双子カラスは迷宮時代を駆け抜ける   作:@7281mo-mu

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16階層の脅威

 

 

 あの後もいろいろあったが、とにかくジブン達は晴れてDランクとなった。

 これで16階層に立ち入ることができるので、さっそく挑戦しようと思う。

 今日の探索は、16階層からの出現モンスターの把握が目的だ。

 丘山さんの言う“数の暴力”とは一体どんなものかを知っておかなければ、次の階層へと進むにしても苦戦は必須だろう。

 だから、今回は調査が中心の探索だ。

 

 現在、15階層の次の層へとつながる階段の前にいる。

 ここに来るまでの道中で、サルや小鬼やらを薙ぎ倒してきたがジブン達だが、ジブン達から仕掛けなかったため、いつもより交戦回数が少なくして消耗を抑えれた。

 だけど、「森林層」は一度に遭遇するモンスターの数が「洞窟層」よりも多いので、全部倒すのに時間がかかるのが面倒だ。

 

 ちなみに、蒼規がこれまで使っていた市販の剣は、13階層で交戦したサルのヘルメットに剣身を当ててしまい、その衝撃で折れてしまった。

 なので、現在はアンデット特攻があるらしい「銀の剣」を使っている。

 なお、その時のサルは、蒼規に剣で叩かれた衝撃で吹き飛び、仲間を巻き込みながら木にぶつかって灰となった。

 蒼規が怪我しなくてよかったよ、本当に。

 

「準備は大丈夫?武器の消耗は?」

「大丈夫、それも確認済みだから。天規とは違ってね」

 

 なんだとこのやろう

 

「・・・とにかく、大丈夫なら進もう」

「そうそう、さっさと行こう。途中のサル軍団で意外と時間使ってしまったから、今日中に進めるように急ぎ足で」

「そういえば、アオもサルのヘルメットで剣「さぁ、新しいモンスターとのご対面だ!楽しみだなぁ~、あはははは」た?・・・」

 

 ・・・・・・。

 ジィィィィィィィィ―――――

 

「・・・わ、わかったわかった、余計なこと言ってごめんて。だからその、限界まで見開いた眼でガン見するの止めてくれない!?」

「・・・別に、気にしてないが?」

「気にしてるじゃん!!」

 

 その後、蒼規は何故か今日のガチャコインの取り分をジブンが多めにしてくれた。

 ・・・うん、その親切心に免じて、先の発言は水に流すことにしてやろう。

 喧嘩売ってきたヤツに慈悲を書けるなんて、ジブンはなんて優しいんだろうか・・・?

 

 ・

 ・

 ・

 

 階段を下りて16階層へと足を踏み入れたジブン達は、さっそく周囲の警戒のために辺りを見渡すが、この階層の環境は前の階層と変わらない。

 もしかしたら、ある程度進めば見つかるのでは?と思い先へと進む。

 

 その数分後、森の中を進むジブン達の耳に、ブブブーッ、という虫の羽音が聞こえてきた。

 音が聞こえる方向へと武器を構えると、その音はドンドン大きくなり、木陰から音の正体であろう3匹の大きな蚊が飛び出してきた。

 その大きさは、なんと中型犬くらいだ。

 正直言って気持ち悪い。

 

「巨大な蚊だね」

「明らかにこの階層の新モンスター。まさか、さっそく出てくるなんて」

「まずは鑑定する」

「わかった」

 

〈鑑定〉

 

(ビックモスキート)

 

「「ビックモスキート」って名前らしい」

「OK、見たまんまの名前だね。———来るよ!」

 

 どうやら、ビックモスキート達がジブン達に気が付いたようで、一直線に飛んで来た。

 そんな蚊に対して、それぞれが持つ武器で斬りつけて迎撃する。

 その結果、ビックモスキートの体がパキッ!という渇いた音を鳴らして真っ二つにされて、残骸となった蚊のバラバラ死体が地面に落ちて灰となり消滅した・・・。

 

「「弱い!」」

「硬さは子鬼以下で、あまりにもザコ過ぎる」

「速さでもサルに全く及ばなかったし、本当に16階層のモンスター?」

 

 巨大蚊は、普通の蚊を巨大にしただけだと感じる程に弱く、そして、あまりにも脆いと感じた。

 だって、あの蚊の体を斬った時、割り箸と同じ手応えがしたもん。

 もしかして、厄介な能力があるけど、ジブン達はそれを発動する前に倒してしまったとかか?

 

 そう思っていた時、

 

「こいつ、魔石落とした?」

「―――っ!魔石が、見当たらない・・・?」

 

 蒼規の言葉と同時に、この蚊が倒されても何も落とさなかったことに気が付いた。

 モンスターは、倒せば必ず魔石を落とす。

 それは、探索者の間で最弱と名高いらしい「ジェルスライム」でさえも例外でない。

 それなのに、明らかに普通の生物ではないはずの巨大な蚊が魔石を落とさなかった。

 これは一体、どういうこと・・・

 

 『前の階層とは比べ物にならない程の“数の暴力”。アレをどうにかしないと・・・』

 

「・・・”数の暴力”か」

「それって丘山さんの言葉だよね。何かわかった?」

 

 蒼規がジブンの呟きを聞いて、ジブンが何か心当たりがあるのではないかと思ったのか、聞いてくる。

 ・・・根拠はないが、丘山さんの言葉から自分なりに憶測を立てることができたので、それを伝えよう。

 

「・・・この蚊、誰かの眷属の可能性ある」

「どゆこと?」

 

 ・・・これは、ジブンの言葉が足りなかったから、蒼規はジブンの言いたいことを理解できてなかったのだとわかる。

 こういう時、20文字制限があるのが本当に恨めしい・・・!

 なにせ今のジブンは、謎の会話文、文字数制限のせいで自分の思ってることをスムーズに相手へと伝えることができないのだから。

 この謎現象、どうやったら解決するのだろうか・・・?

 

 ・・・とりあえずは、単語を組み合わせて蒼規に伝えよう。

 

「小鬼の騎獣ウルフ」

「小鬼のウルフ?・・・!そういうこと!?」

 

 ジブンが告げたのは、一見、巨大な蚊との関連性がなさそうな1単語だけだった。にも拘わらず、蒼規はジブンの言いたいことを察してくれた。

 昔のならば絶対に理解できなかった我が兄は、どうやら覚醒者になったことで察しが良くなったようだ。

 

 それで本題だが、6階層以降に出てきた小鬼の騎獣であるウルフには、それ以前の階層で既に出て来ていたホーンウルフとは違い、額に角が生えていない。

 それが理由なのか当時はわからなかったが、騎獣のウルフを倒しても魔石を落とさなかった。

 それなのに、生命活動の停止と共に、死体は灰となって崩れて消える。

 その時のジブン達は、何故に騎獣のウルフは魔石を落とさないのかが不思議がっていたものだ。

 だけど、もし騎乗している小鬼と騎獣のウルフは2つで1体のモンスターという扱いならば、この現象も納得できる。

 実際に、協会側でもすんな感じの分析がされていた。 

 

 だから、あの巨大な蚊が魔石を落とさなかった理由は、巨大蚊が何らかのモンスターの半身、または眷属的な存在だからなのでは?と思った。

 

 「それと・・・アイテムボックス出して」

 「なんで?」

 「いいから」

 「わかったよ。けど、変に弄らないでよ」

 

 蒼規から、渋々と差し出したアイテムボックスを受け取り、その中身を漁る。

 手を突っ込むと、手には何も握ってないハズなのに何かの感触がする、という不思議な感覚を味わいながらも、お目当ての物を取り出した。

 今朝、ジブン達が丘山さんから貰った16階層の資料である。

 その資料を読んでみると、さっきジブン達が遭遇した巨大な蚊の情報も載っていた。

 

「この資料にある、蚊の特徴のココ」

「・・・あっ、本当だ。『巨大な蚊のモンスターには統制個体がある可能性アリ』って書いてある。・・・16階層来る前、この資料見ればよかったじゃん」

「・・・うん、存在すっかり忘れてた」

 

 丘山さん、ごめんなさい。

 

 それはともかく、先程の資料に記載されている蚊の内容は、大きく分けて2つ。

 巨大蚊の能力と、統制個体の有無だ。

 あの巨大蚊は、極稀に口の針部分を飛ばしてくる個体もいるらいい。

 そいつは、遠くから見てもわかる程、他の個体の何倍もの巨体を持っていたという。

 その報告を聞いた人達は、巨大蚊の中でも大きいその個体は女王個体なのでは?という推測を立てており、巨大な蚊は眷属個体である説が濃厚らしい。

 

 ・・・まぁつまり、ジブンが何を言いたいのかというと、

 

「巨大蚊は全部、上位個体の眷属では?」 

「それは暴論では?・・・でも、可能性はゼロではないか」

「・・・警戒して進もうか」

「そうだね、何が出てもいいように・・・」

 

 事実はどうあれ、ジブン達がこの階層を進むことには変わりない。

 だから、ジブン達のできるのは、この先どんな事態になっても対応できるよう備えることだけ。

 こうしてジブン達は、この階層の危険度の認識を改め、最大限に警戒しながら進んでいくのだった。

 

 ・・・丘山さんの資料では蚊の脅威度は高かった。

 何故、あのようなモンスターを脅威であると見たのだろうか・・・?

 

 ・

 ・

 ・

 

 遠くに物凄い規模の蚊柱が見える。

 

「何、アレ?」

「黒い柱?・・・いや、アレってまさか!?」

 

 ジブン達がいるのは、16階層のとある木の上。

 ましかしたら、木の上から見渡すことで何か発見があるかもと思い、サルに気を付けながら木を登った。

 そして見えたのが、階層の中央に渦巻く黒い柱を形成するナニカ。

 多分だが、アレは全部、ビックモスキートだなのだろう・・・。

 ・・・いやまだ確定ではないし、この予想は外れて欲しいと思っている。

 だがあおの光景は、サイズは違うが夏や秋になるとよく見る光景だし、どこかイナゴの大群とかを連想させる光景で、ブブブッという音がうるさいしなぁ・・・。

 

「・・・行く?」

「いや、止めよう」

「賛成」

 

 蒼規の言葉を聞いて安心した。

 触らぬ神に祟りなし。

 あんな、見た瞬間にヤバイと感じられるモノに対して立ち向う程、ジブン達は勇猛でもないし、愚かでもない。 

 なので、あの黒い柱には極力近づかない方針で行こう。

 

 そう決めたジブン達は、黒い柱を避けて探索できるルートを、木の上から察ガスことにした。

 

 

 

 ・・・その数分後。

 

 「「「「「ブブブブブーーッ!!」」」」」

 

 ジブン達は、大量のビックモスキートに追われていた。

 

 




 「眷属」
 主に、マザー系やキング系、テイマーやサモナー系のモンスターが連れている。
 自身と同系統の下位の存在や縁のある存在を魔力の続く限り召喚するものであり、それにより召喚されたモンスターは、体内に魔石を保持していない。
 また、召喚されたモンスターは一定時間の経過で消滅するが、ある行動をすることで召喚されたモンスターは残り続けることがある。
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