておくだけの檻に過ぎず、いざという時、必要ならば躊躇なくそれを打ち壊し、そしてどういうわけか元の姿で戻ってくる。

 

 オールマイトのようなナチュラルボーンヒーロー特有の『考えるより先に体が動いた』というレベルじゃない。負けることも傷つくことも全て『わかった上』で実行した。だからこそ、タチが悪い。

 

 ヒーロー志望としてはあまりにも命知らずが過ぎるが──ただ学校が好きだと、ヒーローを目指す理由があるのだと。その言葉に嘘偽りはないと感じた。

 

 なら今はそれだけで十分だ。そう結論づけた相澤は井戸守の事をもっと知るためにも彼女について詳しい人物の元へ電話をかけ──数回のコールの後、その人物は電話に出た。

 

 

 

 

 

 

「ご無沙汰してます。相澤消太です。少しお時間いいですか? ……はい。うちで預かってる井戸守ねこについてなんですが、こちらで調べるより貴女方に聞いた方が早いと思いまして……はい、分かりました。では後日、また連絡させてもらいます……虎さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 りんじきゅうかあけのねこです。よろしくおねがいします。

 とうこうちゅうなねこです。が、こうもんまえにまた"ますめでぃあ"がいます。このまえのことをききますしたいようです。めんどうなのできょうも、きょうしつにわーぷしましょう。

 ねこです。おはようござ──。

 

 

「井戸守ちゃん!」

 

 

 とびついてきたのは……あすいさん? どうしましたか? 

 

 

「どうしたって……こっちの台詞よ! あんな目に遭って……あの後何ともなかったの? 後遺症とかないかしら?」

 

 

 だいじょうぶです。ねこはいます。ねこはここにいます。ので、いじょうはなにもありません。そんなぺたぺたしなくていいですよ。ごしんぱいかけて、すいません。ありがとうございます。ねこでした。『あれ? 井戸守?』『井戸守来たの?!』『登校して大丈夫なのかよー?』……みんなそろってますね。ほかのみんなはぶじだったんですか? 

 

 

「おうよ! 俺は爆豪と一緒に倒壊ゾーンに飛ばされたんだがよッ、二人でヴィランを倒してやったぜ! あれぐらい対処出来なきゃ漢が廃るってんだ!」

 

「ウチらはまあ……途中までは良かったけど、最後にヘマしちゃってスナイプ先生に助けられたんだけどね。ねぇヤオモモー」

 

「ええ……ですが、脚下照顧すべき点が見つかったのは不幸中の幸いかと。二度とこのようなことがないようにこれからも邁進していきたいと思いますわ」

 

「マジか……皆誰かと一緒にいたのか……。一人ヒットアンドアウェイで凌いでいた俺って一体……」

 

「敵地で孤軍奮闘とは……さしずめ、深淵を彷徨う一迅の侠客と言ったところか……」

 

「それ、褒めてるの?」

 

 

 とにかく、なにごともなくてよかったです。これでまたにちじょうにもどれます。

 ……おや、みどりやくん。ねこです。おはようございます。ねこにようですか? かおくらいですよ。

 

 

「あ、あの、井戸守さん……僕……あやまぐッ」

 

 

 みどりやくん。そのさきはひつようないですよ。ねことみどりやくんはともだちです。ともだちはたすけあうのだといいます。ので、しゃざいはいりません。

 

 

「……そっか。じゃあ、僕に何か出来ることがあるなら何でも言って! お礼も兼ねたいしさ」

 

 

 ん? いまなんでもっていいましたね? ので、みどりやくんにはごはんでもおごってもらいましょう。ねこはあまいものがすきです。くれーぷとかたべたいです。

 

 

「いいよ! 今度一緒にどこかに出かけよう!」

 

 

「あー! 緑谷ったらナンパしてるー!」

 

「見かけによらずスケコマシだなーお前ー!」

 

「いや違うから! そういうんじゃないから……!」

 

 

「──おはよう、君達。全員揃ってるな」

 

 

「「「相澤先生復帰早えぇぇ!!」」」

 

 

 おはようございます、あいざわせんせい。ねこです、おとといぶりですね。やっぱりびょういんにいたほうがいいですよ。

 

 

「俺の事はどうでもいい。それよりも……重要な戦いが迫ってきてる……」

 

「戦い?」「まさか……!」「(ヴィラン)……!?」

 

「雄英体育祭だ」

 

「「「クソ学校っぽいの来たー!!」」」

 

 

 ゆうえいたいいくさい? なんですそれは?

 ねこがくびをかしげるとあしどさんがはなしかけてきます。

 

 

「えー? 井戸守知らないのー?」

 

「うそだろ!? 毎年テレビで特集組まれるほどの人気イベントだぜ!?」

 

「テレビとかあまり見ないタイプか?」

 

 

 こじいん(孤児院)にねこはいます。が、こじいんにてれびはありません。ので、てれびをみたことはないです。

 

 

「あっ……」

 

「そ、そうなのか……そうとは知らずに……ごめん」

 

 

 きにしてないですよ。ねこはてれびとかきょーみありません。ねこはおひるねがすきです。おひるねがいちばんのごらくですから。

 

 

(なんやろ……井戸守ちゃんにシンパシー感じるわ……)

 

 

 しんぱしー? うららかさんと? なんだかへんなとこでかみあいましたね。

 

 

「でも大丈夫なんですか? ヴィランに侵入されたばっかなのに……」

 

「葉隠の言い分もご尤も。逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石のものだと世間に示す考えらしい。警備も例年の五倍に強化するそうだ」

 

 

 ふむ、けいびですか。ねこなら、らいじょうしゃぜんいんのなかにねこがいますすればけいびひようがうきますね。

 が、ねこがいますがふえればねこはくらくらします。かんりもたいへんです。ねこはひとではないですが、ひとになったのでおもうようにねこできません。ままならないですね。

 

 

「年に一回……計三回だけのチャンス。ヒーローを志すなら絶対に外せないイベントだ。開催は二週間後。それまでに鍛えるなり戦略を立てるなり各々準備をしとくように。俺からの連絡事項は以上だ。

 

 ──それと井戸守、これ」

 

 

 あいざわせんせいにふくろをわたされました。これは……ひろびた? たくさんあります。

 

 

「好物なんだろ? USJでのお礼と労いを兼ねたプレゼントだ。言っておくが、返礼しようとか考えなくていい。単なる俺のわがままだからな」

 

 

 『それだけだ』といってあいざわせんせいはでていきます。ねこはしってます。あれ"つんでれ"っていうんですよね?

 が、ねこのこうぶつというより、ねこはつかれたときにこれのみたいだけです。いまはふつうにあまいのがたべたいです。

 

 

「なになにー? 何貰ったのー……ってヒロビタ?」

 

「これ好物って……おっさんじゃん!」

 

「井戸守の事ますます分からなくなったわ……」

 

 

 ……まあ、いいです。こせいはあくてすとのときの"かり()"、これでちょうけしにしてあげます。よろこぶといいですよ。

 ねこはやさしいいきもの。こじきにもそうかかれてます。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおお何事だぁ!?」

 

 

 ほうかごです。ねこがかえろうとすると、うららかさんのひめいがきこえます。なにかあったのでしょう?

 

 みると、きょうしつのまえにひとごみができてます。また"ますめでぃあ"がゆうえいにいますした……ではありません。みんなせいふくをきてます。おなじゆうえいせいとです。

 

 

「教室から出れねーじゃん! 何しに来たんだよ!」

 

「敵情視察だろザコ」

      

 

 ばくごうくん、しんらつです。みねたくんないてますよ。

 しかし、てきじょうしさつですか。しかたありません。ひとはわだいがすきです。ひとはわだいにあつまります。ねこたちはゔぃらんとたたかいました。ので、みんながねこたちをみようとします。ねことおなじです。

 

 

「わざわざ見に来るとかどんだけヒマなんだよ。意味ねぇからそこどけ、モブ共」

 

「知らない人のことモブって言うのやめなよ!」

 

 

「──幻滅しちゃうなぁ」

 

 

「あぁ?」

 

 

 ひとごみからだれかきます。

 むらさきがみのおとこのこ。が、めのしたにくまがあります。ちゃんとねてますか? ねこはいいます。ひとがねこをみるときは、からだをよくしてけんこうたいでみますしてください。ねことのやくそくです。

 

 

「……初対面なのにえらく甲斐甲斐しいんだな。二週間後に体育祭が控えてるってのに、他人を気にしてるなんて随分と余裕そうじゃん。ヒーロー科ってのは皆こんななのかい?」

 

「あー……」

 

「そいつはA組の不思議ちゃん兼マスコットだからなー。最初はそうなるのも仕方ねぇよ」

 

「……???」

 

 

 かみなりくん、ねこのことちょっとばかにしてません? おこりますよ。

 

 

「……まあ、よくわかんないけど。少なくとも俺は調子ノッてっと足元ゴッソリ掬っちゃうぞっつー宣戦布告しに来たつもりだから」

 

「そーだそーだ!」「ヒーロー科なんて敵じゃねぇーぞー!」「当日は憶えてろよー!」

 

(((この人も大胆不敵だな!)))

 

 

 ひとごみがいきおいづきます。こまりましたね。ねこがかえれません。

 というかばくごうくん。どうしてくれるんですか。せきにんとってください。おい、きいてま──『関係ねぇよ』……はい?

 

 

「上に上がりゃ関係ねぇよ。文句あんなら登ってこいや」

 

 

 ……。

 ばくごうくん、しんがぶれません。

 

 ばくごうくんはうるさくてよくきれます。が、なんばーわんひーろーになるゆめはばくごうくんのなかにいますしたままです。うえしかみてません。

 

 ……ふしぎです。ねこはねこできたら、ひーろーできたらそれでいいです。のに、それがふまんとおもうねこがどこかにいます。ばくごうくんのえいきょうでしょうか? それとも、これがひとのよくというもの……? 

 ……ねこにはよくわかりません。が、ねこはもっとねこができるようにがんばります。きょうからきんとれかいしです。ので、よろしくおねがいします。ねこでした。

 

 

 

 

メモ
  

 

 

 

 

 

 

 






Q、『ヒロビタ』ってなに?

A、キャッチフレーズが『疲れたカラダに根性一本』のヒーロービタミンドリンクのこと。忙しいヒーロー達が栄養補給によく愛飲している。用はヒロアカ世界のチオ○タ。


Q、井戸守ちゃん孤児院育ちなの?

A、財団の息が掛かった孤児院兼学校育ちです。娯楽は二の次三の次なのでテレビなんてものはありません。

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