神々が住む地──聖地〝マリージョア〟。
そのマリージョアに聳え立つ神の居城〝パンゲア城〟の一室にて、この世界の最高権力者たる五老星が
「ビッグ・マムを止めるだけではなく、金獅子まで葬ってしまうとは……己の名前の意味も知らん抜け殻だが、やはり
今や五老星が四皇以上に危険視してしまうまでに至った五番目の皇帝──〝狩人〟カリュウ・D・トルコ。
まだ年若き皇帝。
しかし、その若さこそが何よりも恐れられる要因であり、カリュウ・D・トルコがこれから先どこまでの力を手にするのか、五老星ですら予測不可能。
「〝
元々、失敗作だ。倒されてしまってもこちらに痛手はない。共倒れとなれば最良の結果だ」
杖を持ち、左目付近に傷のある巻髪の五老星──ジェイガルシア・サターン聖が狩人を討つべく口を開くと、他の五老星達も誰一人としてサターン聖の作戦に異議を唱えることなく、それに同意して静かに頷いた。
五老星ですら持て余す何かが……動き出す。
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空が怒っている。
けたたましい雷鳴と共に、全てを震わせる叫び声。
「う…そ…ど、どうして
どす黒い雲を乗り物のようにして現れた怪物に、誰よりも驚いたのは
「ちょっと待て!
これが
ビッグ・マム、金獅子のシキ。
この短期間で2人の大海賊と死闘を繰り広げたトルコも、突如として雲に乗って現れた
無理もない。ヤマトがクソオヤジと呼ぶのは、彼女の実父である百獣のカイドウをおいて他にはいないのだから…。
「あれ?
でもおかしいよ!クソオヤジは青い龍なんだ!ということは、この人獣型の能力者は別人ってこと!?」
ただ、少しだけ冷静さを取り戻したヤマトが、漆黒の龍の人獣型と百獣のカイドウの違いに気付き、狩人海賊団の目の前に現れたのは百獣のカイドウとは別の能力者なのではないかと疑問を抱き始めていた。
とはいえ、この漆黒の人獣型が脅威であることに違いはない。それはあまりにも禍々しく、ヤマトが見紛うのも無理もないほどだ。
「!?
━━〝大斬伐・四つ辻〟!!! 」
何より、挨拶代わりに全てを灰にする程の炎を吐き出すような能力者は敵以外の何物でもないだろう。
「い、今のは〝
ならやっぱり、この能力者はクソオヤジなの!?」
「!
こいつ…」
悲劇を察知することに誰よりも長けたトルコが見聞色の覇気で危機を未来視し、二本の斧を振るい十字の斬撃を放ち相殺する。
それと同時に、トルコはあることに気付いた。
「ヤマト。こいつは
世界政府と
この漆黒の人獣型がカイドウ本人ではないこと…。
そして、意思なき破壊の権化であることに…。
「バカと天才は紙一重とはよく言ったもんだな。
ろくでもねェ物を生み出しやがって…」
それは、トルコが生まれるよりも前のことだ。まだ、カイドウが四皇になる以前にまで遡る。海軍に捕まったカイドウが世界政府の研究施設で、〝血統因子〟なるものを抽出されたのが事の始まり……いや、そもそもの始まりはその血統因子というものを海軍の天才科学者──Dr.ベガパンクが発見したのが始まりだ。
「つ、つまり、この能力者は、ベガパンクがクソオヤジから抽出したケットウインシっていうのを使って作り出したクローンなの!?」
血統因子は、Dr.ベガパンクを天才たらしめる所以であり、それと同時に偉業の一つともされている。
〝生命の設計図〟ともされる代物らしく、
「そうらしい。
けど、このカイドウの複製品には大きな
だが、どんな天才でも失敗をする。失敗の果てに偉業があるのだ。今、トルコ達の目の前にいる雲に乗った漆黒の人獣型には人としての意思が一切ない。あるのは殺戮と破壊の限りを尽くす怪物の本能のみ。
「カイドウの血統因子から作り出した人造の悪魔の実は、
世界一の頭脳を持つ天才とはいえ、非力な科学者でしかないベガパンクには、世界を滅ぼしかねない物理的な力を制御などできるはずもなく、世界政府ですら手に余る怪物が誕生してしまったのである。
とはいえ、これは悪魔の実の能力に稀に起きるとある現象と似ている。能力者の心身が能力に追いついた時、悪魔の実にはごく稀に能力の進化──〝覚醒〟というものが起きるとされている。
ただその覚醒だが、
今トルコ達の目の前にいるそれ……カイドウでありカイドウではないそれは、まさにその現象と似ているだろう。
これはまさに、負の意思の塊だ。
「ベガパンクが新たに開発したという人間兵器──〝
その失敗作であり、真逆の存在…」
目の前の敵を殺し、葬り去ることを目的とし、その為にのみ動く破壊の権化──〝
「これを差し向けたってことは、政府は俺をマリンフォードに行かせないようにしてやがるな」
トルコの次なる強敵は失敗作といえどもカイドウの
恐らく、これを戦力としてマリンフォードに解き放たなかったのは、コレが解き放ってしまったら、敵味方関係なく破壊の限りを尽くすからだろう。
オリジナルのカイドウですら、四皇で一番の武闘派海賊。そのカイドウの複製は、殺戮衝動が前面に押し出されてしまっているのだ。この殺戮兵器が戦場に降り立ってしまったら、無差別に暴れ回るのは火を見るより明らか。政府も海軍の戦力が激減するのは望んではいないだろう。ただですら、白ひげとの全面戦争の真っ只中なのだ。
裏を返せば、対四皇勢力にお誂え向きの兵器である為、他の四皇やトルコに差し向けるにはこれ以上のものはない。
「〜〜〜ッ!
〝覇王色の覇気〟か…。失敗作といえど、カイドウのクローン。持ってて当然か…」
刮目せよ、政府が持て余す禁断の破壊兵器の力を…。
独特の叫び声を上げたと思いきや、周囲に無数の巨大龍巻を引き起こし、さらにはその龍巻の回転に載せて全方位に雷を纏った風の刃の弾幕を飛ばし始めた。
「トルコ、気をつけてッ!
クソオヤジは災害そのものだよ!!」
「おいおい!
これじゃあ、まるで邪龍じゃねェかッ!!
━━〝斧颶回天〟!!! 」
強大な覇気を纏わせた斧をトルコが投げると、龍巻を斬り裂きながらぐるりと回り、トルコの手に戻ってくる。
今、トルコは理解した。
今目の前にいる敵は金獅子よりも強いことを…。
「厄介極まりない刺客を送ってきやがったもんだ」
それでも、勝てない相手ではないと思っている。その証拠に、厄介な敵と認めながらもトルコは戦う気満々でいて、勝つ気満々のようだ。それどころか、木っ端微塵に破壊するつもりですらいる。
殺戮衝動のみで動くこの兵器をこのまま放っておくわけにはいかない。ここでトルコが破壊しなければ、甚大な被害がもたらされるのが容易に想像できてしまう。
「ヤマトを連れ出した時、何れはカイドウと戦うことになると覚悟していた。
━━〝百万箭景・矢道〟!!! 」
もっとも、本物のカイドウはコレよりも上だ。意思なく殺戮と破壊を繰り返すコレとは違う。
つまり、これは本物のカイドウと戦う前の練習台のようなもの。模擬戦だと思えばいい。
百万本の箭を周囲一帯に展開したトルコは、その一部を宙に浮かぶ
「練習相手にはもってこいだ!
━━〝
不敵な笑みを浮かべながら、トルコは交差させた腕を振り抜く。すると、硬い龍の鱗が斬り裂かれ血飛沫が舞った。
邪龍に深く刻まれる十字の傷。
敵も本能で感じ取ったことだろう。
断末魔の如く叫び声を上げ、カリュウ・D・トルコを破壊する為に兵器が動き出す。
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敬愛する船長と憎き父親の死闘。
正しくは、ヤマトが敬愛するトルコが戦っているのは憎き父親本人でなく、複製品ではあるのだが…。
「やっぱり凄いなァ──トルコ」
だがそれでも、人知を超えた戦いであることは明らか。
ヤマトは恍惚とした表情でその戦いを眺めている。
ハンコックに至っては言わずもがな…。今にも溶けてしまいそうな表情で、ウタも最初こそ不安に満ちた表情を浮かべていたが今では似たようなものである。
斧と金棒が衝突する度に分厚い雲を割り、そこから晴れ間が覗き込み、少ししてはまた雲に覆われ、またしても雲を割り、その繰り返しだ。
いつもなら己の活躍の場を欲してやまないキャベンディッシュですら、この死闘を真剣に見守っている。きっと、この戦いに己がさらに強くなる為の何かがあることを彼も本能的に感じ取っているのだろう。
キャベンディッシュだけではなくエネルも同様だ。いや、寧ろこれまで以上に崇め讃えるかのように……エネルの話はまたの機会にしておくべきだろうか…。ただ、百獣のカイドウの血統因子から生み出された複製品はまさしく邪龍。その邪龍を祓うかのように戦うトルコを崇め讃えてしまうのは無理がないのかもしれない。
「さすがさ
とんでもねェタフさだ。けど、これ以上戦いを長引かせるわけにもいかないからな。
悪いが、これでお開きとさせてもらう。
━━〝斧活化〟!!! 」
トルコの斧から迸る強大な覇気。マシマシの実の相乗効果により、覇気もさらに増大している。
あまりにも強大なそれは海面を揺らし、天をも震わせ、邪龍すらも硬直させてしまうほどのもの。
「練習相手なんて言って悪かったな。
お前は強かった。
━━〝難攻斧落〟!!! 」
そして、その硬直はこの戦いに於いては命取り。
一瞬の隙が全てを終わらせる。
邪龍の首が斧のたった一振りで落とされた。
海へと落ちゆく強敵を、トルコは静かに眺める。
「トルコォォォ!
やっぱり君は最高だよ!!」
すると、戦いを終えてマクシムに戻ったトルコにいの一番にヤマトが飛び込んできた。
さすがに、今回はハンコックも空気を読んでいるのか、それともヤマトだから許しているのか、次は自分が飛び込む番だと、ウタを牽制しながら後ろで待機している。
「かなり時間を食ってしまったけどな」
飛び込んできたヤマトを優しく受け止めたトルコは、安堵の息を漏らしながらも、悔しさを滲ませていた。マリンフォードでの戦いが気になっているのだろう。
しかし、時間を食ってしまったのは当然だ。カイドウ本人ではなかったが、覚醒した能力の他に、破壊、殺戮衝動が強く前面に押し出されてしまっていたのだ。現役を退いて20年程の金獅子よりも強かった。
寧ろ、世界政府最高権力──〝五老星〟ですら持て余す兵器を単独で倒してしまうとは……さすがは五番目の皇帝である。
この短期間で、トルコはビッグ・マム、金獅子、百獣のカイドウの複製品にして禁断の破壊兵器〝サマエル〟と死闘を繰り広げた。此度の戦争が終結後、トルコの懸賞金額はいったいどれ程引き上げられてしまうのだろうか…。
何はともあれ、トルコ達に差し向けられた脅威は去った。
このまま休息に入ったとしても、誰も文句は言わないだろう。ウタも本心では、まずトルコに休んで欲しいはずだ。
「このままマリンフォードに向かう」
ただ、時代がそれを許さない。
まるで、トルコが戦地のど真ん中へ赴くことを望んでいるかのようですらある。
Dの名を持つ者の宿命なのか…。
「トルコ、わらわの膝へ。
少しでも疲れを癒やすのじゃ」
「私が膝枕してあげたいとこだけど、傷の手当てとマッサージしてあげる。トルコは少しでも休んで!」
いよいよ、狩人海賊団は海軍本部へと向かう。
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これまで数多の海賊を葬り去り、海賊を葬り去る為に数多の犠牲を生み出してきた燃え盛る拳。
それは徹底的な正義。だが時に、それは過剰なまでの正義となり、多くの憎しみを生み出してしまった。
それはもはや、正義の名を語った殺戮。
「よォ。
どっちが海賊がわかんねェ、相変わらずの悪人面だな──〝
「お、おんどりゃあ!
カリュウ・D・トルコォォォ!!」
そして今……ついに、狩人は宿敵と再会を果たす。
家族と故郷を奪った憎き仇。
それが、海軍本部最高戦力の1人である海軍本部大将〝赤犬〟である。その赤犬の拳を斧で受け止めたトルコは、そのまま押し返すどころか、吹き飛ばしてしまった。
マリンフォード頂上戦争に、五番目の皇帝参戦。
「ト、トルコ!!
ど、どうしてお前がここに!?」
ただ、当事者達以外にとって、五番目の皇帝の登場は驚きしかない。たった今、赤犬の燃え盛るマグマの拳に貫かれる寸前に助けられた海賊──〝火拳のエース〟も事態を飲み込めずにいた。一つだけ確かなのは、エースはトルコに命を救われたということ。
「せっかく助けられたってのに、自分から死にに行くなんてバカなのかお前は。いや、久しぶりで忘れてたが、バカだったなお前は」
「な、なんッ〜〜〜ぐふッ!?」
そして救っておきながら、久しぶりの再会を果たしたエースに暴言を吐き、さらには拳で殴り、トルコはエースの意識を刈り取ってしまった。まるで、聞き分けのない子供に鉄拳制裁を加えているかのようだ。
佳境を迎えた戦場に降り立ち、トルコはここからどう動き出すつもりでいるのか…。
「ト、トルコ……ど、どうしてエースを…」
「おう
かなり無茶した上に、相当暴れ回ったようだが、とりあえずは無事で何より。ただ、お前とエースはさっさとこの戦場を出ろ。こっからは俺が引き受ける」
トルコが斧を構えると同時に、彼の右横に〝海賊女帝〟ボア・ハンコックが降り立ち、左横には〝氷狼〟ヤマトが並ぶ。その後ろには、〝海賊貴公子〟キャベンディッシュに〝
「火拳のエースは解放され、海軍は失敗した!
受け入れ難いだろうが、これ以上の追撃はよせ!外の
トルコの強大な覇気に正義の中心地が揺れる。
オリジナルのパシフィスタ。
▪️
カイドウの人獣型の漆黒バージョン。
サマエルは謎の大き堕天使とのことらしい。セラフィムとは真逆。
カイドウの血統因子を使い作られた複製人間であり、
ただ、カイドウの血統因子を使って作った最初のウオウオの実の人造悪魔の実は、意志を持つとされる動物系のモデルの意志が前面に強く出た欠陥品であり、ベガパンクの黒歴史。
実が邪悪な色をしており、漆黒の人獣型なのもそれが原因。
つまり常時殺戮上戸な
ルナーリア族の特性も付与しようと試みたが不可能だった。←それやっちゃうとただですらヤバいカイドウの複製品が本家超えてきそうで、無敵すぎなので作者都合的な……。
▪️難攻斧落
カイドウの複製品を討った覇王色纏いの一振り。
難攻不落から。本来の意味とは真逆で、強敵を斧で落とすという意味合い的な。
▪️斧活化
賦活化から。活力や機能を高めること。
マシマシの実の能力で覇気を増大、増強させた。