海の狩人   作:紅涙

20 / 30


祝20話です!!

記念ついでに励みになるご評価と感想頂けたら嬉しい限りです!!



狩人とエネルの青海冒険譚

 

 

 五番目の皇帝──〝狩人〟カリュウ・D・トルコ率いる狩人海賊団に、これまた強力な新入りが加わったのはつい最近のことである。

 

 その名はエネル。

 

 この偉大なる航路(グランドライン)の遥か上空、1万mの位置に存在する〝空島〟の元(ゴッド)……いや、元自称(ゴッド)である。

 

 そんな恥ずかしい過去を持つエネルは現在、狩人海賊団に新入りとして強制的に加わり、下っ端兼船大工(エンジニア)として毎日扱き使われ、空島でのこれまでの悪行の数々の償いとして、トルコ監視の下、青海での奉仕活動真っ只中だ。

 

 エネルにとって、青海での奉仕活動生活は苦労と驚きの連続である。神を自称し好き放題やっていたかつての己を呪いたくなるほどに毎日心も身体も疲弊し、後悔と反省の毎日だ。

 

「こ、これが本当の()()()()()だというのか!?」

 

 ただ、青海に連れて来られたことで大きな発見もあったようだ。それは世界の広さである。

 

 エネルは狩人海賊団に強制的に加入され、嫌と言うほどに痛感させられた。己が弱いことを…。神と名乗るのが烏滸がましいほどに己が弱かったのだと身に沁みて、身を以て味わわされた。

 

 本当の神の力とはどのようなものなのかを…。

 

「トルコぉぉぉーーーーー!!

━━〝拳骨唐竹割(ギャラクシーディバイド)〟!!!

 

 斧と拳から激しく迸る黒い稲妻のような強大な覇気。

 

 一瞬、エネルですら意識を奪いかけられてしまいそうな強大な覇気同士が衝突する。

 

「ガープぅぅぅーーーーー!!

━━〝斧退転(ふたいてん)〟!!!

 

 今、この場所は偉大なる航路(グランドライン)の海上。辺り一面海上が凍結し、それを足場に五番目の皇帝と海軍の英雄が激戦を繰り広げている。彼らの衝突は空を覆っていた雲すらも割り、太陽を覗かせてしまう程のもの。

 

 エネルは思った。これはまるで、天地が逆さになってしまったのではないかと…。神々は空ではなく、地上(青海)に住んでいたのだ。

 

 己が生きていた世界の小ささも知った。

 

 薄々、思ってはいたようだが、トルコは神だったのだと……エネルはそのように結論づけた。この力こそがまさに、神を名乗るに相応しいと…。

 

「トルコ以外の男になど微塵も興味もなければ、トルコ以外の男は害虫でしかない!!

━━〝芳香脚(パフューム・フェムル)双蛇(ウロボロス)〟!!!

 

 そして、ボア・ハンコック達は神の眷属であると…。

 

 長く美しい脚から黒い稲妻のような覇気を迸らせ、敵を蹴り上げると同時に宙へと先回りし、()に向けて舞い上げた美脚を叩き落とす。

 

「気合が入ってるねハンコック!

 ぼくも負けてはいられない!トルコにいいトコ見せないと!!

━━〝雷鳴八卦・氷狼牙(ひょうろうが)〟!!!

 

 ハンコックが蹴り落とした先では、ヤマトが金棒からハンコックと同様に覇気を迸らせ、さらに能力で狼の牙を模した氷の棘を金棒に付与した状態で待ち構えており、勢い良くそのまま一振り(フルスイング)

 

「ぐぅ!

 ボインのカワイイ姉ちゃん2人に挟まれんのは男のロマンだがこりゃないでしょうよ!!

━━〝氷繭(アイスコクーン)〟!!!

 

 あの海軍大将〝青キジ〟を相手に、2人がかりでこそあるが戦う姿は凛々しく、神に選ばれし眷属と呼ぶに相応しい。エネルの瞳には、ハンコックとヤマトがそのように見えていた。

 

 そして、眷属に選ばれたのは彼女達だけではない。

 

「見よ!分厚い雲の隙間から差し込む太陽がぼくをより美しく輝かせている!この神々しさを!!

━━〝超絶美剣〟 虹の鳥(レインボーバード)!!!

 

 まだ、ハンコックとヤマトに比べたら劣ってこそいるが、繰り出させる剣技は目を見張るあものがあり、今のエネルでは敗北を喫すること間違いなし。キャベンディッシュの剣技の前に沈み行く海兵達。海軍の英雄と海軍大将以外の海兵達よりもエネルが強いのは確かであるが、キャベンディッシュを前にしたらエネルも大差ない存在なのかもしれない。

 

 これまで努力とは無縁だったキャベンディッシュが血反吐を吐きながら努力した結果、彼の剣技はより美しく成長し、神の背後に立つ資格を得るに至った。先輩の勇姿が、それを物語っているのをエネルは感じ取り、己にはまだその資格がないことを痛感する。

 

 エネルは地上(青海)で繰り広げられる神々の戦いをただ見ているだけ。

 

 しかし、重要なのはそこから何を学び取るか…。己も同じ領域に立てると信じ、努力を怠らないこと。

 

「おれも何れは共に立つ資格を得ることができるだろうか……(トルコ)よ」

 

 ただ、悲しいかな……コイツら全員、神でもなんでもない。高額な懸賞金をかけられた犯罪者とそれを追う海兵でしかない。

 

「ぶわっはっはっはっは!

 また一段と強くなったのゥ、トルコ!だがわしも初心に返り、〝軍艦バッグ〟に精を出した甲斐があった!

━━〝拳骨衝突(ギャラクシーインパクト)〟!!!

 

 神どころか、傍迷惑な歩く破壊兵器だ。

 

 片や、軍艦破壊と自然()破壊の常習犯にして悪魔。

 

「どうりで少し若返ったように見えるわけだ!

 んなことしてねェで、いい加減引退して後進の世話に専念してろよクソジジイ!

━━〝斧討不屈(ふとうふくつ)〟!!!

 

 片や、この世界の神を名乗る者達を狩る悪魔(狩人)

 

 神には程遠いどころか、真逆の存在だろう。

 

 言っておくが、星の数程の海賊が存在し、世界広しと言えども、この者達のような存在は数少ない。エネルはたまたまトルコに拾われてしまったことで勘違いしつつあるが、トルコは四皇と同等の存在として恐れられる五番目の皇帝で、ガープはかつて海賊王を何度も追い詰めた海軍の英雄。青キジは海軍最高戦力の3人の内の1人。

 

 決して、こんなのがごまんといるわけではない。

 

 今現時点で、エネルより強い存在は確かにそれなりに存在しているが、トルコ達はまた別格なのである。

 

 それを考えると、エネルがトルコを神だと勘違いしてしまうのも無理がないのかもしれない。

 

「くッ……おれは本当の神になれるのか!?」

 

 エネルは現実を知り、受難は続く。

 

「い、いや!必ずなるのだ!おれは神になる!!」

 

 エネルは知らない。今、エネルの目の前で神々の如き激闘を繰り広げるトルコとガープは三日三晩も戦いに明け暮れるのだが、海軍の英雄ガープも〝老い〟には勝てず、全盛期に比べたら劣ってしまっていることを…。

 

 それでも、トルコという骨のある若者が出てきたことでガープは触発され、初心に返り鍛錬に精を出した結果、全盛期には劣るものの、幾分かは体力と力を取り戻し、肌艶も少し若返ったようだが…。さすがは海賊王ロジャー世代の怪物といったところである。

 

「ぶわっはっは!

 楽しいのォ、トルコ!!

━━〝拳骨大衝突(ギャラクシーカタストロフィ)〟!!!

 

 老いて尚も災害級の力は健在だ。海賊王ロジャーもそうだったようだが、これで無能力者というのだから、本当に人間なのか疑ってしまうのも無理はないだろう。

 

 エネルが神々の戦いと称するも無理はない。

 

 しかしながら、ガープの全盛期は海賊王といったいどれ程の激闘を繰り広げていたのか…。もし、階級別に分けるとしたら、トルコと老いたガープの戦いは下級の神々の戦いに過ぎないのかもしれない。

 

「楽しくないわ拳骨じじい!!

━━〝一切大伐採〟!!!

 

 嵐すらも呼び寄せるかのようかこの戦いが下級とは…。

 

 海賊史上最高額の50億ベリーを超える懸賞金をかけられた海賊王の肩書きは伊達でない。

 

 エネルは思う。

 

 空島は天国だったのだと…。

 

 対して、青海は地獄であると…。

 

「我は全知全能の神になるべきエネル。

 絶対に神になって……

(なれるのか?あの男達を超えられるのか?)」

 

 トルコとガープ、ハンコック達の戦いが激しさを増し、時間を追うごとに、エネルは自信を失っていくのであった。

 

 ちなみにだが、どういった経緯でトルコとガープが激闘を繰り広げ、この場に青キジが戻ってきたのかというと、青キジが海軍本部に戻ってる道中にて、ガープと遭遇してしまい、トルコの話をしたところ軍艦に引きずり込まれ、今に至るようだ。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 今、一隻の海賊船が炎に包まれている。

 

 もうこれ以上共に航海することのできない母船(仲間)を〝()()()()()()〟の面々が見送っていた。

 

「いったいどういう状況だ?」

 

 ただ、大切な仲間を喪ってしまった悲しい状況を、三日三晩も海軍の英雄と海軍大将との戦いに明け暮れていたトルコ達狩人海賊団の面々は上手く把握できずにいた。

 

 この3日間、外界と切り離されたかのような生活という激闘を繰り広げていた間に、麦わらの一味に何が起きたのか…。

 

「!

 なるほど……()()()()()()()()()()()()()()のか」

 

 トルコは今のこの状況を見聞色の覇気の〝過去視〟ですぐに把握する。それと同時に、トルコは静かに怒りを露にしていた。

 

「トルコ、いったい何が起きたのじゃ?」

 

 その様子にいち早く気付いたのはハンコックである。相変わらず、トルコをよく見ているものだ。

 

 それはともかく、麦わらの一味にいったい何が起きたのか…。

 

 簡潔に述べると、麦わらの一味が上陸した〝水の都〟ウォーターセブンに世界政府の諜報機関のメンバーが潜伏しており、そのメンバーにニコ・ロビンが見つかってしまい、捕まってしまったのである。そんな緊急事態に畳み掛けるように、とある理由から一味内で仲間割れが発生し、麦わらの一味は一時、一味崩壊の危機を迎えた。

 

 その後どうなったのか……結果を見るに、麦わらの一味は世界政府の諜報機関(〝CP9〟)との戦いに勝利し、ニコ・ロビンの奪還にも成功し、バスターコールからも逃げ延びることに成功したのである。

 

 だが、その代償はあまりにも大きく、その代償こそが、今トルコ達の眼前で燃える麦わらの一味の母船〝ゴーイングメリー号〟である。

 

「ちょっと海軍本部か聖地マリージョアに行くか」

 

 青キジを通してトルコは牽制したはずだったが、やはり世界政府とはどこまでも相容れない存在なのだと理解したトルコは、直接乗り込もうと…。

 

「主よ!

 今しがた荒れ狂う神(ガープ)と戦い終えたばかりだ!麦わら達も疲弊しているのだし、ここは一旦心身共に休息が必要だと思うぞ!!」

 

 エネルは必死に止める。

 

 トルコが乗り込もうとする場所は敵の本拠地だ。神々の神殿も同然。現実を知ったエネルには、そこに乗り込む勇気など今はまだない。切実に、エネルは命が惜しいのである。

 

「確かに……そうだな。

 ここは一旦、俺達もウォーターセブンに行くとするか」

 

「うむ!そうしよう!」

 

 エネルは空島での悪行の数々が嘘だったかのように麦わらの一味に対して甲斐甲斐しく接し、方舟〝マクシム〟へと迎え入れ、ウォーターセブンへと進路を定めた。

 

 しかし、エネルは知らない。

 

 3日後、再びガープと遭遇することを…。

 

 そして知ることになる。〝麦わらのルフィ〟がガープの孫であることを…。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 世間を騒がせたエニエス・ロビー陥落事件の数日後……場所は変わり、ウォーターセブンからもそう遠くない島──〝バナロ島〟でも大事件が起きていた。

 

()()()()()()()()()()()()()()なったから気になって指し示す方角にやって来たが……この島で何が起きた?」

 

 この島の特徴であるはずのバナナ岩も崩壊し、壊滅してしまった島に降り立った五番目の皇帝──〝狩人〟カリュウ・D・トルコは、この島に何が起きたのか……そして、かつて航海を共にした友、ポートガス・D・エースの身に何が起きたのかを見聞色の覇気〝過去視〟を用い、事態を把握する。

 

 壊滅状況からして、この島でエースと何者かが戦ったのは明白だ。ただ、その相手が海軍なのか、それとも海賊なのか…。そして、エースはその後どうなったのか…。

 

 ビブルカードが燃え尽きていないことから、生存確認はできるが、今にも燃え尽きてしまいそうなまでに小さくなった状態から、未だに危機的状況にあるのは明らかだ。

 

 それはつまり、()()()()()()()()()を意味してもおり、事は一刻を争う状況でもある。

 

「!

 モックタウンで会ったあのブタみたいなヤツとエースは戦ったのか!?

(しかも、エースの身柄を手土産に()()()()()()()()つもりとは…)」

 

 トルコの頬を冷や汗が伝う。

 

 今、トルコの脳裏に過ったのは、混沌の時代の到来だ。

 

「余計なことしてくれやがってブタ野郎!

()()()()()()つもりか!?」

 

 この世界の平和を心から願う者として、トルコは事の大きさを理解する。

 

 それと同時に、これからどう行動するべきかを思案する。幸い、エネルを仲間に加えたことで、トルコはこの世界で随一……下手をしたら、世界で一番の移動手段(方舟〝マクシム〟)を有しており、エースを救出できる可能性も高い。

 

 これもまた、トルコの懸賞金額がついに()()()()()()()()()、より一層危険視される新たな所以でもある。

 

「方角からして聖地〝マリージョア〟か…。

 助けに行くか……いや、()()()()()()()()()()()()から1人で行くべきか…」

〝狩人〟またの名を〝神箭手〟 カリュウ・D・トルコ 懸賞金23億2160万ベリー

 

 トルコは己にかけられた懸賞金額の意味(高さ)を本当に理解しているのだろうか…。事の重大さを把握しながらも、己自身に関して無頓着なのだ。

 

 白ひげ海賊団2番隊隊長〝火拳のエース〟を助けるべく、敵地のど真ん中に乗り込むなど…。この男は、やると言ったら本当にやってしまうのだから恐ろしい。今でこそ、少数とはいえハンコック達を率いているが、元々トルコは1人で行動していた。良くも悪くも、これもその弊害なのかもしれない。

 

()()()()()()()()()()()だけは避けたいからな。失われるものがあまりにも大きすぎる」

 

 ただ、トルコが願うのは平和な世界だ。

 

 その為なら、どんな苦労も厭わない。

 

 






本誌でも少しずつガープやロジャーの全盛期時代が描かれてるけど、やっぱヤバい。

▪️斧退転(ふたいてん)
不退転から。
斧を振り被り一閃。

▪️斧討不屈(ふとうふくつ)
不撓不屈から。
腕を交差させ構え、二斧による斜め十字斬り。

▪️拳骨大衝突(ギャラクシーカタストロフィ)
拳骨衝突(ギャラクシーインパクト)の連打。
 
▪️一切大伐採
一切伐採の連続斬り。

▪️芳香脚(パフューム・フェムル)双蛇(ウロボロス)
一撃目で蹴り上げ、蹴り上げた先に回り込んで蹴り落とす芳香脚(パフューム・フェムル)の2連撃。

▪️雷鳴八卦・〝氷狼牙〟
ヤマトの金棒〝建〟に、狼の牙を模した氷の棘を付与しての雷鳴八卦。

▪️〝氷繭(アイスコクーン)
氷の繭で自身を覆い守る防御技。

▪️超絶美剣虹の鳥(レインボーバード)
キャベンディッシュの美しい7連撃。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。