シャンクスが四皇入りしたきっかけはやはり、エルバフの呪いの王子も関係してるのかな?
それはある日のこと…。
一見したらまさに多勢に無勢。だが、シッケアール王国跡地では、もはや日常と化した光景だ。この地に生息する賢いヒヒ〝ヒューマンドリル〟の大群と世界最強の剣士〝鷹の目〟ジュラキュール・ミホークが〝狩人〟カリュウ・D・トルコを取り囲んでいる。
「!」
しかし、今日に限ってはいつもと大きく異なる、重々しい雰囲気に支配されていた。
鷹の目の目の前で、次々とヒューマンドリル達が怯え、震え、さらには武器を置き、今にも倒れ伏してしまいそうな傷だらけの
「ついに開眼したか──〝覇王色の覇気〟を…」
きっかけは鷹の目の一言だった。
日に日に成長する弟子の姿を前に、柄にもなく熱くなってしまった鷹の目が、トルコをさらなる高みへと押し上げる為に放った一言だった。
鷹の目自身、トルコに向ける言葉ではなかったと、これまた柄にもなく反省している。とはいえ、その身から覇王色の覇気を溢れ出させるトルコの立ち姿に、我が弟子ながらと感嘆の息を漏らす。
トルコには覇王の資質があるだろうと、鷹の目は可能性を見出していた。ただ、その資質を目覚めさせるには何が必要なのか、何がきっかけとなるのか、激しい修業のなかで常に模索し続けていた。
その苦労が、たった今実を結んだのである。汚れ役を引き受けるのも師の務めなのだ。
「もう……俺の目の前で誰も死なせねェ。
喪うかよ━━〝
そして、今とは言わずとも何れ師を超えるのが弟子の務めであり、親孝行ならぬ師匠孝行ではなかろうか…。
トルコが手に持つ戦斧を青白いオーラのようなものが包み込み、赤黒い稲妻が迸る。
トルコが戦斧を横薙ぎに一閃。
鷹の目の黒刀と衝突する。
✮✮✮✮✮
月日は経ち…。
「師匠、お世話になりました」
厳しい修業を乗り越え、師である〝鷹の目〟ジュラキュール・ミホークから免許皆伝ならぬ修業終了の言い渡されたカリュウ・D・トルコが今、鷹の目に見送られ、シッケアール王国跡地から旅立とうとしている。
「ふッ……初めて出会った時は、まるで人斬りナイフのような小僧だったが、よくぞここまで成長したものだ」
弟子が大きく成長し、旅立つ姿を前に、師である鷹の目は感慨深げな表情を浮かべていた。
孤高を貫く男が、まさかこのような表情を浮かべようとは……鷹の目のかつてのライバルも、天変地異でも起きたかのように驚愕するはずだ。
それも無理はない。
鷹の目と出会う前のトルコは、行き場のない怒りや悲しみに支配され、己の大切なものを奪った存在達に向けてその怒りや悲しみをぶつけていた。
その行動故に、懸賞金1億ベリーを超える〝狩人〟は誕生してしまったのである。
トルコの身に起きてしまった悲劇。
トルコの故郷に海軍に追われる海賊が逃げ込み、海軍が到着しトルコの故郷は戦火に包まれてしまった。そして、トルコの家族は、
トルコは深く絶望し、その結果、家族想いであったが故に、トルコは復讐鬼へと変貌してしまった。
悪事を働く海賊は殺されて当然の存在。正義を掲げておきながら守るべき市民を犠牲にする海軍は偽善者。トルコの怒りと悲しみは、トルコの大切なものを奪うきっかけとなった海賊と、奪った海軍の双方に向けられるようになってしまった。
そうする以外に……トルコはそうすることしかできなかったのだ。
ただ、この大海賊時代に於いて、そのような悲劇は珍しいことではない。世界各地、至る所で悲劇は起き続けている。悲しみは世界に蔓延している。
トルコの身に起きた悲劇など、その内の小さな一つでしかなく、歴史に残るようなものですらもなく、すぐに人々の記憶から消え去っていくもの。
星の数程の海賊達を殲滅せねばならぬ海軍にも、記憶に残す海兵は果たして何人いるか…。
しかし、あてのない復讐の旅を続けていたトルコは、奇跡的に大きな出会いを果たした。
「師匠に出会ってなきゃ、俺は惨めに死んでたはずだ」
トルコの人生を大きく変え、正しい方向に修正してくれるような、そんな奇跡的な出会いだ。
いや、この出会いは奇跡ではない。
トルコと同じように、海兵を恨む様な過去を持ち〝海兵狩り〟と呼ばれていた鷹の目にとっても、かつての己を彷彿とさせる存在を無視できなかった。だから、鷹の目は自ら重い腰を上げ、トルコを探しに出たのである。
きっと、トルコと鷹の目だからこそ出会えたのだろう。
もしかしたら、今は亡きトルコの家族が引き合わせてくれたのかもしれない。
とはいえ、この出会いが世界に与える影響は大きい。なんせ、世界最強の剣士が自ら迎え入れた弟子は、海軍と世界政府が危険視する〝狩人〟なのだ。怒り任せな
師弟関係が明るみに出るのがまだほんの少し先ではあるだろうが…。
もっとも、トルコと鷹の目の師弟関係は海軍の身から出た錆のようなものだ。
もし、トルコの故郷に到着したのが市民の安全を第一に考える海兵だったならば、トルコの未来は変わっていたかもしれない。もしかしたら、その海兵に憧れて海軍に入隊していたかもしれない。もしそうなっていたら、トルコは市民からの信頼も高い優秀な海兵になっていたことだろう。
そもそも、海賊がトルコの故郷に逃げ込まなければ、貧しくも平穏で幸せな生活は続き、稼ぎの為に狩猟の才能を活かし賞金稼ぎになり、そこから海軍にスカウトされた可能性があったかもしれない。
たられば、もしもの話をしてもどうしようもないが、海軍と敵対する可能性は低かったはずだ。
ともかく、〝狩人〟カリュウ・D・トルコという存在は、海軍の愚行によって誕生してしまったのである。
正義を履き違えれば、それは悪でしかない。
「トルコ、お前は成長し強くなった。
だからこそ、その力を正しく使え。誤った使い方をすれば、それはお前が憎む海兵や海賊と何ら変わらん」
「肝に銘じておきます」
だが、トルコの性格を考えたならば、仮に海軍に入隊していたとしても、何れは海軍を辞職していただろう。
これからより広い世界を見るであろうトルコは、それを知ることになるはずだ。
「行ってこい」
かつての己を彷彿させる少年が逞しく成長したことを嬉しく思う反面、鷹の目は一抹の不安を感じ見送ることとなる。
トルコがこれから目にするであろう世界の闇はあまりにも深く、重い。人斬りナイフのようだったトルコは強く逞しくなり、着実に大人へと成長しつつある。
それでも、この世界の闇はあまりにも深い。
トルコの海賊、海兵嫌いがこれまで以上に深刻化する可能性もあるのだ。
鷹の目も、全ての海賊、全ての海兵がトルコが嫌うような者達ではないことを説明こそしたが、そればかりは己自身の目で見て確かめなければならないだろう。
この旅が吉と出るか凶と出るか……それは鷹の目にも、トルコ本人にもわからない。
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数年前、とある大物海賊によって一夜にして壊滅した島がある。その島はかつて〝音楽の都〟として栄えていた。
現在は廃墟となっており、生き残りは
その島の名は──エレジア。
そのエレジアに今、久方ぶりに足を踏み入れた人物がいる。何もないはずのこの島にその人物はいったい何を求め、何の目的でやって来たのか…。
「!……君、
おっと、失礼なことを言ってしまったな。申し訳ない。
それと、俺の名はトルコ。カリュウ・D・トルコだ」
悲劇の地に、悲劇を経験した男が降り立った。
そして出会った。悲劇を経験し、声を喪ってしまった歌い手が…。
Film RED feat.狩人。
鷹の目の修業を乗り越え免許皆伝を受けたトルコは、まず世界各地、海賊や海軍の手によって滅びた島を見て回り、世界各地に深く刻まれた傷跡を肌で感じるつもりでございます。