部屋の中には、剣持ち小鬼が4体に、弓持ちの小鬼2体、そして、小鬼よりも巨大な体躯と大剣を装備した鬼がいた。
とりあえず、〈鑑定〉。
(中鬼)
何故か、名前しかわからない。
前回も、試しにネズミを鑑定してみたが、名前の他にもレベルやスキル、弱点属性も出てきた。
なのに、これはどういうことだ?
・・・とりあえず、戦ってみよう。
相手が何してくるかわからないが、ボスの取り巻きは蒼規に任せて、ボスである中鬼の足止めをしておく。
「グギャ!?」
周囲の小鬼を無視して、中鬼に向かって突貫する。
ボス部屋?に入ってすぐ、様子見も無く突撃してきたジブンに驚き、慌てた様子で小鬼に何らかの指示を出す中鬼。
すると、進路上に剣持ち小鬼が2体、立ち塞がる様に飛び掛かってきた。
「邪魔」
「「グギグェ~!?」」
―――ピキッ
斧で進路上の小鬼×2を、バットでボールを打つように吹き飛ばす。
2匹の内の1匹に、剣で防御されたが、その程度でジブンの攻撃は防げなかったようだ。
そのまま盛大に吹っ飛んで行く小鬼から意識を外し、中鬼へと肉薄する。
そして、斧を振り落ろす―――!
だが、中鬼も咄嗟に反応し、大剣を盾にして受け止めた。
「そいっ!」
―――ボキッ!!
「あっ」
「グギャ!?」
ジブンと中鬼の武器が、無残に砕け散った・・・。
・・・やべっ、武器の消耗具合を確認していなかった。
ここまでの戦闘では、木刀を使っていたが、強度に優れていた斧を重点的に使っていたのが原因か、これまでの連戦に次ぐ連戦によって消耗してしまい、たった今、限界に来てしまったようだ。
・・・そういえば、小鬼を吹き飛ばした時、ピキッて音が鳴ってたような・・・
とりあえず、気を取り直して戦闘を再開する。
武器が壊れて呆けた面をした中鬼の顔に、折れた斧の柄の部分を投げつる。
そしてすぐに後退し、予備に持っておいた木刀を抜いて構える。
今更だが、木刀で中鬼に利くのか?という疑問を持つが、何も持ってないよりはマシ。
中鬼を見ると、自分の武器を壊されたことと、柄の部分を投げつけられたことで怒り心頭のご様子だ。
ジブンは、パワーではこの中鬼に負けることはないだろうが、武器が心もとない今、ジブンから攻撃を仕掛けていいのかがわからない。
もしかしたら、さっきの斧の二の舞になるのではないか。
そんな思考が過ぎり、自身の実戦経験の足りなさとジブンの想定の甘さを憎々しく感じていた頃・・・
中鬼の背後に迫る 白い影が見えた。
「ギギャーーッ!!」
「アマ、お待たせ!」
取り巻きの小鬼を蹴散らしたらしい蒼規が、中鬼の背中に不意打ちを食らわせた。
「畳みかけるよ!」
「・・・了解」
この後、2人で中鬼をボコボコにした。
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目の前で中鬼が灰となって消え、これまでの魔石よりも多くの魔力を含んだ魔石が残される。
それを見届けたジブンは、内心で今回の戦いについて振り返った。
今回のボス戦では、ジブンは明らかにスペック頼りの素人みたいな戦い方だった。
ジブンより圧倒的格下だったから何とかなったのと、蒼規が早く駆けつけてきてくれたからうまくやれたものの、これから先、同じような戦い方をしてミスをすれば死ぬだろう。
予備の武器として木刀で十分だと思っていたが、中鬼と戦った今、未熟な自分が中鬼レベルの敵に木刀でダメージを与えられるとは思えない。
現に、最後に中鬼の首を木刀で叩いた時の感触からして、有効打を与えられているように思えなかった。
何とも、反省点が多く見つかる戦いだった。
「ジブン、無意識の内にダンジョンを舐めて・・・」
「どうしたー、天規?早く宝箱開けるよー」
ジブンを呼ぶ声がしたので向かう。
蒼規の傍には、今までの道中でたびたび見かけた宝箱よりも、装飾が少し豪華で大きい宝箱があった。
それを見ただけで、先ほどの暗い思考は吹き飛び、ワクワクとした感情が押し寄せてくる。
「よし、蒼が開けて」
「え、いいの?」
「今回のMVPは蒼だから」
「・・・わかった。開けるぞ」
2人で大きな宝箱に罠が設置されてないか調べた後、問題なさそうなので蒼規が勢いよく開けた。
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報酬
・銅のメダル×10枚
・「中鬼の朱弓」
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「中鬼の朱弓」 武器種:和弓
鬼の弓兵が使う朱色の和弓。
鮮やかな朱色に塗装されたその弓は、美しさだけでなく鬼の力強さと雄々しさを感じさせる。
所持スキル
〈豪弓〉・・・貫通力と威力に優れた一撃を放つ。
スキル発動後は僅かに反動があるため、連続での使用は難しい。
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「弓か・・・どうする?」
「じゃあ僕が使うよ。一度弓を使ってみたたかったし、もし合わなくても売ればいいしね」
蒼規はそう言うと、赤色の弓を手にとってアイテムボックスの中に入れた。
明らかにサイズが足りないのに、問題なくアイテムボックスに仕舞えたところを見ると、科学は魔法に敗北したな、と思えた。
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ボス部屋から出た先には、先程のボス部屋よりも広い部屋につながっていた。
体育館くらいの広さがありそうなその部屋は、ボス部屋と同じく明かりがあり、部屋の中心には白い噴水のような物体がある。
ジブン達がアレを見るのは始めてだが、アレがどういった物かは知っている。
探索者試験の筆記問題で出され、ダンジョンを本格的に攻略していきたい人は絶対に覚えるように言われた、探索者にとって必須級のもの。
アレは、ゲームで言うところのセーブポイント、または、ポータルだ。
「これがポータル。・・・なんで噴水?」
「某神性存在の拘りらしいよ。宗教家の1人が質問したらそんな返答がされたんだって」
「へぇ~」
ジブン達は、雑談をしながら部屋に入り、中央にある噴水型ポータルへと近づく。
ポータルに近づいたからこそわかるが、噴水の装飾が物凄―く凝っている。
何かを崇めるように平服している人間の上に、太陽を表していると思わしき円が浮かび、その円の周囲を虫や鳥やトカゲ?が飛び回り、円の中には鳥人間がいる。
そんな、壁画染みた意匠が施されていた。
この意匠について気にはなるが、それよりも先にしなければならないのが、このポータルへの登録だ。
ポータルに登録すると、次の探索では1~10階層をショートカットして、この場所から挑戦できるようになるという。
だから、これを怠ると次の探索で、やらなくていい手間を労してしまう。
それで、ポータルへの登録方法はというと・・・
「手で触れればいいんだっけ」
「そうそう。触れるだけだった」
ポータルに触れると、ジブンの脳内に「0.5階層に飛ぶか」という選択肢が浮かんできた。
それを許諾するとジブンの体が青い光に包まれて、気が付けばダンジョンの1階層へと続く階段の途中に存在した、階段の踊り場のような場所にいた。
後ろを振り向くと、踊り場の壁には青い光を放つ、噴水にあった意匠を壁画にしたモノがあることに気が付いた。
どうやら、これがポータルの役割を果たしているらしい。
突然この場に現れたジブン達に周囲の人達が驚く中、それを気にせず相談する。
「どうする?これから1層でフラフラする?」
「・・・止めとく。斧を新調したい」
「わかった」
本日の探索はこれで終わりとして、今日の成果を換金するために地上へと戻った。
・・・そうだ。帰ったら、武器の手入れの仕方を学ぼう。
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ダンジョンから帰ってきたジブン達は、協会の人に10階層のを攻略したことを報告した。
そしたら、10階層までの探索をレポートまとめて報告するように言われた。
まさか、ここでもレポート課題が出されるとは思わなかったよ。
しかも、ジブン達は元々文章を書くことが苦手だったので、レポートの完成まで2時間くらいかかった。
ぐったりしながら職員の人にレポートを渡し、今日の成果を提出して換金。その際に、売る気はないが、「朱色の和弓」中鬼の討伐の証拠品として提出した。
もちろん、後で返してもらうつもりだ。
後日、和弓の返還と共に、ジブン達の探索者ランクが昇格するという話があるらしく、ダンジョンへと潜る前に協会本部へと来て欲しいとのことだ。
それを承諾して、ホテルへと帰るのだった。
・・・あっ、ガチャやるの忘れてた。
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蒼規と話し合った結果、昨日の分のガチャは今日の探索を終えてからすることにした。
昨日拾ったコインはそこそこの数があるが、今日の分も合わせてやった方がたくさん楽しめそうなので、探索後の楽しみとしよう。
そんな訳で、ダンジョンへ行く前に、昨日職員の人に言われた通り協会本部へと訪れた。
受付の人に、ジブン達の探索免許と身分証明書を出して要件を言う。
すると、話が通っていたのかすぐに案内してくれた。
案内された先は、ジブン達が面接を受けた場所。
そこはかとなく、警察署の取り調べ室を連想させるような場所だ。
面接の時にいた変態エルフが頭の中を過ぎるが、さすがにいないだろうと思って扉を開ける。
そこには、ぐるぐる巻きに拘束されたエルフの人と、エルフの人を押さえつける赤帽子の女性がいた。
「せ、先輩・・・。もうすぐ双子ちゃん達が来るのに、こんなアブノーマルなプレイをしたいだなんて・・・。先輩の、へ・ん・た・い♡———あだだだだっ!?」
「あんたが自分の業務をほっぽり出してここに潜んでたからでしょう!?この脱走常習犯!セクハラしようとしてないで、さっさと自分の仕事に戻りなさい!!」
「セクハラじゃなくて、これは純愛あだだだだっ!?これ以上締め付けたら中身が出ちゃう」
パタン
「・・・どうしよう」
「しばらく待とっか」
数10分後、エルフの人は猿の面をした人に、ドナドナされていった。
「ごめんなさい、待たせてしまったわね」
「「・・・」」
目の前には、先程まで人を縛り付けていたとは思えない雰囲気で話す赤帽子の女性。
ジブン達は、そんな彼女にどういった態度を取ればいいのかがわからない。
なので、黙ってることにした。
「いきなりだけど、本題に入るわね。本日、貴方達のEランクへの昇格資格があるかを見極めるためにここに呼んだわ」
「「・・・え?」」
「といっても、質問を数個答えて貰うだけだから気楽に答えてね」
「「・・・わかりました」」
注:ここからは文章の形式が変わります。
赤帽子「まずは最初の質問から。2人がメインで使っている武器は?」
白カラス「剣です」
黒カラス「片手斧です」
赤帽子「なるほどね・・・。では、次の質問。2人は6~9階層で出てきたモンスターに対して、どんな印象を持った?本心を言ってね」
白カラス「・・・正直、弱いと感じました」
黒カラス「はい。攻撃が遅く、脆いです」
赤帽子「遅くて脆い?」
白カラス「ええっと・・・ジブン達の攻撃だとアソコで出てくるモンスターは大体1撃で倒せますし、モンスターの知能も低いので冷静に対応すれば他愛の無い相手だと感じました」
黒カラス「それと、動きも拙く直線的です」
黒カラス「敏捷もジブン達より低いので」
白カラス「簡単に対処できます」
赤帽子「そう。・・・それでは最後の質問よ。中鬼と戦ってどうだった?」
白カラス「ザコ敵を連れていたのは厄介でしたが、分担すれば結構楽に倒せますね」
黒カラス「武器が万全の状態なら、簡単に」
黒カラス「・・・簡単に倒せます」
赤帽子「・・・そうなのね。これで質問は以上となります、2人共お疲れ様」
赤帽子の女性は、そう言うと椅子から立ち上がりジブン達に見覚えのあるカードを渡した。
それは、探索者ランクを表すカードであり、そのカードには「Eランク」という文字が刻まれていた。
「最近は、そのカードをペンダント型にしていろいろな機能を付与できないか四苦八苦しているところなのよ。ただ、それの研究チームであるウチの後輩が逃げたりするから、中々進まないのよね」
ウチの後輩って、さっきのエルフの人のことか。
もしかして、このカードの木材ってあの人所縁の物?
エルフは、昔から植物というより森と縁のある存在だし。
「ウチの後輩のことは置いておいて、最後に1つ」
すると、赤帽子の女性は先程とは違い、真剣な表情となって言う。
「貴方達はこれよりダンジョンの11階層へと潜る許可を手に入れました。ですが、11階層からはこれまでのダンジョンとは別物と言えるでしょう。どうか、貴方達が未知に屈ずることなく先へと進める先へと進むことができるよう応援しております」
赤帽子の女性の言葉を、ジブン達は正しく受け取れたかはわからない。
だけど、彼女はジブン達に忠告をしているのだということは理解できた。
彼女の言う未知とは、彼女が何を懸念しているかはわからない。
だけど、この先待ち受ける何かに対して、屈することはしたくないと思えた。
その後、普通に解放されたジブン達は、そのままの足でダンジョンへと向かうのだった。
未知なる未来への僅かな不安と、高揚感を覚えながら。
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ジブン達がEランクへと昇級してから数10分後。
現在、ダンジョンの10階層のポータルのある部屋にて、11階層へと挑む準備をしていた。
そこで使用する武器は、前にガチャで手に入れた「死人の鉞」を使おうと思う。
昨日の稼ぎで新品の武器を手に入れようかと思ったが、現在のジブン達は借金返済の最中だ。
ジブンのミスが原因とはいえ、出費は最低限にしたいと思っている。
そのために、見るからに危なそうな武器を使うのはジブンでもどうかと思うだろうが・・・。
だが、この武器が持つスキル、〈血狂い〉の有用性は無視できない。
この〈血狂い〉の効果である切れ味の回復は、手入れが下手なジブンにはうってつけのスキルなのではないかと思う、
そう思って試しに1階層で使ってみたのだが、どうやらこのスキル、切れ味の回復だけでなく耐久値も回復するようだった。
これだけでも、この武器を使うに足る理由となるだろう。
それに、呪いの武器のような説明文とビジュアルなので使用に躊躇していたが、一度だけ試しに使ってみると、ジブンの体や思考にも何の問題も無かったため、ダンジョン探索で使っていく決心がついた。
・・・相変わらず蒼規が渋い顔をするが。
「ポータルでの10階層への転移、無事成功!」
「ポータルが、凄く便利」
「これは解放しているとしていないとでは、物凄く探索難易度に差がでるね。ということで、準備ができたようだし先へ進もっか」
ジブン達は、10階層から下へと続く長い階段を降りていく。
しばらく下っていくと、ボス部屋のような炎のような意匠が施された巨大な扉を見つけた。
ダンジョンは内部の環境が前の階層と変化する場合、ボス部屋と同じように階層の入口には大きな扉があると講習で聞いたが、恐らくはこの扉のことを指しているのだろう。
「開けるよ」
「準備はできてるぞ、天規」
「わかった。いざ!」
ジブンは、思いっきり11階層へ繋がるであろう扉を開け放つ。
すると、ジブン達の目に飛び込んできたのは、青々と木々が生い茂った森だった。
地上に戻ってきたのではないか?と思える程の青々と生い茂った木々を見ていると、ダンジョンの神秘性を感じられた。
しかも、空を見上げると太陽らしき物はないが、何故か明るいという不思議現象も起こっている。
ダンジョンでは何が起こるかわからないんだなと実感させられるな。
そんなことを考えていると、地上の森の様にどこからか鳥獣の鳴き声が聞こえてきた。
この鳴き声、絶対にモンスターのモノだな。
「森だな」
「森だね」
「・・・ここからどう動く?」
「とりあえず、周囲警戒しながら進もう」
「OK。なら僕は迷わないように、木にでも目印でもつけるか」
蒼規はそう言うと、近くに生えていた木の1つを斬りつけ、熊の縄張りを示す痕みたいな傷をつけた。
「これでよし。それじゃあ行くか、アマ」
「わかった」
こうして、新しい階層での探索が始まった。
今回の戦いは何ともぐだぐだ物でしたが、そもそも主人公達は戦闘は素人なので、そこら辺の知識や技能が不足しています。なので、大目に見てあげてください。
・・・そもそも、異世界行ってすぐに冷静に戦える主人公共が異常なのでは?
アイツラ、絶対、女神とかその辺りに精神いじくられてる。