「ねこです。こせいは"ねこです。よろしくおねがいします"」 作:エルルーン
用意周到にUSJ襲撃を画策してきたヴィラン連合。
その大半が生徒に充てるだけのモブ要員で、首領3人が本命であることは簡単に予想がついた。
何せ、オールマイトを殺すと宣う奴等だ。とんだ隠し球を用意していても可笑しくないし、イカれた事をやったとしても不思議ではない。
現にイレイザーヘッドと13号は負傷した上に、あのプロヒーロー達を相手に逃げおおせている。バカだが、アホではない。奴らが一枚上手だったと言うしかないだろう。
事が終わって──イレイザーヘッドが救急車に運ばれる傍らで同じように救急車に乗せられようとしている井戸守の姿が見えた。一見特に何も異常はなさそうだが……一応医者に診てもらったほうがいいと判断されたのだろう。
『つーかあれだけ元気なら健康体そのものだろ』。
そんな事を考えていたら、すぐ側にいたクソナードの様子が変だった。
『井戸守さん……』
張り詰めた糸が切れたかのように脱力しきっており、ぐったりとしている。
それだけじゃない。一緒に飛ばされたであろうカエル女や葡萄頭も様子がおかしい。ヴィランにビビったとかそういうのではなく、もっとヤバイもんを見たような表情だ。
何があったのか、何が起きたのか。気になりはしたが、三人がその理由を何も話さなかったから、翌日に雄英体育祭の話が出てきたから。数日もすれば夢物語のようにUSJの件は頭から抜け落ちつつあった。
そんな折だ、変な噂を聞くようになったのは──。
『あの脳無っていう化け物を倒したのは井戸守だ』
誰が言い始めたのかは知らないが、その話を聞いていよいよ看過できなくなった。
あの黒い大男を──脳無を、倒しただと? クソ猫女が?
信じたくなかったが、その脳無が広場に横たわっていたのを思い出したことで真実味が増していく。
話を聞こうにも猫女に近づくと顔をしかめて逃げるし、クソナードに詰め寄っても頑として口を割らねえ。カエル女と葡萄頭も同様だ。
業を煮やしてイレイザーヘッドに聞いてみれば『……生徒の個人情報に関わるから回答は出来ん』だ。何か答えられねぇ事でもあるのだろうか。
一体何があった。猫女は何をした。
何より──一番を狙える奴が実力を隠しているのが気に食わねえ……!
「お前が何も語らねぇなら──
実力で示すしかねぇよなあッ!!」
BOOM!!
眼前で繰り出される『爆破』のスタンに井戸守が目を瞑って防御態勢に移ったのを爆豪は見逃さなかった。
逃げるように後方へジャンプする井戸守。この土壇場できっちり受け身を取ろうとするとはさすがは猫。しかしこの状況下でそれを選ぶのは愚策と言う他なく、気づいた時には爆豪にも轟にも抜かされていた。
それでも地を蹴って、必死に走って。後続に抜かされかけながらも何とか食らいついた結果は緑谷、轟、爆豪に次いでの四位。
途中まで勝ちを確信していただけあって井戸守は不満タラタラな表情のまま爆豪を睨む。
そんな彼女に爆豪は『ザマァみやがれ』と言わんばかりに中指を立ててやるのだった。
◆
4いだったねこです。よろしくおねがいしま──しませんよこんなの。
くやしいねこです。ねこはばくごうくんのぼうがいをうけました。が、るーるじょうはもんだいありません。ぼうがいおーけー。みっどないともいってます。
から、ねこはばくごうくんをみます。みまくってみまくって、にらみます。
「文句があんなら本気で来いよ。俺がねじ伏せてやっからよォッ!」
ばくごうくんのせんせんふこく。なかゆび、たててます。ねこはけんかうられてますね。いいでしょう。ばくごうくん、いつかあなたをたおしてやります。いつかね……。でも、おととひかりはやめてほしいです……。
さて、ほかのみんなはどうでしょう……みんなじょういにいます。ねこもいます。ので、つぎのきょうぎでもよろしくおねがいします。
「ご苦労さま! 中々私好みの熱いレースだったわ。予選通過出来るのは上位42名。落ちちゃった人は安心なさい! まだ見せ場は用意されてるわ!
そして次からがいよいよ本戦よ! 第二種目は──コレ! 騎馬戦!」
きばせん。すうにんでうまをくんで、きしゅがたたかうやつですね? ねこはやったことありませんが、きばせんはしってます。いちどやってみたかったねこです。
で、みんなにぽんいとがあてられます。きばぜんいんのごうけいぽいんとのはちまきをきしゅがつけ、みんなでうばいあいます。はちまきをとられても、きばがくずれても、たたかいはおわりません。たいむあっぷじまでおわらないばとるろわいやる。おもしろいげーむですね。
「そんでもって与えられるポイントは下から5ポイントずつ上がるわ! 42位が5ポイント、41位が10ポイント……そして1位に与えられるポイントなんと1000万!」
「「「っ!!」」」
「え……?」
1000まんぽいんとときいて、みんながみどりやくんをみます。みんなのあたまのなかにみどりやくんがいます。いけませんよ。それはねこのせんばいとっきょです。
が、ぽいんとがおおすぎます。このきょうぎのきもはたいむあっぷのときにほじしてたぽいんとすう。ので、1000まんのきばはじかんまでまもりきればかちです。が、ぜんいんからねらわれます。りすくがおおすぎです。
ので、ねこはほどよいぽいんとにして、ほどよいけっかをのこしましょう。さて、だれとくみましょう? ここはばらんすをじゅうしして──。
しっぽなかまのおじろくん。ねこです。くみましょう。よろしくおねがいします
「……」
へんじがない。まるでしかばねのようです──って、むししないでください。
おじろくん、ねこです。ねこですよ。ねこがここにいます。よろしくおねがいします。おい、きいてますか? ねこがかなしみますよ。
「──悪ぃ。そいつは先に俺が誘っちまってな。他を当たってくれ……ってお前は……」
あなた……このまえきょうしつにきてたひとですね? ふつうかの……たしかなまえは、しんそうくん。
「そういや、騎馬はあと一人か……ならちょうどいいな。──『
いえ、ねこはおじろくんとくみた──あれ? これは……。
「……は? いや、なんで何ともな──……!」
──この時、心操には誤算が二つあった。
一つ目は井戸守が持つ耐性。
個性が毒に関する個性なら毒物に強く、ゴム人間なら電気を通さない──という事例があるように、まるでゲームや漫画に出てくる"耐性"の如く、ある分野に対して常人以上の耐性を持っている人間が一定数存在している。
そして井戸守ねこは『ねこ』というミームを操ることで幻覚、幻聴、幻触……といった、そこには存在しないはずのモノを生み出す個性持ち。『洗脳』の上位的存在と呼べるそれと元SCPオブジェクトと言う特殊な出生も合わさったことで『洗脳』の
初見殺しな『洗脳』の個性も『
そしてもう一つの誤算は……。
……なるほど。そういうかんじのこせいですか。やっかいですね。
しかたありません。じっけんいがいでやるなといわれてます。が、きんきゅうじたいです。ざいだんもゆるしてくれるはずです。
──おじろくん。めのまえにねこがいますよ。ねこがみえますね。あたまのなかのねこもみえてますね?
はい、みぎてあげて、さげて。あしぶみできますか。はい、ぐっどです。つぎはそのばでたーん。すごいですね。めがあいてるのに、ねているようなおじろくん。これが『せんのう』ですか。
──どうしました。ねこをみていたしんそうくん。おばけでもみたようなかお。
『洗脳』を無効化出来るなら上書きすることも出来るというもの。それがもう一つの誤算である。
『ねこです。よろしくおねがいします』の副産物として瞬間移動や
それが『行動強制』。
尾白がそうなったように、曝露者が意識不明もしくは心神喪失な場合に限り、頭の中の『ねこ』が対象者に簡易な行動を強制させる事が出来るというものだ。
しかしそこまで便利な代物ではなく、行動を強制させると言うよりは『単純な動きを連続させて動かしている』といった方が正しい表現だろう。プログラミングを一文一文その場で組んでロボットを動かしているようなものだ。
そのため瞬間移動などと比べると使う場面がすごい限られてるが……心操の肝を冷やすには十分過ぎた。
「……あれ? 俺、何して──
……っ! 離れて井戸守さん! こいつの個性は危険だ……!」
おじろくん、しょうきにもどりましたね。おかえりなさい。ねこですよ。こんどこそよろしくおねがいします。ちーむをくみましょう。
「あ、うん。よろしく……って、そんなことをしている場合じゃない! 恐らく、こいつの個性は『催眠』とか『洗脳』とかそういうものだ……! 多分受け答えしたら掛かるタイプ……!」
「チッ……失敗か……」
ねこはしってます。こせい『せんのう』。よびかけられたひとはしんそうくんのしはいかです。ねこにはききませんが、ひとならきょうりょくなこせいです。
──ので、しんそうくん。ねことくみましょう。
「はあ?」
「えっ、ちょっ、井戸守さん!?」
みどりやくん、ばくごうくん、とどろきくんとかがきしゅをします。ねこもきしゅきぼうです。
が、ねこはおととひかりにも、あつさにもさむさにもよわいです。ので、ばくごうくんととどろきくんがきびしいです。まけませんが、かてないねこはいます。よろしくおねがいします。
ねこはさくてきとか、かくらんとか、いろいろできます。しんそうくんの『せんのう』もかくらんにはうってつけです。いちいはとれなくても、ほんせんにはいけます。ので、じっとしてたらだいじょうぶです。じっとするねこです。
みんながらいばるです。が、みんながなかまでもあります。ので、しんそうくん。ねことくんでください。ねこです。よろしくおねがいします。
──そう言って右手を差し出してくる井戸守を見て心操人使は思う。
『ヒーロー科にはイカれた奴しかいないのか』と。
◆
『よーし組み終わったな!? 準備はいいか?なんて聞かねぇぜ!!
それじゃあ残虐バトルロワイヤル……』
「始まるぞ! 準備はいいかい!?」
「……ああ」
「みんなが仲間であり、ライバルか……。
「ねこです。よろしくおねがいします」
『──スタートぉっ!!』
「っ、来たッ!」
1000万という破格のポイントに目が眩んだ大半のチームがスタートと同時に緑谷目掛けて一斉に走り出す中、尾白、心操、庄田の騎馬からなる井戸守チームは唯一不動を貫くことで戦況を把握することに努めた。
彼女らの目と鼻の先で緑谷達が宙に浮く。無重力とサポートアイテムを駆使した見事な連携に観客は目を輝かせた。
『おーっと緑谷チーム! サポート科発目のアイテムを使って二組の猛攻を回避ィー! 1000万がそう簡単に奪れる訳ねぇーよなぁ〜!』
逃げに徹する緑谷チーム。当然だ。奪い合いには参加せず、そのハチマキを有して防衛に徹するだけで本戦参加の資格を得られるのだ。無駄な体力消耗は避けるのが吉である。
熱い争奪戦が繰り広げられ、混戦に次ぐ混戦に会場の興奮は冷める様子がない。
そんな中、花より実を取るような堅実な作戦を取るチームがいた。
「──単純なんだよ、A組」
爽やか気な外見ながらどこか腹黒そうな少年が爆豪の頭からハチマキを掠め取る。
それだけじゃない。葉隠、峰田の両チームもハチマキを奪われて0P落ちへ。同時に3チーム、しかもA組だけがやられたことに、
「クラスぐるみか! フザケたことしやがってB組ィ!!」
「何言ってんのさ。これも立派な作戦だよ。バカの一つ覚えみたいにぶら下がった人参しか見ない
「あぁ?」
明らかに煽りの意を含んだ言葉だというのに爆豪は引っかかってしまう。
やった、とほくそ笑む少年──物間寧人はすかさず挑発を繰り返す。
「この騎馬戦が終わったら聞かせてくれない? 年に一回、ヴィランに襲われる気持ちってのをね。"ヘドロ事件"の被害者さん?」
「上等だコラァっ!! クソ髪、予定変更だ! デクの前にまずこいつらを殺す!」
「それってハチマキを奪うって意味だよな! なっ?!」
物間が爆豪を釘付けにしたところで、他のB組チームは時間稼ぎに徹し始める。B組同士で連携し合ってA組を蹴落とし、そのまま本戦に望むつもりなのだろう。
点数が芳しくない残りのチームは何とか這い上がろうと一発逆転を夢見て──
その中に混ざる轟チームの騎手、轟の目が静かに煌めいた。
「邪魔な奴らを蹴散らすぞ……上鳴」
「わぁーってる! しっかり防げよ!」
BZZZZ!!
上鳴の個性『帯電』による無差別放電が辺り一面へ広がり、その場にいた全チーム全メンバーの身体を貫いた。
その後、絶えずやって来る第二の攻撃。凍てつく空気が電気を軸に迸ったと思いきや、次の瞬間には氷の膜が張られ、騎馬を務める生徒達の脚を氷結。動けぬ騎馬達を尻目に轟は全ハチマキの回収に成功したのだった。
騎馬戦開始から10分が経過。各チームが奮闘し、順位が目まぐるしく変わる中、井戸守チームは何をしてるのかと言うと──。
「うしろからはものまくんがきます。かいひ、よろしくおねがいします」
「後ろ? 了解!」
「おや? また避けられたよ……いや」
緑谷達と同様にひたすら逃げに徹し、追撃を躱すばかりの井戸守。ポイントを取りもしなければ失いもしておらず、スタート時からずっとこの状態のままステージ上をウロウロしているだけ。そのため点数は変動せず470Pのままで現在は4位。
特に回避に関しては随一のもので色んなチームが井戸守のハチマキを奪取しようと試み、そして失敗して去っていった。
そんな中、諦めきれないのか執拗に狙ってくる物間チーム。これで何度目の奇襲になろうかと言うところで物間は何かを得たように微笑んだ。
「何だろうね……避けられたというより、読まれたって感じの避け方だ。まるで背中に目があるみたいにね。一体どういう個性なのかな?」
「ねこのこせいですか? ねこのこせいは『ねk──」
「言わなくていいから! なんで敵に個性バラそうとしてんの!?」
尻尾で口を塞がれる井戸守を見て、物間は確信を得たように『やっぱり……』と吐露する。
「まあ、見た目からして『猫』の個性っぽいなぁと思ったけど、
井戸守は答えない。というか、尾白テールで口を塞がれて喋れないというのが正しいだろう。
だが、井戸守の様子から答えを予想するのは容易なもので、その答えが"是"であることを物間は見抜いていた。
なら、後は《畳み掛けて》奪うだけだ。
「君の事は知ってるよ。井戸守ねこ。実技試験の次席合格者だってね。
……はぁー残念だなぁ〜。首席はガラが悪い暴言魔で、次席は勝負から逃げてばかりの期待外れ。A組がこんなんじゃ、同じヒーロー科ってだけでB組が白い目で見られて良い迷惑だよ!」
「むっ」
井戸守の表情が強張る。それを見て物間はあと一押しとばかりに挑発を続けた。
「それに噂で聞いたよ。君、USJでは全っ然ダメだったみたいだね! 病院送りにされたそうじゃないか! それでヒーローが勤まると思ってるのかい? これ以上在校しても無駄だし、自主退学した方がいいんじゃないかい!?」
「……かっちーん。ねこはきれました」
自分で『かっちーん』って言う人初めて見たな、と井戸守以外の生徒達はそう思った。
さて、どうくるか──、挑発し終え、相手の出方を伺う物間。このまま井戸守が襲いかかってきたとしてもこっちには『爆破』と『硬化』があるため、並個性程度なら迎撃は可能。あわよくば、そのまま井戸守の個性をコピー出来たら僥倖だ。
さて、井戸守はどうするかと言うと──。
「さくせんへんこうです。ぷらんBです。」
「「「了解!」」」
逃避から一変。初めて攻撃に出た井戸守に物間は『待ってました』の笑みを浮かべた。
第一種目で井戸守を観ていた時から彼女が音と光に弱いのは把握済み。それに対し、こちらの
故に、ここは攻撃力に秀でた『爆破』を使うのが最適解。井戸守の正面目掛けて物間は腕を振るった。
(そこだ──!)
──ねこがいます。よろしくおねがいします。
「っ、
井戸守がいる位置とは別のあらぬ方向に爆発は咲き乱れ、そして意味もなく消えていった。
あらゆる点で有利なはずの場面からヘマをやらかしてしまったことに物間は内心舌打ちをかまし、挽回せんと再度攻撃を仕掛ける。
だが、これすらも
「しんそうくん」
「『──待て、物間!』」
「命乞いかい!? 待てと言われてま──」
直後、物間の動きが止まった。
受け答えすれば術にハマってしまう『洗脳』の個性。カラクリこそ単純だが、こういった混戦時においては恐ろしい横槍へと変貌し、無視できないものとなる。
その仕組みを知らない仲間からすれば、突如物間が停止したことに戸惑い、疑問を投げ掛ける。
「物間!?」
「どうした!? 何で動かねぇ!?」
騎馬の目が物間に向いたところでその横を過ぎ去るようにハチマキを掠め取る。
物間チームのハチマキに加え、彼がこれまでにとったハチマキ全てを掻っ攫ったことでこれを見たプレゼント・マイクが高々に吠えた。
『おーっと! 井戸守チーム、ここに来て積極的なアプローチが成功! 物間チームのハチマキを奪取し、二位に繰り上がったぁ!!
さぁ時間はもう僅か! このまま泣き寝入りしちまうかぁ!?』
「くそっ! 0ポイントになっちまった!」
「とりあえず奴らを追うぞ! 奪われたまんまにしてられっかよ! しっかりしろ物間!」
「あ、ああ……!」
正気に戻った物間に活を入れ、井戸守を追う円場達。
奪われたら奪い返そうとするのは当然のこと。故に井戸守は左手の庄田に声を掛ける。
「しょうだくん。よろしくおねがいします」
「了解! ツインインパクト、
「がっ!? (これは庄田の『ツインインパクト』!? 俺らとすれ違い様に触られていたのか……!?)」
騎馬を担う回原の脇腹に強い衝撃が走り、その足が止まった。
庄田二連撃の個性『ツインインパクト』は打撃を与えた箇所に任意のタイミングでもう一度打撃を発生させることが可能。二発目は一発目の数倍の威力となる。
その点を利用し、ハチマキを奪取する際に騎馬の回原に触れ、個性を解放することで予想外の横槍を入れることに成功。強い衝撃を受けた回原は転倒し、その余波で物間チームは騎馬諸共大きくバランスを失って崩落。四人そろって地べたに這いつくばる結果となった。
「何だよあのチーム……! 近づくことさえも許さねぇってか……!」
圧倒的な攻撃力を持ち合わせている訳ではない。かと言って、堅固な防御力を備えている訳でもない。
忌々しいほどに妨害に特化したチーム。それが井戸守チームの最大の武器である。
そんな厄介者達に果敢に挑むチームがいた。
「そのハチマキ寄越せや猫女ァ!」
「……」
「おいコラ、クソがッ! 逃げてんじゃねぇよ! 」
『爆破』とは相性が悪いためその場から逃げる井戸守と、その後ろをキレ散らかしながら追いかける爆豪。緑谷と轟が凌ぎ合ってるその横でそんなカオスな追いかけっこが繰り広げられていた。
しかし、時間は残り僅か。そんな折、轟の氷塊に分断され1000万を諦めた騎馬達が狙いを変えたのか、井戸守と爆豪の周りを囲うようにして布陣する。
もはやA組もB組も関係ない。本戦に進むというただ一つの目的のため、彼らは死に物狂いで向かってくることだろう。
「物間をやった奴だ!」「ねこがいます」「俺等を差し置いて爆豪とねこです。が上位二つをとりやがった!」「気をつけな! 何かヤバい
「まずい、囲まれた……!」
焦る尾白の言葉にも眉を動かさず、井戸守はただ全体を見つめていた。
時間は残り数十秒。周囲には緑谷と轟を残した全てのチーム。
準備は既に万全。故に、呟く。
「ねこです。よろしくおねがいします」
「「「──!?」」」
最接近していた爆豪チームの騎馬は突然、何かを避けるようにして大きくつんのめり転倒する。それだけじゃない。目で見える範囲の騎馬は皆、明後日の方向へ向かおうとしたり、何かを払いのけたり、たたらを踏んだりととにかくおかしな行動が見受けられた。
観客席はそんな光景を目にして戸惑いを隠せない。実況席も何が起きているのか把握が出来ておらず、プレゼント・マイクの呆然とした声が会場に響く。
ただ一人、勝ち確を得たように囁く者がいた。
「ねこはいます。ので、よろしくおねがいしました」
直後、タイムアップのアナウンスが告げられる。結果は物間から奪った1360ポイントで順位は二位。
無事第二種目をクリアしたことで胸を撫で下ろした心操がふと視線を横に向けると──表情を変えない井戸守。すぐ横に悔しさで歯軋りをしている爆豪がいても視線一つすら動かない。
『どんだけ先を見てるんだ──』
そう思っていると、井戸守は非常に見覚えのあるしゃくりあげるような動きをし始める
頬を膨らまし、口元を手で押さえたところで──心操は井戸守が気持ち悪さを我慢していたことにようやく気が付くのであった。
◆
きばせんにかったねこです。よろしくおねがいします。
ねこはさきほどちょっとといれではいてきました。ねこはおととひかりも、あついもさむいも、
さて、つぎは"とーなめんと"せんです。じゅんすいなふぃじかるとこせいがものをいう、いちたいいちのたいまんがちんこしょうぶ。ひりきなねこですが、こせいしょうぶならまけないねこはいます。よろしくおねがいします。
で、おあいてはだれでしょう? みどりやくんならねこがいますでゆうどうしてじょうがいです。ばくごうくんもねこがいますをしてねこぱんちでじょうがいです。あとのひともだいたいそれですね。
ので、ゆうしょうはいただきです。よろしくおねがいしま──。
「井戸守さん行動不能! 轟くん二回戦進出!」
は……?
とどろきくん、かいまくこおりぶっぱって……え? ねこのみせばはどこ、ここ……?
……というわけで、ねこです。まけました。よろしくおねがいしました。
・井戸守チームについて
井戸守ちゃんが4位になったことで青山君が43位になってA組唯一の予選非通過です。そのため、騎馬戦メンバーが原作とは変わり、井戸守、心操、尾白、庄田となります。
彼らのコンセプトは阻害。正面からは尾白の尻尾が飛んできて、その横からは心操の洗脳。知らない内に触られたツインインパクトで不可視の衝撃がやって来る。奥の手として『ねこです。よろしくおねがいします』があります。これ四つクリアして初めてハチマキに触れられます。クソゲーかな?
・行動強制について
SCPー040ーJPーJの救急車を呼ぶやつを元ネタにした能力です。
Q、物間が井戸守ちゃんに触れたら個性をコピー出来る?
A,多分こうなってた可能性があります↓。
物間「ははっ! 君の個性を頂い──ねこですよろしくおねがいしますねこはいますねこですものまのねこはねこですねこはものまですよろしくおねがいしますいますねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこねこ──」
回原「物間ー!? いきなりどうしたねこはいます。よろしくおねがいします」
骨抜「ねこはいます」
円場「ねこです。よろしくおねがいします」
こんな感じで、物間の身体がSCPの器として耐えきれず、『ねこがいます。』ことをただ周囲に曝露し続けるだけの廃人と化していたでしょう。下手したら新しいSCPオブジェクトとして登録されかねません。
ただ、これはボツにすることにしました。理由はこれから書く展開においてこの設定が障害となってしまうからです。それはおいおい語っていきます。
まあ、あの世界でこれを治す手段は限られてますし、果たして個性で治せる領域かどうか怪しいところもありますしね。
2025/05/06追加
↓以下、本編未収録シーン
同時刻、とあるバーにて──。
「あの女だ……! 脳無が殺した筈なのに、なんで生きてやがる……!」
『殺した筈? 見間違えたとかじゃなくて、確かなのかい?』
「いえ、私も現場を見ています……。頭部は半壊し、失血死してもおかしくない状態でした……なのに、何故ッ!?」
「脳無がおかしくなったのもこいつを殺してからだ……! まさかこいつの個性のせいか……!?」
『ふむ……脳無の件はひとまず置いとくとして……それが事実だとすれば『不死』や『蘇生』などの個性か……。どちらにせよ、先生がずっと欲しかった個性よのう』
『今の僕としてはこの傷を治せる個性が欲しいけど……『不死』というのも悪くはない。そんな個性があると分かっただけでも今回の襲撃はお釣りが来るレベルだ』
「殺すか……?」
『まさか! そんなこと勿体なくて出来ないよ。それに……』
「それに?」
『僕個人としても彼女に興味が沸いたな。弔、一つお遣いを頼んでもいいかい? 今度彼女と会ったら──連れ帰ってくるんだ。仲間に引き入れようじゃないか!』