海の狩人   作:紅涙

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ふと思ったけど、ハートの海賊団のポーラタンク号も、コーティングして魚人島を通って新世界入りした……のか?



鬼の子達と時代のうねり編
狩人と最悪の世代


 

 

 場所は偉大なる航路(グランドライン)のとある海域。

 

 一隻の潜水艦が浮かんでいた。

 

 その甲板では、潜水艦の持ち主である男──〝死の外科医〟トラファルガー・ローが白くまを枕代わりにしながら、新聞を眺めていた。

 

 懸賞金1億ベリーのルーキー海賊だ。

 

「へへッ……〝D〟はまた必ず嵐を呼ぶ。

 さすがだぜ、カリュウ・D・トルコ」

 

 数日前、仲間に加えてもらうべく会いに行った男が、またしても世界に衝撃を与えた。

 

 トラファルガー・ローが今ここにいるということは、仲間に加えてもらえなかったことを意味しているが、実は少しだけ違う。トラファルガー・ロー自身が、カリュウ・D・トルコとの話し合いの結果、今はまだ仲間に加えてもらうには力不足だと判断し、一旦保留にしてもらうことにしたのだ。

 

 彼の判断は間違ってはいない。まだ今の彼では足手まといになるだろう。それでも、トルコ一派は船医が加わることを喜び、温かく迎え入れてくれようとしていたが、それはトラファルガー・ローの海賊としての矜持が許してはくれなかった。

 

 共に戦うには、まだ己は弱すぎる……と。

 

 新聞の内容はこうだ。

 

 

強く気高い世界一の美女──〝海賊女帝〟ボア・ハンコックが五番目の皇帝に嫁入り!?

 

またしても!海軍の大敗北!!

 

 

 トラファルガー・ローがカリュウ・D・トルコの一派に接触した翌日のことだ。

 

 〝海賊女帝〟ボア・ハンコックが突如として、何の前触れもなく、王下七武海の座から退くことを宣言した。

 

 当然、強く気高い世界一の美女の宣言は世界に衝撃を与えることとなった。同時に、世界政府と海軍はボア・ハンコックという強力な戦力を失うべきではないと判断し、七武海残留の説得の為に、海軍は彼女が皇帝を務める女ヶ島〝アマゾン・リリー〟へと向かった。

 

 ただ、世界政府が向かわせたのは、ボア・ハンコックの説得が失敗に終わった時、彼女を亡き者にする為の刺客──〝バスターコール〟級の戦力であった。

 

「あの海賊女帝をも率いるとはな」

 

 しかし、向かった先で海軍が目にしたのは、女ヶ島に掲げられた巨大なシンボル(海賊旗)。それは、悪しき者達を狩る平和の象徴であり、世界政府と海軍にとって天敵(御旗)

 

 狼の髑髏の背後に交差した斧と矢が記されたそれを掲げた島は、五番目の皇帝のナワバリである。

 

 その後どうなったのかは言うまでもないだろう。

 

「これで、七武海の椅子が一つ空いた」

 

 カリュウ・D・トルコがボア・ハンコックを仲間にしたことで、世界政府と海軍は強力な戦力を失ったと同時に、またしても痛手を受けてしまった。

 

 世界の均衡が少しずつ崩れつつある。

 

 だが、全てが悪い方向に向かっているわけではない。五番目の皇帝は抑止力であり調整者(バランサー)だ。

 

 世界は今、新しく生まれ変わろうとしている。

 

「アンタはおれの憧れだ……Dが呼び起こす嵐を、おれにもっと見せてくれ」

 

 その中心に立っているのは、Dの名を持つカリュウ・D・トルコだ。

 

 トラファルガー・ローは不敵な笑みを浮かべ、五番目の皇帝の隣の席を狙う。

 

「目下の目標は──()()()()()()()()()

()()()の本懐を遂げる為にのし上がってやる」

 

 この数週間後、世界政府宛に100個もの海賊の心臓が送りつけられ、新たな七武海が誕生する。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 〝海賊〟とは、他船や市民からの略奪行為によって金品を得る犯罪者、もしくはその集団を指す。

 

 ただ、大きく分けて二種類の海賊が存在している。

 

 一つは、一般市民からの略奪、暴力または殺戮行為を行う典型的な海賊──〝モーガニア〟。世間一般での海賊は、主にこちらの方を指しているだろう。一般市民にとって、海賊は悪の象徴だ。

 

 もう一つは、モーガニアの他、山賊やギャングなどを対象にのみ略奪行為を行う義賊的な海賊──〝ピースメイン〟。有名どころの海賊だと、海の皇帝(四皇)と称される〝白ひげ〟と〝赤髪のシャンクス〟、がピースメインと言えるだろう。己の旗(海賊旗)を掲げさせ、ナワバリとすることによって抑止力となり、無償で守る。世界政府非加盟国の国にとって、守護神のような存在だ。

 

「海賊相手に言っても仕方ないと理解はしているが……騙し討ちとは卑劣極まりない。

 なァ──〝ダマし討ちのクリーク〟とやらよ」

 

 そして、若くして五番目の皇帝とまで呼ばれるに至った〝狩人〟カリュウ・D・トルコもまた、ピースメイン側である。

 

 そもそも、トルコは15億ベリーを超える高額な懸賞金を懸けられてこそいるが自ら海賊を名乗ったことはない。それについては、五番目の皇帝と呼ばれるにまで至ってしまったのだから、もう今更である。トルコ本人もそれを自覚しているのか、はたまた諦めてしまったのか、自身の船〝シンシア号〟に掲げられた海賊旗を受け入れており、なんなら愛着すら湧き始めてきてしまっているようだ。

 

「ゴリラのような見るに堪えん男じゃな。

 わらわの美しい瞳が汚れてしまう。トルコ、野蛮なゴリラなど放っておいて、わらわにそなたの顔をよく見せてくれ。わらわ、そなたしかこの瞳に映したくない」

 

 今となっては……いや、今のところと言うべきか、()()()()()の一団とはいえ、総合賞金額(トータルバウンティー)()()()()()()()()()()()()のだから、本人の意思など関係なく世間からの認識が全てだろう。〝海賊女帝(自称・海賊皇后)〟ボア・ハンコックまで仲間にしてしまっているのだから、それで海賊ではないのなら、いったい何だと言うつもりなのだろうか…。

 

 カリュウ・D・トルコは紛れもなく海賊である。

 

「ハンコックは相変わらずトルコが大好きだなァ」

 

 〝百獣のカイドウ〟の娘──ヤマトまで仲間にいれば、疑いようのない事実だ。

 

「当然じゃ!

 わらわはトルコの妻じゃ!〝海賊皇后〟カリュウ・D・ハンコックじゃ!」

 

「おい、くっつきすぎだハンコック。

 ヤマトは俺の頭に乗っかかるな。

 あと勝手に俺の妻を名乗るなっての」

 

 つい最近も、ハンコックが自ら〝王下七武海〟を辞めると世界政府と海軍に向けて宣言し、それによって女ヶ島にバスターコール級の戦力を差し向けられたのだが、トルコ達と共に撃退し、トルコ一派に加わったことを誇り高く宣言。

 

 その一件で、ハンコックは王下七武海を宣言通りに辞めた上に、再び懸賞金を懸けられることになった。

 

〝海賊女帝〟 ボア・ハンコック 懸賞金9億2000万ベリー

 

 当然のことだが、ハンコックの仲間入りによって、世界政府と海軍から見たトルコ一派の危険度は一気に跳ね上がり、女ヶ島での戦いの翌日にトルコ達の懸賞金も更新されている。

 

「ぼくはトルコの〝おでん〟だからね!

 そばを離れないよ!」

 

〝氷狼〟 ヤマト 懸賞金5億8010万ベリー

 

 ハンコックとヤマトの力もまた、五番目の皇帝としてのトルコの地位を確固たるものとする所以だ。

 

「まだ偉大なる航路(グランドライン)入りしたばかりの海賊の相手なんてしたくない!しかも女の子が1人もいないじゃないか!?ぼくのファン達はどこに行ったんだ!?」

 

 無論、キャベンディッシュもである。

 

〝海賊貴公子〟 キャベンディッシュ 懸賞金4億8000万ベリー

 

 キャベンディッシュの名も世界に広まり、その人気はますます高まっている。手配書の印刷枚数に於いては、トルコや四皇達などの強者達を遥かに上回り、世界第一位だとか…。

 

 ちなみに、キャベンディッシュを追いかける為に海賊団を結成しブルジョア王国を飛び出した女子達は今、キャベンディッシュの虜になった九蛇海賊団に合併吸収され、女ヶ島〝アマゾン・リリー〟にて武者修行の真っ只中とのことだ。

 

 必然的に、トルコ一派の傘下になるわけだが、とてつもない強力な傘下が誕生しそうである。

 

「ったく、お前らは。

 まァ、数だけはそれなりに多いが個の力は大したことない。全員で相手する必要もないから俺がさっさと終わらせる。

━━〝斧颶回天(ふぐかいてん)〟!!!

 

 その戦力を率いるトルコは、海の皇帝と呼ぶに相応しい。

 

 されど、トルコは四皇とは違う。皇帝ならざる皇帝。

 

 投げた斧が回転しながら次々と海賊船を真横に真っ二つにする様は壮観の一言に尽き、この力こそトルコが五番目の皇帝と呼ばれる一番の所以でもある。

 

 遭遇してしまったクリーク海賊団とその艦隊は運が悪かったとしか言いようがない。まさに天災に見舞われてしまったのである。偉大なる航路(グランドライン)では何の予兆もなく嵐が発生するのは常識なのだ。

 

 ただ、斧がサイクロンのようなもので、雷や雨が無数の矢に代わったに過ぎない。

 

「お前達の航海もここで終わりだ。

━━神箭〝遣らず雨〟!!!

 

 天高く放たれた箭が無数に増え、トルコの覇王色の覇気が卑劣極まりない海賊達の脚を根が生えたようにその場に縫い付け、終焉を与える。

 

〝狩人〟またの名を〝神箭手〟 カリュウ・D・トルコ 懸賞金18億2160万ベリー

 

 〝D〟の名を持ち、〝マシマシの実〟の能力者であるトルコは新時代の旗手だ。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 月日が経つのは早く、トルコが〝鷹の目〟のもとから旅立ってから約3年…。

 

 今では五番目の皇帝とまで呼ばれるに至り、簡単に里帰りできなくなってしまったトルコは、久方ぶりに師と再会した。

 

「師匠、楽しそうですね」

 

「うむ。

 あの若き剣士──()()()()は強くなる。先が楽しみだ」

 

 場所は〝平和の象徴〟とされる東の海(イーストブルー)偉大なる航路(グランドライン)入りしたばかりの卑劣極まりない〝ダマし討ちのクリーク〟率いる海賊団をほぼ壊滅させたトルコだったが、数十隻の海賊船が瞬く間に次々と沈み行くなか、本船は足早にその場から逃げ去って行ってしまったのだが、トルコは部下達を置き去りに逃亡を図ったクリークを追い、東の海にまでやって来たのである。

 

 その先にて、トルコは師である鷹の目と再会した。

 

 どうやら鷹の目はたまたま近海にいたらしく、トルコがクリーク海賊団の艦隊を殲滅するのを離れた位置から眺めていたようで、トルコが逃がしてしまった本船を先に追いかけ、その先で世界最強の剣士を目指す若き三刀流の剣士に出会い、戦っていたようだ。

 

 トルコがその場に到着した時には、言うまでもなく勝敗は決していたが、鷹の目はいつになく上機嫌であった。

 

「師匠がそこまで言うんだから間違いないでしょう。

 それに、あの()()()()()()()()()()()……赤髪が話してた子みたいですしね」

 

 ちなみに、クリーク海賊団の残党はその麦わら帽子を被った海賊によって討伐されることとなる。

 

「ほォ。

 赤髪と会っていたのか。どうやら、お前もとある村の面白い少年の話を聞かされたようだな」

 

 トルコも鷹の目も、三刀流の剣士と、勝負を黙って見ていた麦わら帽子を被った船長に大きな可能性を感じていたようだ。

 

 〝狩人〟カリュウ・D・トルコの登場から、大海賊時代は大きく動き出し、転換期を迎え始めた。そこに、次々と押し寄せる新しい世代。麦わら帽子を被った髑髏を掲げる一味は台風の目となり、必ず嵐を呼び寄せる。

 

 なんせ、その若者(海賊)もまた、トルコと同じ──〝D〟の名を持つ者。

 

「ま、まさかトルコが鷹の目の弟子であったとは驚きじゃ…」

 

「ぼくは知ってたけどね!」

 

「ハハハハハ!

 ぼくも知っていたぞ!君の負けだボア・ハンコック!」

 

 トルコが五番目の皇帝と呼ばれるに至ったように、大きな偉業を為すであろう。もっとも、海賊の為すことだ。世間一般からしたら、偉業ではなく悪行でしかない。

 

 しかし、トルコと鷹の目が期待を寄せる者達が一般市民に危害を及ぼす海賊なはずもない。でなければ、すでに亡き者になっているはずだ。

 

「そういやハンコックにだけはまだ言ってなかったな」

 

「わらわだけ仲間ハズレ!?

 ハァン……これもわらわに対してのトルコの愛!羞恥プレイとやらじゃな!?」

 

 強く気高い世界一の美女──〝海賊女帝〟ボア・ハンコックを落としたのを偉業と呼ぶべきかは怪しいところであるが…。とにかく、麦わら帽子を被った海賊の手配書が近い将来、必ず世界に出回るはずだ。

 

「海賊女帝に百獣のカイドウの娘を率いるとは……さすがはおれの弟子だ。トルコ、これから久しぶりにどうだ?」

 

「ええ、いいですよ。

 久しぶりに全力で戦いたかったところだ」

 

 それを予感してなのか、師弟揃って楽しそうである。

 

 だが、この師弟が楽しむことによって、東の海の島が一つ荒れ果てた姿になる可能性があるどころか、下手したら地図から消えてしまう可能性があるかもしれないのだが、五番目の皇帝と世界最強の剣士が刃を交えるのだから致し方なしである。

 

 

 






ようやく悪魔の実の紹介でございます。

▪️超人(パラミシア)系〝マシマシの実〟
触れた物質を増量、増加、増強し、自身の身体能力を増強することも、筋力や体重を増量もできる〝増々〟人間。弓矢を武器とするトルコからしたら、能力で矢を増量出来る為、矢切れを起こす心配がない。

増量は食料も可能。野菜や果物。ただし、肉や魚などの命あるものから取れる食材は不可。
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