過去編もようやく終盤ですか…。
四皇"赤髪のシャンクス"の介入によって終結した頂上決戦。
多くの者達の血が流れ、世界に与えた影響は大きい。
四皇──〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートの戦死。
こんな巨大なニュースが世界を駆け巡るのに、時間など必要あるはずがない。
それは無理もないことだ。数十年この海の頂点に君臨し続けた世界最強の海賊が死んだのだから…。
世界は今混沌と化している。
戦争が終結してすぐ、すでに"白ひげ"エドワード・ニューゲートがナワバリとしていた島の幾つかが、一般市民相手の殺し、略奪を厭わない海賊達によって荒らされ始めてしまったようだ。白ひげという抑止力を喪ってしまった影響は果てしなく大きい。
白ひげに恨みを持つ者達。白ひげに恐れを抱いていた者達がこぞって暴れ始めてしまっていた。
ただ、不安を抱かぬ者達もいる。世界政府加盟国の住民達だ。その者達の海軍に対する信用と信頼は、此度のマリンフォード頂上戦争で鰻登りなのだ。
"火拳"ポートガス・D・エースの処刑には失敗したが、白ひげは死んだ。そこだけ見ると、海軍が勝利したように思えなくもないが、歴史がそうであるように、情報は巡るほどに削ぎ落とされる。海軍の勝利と、白ひげの死、頂上決戦の終結が海風に躍る。
だが、人々は気付かない───戦争の終結がもたらすものは必ずしも平和ではないのだと…。
此度の火拳のエースの公開処刑もといマリンフォード頂上戦争がもたらした余波はとてつもなく大きい。赤髪のシャンクスと百獣のカイドウの小競り合いもその一つ。その他にも、五番目の皇帝とビッグ・マムの衝突。金獅子のシキの復活と死亡。そして、火拳のエースを救出する為に自ら大監獄インペルダウンに侵入した超問題児ルーキー海賊〝麦わらのルフィ〟ことモンキー・D・ルフィが、最下層〝レベル6〟から元七武海のジンベエとクロコダイル他、レベル5などから革命軍のイワンコフ、イナズマなど、大量の囚人達を脱獄させてしまうという前代未聞の集団脱獄事件を頂上決戦と同時に引き起こしてしまったのである。
とはいえ、これはまだ可愛い方だ。
何故なら、麦わらのルフィがインペルダウンを脱獄した後に、畳み掛けるかのように更なる大事件がインペルダウンでは起きていたのである。
その主犯は〝黒ひげ〟マーシャル・D・ティーチ。七武海の権限を利用してインペルダウンに入り込んだ黒ひげは、世間からその存在を揉み消され、1人たりとも絶対に世に出してはならない
しかも、レベル6からの脱獄者はその者達だけではない。マリンフォードに来襲した〝鬼の跡目〟ダグラス・バレットもその内の1人である。
しかし、気になる点もあった。世界を恐怖のドン底に陥れるであろうレベル6集団脱獄事件がまったく公になっていないのである。最下層レベル6の囚人ともなれば、たった1人でもどこかの国に紛れ込むだけで人々への被害は甚大だというのに…。
それが意味するものはつまり、この一件は何者かの手によって意図的に隠されているということだ。
恐らく、世界政府による指示だろう。政府の信用に関わるという、下らない面子による隠蔽。実に下らない真似をしてくれるものだ。賢い者達はきっと気付いている。世界政府と海軍への信頼も、もはや皆無に等しいだろう。
海軍は、この頂上決戦で勝利などしていない。そして、見方によってはこの混沌を招いてしまったのは海軍でもある。
弱き者を守るはずの海軍がこの有り様とは、まさに世も末。果たして、この世界に救いはあるのだろうか…。
白ひげの脅威という絶大な抑止力を喪った海は大きく荒れ、誰にも止められない新時代が到来してしまった。
唯一の救いは、この事態を想定してすでに動き出していた者達が少なからず存在したということだろう。
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場所は
ここは、世界最強の海賊〝白ひげ〟エドワード・ニューゲートの故郷である。
頂上戦争後、同じく四皇の赤髪のシャンクスの計らいによって、白ひげは故郷であるこの地に手厚く埋葬されていた。
「うおォォォォォ!!
━━〝火拳〟!!! 」
ただ現在、白ひげの墓標の前で戦う不届き者達がいる。いや、白ひげは世界最強の海賊。生涯を戦いの中で終えた人物。死しても尚、争いと切り離すことはできないのかもしれない。
今、この地は熱く燃えている。
怒りの籠った一撃。
白ひげの死と引き換えに生き残った海賊──〝火拳のエース〟の渾身の一撃が1人の人物へと迫る。
「エース、弱くなったな。あれからもう数年経つが、前に戦った時のほうが強かったぞ。
━━〝
しかし、火拳のエースの代名詞たるその渾身の一撃も、五番目の皇帝にとっては火遊び程度のもの。まるで蝿を払うかのように軽く振るわれた斧の一振りによって簡単に斬り払われてしまう。
五番目の皇帝──〝狩人〟カリュウ・D・トルコ。
白ひげの故郷であるスフィンクスの新たな番人だ。
「うるせェ!
テメエにおれのなにがわかるってんだ!?」
頂上戦争後、白ひげがナワバリにしていた島の幾つかには、新たにトルコの旗が掲げられることとなった。世界が大きく荒れゆくなか、まず最初に狙われる場所が白ひげがナワバリにしていた島々であろうことは容易に想像できてしまう。
弱き人々が血を流すことを良しとしないトルコは、白ひげに代わって己の旗を貸し与えたのだ。
案の定、トルコが行動するなかで白ひげのナワバリを荒らす海賊達と鉢合わせする場面も何度もあった。無論、トルコは海賊達を完膚なきまでに叩きのめし、己が新たなナワバリの主であることを強く宣言した。
普段ならば、トルコは己がナワバリの主であることを強く否定するのだが、今回ばかりはそうも言っていられない。己の
トルコはハンコック達狩人海賊団の仲間達を率い、荒れゆく新時代の鎮圧に務めていた。
「赤髪の頼みだからと引き受けはしたが、見てられないな」
そんななか、トルコは赤髪のシャンクスから協力を求められた。白ひげの死を受け入れることができず、我を忘れて怒り狂うエースを助けてやってほしいと…。
「仕方ない。
荒療治といくか!」
ただ本来ならば、これはトルコではなく白ひげ海賊団の仲間達がやるべきことだ。同じく白ひげを〝オヤジ〟と慕う家族の役目。恐らく、そうしないのは今のエースにはそれが逆効果でしかなかいからなのだろう。
そして、その役目を赤髪ではなくトルコが託されたのは、まさに適材適所というもの。
「ぐッ〜〜〜ッ!
こ、このッ〜〜〜がふッ……ぐあッ!!」
大切なものを己のせいで喪い、行場のない怒りに支配され荒れ狂うエースに、トルコは容赦なく攻撃を繰り出す。斧の持ち方を変え、柄に武装硬化を施したトルコは、エースを柄で殴り、突き、地面へと叩きつけた。
トルコにとっての荒療治。それは、エースを完膚なきまでに叩き潰し、その心身に己の無力さを刻むこと。
「弱い!お前はとにかく弱い!
仮に、俺の仲間になったとしても今のお前はウチで一番弱い!見習い扱いだ!その程度で白ひげの仇を討つ?無理に決まってんだろ。10回戦って10回負けるだけだ!」
これは、白ひげ海賊団達の仲間達では決して無理だ。血こそ繋がってはいないが、
その点、トルコとエースにはそのような繋がりはなく、ライバル視しているのもエースの一方通行でしかない。
トルコはなんの迷いもなく、一切の甘さもなく、憐れみと同情を捨てて叩き潰すことができる。
「だ……黙……り……やがッ!?」
気力と意地を振り絞りどうにか立ち上がるエース。
そのエースに、トルコは遠慮などしない。
「己の弱さを認めろ。
それができてようやく、スタート地点だ。
━━〝一心斧乱〟!!! 」
目にも止まらぬ速さで軽やかに柄を振り、トルコは武装硬化による打撃をエースに叩き込む。
これはトルコなりの、エースに対する優しさと思いなのだろう。悲しむよりも立ち上がり前に進め……己の成すべきことを成せと、トルコはそう伝えようとしているのだ。
もしかしたら、トルコはエースにかつての己の姿を見たのではないだろうか…。かつて、家族を喪い、その悲しさ故に自暴自棄となり暴れ回っていた己の姿と、今のエースの姿が重なって見えたのかもしれない。
だからこそ、己が鷹の目に助けられ、導かれたように、言葉ではなく絶大な力で救おうとしてるのではないだろうか…。
「トルコぉ、やりすぎじゃない?
エース、ボロボロだよ」
とはいえ、他の者達から見たら、トルコの荒療治は暴力で解決しているようにしか見えないだろう。
ついに気を失ってしまったエースに近寄ったヤマトも、トルコに少しばかりの苦言を呈している。仲間達のなかで唯一、エースとも繋がりがあるヤマトがエースを気遣うのも仕方がない。
「ここで終わるようなら、それだけの存在でしかなかったってことだ」
「ヤマト、トルコが何の考えもなしにこのようなことをするはずがなかろう。トルコにはトルコの考えとやり方があるのじゃ。わらわ達はトルコを信じ、ただ黙って見守るのじゃ」
それでも、トルコを誰よりも慕うハンコックは何の疑問も抱くことはなく、ヤマトへ言葉をかける。
これがトルコのやり方で、トルコにしかできないことなのだ。
「ヤマト。
エースの手当てはお前に任せる」
「うん、わかった」
果たして、火拳のエースは己の弱さを認め、前に進むことができるのか…。
それもこれも全ては本人とトルコ次第。
✮✮✮✮✮
世は大海賊時代。
しかし、世間は今、大海賊時代開幕時よりも殺伐としている。言うなれば、今は大海賊時代の戦国期といったところではないだろうか…。
これもまた、白ひげが死の間際に
そしてもう一つ…。
【新たなる皇帝誕生!!】
マリンフォード頂上戦争終結から2ヶ月と少し…。
これまで、四皇に匹敵する力を持つ五番目の皇帝として世間に認識されていた存在がついに、マリンフォード頂上戦争とその他諸々の暴れっぷりによって、大海賊時代に新たな息吹を吹き込んでしまった。いや、こうなってしまうのも当然の結果であり、既定路線だったというべきか…。
白ひげの後任者にして、若き四皇の誕生。
「なんで俺が四皇なんだよ!俺は海賊じゃねェ!
しかも何なんだよこれは!?俺はカリュウ・D・トルコだ!
四皇 狩人海賊団船長兼料理長 〝狩人〟またの名を〝神箭手〟 カリュウド・トルコ 懸賞金35億2160万ベリー
新聞の一面を飾る4人の皇帝達の写真の中に己の写真と名が混ざっているのを目にしてしまったトルコは怒りの咆哮を上げて、新聞を真っ二つに破り裂いている。
懸賞金額もついに30億ベリーを超えてしまっているが、どういうわけか、カリュウ・D・トルコではなくカリュウド・トルコに名前が変わっていた。何やら、世界政府の策略を感じてしまうが、その理由はいったい…。
「美しく気高きトルコの名を間違えるとは万死に値する。それに、わらわの名がカリュウ・D・ハンコックに変わっていないのはなぜじゃ?」
副船長兼副料理長 〝海賊女帝〟 ボア・ハンコック 懸賞金14億9200万ベリー
もはや、ここまでの懸賞金の高さともなれば、トルコが海賊なのか、それとも違うのか、それはほんの些細なことである。ハンコックも気になどしていない。気にするのはトルコとの婚姻のみである。
とにかく、トルコは己の信念に従い、ひたすら前に進めばいいということだ。
「おお!
ぼくもついに10億の大台を超えたよ!!」
航海士 〝氷狼〟 ヤマト 懸賞金11億8100万ベリー
そして何より、頼もしい仲間達もいる。
若くして30億ベリーを超え、部下の2人が10億を超える超高額賞金首。四皇の一角として数えられるのも当然。
「くッ、これほどの屈辱はない!
あと少し!悔しい!」
操舵手 〝海賊貴公子〟 キャベンディッシュ 懸賞金9億8980万ベリー
狩人海賊団立ち上げメンバーの1人であるキャベンディッシュだけ、わずかばかり大台に届いてこそいないが、実質3人の部下が10億超えのようなものだ。
「ふむ、主の為にもう少し頑張らねばならぬな。
む、
それに続くのも、新世界で十分に通用する猛者達ときた。それどころか、新世界でも名の通った船長級か、下手したらそれすらも凌駕してすらいる。
「あー私もついに賞金首になっちゃったかぁ。
歌手活動に悪い影響が出ないといいけど…。
ハンコックと同意見なのはあれだけど、私もカリュウ・D・ウタになりたいんだけど…」
船医兼音楽家 〝破滅と救済の歌姫〟 ウタ 懸賞金6億2400万ベリー
規模こそ他の五皇の海賊団に劣りはするが、粒揃いも粒揃い。それこそ全員が大粒の、まさに量より質の一団だ。
この顔触れだけでも、トルコが五皇の1人に数えられる理由は十分だろう。
ヤマトが百獣のカイドウの娘であることは周知の事実ではあるが、ウタが赤髪のシャンクスの娘であることまで知れ渡ると、トルコの懸賞金がさらに跳ね上がる可能性は高い。
とはいえ、五皇の一角に数えられる今、量より質とはいえども限度がある。いくらトルコ達といえど、これから先、数の利に勝てないこともあるだろう。少数である限界がいずれ必ずやって来るはずだ。赤髪以外の五皇との戦いに発展した場合……いや、トルコ達はすでにビッグ・マム海賊団との死闘を乗り越えており、その一戦も五皇の一角に数えられるようになった大きな要因だ。もとより、心配する必要はないのかもしれない。
「エネル様〜〜〜どうかお許しをぉ〜〜〜!」
おまけに、トルコほどの知名度となれば、自ずと
「み、見てくだせェ〜〜〜エネルの旦那ァ!
こ、このピっっっカピカ具合をォ〜〜〜!
(どぉ〜してこうなっちゃったのよォ〜!
おれァ〜〝黒ひげ〟──
どうやら、エネルも
荷物持ち兼支援物資配送員 〝濡れ髪のカリブー〟 新入り 懸賞金7400万ベリー
この2人は、一般市民を相手に暴れ回っていたバルトロメオと海兵狩りをしていたカリブー。前者は、当然ではあるがトルコの逆鱗に触れてしまった結果、完膚なきまでに叩きのめされ、率いていた海賊団は壊滅。それまでの行いを悔い改めさせる為に、トルコのもとで雑用兼船大工見習いとして社会奉仕活動を行っており、後者に関しては海兵狩りの先輩であるトルコの目に留まるも、善良な海兵にまで手を出していた為に前者同様に叩きのめされ、率いていた一味は壊滅。その後、〝ヌマヌマの実〟の能力を買われ、社会奉仕活動の一環として、世界政府非加盟国への支援物資配送係兼、ハンコック、ヤマト、ウタの女性陣の荷物持ちとして扱き使われている。
役に立つ新入りも得て、頼りになる仲間達もいる。トルコはもう立派な大海賊だ。
「どうしてこうなったのやら…」
それでも、トルコは海賊であることを否定するが、そろそろこれまでの己の行動を振り返ってみてほしい。世は大海賊時代。世間にとって、犯罪者=海賊という認識が当たり前のなか、トルコの行動が海賊以外に見えるかどうか…。
答えは否。もはや覆しようがない。
「俺じゃなくてエースでいいだろ。
ナワバリはともかくとして、
「トルコ、それは無理がある。
火拳のエースはわらわとヤマトどころか、キャベンとエネルにすら劣っている。潜在能力の高さは海賊王の息子なだけはあるが、四皇にするには力不足じゃ」
その上、白ひげの残党達では白ひげの後釜として世界の均衡を保つ四皇に祭り上げるには力不足。
トルコに叩きのめされ、己の無力さを知り、どうにか立ち直った火拳のエースが、白ひげ海賊団の残党達を新たに率いることになりはしたが、彼らでは四皇にはまだ程遠い。火拳のエースも、海賊王の息子であることが発覚し、公開処刑から逃れたことで懸賞金が跳ね上がってこそいるが、実力と懸賞金額が見合ってはいない。
「ならこの際、黒ひげでいいだろ。
あんなんだけど俺と違って海賊だし」
それならば、白ひげを殺害し、白ひげの能力を得た〝黒ひげ〟──マーシャル・D・ティーチはどうか…。
すでに新世界にて暴れ出し、白ひげのナワバリの幾つかを手中に収めている。
トルコも万能ではない。白ひげのナワバリを全て保護するのは不可能だ。
「えー、アイツが白吉っちゃんの後釜になるのは、ぼくは嫌だなァ」
「ヤマトに同感。
アイツがトルコとシャンクスと同じ皇帝として新聞の一面を飾るのは嫌かな!」
ただ、ヤマトとウタの意見はともかくとし、世界政府と海軍、そして世間がどちらを四皇に推すかと問われれば、答えは一択だろう。
海兵狩りはともかくとし、世界の平和に貢献しているのは、間違いなくトルコだ。
つまり、トルコが白ひげの後継者として新たに四皇に祭り上げられるのは必然であり既定路線なのである。
島一つを容易に海に沈め、世界を滅ぼしかねない力を振りかざす黒ひげよりも、実績を含め、堅気には一切手を出さないトルコの方が四皇に相応しい。
カリュウ・D・トルコは、本人がどれだけ否定しようとも、大海賊である。
な、なんとか年内最後に投稿できた…。
お、お待たせしました。皆様来年もどうかよろしくお願いします。よいお年をお迎えください!
そして、お年玉代わりに、励みになる感想とご評価よろしくです!w