海の狩人   作:紅涙

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少し長くなってしまった。



狩人と皇帝達

 

 

 その一閃は悲劇を奇跡へと変えるもの。

 

 ブルジョア王国に向けて発動された〝バスターコール〟。

 

 だが、火の海と化したのはブルジョア王国ではなく、海軍の軍艦であった。

 

「あんなゴミクズ(天竜人)に従ってるようなてめェ等海軍に俺達が負けるわけねェだろ。

 本気で正義を語りてェなら一から出直して来い!

━━〝神退(かむぞく)〟!!!

 

 トルコの強大な覇気(覇王色の覇気)を纏った斧が振り下ろされ、愚かな神の使者である海兵達の大多数がその一振りの余波(覇気)で気を失い倒れ伏してゆく。

 

「ド……ドーベルマン中将!?」

 

 直撃を受けた中将はもはや虫の息。

 

「そ、そんな……()()()()()()()()なんて…」

 

()()()()()に……負けた……のか?」

 

 バスターコールの核を担う海軍中将全員がたった3人に倒され、海軍の士気は下がるどころか、もはや戦える海兵は誰一人として残ってはいない。

 

 指揮を取れる海兵すらも残ってはいない。

 

 いったい誰が想像できただろうか…。軍艦10隻、海軍本部中将5人、その他名だたる将校達を投じた大戦力がたった3人を相手に返り討ちにあってしまうなど…。 

 

 それも無理はない。覇王色の覇気の使い手が2人もいたのだから当然といえるのかもしれない。

 

「トルコが戦ったガープっておじいさん海兵1人の方がよっぽど強かったね」

 

 いや、それ以前の問題なのかもしれない。それと、海軍の英雄であるガープは、海軍中将のなかでも別格の例外だ。

 

 そもそも、〝狩人〟カリュウ・D・トルコがなぜ、海賊だけではなく海兵まで狩るのか、その理由はトルコと戦った〝海軍の英雄〟モンキー・D・ガープから伝えられていたはずである。その理由を知りながら、トルコが怒る行動を進んで取ってしまうとは愚かでしかない。しかも、ブルジョア王国に向けての進撃をトルコに読まれてまでいた。 

 

 正義の名の下に世界を守る海軍がとんだ道化(ピエロ)ではなかろうか…。愚かで、滑稽で、あまりにも惨めだ。

 

 ただ、海軍が醜態を曝した一方で、トルコ達は英雄としてブルジョア王国から讃えられるだろう。彼らへの賞賛は、本来なら海軍が受けるべきもの。

 

 しかし、天竜人の傀儡となり、正義と偽った殺戮という力を罪なき一般人に振るおうとした海軍は、もはや偽善者でしかない。この場に於いての悪はトルコ達ではなく、海軍となってしまっていた。

 

 それでも、トルコはこれ以上この場所で血が流れることを、悲劇が起きることを望みはしない。

 

 悲劇はさらなる悲劇(復讐)を生む。

 

 だからこそ、確固たる決意が必要だ。

 

 天竜人の傀儡と化した海軍では世界を守り抜けない。トルコが悲しみの連鎖を断つ為には、それらは邪魔な存在だ。

 

 改めて、トルコは理解した。

 

 無論、すべての海兵がそうではないだろう。天竜人に不満を持つ海兵も多く存在するはずだ。市民の平和を守る為、立派に務めを果たす海兵もいる。

 

 それでも、今ここに存在する海軍は己の敵であるとトルコは判断した。

 

 敵は斬らねばならない……と。

 

「まだ戦うつもりなら命の保証はしない。

 罪のない者達の命を奪うつもりなら、お前達も命を奪われる覚悟を持って……死ぬ気で来い!

━━〝海伐(かいばつ)〟!!!

 

 その一振りは海すらも割り、海軍の戦意を喪失させ、此度の戦いを終結と導くのであった。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 今、世界は新たな時代を迎えつつある。

 

 数年前、〝赤髪のシャンクス〟が四皇の一角に数えられるようになり、それを皮切りに新しい世代が台頭し始めた。

 

「今日から2番隊隊長だ。

 懸賞金もようやく()()()()()()()()()()()()()。次に会った時は絶対に勝つ!!」

 

 その新しい世代の筆頭格は、世界最強の海賊団と称される〝白ひげ海賊団〟にて、長らく空席だった2番隊隊長の座に就任したこの青年──〝火拳のエース〟……

 

「エース。

 2番隊隊長を任されて気合い十分なとこ申し訳ねェが……どうやらお前の()()()()は遥か先みたいだよい」

 

 ではない。

 

 若くして白ひげ海賊団の2番隊隊長となり、懸賞金5億ベリーを超える賞金首でもある火拳のエースが、新しい世代でも抜きん出た力を持っていることは事実だ。世界最強の海賊団で隊長を任されるのだから、それは疑いようがないだろう。

 

 しかし、上には上がいるのだ。

 

「は?

 なんだよマルコ……ん?新聞と手配書?

 これがなんだってん──はァ!?」

 

 白ひげ海賊団に加入し、隊長を任されるまでに至り、これまで以上に己の力に自信を持つようになった火拳のエースが、白ひげ海賊団古参の船員──1番隊隊長〝不死鳥のマルコ〟から手渡されたのは、つい先ほど発行されたばかりの新聞と、見知った男と女が写る手配書だった。それを目にした火拳のエースの驚き様は相当なものである。

 

 

海軍の大敗北!!ブルジョア王国の奇跡

 

 

 エースが目にした新聞の一面を飾るのは、世界政府と海軍にとってかつて味わったことがないであろう屈辱的な大敗北。偉大なる航路(グランドライン)にあるブルジョア王国に向けて、国家戦争クラスの大戦力無差別攻撃〝バスターコール〟を発動しながら、()()()()()にそれを阻止され、それどころか、バスターコールの核を担う海軍本部中将5人全員が重傷を負わされ敗北した。

 

 その他多くの海兵達も、たった3人に蹂躙されたのである。

 

 首謀者は〝神箭手(しんせんしゅ)〟カリュウ・D・トルコと、その仲間2人。〝氷狼(ひょうろう)〟ヤマトと〝海賊貴公子〟キャベンディッシュだ。

 

 ヤマトは宣言通りに大暴れした。中将達の中には海軍初の巨人海兵までもいたが、その巨人族を圧倒し、金棒を片手に絶対零度の氷を操り暴れ回る姿はまさに鬼神の如く、彼の四皇〝百獣のカイドウ〟を彷彿とさせるものがあった。

 

〝氷狼〟 ヤマト 懸賞金4億8010万ベリー

 

 事実、ヤマトは百獣のカイドウの娘で、初頭にして5億ベリーに迫る懸賞金を懸けられたのは、ヤマトの暴れっぷりと、覇王色の覇気の使い手であったこと以外に、今回の一件で彼女の血筋が公になったのが大きく関係している。どうやら、自らそれを公言してしまったようではあるが…。

 

「ま、まじかよ…」

 

 火拳のエースがワノ国で戦い、互角だったヤマトだ。この懸賞金の高さにも納得できるが、一気にここまで迫ってきたことに火拳のエースは戦慄する。

 

「しかも、あのキャベンディッシュを仲間にしたのかよ」

 

 エースの一つ下の世代になるが、悪評よりもその美貌で一躍有名になったキャベンディッシュがここまでの力を持っていたことにも驚きを禁じ得ないだろう。

 

〝海賊貴公子〟 キャベンディッシュ 懸賞金3億8000万ベリー

 

 キャベンディッシュもまたヤマト同様に大立ち回りを見せた。ブルジョア王国の民達からの強力な声援も後押しとなったはずだ。ルーキー海賊にして3億ベリーを超える懸賞金を懸けられたキャベンディッシュは、故郷であるブルジョア王国を守るべく天才的な剣術にて多くの海兵を斬り裂いた。彼が剣を振るう姿は、あまりにも優雅で美しく、運が良いのか悪いのか、その場にいた女海兵達は彼の美しさに見惚れてしまい戦力にならなかったとか…。

 

 そして何より……一番驚くべきは彼についてだろう。もっとも、トルコを知るエースからしたら、驚きはあれど納得もしているはずだ。 

 

「追いついたと思ったら、すぐにおれの遥か先を行きやがって……トルコの野郎!!」

 

〝狩人〟またの名を〝神箭手〟 カリュウ・D・トルコ 懸賞金15億2160万ベリー

 

 海すらも割る斧の一太刀。

 

 百発百中にして、軍艦すらも容易に貫く人力を超えた神秘を示す矢。

 

 新聞の記事はこのように締めくくられていた。

 

 

五番目の皇帝現る!!

 

 

 カリュウ・D・トルコは自ら海賊を名乗り、海賊旗を掲げたわけではない。

 

 それでも、トルコの名は全世界に轟いた。

 

 新時代の皇帝(海賊)として…。

 

 世界政府と海軍はかつてない屈辱を……いや、これは〝魚人族〟の1人の男が起こした聖地襲撃事件に匹敵する屈辱ではないだろうか…。

 

 記事には、詳しい詳細までは載ってこそないが、トルコがこの世界の不文律を覆したのは紛れもない事実である。

 

 天竜人に危害を加え、それに対する報復をも退けたのだ。

 

 神に対する反逆をトルコはやってのけてしまったのである。

 

 この一件が世界に与える影響はあまりにも大きく、計り知れないだろう。

 

「グララララ!

 エースの野郎荒れてやがる。まァ無理もねェか。ライバルが随分と先を行ってたんじゃあな。

 にしても……悪くねェ。イイ面構えしてやがる」

 

 それを世界最強の海賊──〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートも理解しているのか、トルコに強い興味を示している。それでいて、実に楽しそうだ。

 

「ほォ──コイツも〝()〟なのか⋯。

 会ってみてェもんだ」

 

 白ひげが会うことを望むほどの若き皇帝。

 

 世界が大きく揺れようとしていた。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 その一報は当然、現在の〝四皇〟達にも届いていた。

 

()()()()()

 見て!トルコの手配書がまた新しくなったよ!今度は弓を構えてるとこだけどすっっっっっごくカッコイイよ!

 これ撮った写真家の人、センスイイね!」

 

 個々の実力が非常に高く、バランスの取れた鉄壁の海賊団と海軍からも称される赤髪海賊団。

 

 率いるのは、もっとも若い海の皇帝(四皇)にして懸賞金40億ベリーを超える大頭──〝赤髪のシャンクス〟。

 

「ウタ!

 まだおれの方が2倍以上だぞ!」

 

 大頭兼、()に甘い大人げない父親である。

 

「でも確実に差は縮まってるね!」

 

「うぐッ!?」

 

 彼の四皇も娘の前では形無し。

 

 娘からの容赦ない口撃によって、赤髪のシャンクスは撃沈した。さすがは四皇の娘であり、今()()()()()()()()なだけはある。

 

「私も負けてらんない!

 トルコは五番目の皇帝って呼ばれるようになってどんどん先を行ってる。それに比べて、新種の電伝虫を拾ったおかげで、世界中に私の歌を配信できるようになったけどまだまだ!もっと頑張んないと、トルコのパートナーに相応しくない!私は新時代の歌姫になる!」

 

 しかも無自覚に、決意表明とともに口撃するのだから恐ろしいことこの上ない。

 

「ウタァァァ!

 お、おれは認めんぞ!五番目の皇帝なんて世間は騒いじゃいるがアイツはまだまだヒヨッコも同然だ!おれがトルコと同じ歳の時なんてッ──」

 

「シャンクスうるさい!

 よし!今日の配信も頑張んないと!!」

 

 ただ、彼女は今日の決意表明を有言実行してしまうのだから、さすがは赤髪の娘なだけはある。後の近い将来、赤髪海賊団の音楽家であるウタは、〝新時代の歌姫〟と呼ばれるようになるのだから…。

 

 彼女は己の歌で人々を救う世界の救世主。

 

 今、世間を賑わせる五番目の皇帝にして、神がかり的な弓の腕前から〝神箭手〟と呼ばれるに至ったカリュウ・D・トルコに救われたウタは、悲しみの連鎖を断ち切ることを目的とするトルコの想いを繋ぐ1人でもあり、天使の歌声にて人々に喜びと感動を与える存在だ。

 

「ウタが反抗期だ」

 

 それと同時に、父親の命を刈り取る存在でもある。いつもの世も、父親は娘に弱いものである。

 

 世界は今、あらゆる分野で新時代を迎えようとしていた。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 場所は偉大なる航路(グランドライン)の後半部〝新世界〟にある世界政府非加盟国にして鎖国国家──〝ワノ国〟

 

 その沿岸には、とある大海賊の本拠地(鬼ヶ島)がある。

 

「まさか〝狩人〟と一緒だったとはな、ヤマト!

 ウォロロロロ!面白ェ!

 五番目の皇帝の力ってのも見てみてェ!!」

 

 四皇一の武闘派大海賊──〝百獣のカイドウ〟もまた、五番目の皇帝の誕生を歓迎すると同時に、我が娘の成長に上機嫌であった。

 

 ただ、カイドウの場合は四皇一の武闘派と称されるだけあり、戦ってみたいというのが本音だろう。

 

「カリュウ・D・トルコ。

 テメエにこのおれが殺せるか?」

 

 そして、カイドウは待ちわびている。

 

 己を殺せるほどの存在を…。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 時を同じくして…。

 

「五番目の皇帝?

 誰だいその生意気なクソガキは!こちとら何十年海賊やってると思ってんだ!おれが実力の違いを見せてやるよ!」

 

 世界最強の女海賊にして、四皇の一角(紅一点)──〝ビッグ・マム〟シャーロット・リンリンは、百獣のカイドウとは反対の反応を示していた。

 

 しかし、それは仕方ないことなのかもしれない。

 

 ビッグ・マムの海賊歴は半世紀以上の長きに渡る。それどころか、ゴールド・ロジャーが〝海賊王〟と呼ばれるよりも前

 ……つまり、大海賊時代開幕前の時代から〝四皇〟の一角としてこの海に君臨し続け、全盛期の海賊王や〝白ひげ〟達と鎬を削っていたのだ。

 

「おれのとこに来な!

 ブッ潰してやるよ!!」

 

 ぽっと出の若造が皇帝に数えられるなど許し難いはずだ。

 

 本日の新世界の天候は荒れ模様である。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 恐れ多くも、四皇と並び、五番目の皇帝と称されるに至った海賊ならば、まず己のナワバリを持つはずだ。

 

 しかし、五番目の皇帝とまで呼ばれるに至った若者──〝狩人〟カリュウ・D・トルコは違う。

 

 そもそも、自ら海賊を名乗ったことがないのだ。

 

 実のところ、海賊旗も仲間達に勝手に掲げられてしまっただけなのである。故に、海賊団としての正しい名称もない。その上、トルコと共に海を渡る仲間は2人のみ。

 

 いや、直にもう1人増え、世界に激震が走ることとなる。その1人というのが、あまりにも有名な存在(美しすぎる)だからだ。五番目の皇帝と称されるだけあり、全世界の男達を敵に回すことになるだろう。

 

「この旗を目立つようにすぐに掲げるのじゃ!

 ソニア!マリー!そなた達にアマゾン・リリーを託す!そなた達がアマゾン・リリー皇帝じゃ!わらわは今日より()()()()()、海賊女帝ではなく〝海賊皇后〟カリュウ・D・ハンコックと名乗る!」

 

 現王下七武海の一角(紅一点)である〝海賊女帝〟ボア・ハンコックが改名宣言。

 

 それに伴い、男子禁制の女人国である女ヶ島〝アマゾン・リリー〟は早々と、トルコ本人から許可を得ることなく、トルコの旗を掲げていた。もっとも、トルコがこれを拒否することはないだろう。

 

 出会いは最悪な形で、お互いに第一印象は最悪だったが、お互いに理解し合ってからは、トルコはハンコックに甘く、ハンコックはトルコに甘えたがりなのだ。2人の関係性は、恋人・夫婦というより、ブラコン・シスコンにも見えなくもない。

 

「トルコ、早く迎えに来るのじゃ」

 

 ただ、ハンコックがトルコの仲間になれば、五番目の皇帝としての地位は確固たるものになること間違いなし。

 

「ふふ、それにしても大暴れのようじゃな。

 まさかあの天竜人に手をあげ、〝バスターコール〟を粉砕してしまうとは⋯。

 それに、わらわが渡した悪魔の実を口にしてくれたようじゃな。離れていても力になるわらわは、トルコの良き妻じゃ!」

 

 ハンコック本人も誠心誠意尽くすつもりでいるようだ。

 

 誠に、恐ろしい一派が誕生したものである。

 

 

 






オリ主のプロフィール※更新

カリュウ・D・トルコ。
エースと同い歳。

懸賞金額。15億2160万ベリー。→全国狩猟禁止の日、2月16日から。

▪️異名
〝狩人〟
〝神箭手〟←NEW。未来視を駆使した百発百中にして、覇気を用いることで軍艦をも貫く威力を誇る神がかった弓の腕前な為。
〝五番目の皇帝〟←NEW。四皇とは違い、海賊を名乗っていないものの、振る舞い、力、影響力など、皇帝ならざる皇帝⋯⋯つまり五番目の皇帝と呼ぶに相応しい為。

▪️悪魔の実
次話にて⋯。

▪️ハンター(狩人)海賊団?
本人は名乗っていない。
海賊旗もヤマトとキャベンディッシュがデザインした。
仲間は以下の通り⋯

▪️〝氷狼〟ヤマト
懸賞金4億8010ベリー。→8《ヤ》マ、010《ト》
原作通りの能力者。
カイドウの娘であることも影響している。

▪️〝海賊貴公子〟キャベンディッシュ
懸賞金3億8000万ベリー。1億8000万ベリーから2億アップ。
無能力者の剣術の天才。
努力しない天才が、トルコ、ヤマト、ハンコックにコテンパンにされたことでプライドを砕かれ、刺激され、鍛えられ、夢遊病状態でなくとも少しだけハクバの力を引き出せるようになった。

▪️〝海賊女帝〟ボア・ハンコック
自称〝海賊皇后〟カリュウ・D・ハンコック
懸賞金元8000万ベリー。王下七武海。
押しかけ女房。
原作でも現四皇に実力を高く評価されている通り強い。恋はいつでもハリケーン。
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