「進化の宝玉」?種族の進化?・・・ナニコレ?
このアイテムの説明文には、何だかとても重要そうなワードがいくつも見受けられる。
特に、人類を進化させる、という項目が気になった。
もしかすると、ジブン達がこの姿になったのはこの種族進化と関係するのではないか?と思えてくる。
そうなると、説明文の最後の文章にある下位の種族とは人間か?
人間のステータスは覚醒者と比べるまでもなく弱いため、ジブンの推測への説得力が増すように思える。
まぁ、これだけの情報があれば誰でもそう思うことだろうが。
ジブン達はあの日、”フギン”と”ムニン”という伝承に登場する存在になった。
他の人がなった獣人やエルフ、河童などの存在も、御伽噺や伝承によって伝えられる存在だ。
さらに、チクタクマンと言ったらクトゥルフ神話においてはとある邪神の化身とされる存在であり、ある意味で伝承の存在といえるだろう。
そうなると、ジブンのこの考えは正解のように思えてくる。
覚醒者とそうでない者の実力差は一目瞭然だ。
その内、覚醒者関係の差別とかが起こるのではないか?と言われた程に能力があり、見た目の変化も激しい。
それに、ダンジョンの難易度に関しても、覚醒者を前提として設定されているように感じる。
神聖存在は、何故あんな風な難易度にしたのかと思ったが、もし覚醒が後天的に行えるものだとしたら、あの難易度設定もある程度は納得できる。
「「これ使えば、覚醒者になれる?」」
「やっぱり蒼規もそう思うか」
「いや、これだけヒントがあれば、誰でもこの結論に辿り着くでしょ」
・・・でしょうね。
「それにしても・・・それ、どうする?」
これは、明らかな厄ネタだ。
公表したら世界の常識が変わると断言できるし、絶対に面倒くさいことになる。
それに、どこで手に入れてきたのかも説明できない。
・・・やっぱり秘匿案件かな。
「秘密で」
「同意した。僕のアイテムボックスに入れとくよ」
「頼んだ」
あぁ、どんどん秘密が増えていく・・・。
いろいろ考えなければならないことがあるが、とりあえずは、蒼規のアイテムボックスに封印だ。
このアイテムが日の目を浴びるのは、恐らくはもっと先のことだろうな。
「そもそも、チクタクマンって何だろう・・・?」
「・・・知らないの?」
「えっ、知ってるの?」
「知ってるよ」
「「・・・」」
「説明は後でする。帰ろう」
「わかった」
その後、ジブン達は怪しまれないように11階層で小鬼の群れを1つ討伐し、再びそれを買い取り場所へと持って行くのだった。
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それが発表されたのは、「進化の宝玉・逸話級」を入手した日の翌日の朝だった。
ジブン達がそのことに気が付けたのは、蒼規が朝の占いを見るためにホテルの自室にあるテレビを点けたからだった。
「これって・・・」
「あー、先を越されたかぁ」
それは、ダンジョンで「進化の宝玉」というアイテムが発見されたというニュースだった。
ある探索者が、仲間と共にボスモンスターと戦った後の話だ。
その国にあるダンジョンボスは中鬼ではなく、人間くらいの大きさの狼だったらしいが、その人物達は無事撃破に成功した。
そして一行は、ボスを倒した後に出てきた宝箱の中身を取り出した。
ボスの討伐報酬では鎧や剣などの武具が手に入ったが、1つだけ他のものとは毛色の違う物だった。
そのアイテムは空色のきれいな水晶玉をしており、宝箱でたまに出てくるスキルオーブのようだったという。
だが、ビー玉ほどのサイズのスキルオーブと比べて明らかにサイズが大きく、これは別のアイテムなのではないかと考えたそうだ。
彼らは、そのアイテムをダンジョンから帰ると、すぐに知り合いの〈鑑定〉スキル持ちの知人に相談して見てもらった。
その結果を日本語訳にしたものが、これだ。
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「進化の宝玉・普通級」
人類の上位種族への進化を促す宝玉
この宝玉の中には様々な伝承や可能性が内包されており、いつかその伝承に秘められた力を取り込む者が現れる日を待っている。
この「進化の宝玉」を使用した場合、下位の種族を「狼人・普通級」へと進化させる
――――――――――
このアイテムは、既にその国のダンジョン協会に50万ドルで売却されて、非覚醒者の被検者を募り実験をした。
その結果、被検者は狼人へと覚醒したのだ。
このアイテムの発見により、これからのダンジョン業界は激動を迎えるだろう、という言葉でこのニュースは終わった。
「これから、日本のダンジョン業界はど」
「ど?」
「・・・どうなるのだろう」
「まぁ、あのアイテム手に入れれば誰でも覚醒者になれるって知っちゃったからね。絶対にお祭り騒ぎになりそう」
「・・・チクタクマンのヤツ、売らないでよ?」
「何故に」
「進化先がチクタクマンの時点でダメ」
「・・・まぁ、入手経路とか聞かれそうだしなぁ。売るとしたら、ガチャが見つかってから数日経ってからにするか?それなら入手経路の説明もできるし」
いずれにせよ、進化の宝玉が発見されたことでダンジョン業界が今より騒がしくなるのは間違いない。
できれば、もっと遅く発見されて欲しかった。
そうすれば、ガチャからレアな進化の宝玉を手に入れて売れ払って大儲けできたのに・・・。
・・・いや、まだできるな。
ガチャはまだ発見されていないし、発見しても報告していないというライバルもいるかもしれないが、そこは気にしないでおくとする。
今の内にガチャを引きまくって、レアアイテムをたくさん手に入れておきたい。
そうすれば、後からくる探索者と差をもっと広げられる。
出来れば、ジブン達が探索している場所に人が来てほしくないしな。
そんな浅ましくも自分勝手な考えが頭の中に過ぎる。
こうして、この1件は世界にまた1つ大きな変化をもたらした。
それと同時に、ジブン達はこれからの身の振り方を考えさせられたのであった。
『続いてのニュースは。・・・ここで速報が入ってきました!・・・なんと、ダンジョン内でガチャマシーンのようなオブジェクトが発見されたようです!!』
「「えっ」」
・・・どうやら、ガチャも発見されてしまったようだ。
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先日、新たにダンジョンで発見された新情報により、これからのダンジョン業界がどうなっていくかなんて今考えてもしょうがない。
だから、世間を賑わす話題はひとまず脇へと置いといて、ジブン達はいつも通りにダンジョン探索へと向かった。
また、ジブン達は1~10階層を「洞窟層」、11~15階層を「森林層」と呼ぶことにした。
何故、そのような呼び方をしようとしたかというと、ジブン達が絶賛探索中のダンジョンの規模がわからないため、現在の攻略層を数字以外の呼び方でわかりやすく分類するためである。
その内、上層、下層、深層とかの言われたりするかもしれないが、ひとまずはこういう風に呼ぶこととする。
現在、ジブン達が攻略している「森林層」の特徴として、洞窟内での探索よりもモンスターと遭遇しにくいが、その分奇襲を受けやすいという印象を持つ。
この階層は「洞窟層」とは違い、広く開放的で進む道が限られておらず、木々や背の高い植物等の障害物となる物が多い。
そのため、気配に敏感でなければ敵が近くにいても気が付かない人が多いのではないだろうか。
ガサッ
「ん?・・・あぁ、まーたサルが襲ってきた」
「また?数は」
「目視できる範囲では4体かな?」
「こっちも見えた。追加で6体」
ジブンのその言葉と同時に、頭上から3体のモンスターが飛び掛かってきた。
赤い目を爛爛とぎらつかせながら、鉄パイプを振りかぶって襲い掛かって来る「ヘルメットモンキー」。
それを、ヘルメットの部分に当たらないように手に持つ武器で斬り落とす。
そこから、続々とサルが飛び降りて追撃を仕掛けてくるが、それ等も2人で淡々と倒していく。
そして・・・
「はい、バレバレだから」
「キキィー・・・!?」
地上から忍び寄っていた、小鬼から奪ったのか斧を持つ個体のサルを切り伏せる。
こういう不意打ちは、これで7回目。「ヘルメットモンキー」の群れに遭うと、必ずやってくる戦法であるので流石に慣れる。
ジブン達は既に、「ヘルメットモンキー」の群れに7回くらい奇襲を喰らっているが、幸いにも相手が小鬼程度の耐久しかないお陰で難なく対処できたのだが、流石に心臓に悪いので気配を探る系のスキルが欲しい。
ま、まぁ、奇襲を受けた直後の緊張感は結構クセになりそうだったけど・・・。
そんな訳で、ジブン達は昇格条件を満たすために11~15階層のモンスターの討伐に勤しんでいた。
Dランクに昇格する条件は「11~15階層の出現モンスターを1人につき350体の討伐」らしく、Fランクの時よりも必要討伐数が50体増えている。
理由は、この階層の環境での戦闘に慣らすためと、このくらいの数を捌けなければ16階層からはやっていけないかららしい。
一体、この先には何が待ち受けているのだろうか・・・?
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そんなこんなで、3日が経過。
ジブン達2人で350体ずつ倒すことができたので、Dランク昇格のための面接?を受けている。
「そ、想像以上に早かったわね・・・」
「そうですか?」
「えぇ、私達は最初の方は、あそこのモンスターを100体討伐するのに5日くらいかかったわよ」
「「へぇ~」」
つまり、赤帽子の女性は「森林層」でやっていけるレベルの実力者なのか・・・。
「昇格の際に行われる面接って、本当にその人が討伐したのかを調べるために行われるの。パワーレベリングとか、他の人に成果を譲ってもらって昇格、なんて狡いマネする人を昇格させないようにね」
「「なるほど・・・」」
「そうよ。だから私が相手にいろいろと質問するのだけど、その返答に違和感を覚えたらあそこにいる人達のスキルで調査するの。それで、“黒“だったら昇格は取り消しでペナルティが与えられるってわけね」
赤帽子の人は、ジブン達を安心させるように微笑む。
「安心して。貴方達の提出した情報からは嘘が見つからなかったし、〈真偽鑑定〉のスキルにも引っかからなかった。だから問題なく合格できるわよ。けれど、」
彼女は、ジブン達に2枚の資料を渡す。
それを読んでみると、16階層以降の情報が記されていた。
「私達は18階層まで行けたのだけれど、そこで物資がギリギリになって撤退することになったわ。原因はいくつかあるけど、1番は前の階層とは比べ物にならない程の“数の暴力”。アレをどうにかしなくちゃ、次の階層に到達する前に脱落するわ」
そう言って、赤帽子の女性がペンダントをジブン達に渡す。
そのペンダントは、緑色の紐に「D」と刻まれた木製の飾りがついたもの。
これが赤帽子の人が前に言ってた、冒険者ランクカードをペンダント型にした代物なのだろう。
できてたんだ、早いな・・・。
「多分だけど、貴方達はすぐに16階層へと挑戦するわよね。だから、その資料を読んで備えはしっかりとしておきなさい。そして無事に帰って来ること。約束よ?」
「「はい」」
「よろしい。絶対に無理しないでね」
ジブン達に情報をくれた赤帽子の女性は、朗らかな笑みを浮かべてジブン達に忠告した。
・・・。
「・・・すみません。最後に1つ聞いていいですか?」
「何か気になることでもあった?私に答えられる範囲でなら何でも答えるわよ」
赤帽子の女性の了承を得たので、ジブンが前から気になっていたことを聞く。
「お名前、何ですか?」
「・・・」
赤帽子の女性は一瞬、何言ってるんだ?と言いたげな表情をしていたが、自分の胸元を見て合点がいったように、または自身の失敗を悟ったように頭を抱えた。
そう、ジブンはこの人の名前を未だに知らない。
理由は、この人はずっとネームプレートを着けていなかったからだ。
他の職員はみんな着けているのに、何故かこの人はずっと着けてはいない
「・・・え、えぇっと、いつから?」
「初めて会った時から、ですかね」
絞り出すかのように出た赤帽子の女性の言葉に、ジブンが正直に答えると、彼女は顔を机に突っ伏した。
その数秒後、何も無かったかのように上体を起こす。
「・・・ごめんなさい、気が付かなかったわ」
「そうですか」
「えぇ、えぇ、今朝確認した時はちゃんと着けたし、指摘されるまで私自身は無くなってることに気が付かなかった。・・・そういえば、振り返ってみれば、何故かオフの時もネームプレートを着けていたような記憶が・・・・・・成程、そういうことね・・・」
考え込むようにブツブツと言っているが、覚醒者の高スペック聴覚だとすべて丸聞こえだ。
どうやら、何かわかったようだ。
「とりあえず、あの子は後で制裁するとして・・・それより、私の名前だったわね」
あの子とか、制裁とか、少し不安なワードが出てきたが、ジブン達が知る必要のない情報だし、赤帽子の人の口ぶりから、件の人物と親しげな関係であることが伺えるので、下手に追及するのは無粋だろう。
そう思って沈黙していたジブン達に対し、気を取り直した様子の赤帽子の女性が自身の名を告げた。
「私の名前は丘山(おかやま)蝶羽(あげは)よ。貴方達とは今度、どこかで会うと思うけど、その時はよろしくね」
丘山さん、か。
・・・うん、覚えた。
「「これからよろしくお願いします」」
「えぇ、よろしく。それと、最後に1つだけいい?」
「は、はい」
「大丈夫です」
赤帽子の女性改め、丘山さんが、1冊のファイルを取り出してジブン達へと渡す。
「規約にも記載いてあったけど、15階層を攻略できた探索者には専属の職員が付くから、ジブンの希望をこの資料から選んで、明日までにここへ持ってきてね。詳しい説明は資料に書いてあるから」
・・・専属の職員?
~間違ってるかも?作者の種族モデル解説~
第2弾 チクタクマン
・機械仕掛けの人形怪人。
・デウス・エクス・マキナの影響か、時の狭間を散歩してるイメージ。
・某神話に登場する混沌さんの化身。
・作者の記憶によれば、混沌さんはギリシャ神話でいうところの、ゼウスポジだったハズ・・・。
注:これは、作者自身の知識を元にした解説です。
間違ってる可能性もあるので、鵜呑みにはせずにお願いします