海の狩人   作:紅涙

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見切り発車です。


鬼の子世代編
狩人と元海兵狩り


 

 

 裕福ではない暮らし。

 

 だが、そこには確かな幸せがあった。

 

 父親は病弱で早くに死んでしまったが、母親と残された妹弟達を守り、食わせていく為に、少年は額に汗を流しながら必死に頑張った。

 

 全ては家族の為に。

 

 ただ、それが少年の心の支えであると同時に、少年の強さの源でもあった。

 

 毎日ヘトヘトになりながらも、辛さなど何一つなかった。そこには家族の笑顔があり、少年はその笑顔を見る度に癒され、疲れが吹き飛んだ。

 

 そして、また頑張ろうと心から思えた。

 

 しかし、そんな幸せな日々が何の前触れもなく、唐突に終わりを迎えてしまった。

 

 ある日、少年が暮らす島に海賊が上陸したのである。それと同時に、その海賊を追って海軍が到着した。その結果、海賊と海軍の壮絶な戦いが原因で少年は全てを奪われてしまった。

 

 幸せが壊れる時は、いつも血の匂いがする。

 

 少年だけを残し、家族は死んでしまった。

 

 守るものを喪った少年は、海賊を憎むようになってしまった。本来なら、一般市民を守り感謝されるはずの海軍すらも憎むようになってしまった。

 

 それも無理はない。この二つの存在によって、少年は大切な存在を奪われてしまったのだ。

 

 だから、少年は心に固く誓った。

 

 少年の脳裏に浮かんだ〝滅〟の文字。それだけを深く心に刻み込んだ。

 

 故に、少年は海賊(巨悪)を狩る。これ以上の悲しみを生み出さないように。この世から海賊を滅殺するべく。

 

 故に、少年は偽善者(海兵)を狩る。一般市民の犠牲を厭わない正義を語る海兵を滅殺するべく。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 ある日、何の前触れもなく全てを喪った少年──カリュウ・D・トルコ。

 

 彼はこの1年、復讐鬼となり、憎むべき敵を狩り続けた。家族の為に身に付け、磨き上げたはずの狩りの技術を駆使し、海賊を狩り、海兵をも狩り…。

 

 当然、世界政府と海軍は彼を危険因子と見なした。

 

 彼の標的が海賊のみだったならば、賞金稼ぎと判断されただろうが、海兵にまで手を出したとなれば話は別だ。懸賞金を懸けられるのも致し方なしである。

 

 

〝狩人〟 カリュウ・D・トルコ 懸賞金1億2160万ベリー

 

 

 15歳にして1億を超える懸賞金をかけられたのも、政府と海軍がそれだけ危険視しているという表れなのだろう。

 

 彼の力は元々、全ては家族を食べさせる為。その為の狩猟だったはずだ。それがまさか……死に物狂いで身に付け、磨き上げた百発百中の弓術を海賊と海兵を狩る(殺す)為に使うことになってしまうとは…。

 

 彼自身、行き場のない怒りや悲しみに悩まされているはずだ。

 

 彼の放つ矢は、寸分の狂いもなく標的を狩る。その様は、狙った獲物は逃がさない空の王者を彷彿させるほどのもの。しかし、百発百中の弓の名手ですら、己の歩むべき道筋だけは見失ってしまっていた。

 

 行き場を失った矢は果たして何処に向かうのだろう…。

 

 ただ、星の数程の海賊が蔓延るこの世界で、似たような境遇にあった者はごまんといる。悲しいことに珍しいわけではないのだ。これは、大海賊時代がもたらした影響でもなければ、大海賊時代が幕開けするよりも前からのことなのである。

 

 とはいえ、たった一人で海軍と海賊を標的にする狩人(復讐鬼)は非常に稀なことだろう。

 

「小僧……貴様は何故、海兵と海賊を狩る?

 何故、海兵と海賊の両方を憎む?」

 

 数少ない前例を挙げると、まずはこの男──世界最強の剣士〝鷹の目〟ジュラキュール・ミホークが挙がる。

 

 そして、その鷹の目が今、カリュウ・D・トルコの目の前に現れた。世界最強の剣士が、海賊だけではなく世界政府と海軍を敵に回した少年の前にいる。

 

 かつて、鷹の目は〝海兵狩り〟とも呼ばれていた。鷹の目もまた、過去に海兵を恨む何かがあったが故に、己と同じ道を辿る若者が気になったのかもしれない。

 

 まるで、トルコを見定めるような、そのような視線が鷹の目から向けられており、トルコもそれを理解したのか、その問いに真剣に応えた。

 

「俺が悲しみの連鎖を終わらせる」

 

 己と同じ存在をこれ以上生み出さないように…。

 

 だが、悲しいかな……行き場のない怒りや悲しみに悩み苦しむトルコが生み出すのもまた怒りと悲しみでしかない。彼が狩ってきた(殺してきた)海賊や海兵達にも、少なからずその者達を大切に想う者達はいたのだから…。

 

 悲しみの連鎖を終わらせるどころか、より広まっている。

 

「〝四皇〟だけではなく、三大勢力の全てと戦うつもりか…」

 

 その連鎖が、世界をより混沌へと導こうとしている。

 

 終わりなどない。

 

 あるのは、流れる血と涙だけだ。

 

「若く……愚か。

 だが、()()()()()()も似たようなものだったのだろうな」

 

 鷹の目はそれを誰よりも知る一人。

 

 だからこそ、カリュウ・D・トルコとジュラキュール・ミホークは引き合わされたのだろう。

 

 鷹の目はここ数日、自身の愛刀の疼きを感じ取っていた。その疼きをもっとも強く感じたのが、トルコの手配書を見た瞬間だった。その疼きに導かれるまま、指針すら確かめることなく海に出た先に、トルコは確かにいた。

 

 かつての己を彷彿させる若者が確かにいたのだ。

 

「小僧……いや、カリュウ・D・トルコ。

 貴様に悲しみの連鎖を終わらせる力が本当にあるのか……おれが見極める。この黒刀から生き延びてみろ」

 

 鷹の目は見たいのかもしれない。

 

 かつての己を彷彿させる若者が、己と違う道を歩む瞬間を…。

 

「俺はこんなとこで死ぬつもりはねェぞ!!」

 

 対して、トルコは決意を改めるかのように、世界最強の剣士へと向けて言い放つ。

 

 もし、本当に悲しみの連鎖を終わらせるつもりなら、これは決して避けては通れない戦いだ。

 

 トルコは得意の弓を背中に背負い、剣士を相手にした場合の武器へと持ち替える。斧とハンマーが一体型となった戦斧へと持ち替えたトルコは、鷹の目へと飛びかかった。

 

「見せてみろ──貴様の可能性(未来)を…」

 

 狩人と海兵狩りが衝突する。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 クライガナ島、シッケアール王国跡地。かつてシッケアール王国が統治していたが、2年前に長らく続いていた内乱で滅んだ王国である。

 

 そんな、血生臭く、悪霊でも出てきそうな、常に暗雲が島全体に垂れ込む湿地帯の島に、生きた人間の気配があり…。

 

「狩猟や生活の為に身に付けた弓術と斧や包丁などの扱いは長けていながら、何故……刀剣の扱いだけは壊滅的なのだ。カリュウ、お前は刀剣を振ったら手から必ずすっぽ抜ける呪いでも受けたのか?」

 

「う、うるさい……俺が一番聞きたい。

 斧も包丁も使えるから刀も問題ないと思ったのにどうしてなんだ」

 

 その人間とは、数週間前に激闘を繰り広げた〝鷹の目〟ジュラキュール・ミホークと〝狩人〟カリュウ・D・トルコである。

 

 もっとも、激闘といってもトルコは鷹の目に一方的にやられていただけではあるが…。あれはもはや、世界最強の剣士が次世代の戦士を育てるべく扱いていたようなものだろう。

 

 まさに、かつての己を彷彿させる若者に思うところがあった鷹の目による飴と鞭である。

 

「弟子が刀剣を扱えない呪いを受けているとは…」

 

「やかましい!

 近接戦は斧で十分だ!!」

 

 その結果、狩人トルコは鷹の目のミホークの弟子になった。

 

 

 






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▪️オリキャラ
カリュウ・D・トルコ

由来、カリュウ・D→狩人

トルコの由来は後々。

偉大なる航路出身の現在15歳。

とある海賊ととある海軍の暴れ坊の戦いで家族を喪う。

その結果、海賊狩りと海兵狩りを行うようになり賞金首に。

狩猟の才能が高く、弓術に長けている。
毎日の薪割りで斧の扱いにも長け、近接戦は戦斧で戦う。狩猟で大型の獣を相手にしていたのもあり、身体能力も非常に高い。

懸賞金額。1億2160万ベリー。→全国狩猟禁止の日、2月16日から。

海兵狩りの先達である鷹の目大先生から目をつけられ、晴れて弟子入りを果たす。

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