海の狩人   作:紅涙

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狩人と過去と今……そして未来

 

 

 場所は偉大なる航路(グランドライン)の後半部〝新世界〟にある猛吹雪やまぬ極寒地帯──冬島〝ユキリュウ島〟。

 

「ウタ、もうすぐだ。もう少しだけ頑張れ!」

 

 体力の消耗も激しい冬島を、女の子を背負い登る青年。

 

 カリュウ・D・トルコはエレジアを訪れた後、エレジアで出会った女の子を連れ新世界に入った。

 

 すべては、エレジアで出会った女の子を父親のもとに送り届ける為に…。

 

 普通に考えたらお人好しでしかない。だが、女の子に()()()()()()()()()()。それに、女の子の父親があの四皇〝赤髪のシャンクス〟となれば、トルコが行動するのも頷ける。赤髪はトルコの師匠の元ライバルなのだ。

 

「会ったことはないけど、さすがは師匠の元ライバル(四皇)。覇気がビリビリと伝わってくる」

 

 赤髪の強大な覇気を感じ取ったトルコは、ウタを背負ったまま先へと進む。怯えることなく、赤髪のもとを目指す。

 

 娘と父親を再会させる為。謂わば、これはトルコのお節介だ。

 

 

 

ありがとう

 

 

 

 そのトルコに、背負われたウタは感謝の言葉(心の声)を告げる。

 

 ウタは喋ることができない。ただその分、ウタを背負うトルコの心に、彼女の感謝の気持ちがじわじわと染み渡る。

 

 ユキリュウ島のこの寒さも、その想いで乗り越えられると思えてしまうだろう。ウタも、トルコの無償のお節介で身が温まっている。

 

「俺が必ず、赤髪と再会させてやるからな。

 思いっきり、ウタの気持ちをぶつけてこい!」

 

 とはいえ、ここまでやって来るのも大変だったはずだ。

 

 新世界は、この世界の海の中でももっとも航海が困難とされる海で、常識など何一つ通用しない。一瞬の油断が命取りとなる。

 

 それを、航海術など何一つ持ち合わせていない非力なウタを連れて航海するとは…。これもすべては、トルコの師匠(鷹の目)英才教育(地獄の扱き)の賜物なのだろう。

 

 孤高の大剣豪が育て上げた弟子もまた孤高の存在。すべてをたった一人で乗り越える力と能力を持っている。

 

「さァ、着いたぞ──ウタ」

 

 娘と父の再会がもたらすものは…。

 

 

 ✮✮✮✮✮

 

 

 音楽の都・エレジアの壊滅。

 

 世間では、数年前に現四皇〝赤髪のシャンクス〟率いる赤髪海賊団によって蹂躙され、壊滅したとされている。

 

 だが、赤髪と関わりのある者達はこの一件に懐疑的だ。

 

 赤髪は海の皇帝の一人として恐れられてこそいるが、星の数程の海賊達の中でも穏健派だ。

 

 四皇の一人として君臨するだけあり、一度暴れさせれば手に負えないが、堅気にも一切手を出さないことでも有名で、赤髪の旗に守られている島はこの世界に多く存在している。

 

 元ライバルである鷹の目は、エレジアの壊滅は赤髪によるものではないと即答したほどである。無論、まったく関わりがないとは思ってはいないだろうが…。

 

「ウタ、すまなかった」

 

 それが今、真実が明かされようとしている。世間でエレジアを壊滅させた犯人とされている赤髪が、その時に起きた事件で生き残った二人の内の一人に深く頭を下げた。

 

 その一人とは、壊滅したエレジアに己が置き去りにした大切な娘である。

 

 場所は新世界〝ユキリュウ島〟。

 

 事の発端は赤髪海賊団が滞在している冬島に、〝狩人〟カリュウ・D・トルコが赤髪の娘──ウタを連れて訪れたことだ。

 

 再会は何の前触れもなく、唐突なものだ。

 

 四皇〝赤髪〟ですら困惑し、酔いが一気に覚めたほど。

 

 いや、そもそもの発端は、トルコがエレジアを訪れ、ウタと出会ったことだろう。元ライバル同士の弟子と娘が出会ったが故に、この状況は起きたのである。

 

 しかし、エレジアを壊滅させたのが赤髪でなければ、いったい誰がエレジアを壊滅させたのか…。

 

 赤髪は、その事件にどのように関わっているのか…。

 

 

 

『謝らないでシャンクス。私、()()()()()()……何が起きたのか』

 

 

 

 再会した大切な娘の言葉が、赤髪の心に深く突き刺さる。

 

 そして、ウタは赤髪にさらなる追い討ちをかける。もちろん、ウタは赤髪を傷つけるつもりなどない。()()()()()()()()()に感謝している。その反面、置いて行かれたことに怒りもしているだろう。

 

 ただ、父親と再会できたウタにとって、それはもうどうでもいいことだった。

 

 ウタはただ、()()()()()()()()()だけなのだ。

 

 

 

『ありがとう、シャンクス。大好きだよ……さようなら』

 

 

 

 ウタは、最愛の父親の前で自らの命を断つ。

 

「バカ野郎」

 

 だが、ウタの決断は一本の矢によって阻まれる。

 

 ウタが自らの首に突き立てようとしたナイフが、一本の矢に弾かれ宙を舞う。

 

 その矢を放ったのは、赤髪海賊団の狙撃手達でもない。

 

「トルコ」

 

 ウタをここまで連れてきた張本人、トルコだった。

 

「どうして邪魔するの!?

()()()()()()()()()()()()()()()()()なんだよ!?だから、トットムジカが解放される前に、せめてシャンクスにお礼を言ってトットムジカ諸共死のうと思ってたんだよ!?」

 

 そう、ウタが現在置かれた状況を知る唯一の人物。もっとも、ウタが現在置かれた状況を知るというのには語弊がある。ウタは、トルコに己の置かれた状況を何一つ説明などしていない。

 

 ならば何故、トルコはウタの凶行にいち早く反応し、止めることができたのか…。無論、トルコが弓術の達人だったこともあるだろう。

 

 恐らく、一番の理由はトルコが目の前で大切な者を喪ったことがあるからなのだろう。彼の身に起きた悲劇故に、彼の見聞色の覇気は人一倍、悲劇に敏感だ。それも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ほどに…。

 

「やっぱり喋れたんだな、ウタ。

 トットムジカってのに()()()()()()()()()()()()()()に声を閉ざしてたんだろ?」

 

 トルコは知っていた。

 

 エレジアを壊滅させたのが、何も知らずに魔王〝トットムジカ〟が封印された楽譜を手に取り歌ってしまい、ウタが魔王を解き放ってしまったのがきっかけであることを…。

 

 その魔王が……一度は消滅したはずの魔王が、楽譜ではなく()()()()()()()()ことも…。

 

 いや、正確には()()()()()()()()というべきだろう。これも、悲劇に敏感な故に覚醒した力なのだ。

 

「ッ……気付いて…気付いてたのに、私をシャンクスのとこに連れてきたの?どうして?トルコはいったい何がしたいの!?」

 

 だからこそ、トルコはウタを赤髪のもとに連れてきた。

 

 すべてを知りながら、それでもウタを救う為に…。

 

「お前を救いたいからに決まってんだろ!俺の目の前で悲劇は起こさせねェ!!」

 

 放っておけなかったのだ。まだ大切な家族が生きているウタを…。自ら命を断つなど言語道断。

 

「大切な家族なら想いはちゃんと口にして伝えろ!

 赤髪ィ!アンタもだ!本当に大切なら何が何でも守れ!アンタ四皇なんだろ!?」

 

 家族を喪う辛さ、悲しみを知っているからこそ、トルコはこの親子を放っておけない。

 

「歌え!ウタ!

 トットムジカを解放しろ!俺がお前の悲しみを断ち切ってやる!だから歌え!お前の歌声を俺に聴かせろォ!!」

 

 家族が笑い合える未来。

 

 それが、トルコが追い求める、視たい景色なのだ。

 

 

 






ウタをどう話に挟むか悩んだ。


・見聞色の覇気〝過去視〟
未来視の逆。

悲劇に敏感なトルコが覚醒した力。
悲劇が起きた土地などで、何が起きたのか過去を視ることができ、悲劇を経験した者の頭に触れることで視ることもできる。

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